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非居住者の受けるみなし配当

Q.私の父は、英国の子会社に2年間の予定で単身出向中です。父が保有する甲社の株式による清算分配金が送金され、そのうち「みなし配当」とされる部分は、父が国内で得る不動産所得と合算して申告しなければなりませんか。

A.お父様が外国へ1年以上出向されているため、所得税法上非居住者とみなされます。非居住者が日本国内での源泉所得である配当等を受ける場合、その配当等も含め、非居住者の源泉分離課税の対象となります。ですので、お父様は総合課税の対象となる国内源泉の不動産所得のみを申告する必要があり、清算による分配金のうち「みなし配当」とされる部分を合算する必要はありません。

非居住者に係る総合課税

Q.3年間の海外勤務となった私は、国内の居住用家屋を知人に貸すこととしました。この場合に発生する令和5年分の不動産所得はどのように申告すればよいのでしょうか。

A.海外勤務中も国内の家を貸し、その収入がある場合、非居住者としても総合課税によって税金が課されることになります。この総合課税の対象となる不動産所得については、居住者と同じ方式で所得税が計算され、申告する必要があります。ただし、利用できる控除は限られており、雑損控除(国内資産からの損失のみ)、寄附金控除(特定の寄附金に限る)、基礎控除、配当控除がそれにあたります。租税特別措置法で定められた特例を使った税額控除を受けることも可能ですが、この場合も条件があります。

租税条約を締結している国

Q.我が国が租税条約を締結している国には、どのような国がありますか。

A.日本は令和5年9月1日現在、91か国または地域と租税条約または協定を結び、発効させています。この条約や協定は、国際的に二重課税を避けたり、経済の国際化に伴う資本、技術、人的な交流をよりスムーズにすることを目的としています。また、租税に関する情報交換を主な目的とした条約を結んでいる国も11か国存在します。締結している国や地域は以下の通りです。

– ヨーロッパ(33か国):アイスランド、アイルランド、イギリス、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、クロアチア、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポルトガル、ポーランド、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ルーマニア、ガーンジー、ジャージー、マン島、リヒテンシュタイン

– アジア・大洋州(20か国):インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、シンガポール、スリランカ、タイ、中国、ニュージーランド、パキスタン、バングラデシュ、フィジー、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、サモア、マカオ、台湾

– ロシア・NIS諸国(12か国):アゼルバイジャン、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ジョージア、タジキスタン、トルクメニスタン、ベラルーシ、モルドバ、ロシア

– 中東(7か国):アラブ首長国連邦、イスラエル、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、トルコ

– 北米・中南米(15か国):アメリカ、ウルグアイ、エクアドル、カナダ、コロンビア、ジャマイカ、チリ、ブラジル、ペルー、メキシコ、ケイマン諸島、英領バージン諸島、パナマ、バハマ、バミューダ

– アフリカ(4か国):エジプト、ザンビア、南アフリカ、モロッコ

台湾との間では、公益財団法人交流協会(日本側)と亜東関係協会(台湾側)の間の民間取決めと、それを日本国内で実施するための法令に基づいた、租税条約に相当する枠組みが構築されています。

非居住者に対する分離課税

Q.非居住者に対する分離課税方式とは、どのような方式ですか。

A.分離課税方式は、非居住者が受け取る国内源泉所得に対して特定の税率を適用して税額を計算する方法です。この所得には、生命保険契約などに基づく年金も含まれますが、特定の金額が控除されます。税率は、一般的な所得に対しては20.42%が適用され、利子や金融類似商品に関連する収益については15.315%の税率があります。通常、この税金は源泉徴収によって完了しますが、以下のケースでは異なります。

1. 給与や報酬について源泉徴収されない場合、受取人はその給与や報酬の20.42%に相当する税金を次の年の3月15日までに自ら申告し、納税する必要があります。

2. 退職所得に関しては、分離課税の代わりに居住者として扱われる選択肢があります。これにより、非居住者期間中の勤務を含む退職手当の総額に基づいて退職所得が計算され、累進税率が適用されます。この選択を行う場合、関連する情報を税務署に申告する必要があります。

居住者と非居住者の期間がある場合の課税方法

Q.居住者が賃貸住宅を残して年の中途で出国した場合、どのような申告をすればよいでしょうか。

A.このケースでは、居住者期間と非居住者期間の所得を合わせた額をもとに、居住者と同じ方法で計算し申告します。具体的に言うと、居住者から非居住者に変わった年、または非居住者のまま出国した場合には、所得税法に基づき、出国時までの申告を行います。これには出国時の申告に関連する収入を含め、出国時の申告での納税額や還付金を差し引いたり足したりして申告を行います。さらに、所得控除を申請する際は以下の点に注意が必要です。雑損控除は、居住者期間中と非居住者期間中の国内資産で発生した損失のみが対象です。医療費、社会保険料、小規模企業共済掛金、生命保険料、地震保険料控除は、居住者期間中に支払った分のみが対象です。扶養親族の判定は、納税管理人の届出があるかどうかで年の終わりまたは居住者でなくなった時が基準となります。外国税額控除額の計算は、非居住者期間中の所得がないものとして行います。

非居住者の課税

Q.令和5年分の所得税について、非居住者に対する課税は、どのような方法で行われるのですか。

A.非居住者への課税は、日本国内で得られた所得に対して行われます。この所得は総合課税または分離課税の方法によって税がかけられます。非居住者が日本国内に恒常的な施設を持っているかどうかによって、所得が総合課税または分離課税されるかが変わります。また、日本が租税条約を結んでいる国の人が対象の場合、条約に基づいた税の適用を受けることができます。例として、スリランカなどでは、租税の軽減や免除を受けられる特別の制度があり、対象者は外国税額控除の対象となります。非居住者の所得の種類と、それぞれが総合課税や分離課税の対象となる条件は複雑で多岐にわたるため、具体的なケースによって異なります。

非居住者の課税範囲(国内源泉所得)

Q.非居住者については、国内源泉所得について課税されるということですが、国内源泉所得とは、どのような所得をいうのですか。

A.国内源泉所得とは、以下のような所得です:

1. 非居住者が国内の恒久的施設を通じて事業を行う場合の所得。恒久的施設が提供する機能や使用する資産、内部取引などを考慮して、恒久的施設に帰される所得です。

2. 国内にある資産の運用、保有、または譲渡により得られる所得。ただし、一定の例外を除く。

3. 組合契約事業から得られる利益で、組合契約に基づいて配分される所得です。

4. 国内にある土地や建物の譲渡による所得ですが、一定の条件下での譲渡は除かれます。

5. 国内で提供される人的役務(例:芸能人の活動、専門家によるサービス等)から得られる所得。

6. 国内の不動産の貸し出しや船舶・航空機のレンタルで得られる賃貸料。

7. 国内での業務に関連する使用料や対価、利子、配当等の所得。

8. 国内で勤務やその他人的役務の提供に基づき得られる給与、報酬、公的年金等。

9. 国内での広告宣伝活動による賞金。

10. 国内事業における保険金、補償金、損害賠償金等。

11. 定期積金の給付など、特定の契約に基づく所得。

12. 匿名組合契約に基づく利益の分配。

13. 国内の資産からの贈与や埋蔵物、懸賞金などの一時所得やその他の経済的利益に関連する所得。

これらはすべて国内で発生する源泉があるため、非居住者の国内源泉所得として扱われ、日本国内で課税の対象となります。

租税特別措置法第26条の適用と更正の請求

Q.私は租税特別措置法第26条(社会保険診療報酬の所得計算の特例)を用いて事業所得を計算し確定申告しました。しかし、実際の収支を計算した結果、申告額が過大だったことに気づきました。この場合、更正の請求は可能でしょうか?

A.国税通則法第23条第1項によると、申告書に記載した税額が法令の適用誤りや計算間違いで過大である場合に、更正の請求が可能です。租税特別措置法第26条を用いて確定申告書に事業所得の計算方法を記載している場合、所定の率により算出した金額が社会保険診療報酬に関連する必要経費としてみなされます。この計算方法か、実際の経費に基づく計算かは確定申告時に納税者が選択できます。しかし、もし所定の率による計算で必要経費を算定しており、実際にかかった経費がこの概算よりも多かったとしても、これは法令の適用誤りや計算間違いとはみなされず、更正の請求は認められないということになります。

還付請求申告書の修正申告 と加算税

Q. 令和4年分の所得税に関して、還付請求のために提出した申告書が調査で申告漏れがあると判明し、修正申告を行いました。この場合、過少申告加算税が賦課されるのか。

A. 還付請求申告書を修正するとき、増えた税額には通常、過少申告加算税が課されますが、あなたのケースでは還付すべきでない金額の全額が取消され、さらに税額が上がったため、最初の申告書は還付請求申告書とは見なされません。還付請求のための申告書に提出期限はないものの、実際に税金が発生する確定申告は特定の期限までに提出する必要があります。あなたが提出した修正申告書は、本来の提出期限を過ぎた後の申告であるため、無申告加算税が適用されることになります。

未払配当金を受領辞退した場合の更正の請求

Q.未払配当金を受領辞退した場合、更正の請求は可能ですか?また、その場合「回収できないこととなった金額」は源泉徴収前の金額ですか、それとも源泉徴収税額を差し引いた後の金額ですか?

A.会社の役員が債権者の損失を軽減するために、自分が受け取る配当金を辞退する必要が生じた場合、辞退した日から2ヶ月以内にその金額が回収できなくなったものとして更正の請求が可能です。これは特別な清算、破産手続開始、再生手続開始、更正手続開始、または会社整理の状態に陥った場合など、特定の条件下で行うことができます。受領辞退した未払配当金についての「回収できないこととなった金額」は、税金(源泉所得税及び復興特別所得税)を引いた後の金額として計算されます。つまり、もし配当金が100万円で、源泉所得税及び復興特別所得税が合わせて204,200円だった場合、実際の回収できなくなった金額は795,800円を基準とします。更正の請求をする際は、配当所得の金額を204,200円、配当控除額をこの204,200円に対応する金額、源泉徴収税額を204,200円として、その上で所得税額の計算を行います。