「所得税」カテゴリーアーカイブ

譲渡所得の収入金額の計上時期

Q.私は本年、農地の譲渡契約をし、代金の全額を受領しましたが、契約上農地法第5条による転用許可の日を引渡日としており、その許可の日は、現在のところいつになるか分かりません。転用許可がなかった場合、農地の譲渡を本年のものとして申告することができますか。

A.譲渡所得の収入金額を計算する際、通常は資産を渡した日を基本としています。ただし、納税者が契約の効力が生じた日を基に申告している場合は、このやり方が認められていることもあります。特に、農地など、農地法に基づく許可や届け出が必要な場合、契約日に基づいて申告している場合が認められています。従って、あなたのケースでは、転用許可や引き渡しがまだの状態でも、契約が行われた本年度内に譲渡として申告することが可能です。

土地の造成販売による所得

Q.都市近郊の農家で、戦前から所有していた3ヘクタールの農地を整地し、宅地にして分譲していますが、この所得は譲渡所得になりますか?

A.通常、土地の譲渡所得は、その土地が譲渡された年の1月1日に保有期間が5年を超えていれば、長期間自然に値上がりした利益に対して、過重な税負担を軽減するために比較的軽い税率が適用されます。しかし、販売目的で土地を保有していたり、営利目的で継続的に土地を譲渡している場合は、この所得は譲渡所得と見なされず、事業所得または雑所得として課税されます。販売目的で保有している土地は、不動産売買業者などが持つ土地のようなものですが、一定の規模を超えて土地の形質を変更して譲渡する場合や、その土地に建物を建設して譲渡する場合は、その所得は全部が事業所得または雑所得とみなされます。一方で、長期間保有していた土地が、形質変更などの工事によって値上がりした場合、その値上がり益に該当する部分のみを事業所得または雑所得として、残りを譲渡所得として扱うことがあります。この場合、譲渡所得の額は工事に着手する前の時価で計算し、譲渡にかかった費用はすべて事業所得または雑所得の必要経費として計算します。質問のケースでは、土地の改変規模が大きいため、全てを譲渡所得として申告することは許されず、保有期間の長短に応じて所得の種類が決まります。

砂利の採取により得た所得

Q.砂利採取業者から、所有する水田を1年間貸してほしいとの要望があり、1,000平方メートルを貸し付ける契約を結びました。その結果、賃貸料として50万円、稲作補償金として20万円を受け取りましたが、これらの収入は何所得となるのでしょうか?

A.あなたが砂利採取業者に土地を貸し、その見返りに賃貸料と稲作補償金を受け取った場合、この収入の扱いにはいくつかのポイントがあります。土地の所有者が土地の地表または地中の砂利などを他者に譲渡した際の所得は、通常、譲渡所得として扱われます。しかし、このような譲渡が営利目的で継続的に行われている場合には、事業所得または雑所得となることがあります。また、土地から採取した土石等を譲渡した場合の所得も、事業所得または雑所得に該当する可能性があります。あなたのケースでは、表面的には土地を貸し付ける契約であるものの、実質的には土地の中の砂利を譲渡するための契約であり、その対価として受け取った金額は譲渡所得として扱われます。また、稲作補償金については、砂利の採取によって1年間農業活動ができなくなることの補償金であるため、農業所得の補償として事業所得となります。

不動産売買業の廃業後に譲渡した土地の所得

Q.昨年、個人で営んでいた不動産売買業を法人経営に組織変更し、個人事業を廃止する旨を所轄の税務署に届け出ました。その際、個人事業当時に棚卸資産として所有していた土地の一部を将来、居宅の敷地に利用するつもりでその法人に引き継いでいませんでしたが、今年になって、その土地の買手が現れたので売却することにしました。私は既に廃業しているので、この土地の譲渡による所得は譲渡所得として申告すればよいのですか。

A.個人事業を廃業した後も、残っていた棚卸資産(今回の場合は土地)を売却することは、事業から得た利益として扱われることが多いです。個人事業の廃業は、法人の解散のように一連の手続きで締めくくられるわけではなく、活動の完全な停止、つまりは棚卸資産を全て処分した時点で事業が終了したとみなされます。販売業であれば、商品を全て売り切ることがその区切りです。廃業後に残った資産を売る行為は、事業活動の最終段階に当たり、その売却から得られる利益は事業所得として扱われるべきです。なので、あなたが売却した土地についても、事業所得として申告するのが適切です。

借家の明渡しによる立退料

Q.家主の都合で10年間使っていた借家を明け渡すことになり、家主から立退料を受け取りましたが、その立退料が何所得とするか迷っています。その判定方法を教えてください。

A.借家を明け渡す際に受け取った立退料は、その目的によって大きく3つに分けることができます。1つ目は立退きのための費用の補償、2つ目は借家権の消滅による対価、3つ目は事業者の場合の営業補償です。これらは通常、複数の性質が混在するため、立退料をどの区分に属するか正確に分けて処理する必要があります。区分が明確であれば、1つ目は一時所得、2つ目は譲渡所得、3つ目は事業所得としてそれぞれの所得金額を計算します。

ただし、立退料がどの区分に属するか明確にすることが難しい場合、実際に立ち退くためにかかった費用を除いた残額を借家権の対価とする方法も考慮されます。地域によっては借家権の取引慣行があり、その地域では立退料の一部が譲渡所得となることもありますが、取引慣行がない地域では一時所得となることもあります。

借家権の対価に関連する譲渡所得は土地建物の譲渡所得とは異なり、保有期間5年以下の場合は短期譲渡所得として扱われます。総合課税の長期譲渡所得は、総収入金額から取得費や譲渡費用を差し引いた後、特別控除を適用して計算します。そして、他の所得と合わせて計算する際にはその半分が総所得金額になりますが、短期譲渡所得にはこの半額の税制は適用されません。

借地権の更新料としての貸地の一部返還

Q.150坪の土地を貸しており、契約期限満了時に借主に更新料300万円を請求しましたが、資金繰りの都合で支払いができず、土地の一部(50坪、借地権価額200万円)の返還を受けました。この場合、返還を受けた部分について課税されますか?

A.借地権の更新料は、不動産を使用させる対価として、金銭以外の物や権利などの経済的利益を受け取る場合も課税対象になります。つまり、物や権利などを受け取った時の時価を収入金額として考えます。このケースでは、借地権設定の一部解除による利益相当額、すなわち返還を受ける借地権の時価相当額200万円が、収入金額として認識されることになります。また、更新料として受け取る金銭等の額が一定の基準を超える場合は、譲渡所得として課税される場合があります。借地権者が更新料として支払った金額については、その土地の使用目的に応じて計算された額が必要経費に算入されることになります。さらに、返還した借地権部分に関しては、更新料相当額を基に譲渡所得の課税が行われます。

譲渡所得

Q.喫茶店を経営している建物と借地権をレストラン経営者に売ることになったが、この借地権の売却でも譲渡所得になりますか?

A.はい、借地権の売却によって得た所得も譲渡所得として計算します。譲渡所得とは、ほとんど全ての資産の売却によって得られる所得のことで、土地や建物などの固定資産、無形の財産権などがこれに含まれます。また、譲渡所得には分離課税が適用され、売却する資産が長期(5年以上)所有されていた場合は長期譲渡所得として計算され、特別な計算式に従って税額が求められます。

参考:

– 譲渡所得の定義(所法33②、基通33-1)

– 分離課税の適用(措法31、32)

– 長期譲渡所得の計算方法

山林所得の概算経費控除

Q.20年前に植林した山林を、本年伐採して譲渡しました。保有期間中の育成費や管理費の記録がなく、山林所得の計算が困難ですが、簡便な計算方法を教えてください。

A.山林所得は、長期間山林を育成することで発生する所得で、長期間にわたる必要経費の計算が難しい場合もあります。そのため、個人が15年前の12月31日以前から所有していた山林を伐採または譲渡した場合、概算経費率を使用して必要経費を計算できます。伐採または譲渡から得た収入金額から伐採費、運搬費、仲介手数料などの実際の費用を差し引いた後、その金額に概算経費率を乗じた金額を控除することができます。概算経費率は財務省令により50%と定められており、確定申告書に記載することでこの計算方法の適用を受けられるようになっています。結果的に計算される山林所得の金額は、総収入金額から適用された概算経費率によって算出された必要経費と特別控除を差し引いた金額となります。

参考:

– 措法30①、措規12①

– 措法30④、措規12②

– 措法30③

– 措通30-2

分収造林による所得

Q.土地の所有者として知人Aに土地での造林を許し、山林の伐採や譲渡から得られる利益を分け合う契約を結びました。この契約に基づき、伐採や譲渡から得られる利益に対して特別な税の取り扱いはありますか?

A.あなたと知人A、場合によっては費用を負担する者が一定の割合で山林の利益を分配する契約は「分収造林契約」と呼ばれます。この契約は、共同で山林を経営することとほぼ同等であり、伐採や譲渡の際に得られる収益は、その契約で定められた割合に従い分配されます。この収益は山林所得として扱われ、不動産所得と比べて税制上有利な計算が行えることが特徴です。したがって、あなたの契約も分収造林契約に該当する可能性が高く、伐採や譲渡から得られる所得は山林所得として有利に扱われます。

参考:分収林特別措置法 2①、所令78の2①②、所令78の2③

山林所得と事業所得の区分

Q.山林所有者から立木を買い入れて素材業を営んでいる私が、自分で植林した山林の立木を伐採し販売した場合、その所得は事業所得として申告できるのでしょうか。

A.通常、山林の伐採や譲渡による所得は長期間を要するため山林所得として扱われ、特別な税制が適用されます。しかし、短期間で山林を取得し伐採する場合は、この特別扱いが適用されず、事業所得として申告します。あなたが営む素材業が短期間で立木を伐採し販売している場合は、事業所得の扱いが適切です。一方で、あなたが相続した山林を伐採して販売した場合、植林から伐採までの所得は山林所得とし、その後の造材から販売までの所得は事業所得とするのが適切です。山林所得は伐採した原木を製材業者に運搬した際の価額で計算し、事業所得はこの価額を原価として計算します。なお、相続によって得た山林は、相続人が継続的に保有しているとみなされるため、30年前からの保有は山林所得となる「5年超の保有期間」要件を満たしています。

参考:所得税法32(1)、89(1)、32(2)、60(1)