「所得税」カテゴリーアーカイブ

事業主の通勤費

Q.店舗と居宅が離れているため、車で通勤しています。この場合、通勤に要するガソリン代等の費用は必要経費に算入できますか。

A.事業所と自宅が離れている場合に、車で通勤する際のガソリン代を必要経費にできるかについては、事業上の理由で離れているのであれば必要経費として扱うことができます。しかし、家庭の事情で離れている場合は、家事用の費用として分類されます。この判断は一般的に難しいとされていますが、給与所得者に対する通勤手当が一定の金額までは非課税とされていることから、通常の通勤距離であれば、その通勤にかかる費用を最も経済的な方法で算出した金額を必要経費として認められます。ガソリン代に関しては、その車の使用が事業に関連している部分については、明確に区分した上で、事業用としての部分は必要経費に算入することが可能です。事業と家庭の区分が可能な場合、または事業遂行のため直接必要だったと記録から明らかな場合、必要な部分が50%を超えるかどうかにかかわらず、事業の遂行に必要な部分として明確にされた場合は必要経費に算入できます。

お稲荷さんの神棚の設置費用

Q.呉服店を経営する私は、店舗内に「お稲荷さん」の神棚を設け毎日お参りしています。この場合の設置費用30万円は商売繁盛のためであり、事業所得の金額の計算上、必要経費になると思いますがどうでしょうか。

A.事業と直接関係のない個人的な行為である神仏への信仰による祭壇や神棚の設置費用は、所得税法上、家事上の支出とみなされます。このため、店舗内に神棚を設けたことで事業を遂行する上で必須とは認められず、事業所得の計算で必要経費として扱うことはできません。

保証債務の履行による損失 (そ の 2)

Q. 弁護士として業務を行っており、数年前に顧問先の子会社設立の際に融資と債務保証を実施しました。顧問先と子会社が倒産し、保証債務の支払いを行いました。この損失は、弁護士業務上必要な経費として認識できますか?

A. 事業を運営する上で発生する売掛金や貸付金などの損失は、必要経費として認められます。これは、業務遂行中に自然発生する債権に限られます。しかし、弁護士業務は訴訟や法律相談などに限定されており、融資や債務保証は直接必要な業務ではありません。そのため、顧問先との関係があるとしても債務保証から生じる損失を必要経費として扱うことは適切ではありません。

非営業貸金の貸倒れ

Q.建築業者として、資金繰りに困っていた兄の会社に2年前に400万円貸していて、今年6月にその会社が倒産し本体および利息の回収が不可能になりました。これらの貸倒損失を事業所得の必要経費に計上することはできますか?また、前年分に雑所得として申告した未収利息20万円も回収できず、どのように対処すべきか、教えてください。前年分の総所得金額は500万円でした。

A.事業を運営する中で発生した売掛金や貸付金などの貸倒れは、損失が発生した年の事業所得の必要経費に算入できます。しかし、事業とはみなされない規模での貸付金およびその利息の貸倒れの場合には、貸倒れ発生年の不動産所得や雑所得を基としてそれらの損失を必要経費に計算することが可能です。ただし、貸倒れの金額はそれぞれの所得計算上での必要経費として扱われます。そして、利息の全額または一部が回収不能になった場合、特定の金額を限度として、その回収不能となった金額は考慮されずに所得が計算されます。あなたのケースでは、貸付金は建築業の運営上ではない普通の貸付とされ、元本に関しては雑所得の金額を限度として必要経費に算入できます。未収利息の20万円も同様に前年の雑所得金額を限度として考慮されます。利息の回収が不可能な場合、貸倒れ日の翌日から2か月以内に更正請求を行う必要があります。

相互に債務保証を行っている場合の貸倒れ

Q.私は弟の経営する会社に保証人として名を連ね、同時にその会社が私の銀行借入れの保証人になっていました。このように相互に債務保証をしている状況で、弟の会社が倒産し私が負った保証債務の損失は、私の事業所得から必要経費として控除することは可能ですか?

A.まず、一般的なケースとして、事業で用いる資金を得るために、他者と融通手形を交換し、その結果生じた受取手形が不渡りになった場合、その貸倒損失は必要経費として扱われます。この基準は、事業の遂行に必要な資金の調達に関連した債権であれば、取引関係の存在有無にかかわらず、貸倒損失の対象とする考え方に基づいています。しかし、あなたのケースでは、相互の債務保証が事業遂行に直接関連するかの判断が焦点となりますが、債務保証は融通手形のように一つの契約で同時に債権債務が発生する性質のものではありません。そのため、各保証契約を個別に事業遂行上必要なものかどうかを判定する必要があります。あなたの場合、保証契約が事業遂行に直接関連しているとは認められないため、その損失を必要経費として控除することは認められないと考えられます。また、債務保証は事業上のみならず、私的な関係でも行われることが一般的であるため、自動的に事業遂行のためのものとは見なされません。

保証債務の履行による損失

Q.10年ほどの取引関係にある得意先から借入金の保証人になりましたが、相手が倒産し行方不明になったため、保証額100万円を支払いました。この損失は必要経費に算入できますか?

A.税法によると、事業遂行上生じた保証債務の履行により、求償権の行使が不可能な状況であれば、その損失は事業所得の計算上、必要経費として認められます。このケースでは、得意先との長年の取引関係や、その取引が全収入の50%を占めるなどの事情から、保証債務は事業遂行上生じたものとみなせます。そのため、回収不能となった100万円に関しては、本年度の事業所得における必要経費に加えても問題ありません。

担保がある場合の貸倒損失

Q.得意先の売掛金残高が300万円に増加したため、300万円相当の他社株券を担保として預かりました。翌年、得意先が倒産した際、担保として預かっていた株券の時価が200万円になっていました。この場合、100万円の損失を認められますか?

A.貸倒損失が認められるのは、相手方の財産状況や支払い能力を評価し、債権が全額回収不可能と明らかになった場合です。この場合、担保がある場合、その担保を売却した後でないと、貸倒損失を必要経費に算入することは認められません。あなたが預かっている株券が担保であるため、売掛金の300万円全額が回収できないとはみなされません。従って、担保権を行使しない限り、貸倒損失を計上することはできません。

金銭債権の譲渡による損失

Q.得意先であるA商店の売掛金残高が100万円あり、そのA商店が業況不振で銀行から取引停止の通知を受けた状況で、別の債権者が売掛金を50%の額で譲り受けたいと申し出があり、譲渡することにしました。この金銭債権の譲渡損失は事業所得の必要経費に算入できるか。

A.金銭債権の譲渡によって生じる利益は、通常、それが元本を超える部分については、金銭債権が値上がりしたことによるものではなく、金利に相当するものとして考えられます。そのため、この種の譲渡利益は一般的に事業所得や雑所得に分類され、譲渡所得には含まれません。しかしながら、売掛金や受取手形などの金銭債権には利息がつかないことが多く、債権者は集金手数料や貸倒リスクなど追加の負担を負うことがあります。そのため、債権を元の額より低い価格で譲渡することが一般的です。特に、今回の場合では、債務者であるA商店が業況不振により銀行からの取引停止処分を受け、倒産寸前にあるため、貸倒損失が発生することは避けられないと考えられます。このような状況を考慮すると、金銭債権の譲渡によって生じた損失は、形式上譲渡損失としてではなく、実質的には貸倒損失として扱われ、したがって必要経費として算入することが可能になります。ただし、債権の譲渡先が債権者との間に親族関係や同族会社など特別な関係がある場合、贈与と見なされる金額については、貸倒損失から除外される点は注意が必要です。

会社倒産によって無価値となった株式

Q. 個人KがM社との取引開始の条件として株式を取得したが、M社が倒産し、所有する株式が無価値になりました。この株式に関する損失を事業所得の計算上、必要経費に算入できますか?

A. 個人KがM社の株式を取得したのは、M社に対する資本参加を意味しており、この取得が取引開始の条件だったとしても、M社との取引で発生した売掛金や貸付金とは異なる性質のものです。さらに、損失を受ける資産として有価証券が含まれていないため、質問の株式に関する損失を事業所得の計算で必要経費として認めることはできません。また、事業所得以外では、通常、発行会社の状況悪化などを理由に有価証券の評価損を所得から控除することも認められていません。ただし、特定中小会社の株式の譲渡損失に関する繰越控除など(エンジェル税制)については別途規定があります。

工事着工金の貸倒れ

Q.医師が病院増築のため、工事請負業者に500万円の着工金を支払い、建築を請け負わせましたが、その請負業者は工事半ばで倒産し、その着工金は回収不能となりました。その後、他の工事請負業者によって工事が引き継がれ、翌年に建物の引渡しを受けましたが、これらの明細は次のとおりです。この場合、回収不能となった着工金に係る損失は、建物の取得価額に算入しなければなりませんか。

イ 倒産した工事請負業者に支払った着工金 500万円

ロ 未完成工事の価額 (引き継いだ請負業者の見積り) 150万円

ハ 引き継いだ工事請負業者に支払った工事代金 2,350万円

A.不動産所得や事業所得を生む事業の遂行によって起こった売掛金、貸付金、前渡金などの債権の貸倒れで生じた損失の額は、それらの所得を計算する際に必要経費として計上できます。今回の着工金500万円も、医師の病院経営に関連して支払われた前渡金であり、これが貸倒れになった際の損失は、完成した病院の取得価額に加えるのではなく、医業に関する事業所得の計算において必要経費として計上されます。ただし、工事が一定程度進んで未完成工事の価額が生まれた分は実質的に回収したものとみなされるため、工事着工金と未完成工事の価額の差額が実際の損失額となります。具体的には、500万円から150万円を引いた350万円が損失額です。また、新築した建物の取得価額は、2,350万円と150万円を合わせた2,500万円となります。これは、新築病院が事業用資産としてのみ使用される場合の説明であり、もし建物が住宅部分を含む場合、住宅部分の貸倒れについては必要経費と見なせず、損失額350万円から住宅用部分に当てる分は必要経費に算入できないとされます。