「所得税」カテゴリーアーカイブ

医師の嘱託手当

Q.私は内科の診療所を経営しており、別の会社の医務室で毎週1回、1日4時間健康相談や診療等に従事し、月額5万円の謝礼金を受け取っています。この収入は私の事業所得に加算する必要がありますか?

A.自由職業者である医師が受け取る報酬は、雇用契約に基づく場合は給与所得、委任契約に基づく場合は事業所得として扱われます。しかし、提供した役務が雇用契約なのか委任契約なのかを一概に判断するのは難しい場合があります。具体的な状況を考慮して、実際の役務提供の性質から給与所得か事業所得かを見極める必要があります。役務の提供に厳しい拘束がある場合や、支払条件が固定的な場合は給与所得として扱いますが、それ以外は事業所得となります。また、診療等による報酬が医師に帰属するかどうかも、収入の性質を判定する際の一つの基準となります。ご質問の場合、謝礼金の支払状況等から見て、雇用契約に近い実態と考えられるため、給与所得として扱うのが妥当です。

参考:基通27-5(5), 基通28-9の2, 28-9の3

成人祝金品

Q.今年、成人を迎えた従業員に、1万円程度の万年筆セットを成人祝の記念品として支給しました。この場合、この万年筆セットは、現物給与として課税する必要がありますか?

A.雇用契約に基づいて会社から支給される成人祝いの金品は、通常はその従業員の収入金額として課税の対象になります。しかし、成人の祝いの慣習は普通に行われており、この場合の記念品は従業員と雇用者の関係だけではなく、社会通念上相当と認められる範囲であれば、課税しなくても構わないとされています。

参考:所得税法第36条第1項、基本通達28-5

特定支出 (衣服費)

Q.私の勤務先は、社内規定により、職場では背広を着用することとされています。この場合、背広を購入するための支出は、特定支出となりますか?

A.職場で着用が必要とされる衣服(制服や事務服含む)を購入する支出で、もし給与の支払者がその支出が職務を遂行するのに直接必要だと証明した場合は、特定支出になります。あなたのケースでは、給与の支払者が社内規定に基づき背広を職場で着用することを求めており、その購入が職務遂行に直接必要と証明されていれば、その支出は特定支出に該当します。また、社内規定が明確でなくても、背広の着用が勤務場所での慣行や研修時の説明で必要であるとされていれば、その支出も特定支出です。出退勤時や私用で背広を着用する場合も、給与の支払者が職務遂行のため背広の着用を要求していれば、その購入は特定支出となります。

参考:所法57の2②七イ、所令167の3⑦四、所規36の5①八

特定支出(交際費)

Q.職場の同僚が結婚したため、お祝いの会合を行いました。この会合のための支出は特定支出になりますか?

A.交際費や接待費等は、業務上の関係がある得意先や仕入先などに対して行われた接待や贈答などのための費用で、その支出が職務上直接必要とされ、証明された場合に特定支出になります。具体的には、給与等を支払う企業の得意先や仕入先等、業務上関係のある者との親睦を深め、取引関係を円滑にする目的で行われる接待や贈答などが対象です。しかし、職場の同僚との親睦会や慶事に関する支出は、特定支出には当たりません。

参考:

– 特定支出と認められる交際費等の条件

  1. 接待等の相手が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者であること。

  2. 支出の目的が親睦等を密にし、取引関係の円滑化を図ること。

  3. 支出の基因となる行為の形態が接待、供応、贈答その他これらに類するものであること。

給与所得者の特定支出控除制度について

Q.サラリーマンでも確定申告をして実際にかかった経費を控除することは可能ですか?

A.はい、可能です。給与所得者は、勤務に伴う特定の支出について実際の費用を確定申告により控除することができます。この制度は「給与所得者の特定支出控除制度」と呼ばれており、特定の条件を満たす場合、給与所得控除後の所得から更にその金額を差し引くことができます。特定の支出とは、通勤費、職務上の旅費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、そして必要な業務経費などが含まれます。しかし、これらの支出のうち、給付金や補填により補われる部分は特定支出から除外されます。制度の適用を受けるには確定申告時に特定支出の額を申告し、必要な書類を提出しなければなりません。

参考:

– 通勤費、職務上の旅費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費が特定支出に該当します。

– 特定支出控除の適用を受けるには、確定申告書に特定支出の額とその明細、必要に応じて証明書の提出が求められます。

給与所得の所得金額調整控除

Q.私には扶養親族である18歳の子が一人います。今年、給与等の収入金額が1,000万円、公的年金等に係る雑所得が50万円ありました。妻も給与収入が1,200万円ありましたが、所得金額調整控除は私たち夫婦共に受けられますか?

A.所得金額調整控除は一定の給与所得者に対してその給与所得から一定の金額を減額できる制度です。控除には二種類があります。第一種の控除は年末調整で適用可能で、850万円を超える給与所得に対して適用されます。特定の条件を満たす人、例えば23歳未満の扶養親族がいる人などが対象です。この制度のおかげで、御質問のケースでは、夫婦双方がこの控除を受けることができます。控除額の具体的な計算方法は、給与等の収入金額から850万円を引いた金額の10%です。さらに、第二種の控除もあり、これは給与所得と公的年金等に係る雑所得の合計が10万円を超える場合に適用されます。従って、ご質問の状況では、第一種の控除後の給与所得からさらに10万円を引くことになります。

参考:

– 給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円)-850万円×10% = 控除額※

※1円未満の端数がある場合は、その端数を切り上げます。

– 上記1の所得金額調整控除の適用後の給与所得から10万円を控除します。

少額の減価償却資産の譲渡収入

Q.取得価額が10万円未満の少額減価償却資産を譲渡した場合、その収入は何所得となりますか?

A.取得価額が10万円未満で必要経費に算入されている少額減価償却資産を譲渡した場合の収入は、通常、準棚卸資産からは除外され、事業所得または雑所得となります。ただし、特定の要件を満たす重要な少額資産の譲渡による収入は、譲渡所得となる可能性があります。具体的には、その資産が事業の性質上基本的に重要であると認められる場合や、反復して譲渡することが事業の性質上通常である資産(例:貸衣装業の衣装、パチンコ店のパチンコ機、養豚業の繁殖用豚など)である場合、その収入は事業所得として扱われます。準棚卸資産でありながら事業の用に供されていたものについての収入は事業所得となり、それ以外の場合は雑所得とされます。

参考:

– 所得税法第33条第2項

– 所得税法施行令第81条

– 基本通達27-1、33-1の2

– 基本通達39-3

競走馬の保有による所得

Q.競走馬を3頭保有しており、これまで賞金などの所得を雑所得として申告してきましたが、2頭以上保有することで事業所得として申告できる場合があると聞きました。これはどのような場合ですか?

A.競走馬の保有による所得は、その規模や収益の状況など総合的に評価して、事業所得か雑所得かを判断しますが、以下のいずれかの条件を満たす場合には、事業所得と判断されます。

1. その年において、6ヶ月以上の登録期間を持つ競走馬を5頭以上保有している場合

2. 過去3年間のうち、以下二つの条件を両方満たす場合:

   – それぞれの年において、6ヶ月以上の登録期間を持つ競走馬を2頭以上保有すること

   – 過去3年間のいずれかの年で、競走馬の保有による所得が黒字であった場合

競走馬が6ヶ月以上登録されていたか、2頭以上保有していたかの証明書は、関連機関から発行され、確定申告時に提出する必要があります。あなたの場合、3年間3頭を保有し登録しているので、過去3年間のいずれかで所得が黒字であれば、事業所得として申告が可能です。これにより、本年分が赤字であっても他の所得との損益通算が可能となります。

参考:基通27-7

事業用資金の預金利子

Q.化粧品の小売業を営む青色申告者が、営業上の経費や小口仕入れのために普通預金の口座を持っており、その口座の出入りを通帳に記入しています。この預金から生じる利子を雑収入として経理している場合、決算時に修正仕訳を行う必要がありますか。

A.はい、必要があります。小売業を含む事業所得を得る事業で、資金を普通預金や通知預金に一時的に預けたり、定期預金に入金してその利子を得たりする場合、その利子は事業とは関連していても利子所得として扱われます。したがって、事業上の雑収入として経理されたこれらの利子は決算の際に、雑収入勘定から事業主借勘定へと修正する仕訳をする必要があります。

参考:所法23①、間11-51

造成団地の分譲による所得計算

Q. 傾斜地を造成して一団地として逐次分譲し、費用が増加しながら分譲価格は下がる場合の所得計算方法を教えてください。

A. 分譲が複数年にわたる場合、収入金額に対して原価の配分方法が重要です。造成原価は通常、後期になるほど追加費用が増え、採算が悪化するため、前期と後期の所得のバランスが乱れる可能性があります。この原価配分のバランスを取るため、工事原価を分譲面積に応じて平均して配分する方法が一般的です。しかし、分譲価額に大きな違いがある場合は、分譲予定総額を見積もり、面積ではなく価額に基づいて計算する方法もあります。この場合、自己使用する土地の販売価額も見積もりに含める必要があり、分譲価額の見積もりは、価格変動を考え合理的に行う必要があります。また、施設やその敷地に関わる費用も、分譲原価に算入することが可能です。

参考:基通36・37共-6, 基通36・37共-7