「所得税」カテゴリーアーカイブ

税込経理方式を採用している個人事業者が受ける消費税等の還付税額の収入すべき時期

Q.税込経理方式を採用している物品販売業の個人事業者です。消費税等の還付税額は、消費税等の申告書を提出する翌年分の事業所得の計算上、総収入金額に計上しなければなりませんか。

A.税込経理方式を採用している個人事業者が受ける消費税等の還付税額の収入すべき時期は、消費税等の申告書が提出された日の属する年と同じです。具体的には、次の日の属する年の事業所得等の計算上、総収入金額に算入されます。(1) 納税申告書に記載された還付税額の場合は納税申告書が提出された日、(2) 減額更正に関係する税額の場合は更正があった日です。しかし、申告期限前に還付税額を未収入金に計上した場合、その金額を未収入金に計上した年の事業所得計算上、総収入金額に算入することが可能です。従って、質問のケースでは、消費税等の還付税額を令和5年12月末日の未収入金として経理すれば、令和5年分の事業所得計算上、総収入金額に算入することができます。

資産に係る控除対象外消費税額等の処理方法

Q.課税期間の仕入れ等に係る消費税等のうち非課税売上げに対応する部分が控除されていません。この控除対象外消費税額等について、所得金額の計算上、どのように処理をすればよいのでしょうか。

A.税抜経理方式を採用している場合、課税売上の割合や課税売上高により、課税仕入れに係る消費税の全額が仕入税額控除の対象となるか、一部が控除されない(控除対象外消費税額等)場合があります。控除対象外消費税額等は通常の運転資金としてではなく、特定の処理が必要です。具体的には、資産に関連する控除対象外消費税額等の場合、その税額を資産の取得価額に分配し、減価償却か特定計算方式に基づく経費として計上する必要があります。

課税売上の割合が80%以上であれば、その年に生じた資産関連の控除対象外消費税額はその年の必要経費として計上できます。80%未満の場合は、一資産の関連税額が20万円未満、棚卸資産関連、特定課税仕入れ関連の税額は、必要経費としてその年に計上できます。それを超える繰延消費税額等は特定の計算式によって必要経費に計上します。資産に関連する控除対象外消費税額等が生じた場合、その年の確定申告書には、これらの金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

仮受消費税等及び仮払消費税等の精算 (そ の 2)

Q.機械部品加工業者で、税抜経理方式を採用しています。事業用固定資産の譲渡に係る仮受消費税等がある場合、年末で仮受消費税等から仮払消費税等を控除した残額が実際に納付すべき消費税等の額を上回った場合の税務処理はどうなりますか?

A.税抜経理方式を用いている場合、業務用固定資産の譲渡による収入では消費税等は損益計算に影響しません。譲渡した固定資産に関連する消費税等は仮受消費税等に含まれ、そこから仮払消費税等を控除した残額と実際に納付する消費税等の差額は事業所得の計算において収入または必要経費として扱われます。ご質問のケースでは、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した残額が実際に納付すべき消費税等の額を下回っているため、その差額は消費税の課税期間を含む年の事業所得における必要経費として計上されます。

仮受消費税等及び仮払消費税等の精算 (その1)

Q.税抜経理方式で経理処理している場合、年末における仮受消費税等と仮払消費税等の差額が翌年に実際に納付すべき消費税等の額に一致しない場合、税の処理はどうなりますか?

A.税抜経理方式を使用している場合、通常は仮受消費税と仮払消費税の差額がその年の納税額と一致すると考えられます。これにより、納税額は事業の損益計算に影響しません。しかし、例外的に差額が一致しない状況が発生することがあります。一つの例として、消費税の課税売上の割合が95%未満であるか、課税売上高が5億円を超える場合、仮払消費税が控除できない消費税として残ることがあります。また、簡易課税制度の適用で、仮受消費税と仮払消費税の差額が実際に納付すべき消費税額と異なる場合もあります。控除対象外の消費税額は、発生した年の経費として扱うか、5年間にわたり経費に算入されることになります。簡易課税制度の場合、特定課税仕入れの消費税を含む仮受消費税から同じく特定課税仕入れの消費税を含む仮払消費税を差し引いた額と、実際に納付または還付されるべき消費税額との差額は、その課税期間の総収入または必要経費に計上されます。ここで、「特定課税仕入れの消費税等の経理金額」とは、特定課税仕入れに関わる取引で計上した消費税額です。「特定課税仕入れ」とは、国外事業者から提供される電気通信利用役務や特定役務の提供を指します。

消費税等の経理処理 の選択

Q.物品販売業を営む課税事業者として、税込経理方式を採用している状況で、業務用車両を売却する際、その売却に係る譲渡所得の計算を税抜経理方式で行うことは可能でしょうか。

A.消費税などの経理処理では、各業務に応じて、不動産所得、事業所得、山林所得や雑所得を生じる取引ごとに税込経理方式か税抜経理方式を選択できます。しかし、一度選んだ方式は、その業務に関する全ての取引に適用される必要があります。業務用固定資産の譲渡そうにより得た所得は、譲渡所得として分類されるため、その取引に消費税などがかかる場合、業務に適用している経理処理方式に従う必要があります。従って、物品販売業で使用していた車両の売却に関する経理処理は、事業に適用している税込経理方式に従うこととなります。これにより、譲渡所得の金額を計算する上で、売却価格を税込みで算入することになります。

消費税等の経理処理の選択 (そ の 1)

Q.家庭電気器具小売業を営んでおり、消費税の課税事業者です。商品の売上げや仕入れには税抜経理方式で経理していますが、その他の経費の支出に関わる消費税等は税込経理方式で処理することはできますか?

A.消費税等の経理処理には、税抜経理方式と税込経理方式の二つの方法があり、どちらかを選択できますが、原則として選択した方式をすべての取引に適用しなければならないとされています。しかし、個人事業者が複数の種類の所得を得る業務を行っている場合は、所得の種類ごとに異なる方式を選ぶことができます。売上等の収入に関して税抜経理方式を選択している場合、その他の経費の支出に関して税込経理方式を選ぶことが、継続適用を条件として認められます。

売買とされるリース取引

Q.病院を経営している私が、診療用機器をリース契約で賃借しようと思っていますが、このような賃貸借契約を結んだ場合にも売買として取り扱われることがあると友人から聞きました。具体的にどのような場合でしょうか。

A.リース取引には、実際には賃貸借契約であっても、リース期間経過後にリースされた資産が賃借人に譲渡されるような取引や、資産が廃棄されるまで賃借人が使用することになっているような取引があります。これらは、実質的に資産を分割払いで購入するか、延払い条件付きで購入すると見なされるような取引です。リース取引が行われる際、リース資産が賃貸人から賃借人へ引き渡される時点で、売買があったものとして扱われます。このようなリース取引は、契約が途中で解除できない、または賃借人が賃貸資産から得られる経済的利益を実質的に享受でき、それに伴って生じる費用を賃借人が負担することが条件となっています。従って、あなたが考えている医療用機器のリース契約がこれに該当する場合、その医療用機器の引き渡しを受けた時に売買が行われたものとして取り扱われます。ただし、居住者が資産の購入を条件にリース取引を行い、その取引全体が実質的に金銭貸借であると認められる場合は、売買はなかったものとして扱われます。

就業規則を定めていない場合の退職給与引当金

Q.私の店では従業員が10人以上になることがありませんので就業規則は定めておりませんが、退職金は勤務年数等に応じて支払うことにしており、青色申告者です。この状況で、退職給与引当金を設けることは可能ですか?

A.青色申告者の場合、従業員に退職給与を支払う予定であれば、退職給与引当金を設定し、その額を経費として計上することが可能ですが、一定の条件を満たす必要があります。具体的には、退職給与の支払基準や規程をあらかじめ定め、労働協約、就業規則、または税務署長に届出た退職給与規程のいずれかに基づくことが求められます。従業員が10人未満という場合、就業規則の提出は必須ではありませんが、退職給与の規程を税務署に届出することで退職給与引当金の設定が可能となります。ただし、退職給与の支給規程を自由に変更できる状態では認められません。また、退職給与規程を変更する場合は、変更届が必要です。なお、青色事業専従者に対しては、退職給与引当金の設定ができません。

個別評価による貸倒引当金制度の概要

Q.白色申告者にも貸倒引当金が認められると聞きましたが、貸倒引当金とは、どのようなものですか。

A.貸倒引当金とは、個別に評価する金銭債権に関するもので、一括評価の貸倒引当金とは異なり、白色申告者でも必要経費として計上することが可能です。この制度では、不動産所得や事業所得、山林所得を得る事業を営む居住者が対象となります。対象となる債権は、その事業によって生じた売掛金、貸付金など金銭的な債権です。貸倒れの可能性がある債務者に対しては、そのすべての貸金等がこの制度の対象となります。貸倒引当金の計上できる限度額は、債務者の状況や再生手続開始の申立てなどの事由によって異なりますが、それらによって貸倒引当金が必要な金額の範囲内で計上できます。また、対象となる債務者が外国の政府や中央銀行などで長期にわたる債務履行遅滞がある場合も、その経済的価値の減少が認められる債権の50%相当額までが計上可能です。ただし、これらの事実が生じているとする書類が保存されていない場合には、貸倒引当金を計上することはできません。個別評価による貸倒引当金を計上した場合も、一括評価の貸倒引当金と同様に、翌年の事業所得などの総収入金額には算入されます。

割引手形、裏書譲渡手形に対する一括評価による貸倒引当金の設定

Q.受取手形を割引したり、仕入先へ裏書譲渡した場合でも一括評価による貸倒引当金を設定することができますか?その受取手形が、いわゆる融通手形の場合でもかまいませんか?

A.一括評価による貸倒引当金の設定は、売掛金や貸付金の債権として取得した受取手形を、支払いや割引のために裏書譲渡した際にも適用されます。この対象には、手形の相手方からの請求が可能な偶発債務に関連する売掛金や貸付金等も含まれます。ただし、金融業などを営む場合には、関連性のない手形を取得し、それを裏書譲渡するとき、手形債権は消滅し、貸金には該当しなくなります。保証債務については、偶発債務と同様に扱われますが、保証によって生じる求償権自体は貸倒引当金の設定対象外です。ただし、実際に保証債務が履行され、求償権が生じた場合には、その求償権に対しては貸倒引当金の設定が可能です。融通手形については、実質的な債権と見なされない額は対象外とされており、融通手形自体は貸倒引当金の対象となりません。