「所得税」カテゴリーアーカイブ

業務開始前に支出した地代

Q.昨年10月から建築を開始した貸ビルに関して、昨年10月から本年1月まで支払った地代は所得計算上どう扱えばいいですか?私は会社役員で、所得は給与所得のみです。

A.不動産貸付業をすでに行っている人が、新たにビルを建てるために土地を借りて地代を支払った場合、その地代は不動産所得の必要経費として扱われます。これは、ビル建築中でも不動産貸付業の拡大と見なされるからです。しかし、不動産貸付業を新たに開始する場合には、建築期間中に支払った地代は業務開始を前提とした支出として、将来得られる不動産収入から控除すべきものとみなされます。ですので、これらは「新たな業務を開始するまでに特別に支出した費用」として、繰延資産として扱うことが適切です。借りた土地の地代を建物の取得価額に含める考え方もありますが、建物の取得に直接関連がある借入金の利子とは異なり、地代と建物取得の間に実質的な関連が無いため、合理的ではありません。

医師会への入会金

Q.大学病院で勤務医として働いていたが、親の世話のために地方で診療所を開業し、地元の医師会に加入することになり、入会金300万円を支払った。この入会金は、脱会しても返還されないが、この支払いを事業所得の計算上、必要経費に含めることはできるか?

A.医師会などの同業者団体への入会金には、譲渡可能な場合や脱会時に返金がある出資の性格を持つものと、そうでないものがあります。出資の性格を持つものは資産として計上しますが、出資の性格を持たないもので、入会後に団体からのサービス提供が続くものは繰延資産として扱います。そのため、質問の医師会への入会金は、返還されず譲渡もできないため繰延資産として扱われ、300万円は償却対象となります。加入金の償却期間は5年で、均等に償却されます。

建物の所有者に代わって支払った立退料

Q.私は事業拡張のため家主と隣の店舗の賃借交渉をし、結果として家主が隣の店舗の賃借人に支払う立退料を私が肩代わりすることになりましたが、この立退料を事業遂行上必要な費用として事業所得の計算上、必要経費に算入しても良いですか?

A.賃借人を立ち退かせるために支払った立退料は、原則としてその年の必要経費に算入できますが、例外として土地や建物を譲渡する場合があります。あなたのケースでは、建物の賃借権を得るために家主に代わって立退料を支払ったため、この支出は賃借するための権利金とみなされます。権利金は繰り延べ資産として取り扱われ、所定の期間にわたって償却することになるため、あなたが支払った立退料も同様に繰り延べ資産として償却処理する必要があります。

返還されない敷金

Q.喫茶店を開業するためにビルの1室を借り、権利金100万円、敷金300万円、仲介手数料5万円を支払いました。契約期間は3年で更新可能です。都合による解約時に敷金の2割が返還されない場合、この経理処理を教えてください。

A.喫茶店を開業する際に支払った権利金、敷金の一部、仲介手数料などの費用は経理上特定の方法で処理します。まず、返還されない敷金の60万円(300万円の20%)は、権利金と同じ扱いで繰延資産に分類されます。繰延資産は、その効果が及ぶ期間に沿って費用として償却していきます。仲介手数料の5万円は、その支払った年の必要経費として計上できます。立ち退き時に返還されない敷金が契約によって変動する場合、返還されないことが初めから確定している部分(例えば10%など)を権利金として扱います。繰延資産の償却期間は、建物の賃借契約に応じて異なり、たいていの場合は5年間となりますが、特定の条件下では建物の耐用年数の70%に相当する年数で計算します。この場合の償却費は、(100万円 + 60万円)を5年間で分割して計算します。仮に権利金等の支出が一契約について20万円未満の場合、その全額を支出した年の必要経費に算入することが可能です。

分割払のアーケード負担金

Q.商店街の協同組合がアーケードの設置や道路の舗装のために借入金を使ってこれらを所有することになった場合、組合員が支払う借入金の返済分は経費としてすぐに計上できるのか?

A.組合員が支払う分担金については、これが共同施設の設置や改良のための費用である場合、これらを繰延資産として扱い、支出総額が20万円以上の場合は資産として計上し、アーケードの場合は5年の期間で償却する必要があります。そのため、分担金を支払う都度すぐに経費として計上することは税務上認められていません。ただし、分割して支払われる期間が大体3年以内である場合は、繰延資産となるべき費用の総額を基にして償却費を計算することが可能です。さらに、固定資産を利用するために支出された繰延資産の償却開始時期は、固定資産の建設着手時とされています。それに加え、簡易な施設の建設に使われる負担金については、その金額に関わらず支出のあった年に必要経費として計上することが認められています。

市の条例に基づく公共下水道の受益者負担金

Q.私は、K市にアパートを所有していますが、本年、市の都市計画に従って設置される公共下水道の受益者負担金を支払うことになりました。その金額は不動産所得の計算上どのように取り扱われますか。

A.公共下水道の設置に関わる受益者負担金は、アパート運営という事業活動に必要であり、支払った費用の効果が長期にわたるため、これを繰延資産として扱います。このため、支出の効果が及ぶ期間に合わせて計算した償却費を、不動産所得の計算において必要経費として算入します。通常、公共下水道の受益者負担金の償却期間は6年とされています。これは、地方公共団体による建設費用の負担方法が異なり償却期間が統一されていないため、下水道施設の総合耐用年数の40%、つまり17年の40%に相当する6年と決められています。また、自己の使用する排水設備の新設や拡張に伴い公共下水道の改築費用を負担して下水道施設の使用権を取得する場合の負担金は繰延資産ではなく、減価償却資産となります。さらに、アパートの給排水設備の設置や改良にかかる費用は公共下水道に関わる負担金ではないため、繰延資産ではなく、減価償却資産(耐用年数15年の給排水設備)となります。

道路舗装負担金

Q.店舗の一部を改造してガレージにした際、そのガレージの前にある市の所有する歩道を車が通れるようにするため、市の許可を得てコンクリートで舗装工事を行い、その費用を30万円負担しました。この費用は寄附金と見なされるのでしょうか。

A.地方公共団体への寄附金であっても、事業運営に必要と認められる場合は、寄附金控除ではなく、必要経費として扱うことができます。さらに、寄附によって自己のための専用設備が設けられ、特別の利益が生じる場合は、寄附金控除の対象外となり、これらは繰延資産とされ、利益の及ぶ期間にわたって償却されます。あなたの場合、自分が利用するための公共施設の舗装工事費は、寄附ではなく、公共施設のための負担金として繰延資産に計上されます。20万円未満の繰延資産は、発生年に全額必要経費に算入できます。舗装工事に関わる負担金は使用期間に応じて償却され、法定耐用年数の40%を償却期間として計算されるため、償却費は特定の計算式に基づいて求められます。

医療保健業の医療用機器の特別償却

Q.私は歯科医院を開業している青色申告者で、歯科用ユニットが古くなり、本年5月に新しく買い換えました。この歯科用ユニットについて、医療用機器の特別償却の適用ができると聞きましたが、その制度の内容を説明してください。また、診療室の冷房装置も同時に取り替えましたが、この装置も特別償却の適用が受けられますか。

A.医療用機器の特別償却制度は、医療の進歩を促進するために設けられています。青色申告者で医療保健業を営むものが、新しい医療用機器を取得した場合、特別償却を適用することができます。この制度では、取得価額の12%までの特別償却が可能ですが、適用には条件があります。該当する医療用機器は、直接医療のために使用される機械や装置で、厚生労働大臣が指定したものに限られます。ただし、一定期間内の新しい機器で、価格が500万円以上のものが対象です。特別償却の申告には、確定申告時に必要経費としての記載と、償却額の計算明細書の添付が必要です。特別償却を全額利用しなかった場合、不足額を翌年に繰り越すことも可能です。なお、社会保険診療報酬の計算に特例を適用している場合は、特別償却を利用できない点に注意が必要ですが、自由診療報酬に対応する経費として特別償却額が適切に計算された場合は適用が認められます。歯科用ユニットは、厚生労働大臣が指定した医療機器に該当するため、特別償却の適用が受けられます。しかし、診療室の冷房装置については、「医療用機器」には該当しないため、特別償却の適用は受けられないことになります。

年の中途で死亡した者の特別償却不足額の承継

Q.青色申告者が租税特別措置法第12条の2により医療保健業者の医療用機器の特別償却を利用して機械を取得し、事業で使用した後にその年のうちに亡くなった場合、その機械の特別償却不足額は、事業を引き継いだ相続人が翌年の所得計算で必要経費に算入できるか?

A.事業を引き継いだ相続人が、相続した年から青色申告者であり、その機械を事業で使用し続けている場合、相続した年とその次の年だけ、亡くなった人の特別償却不足額を相続人の事業所得の計算で必要経費として算入することが可能です。この取り扱いは、特別償却不足額を次の年に繰り越しできるその他の特別償却や割増償却にも適用されます。

中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却(年の中途で譲渡した場合)

Q.青色申告者が中小事業者として機械等を取得し、2か月間使用した後に個人事業を廃止して法人になり、その機械を法人に譲渡した場合、特別償却を適用できますか?

A.中小事業者の機械等の特別償却制度は、平成10年6月1日から令和7年3月31日までの間に特定の機械等を取得し、それを事業に使用した場合に適用されます。この制度では、機械等を事業に使用していた期間の長さやその後も継続して使用しているかどうかなどの条件は設けられていません。したがって、たとえ使用期間が2か月と短期間であっても、実際に事業に使用していた事実があれば、特別償却の適用を受けることができます。ただし、機械等を事業に使用した年が事業を廃止した年である場合は、この特別償却の適用が認められないとされています。よって、質問のケースのように、機械等を事業に使用した年内に法人成りに伴い個人事業を廃止した場合は、特別償却の適用は認められません。