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配当控除の計算の基礎となる課税所得の範囲

Q.配当控除額を計算する場合に1,000万円を超える場合と以下の場合とで控除率が違っていますが、その基礎となる課税所得金額の範囲と、配当控除額の計算方法を説明してください。

A.配当控除とは、法人からの配当を受け取る個人が二重に税金を負担することを避けるために設けられた制度です。この制度により、配当所得に対する所得税から、特定の割合に基づいた金額を差し引くことができます。ただし、外国法人からの配当や特定の投資信託からの配当などは配当控除の対象外です。

配当控除額の計算基礎になる課税所得金額には、課税総所得金額、申告分離課税の上場株式などに関する配当所得や、譲渡所得、雑所得なども含まれます。計算方法は、課税所得金額の合計が1,000万円以下の場合、剰余金の配当などに関する配当所得の10%、証券投資信託の収益分配に関する配当所得の5%を所得税額から差し引くことができます。総所得が1,000万円を超える場合、その超える部分については、配当所得について5%(証券投資信託は2.5%)、その他の部分については10%(証券投資信託は5%)が控除額として認められます。

特に、一部の特定外貨建て証券投資信託の収益分配に関する配当所得については、1,000万円以下の部分では25%、超える部分では12.5%の控除が適用されます。また、特定公社債等の利子が配当等の範囲に含まれるようになり、これに関する所得も計算に含まれます。

印税と変動所得の平均課税

Q.私は某大学の教授をしており、本年の所得は給与所得の金額700万円と著作権の使用料による所得が100万円、原稿の所得が80万円あります。このような場合、変動所得の平均課税を適用して確定申告をすることができますか。なお、著作権の使用料の所得と原稿の所得の合計は前年が150万円で前々年はありませんでした。

A.変動所得とは、特定の種類の所得を指します。これには、漁獲や水産物の養殖から生じる所得、原稿や作曲による報酬、著作権の使用料による所得が含まれます。ただし、水産植物の採取や水産動物の簡易な加工を施して販売することにより生じる所得も当てはまりますが、著作権者以外の代理や管理を通じて得られる対価については除外されます。

あなたのケースでの著作権使用料と原稿による所得は、変動所得に当たります。変動所得の平均課税が適用されるのは、特定の条件を満たす場合に限られます。あなたの場合、前年度と前々年度の変動所得の合計よりもこの年の変動所得が多く、変動所得と臨時所得の合計が総所得金額の20%以上あるため、平均課税を適用できます。具体的には、前年の変動所得が150万円で、この年の変動所得が180万円に達しています。また、この年の総所得金額は880万円で、その20%は176万円を超える180万円の変動所得があるため、条件を満たしています。

臨時所得の計算上控除する青色申告特別控除

Q.青色申告者ですが、今年は不動産所得のうちに臨時所得とされる権利金収入がありますので、臨時所得の平均課税の適用を受けることにしています。この場合、青色申告特別控除は臨時所得から控除しないで計算してもよいのですか。

A.青色申告者が得る不動産所得には、権利金収入などの臨時所得も含まれ、これにはまず青色申告特別控除が適用されます。臨時所得の計算時、青色申告特別控除前の不動産所得全体から、臨時所得の比率をもとにした控除額を差し引いて平均課税の計算を行います。

もし青色申告特別控除前の不動産所得が臨時所得より多い場合、臨時所得の金額から青色申告特別控除額を比例で差し引いた残りが平均課税の対象となります。たとえば権利金収入が200万円、賃貸料収入が100万円、必要経費が50万円で青色申告特別控除が10万円の場合、臨時所得は192万円になります。

一方で、青色申告特別控除前の不動産所得が臨時所得以下の場合は、臨時所得から直接青色申告特別控除額を差し引きます。例えば、権利金収入が100万円、賃貸料収入が50万円、必要経費が142万円で、青色申告特別控除が10万円の場合、臨時所得は92万円と計算されます。

過年分において平均課税を選択していない場合の変動所得の金額

Q.私は本年、弁護士業の収入に加えて、一定の原稿料収入も得ています。このため、平均課税の適用を考えています。ただし、昨年や一昨年にも原稿料収入があり、確定申告はしていますが、平均課税は適用されていませんでした。この状況で、今年の平均課税対象金額を計算する際に、昨年と一昨年の変動所得をゼロとして計算しても問題ないでしょうか。

A.臨時所得や変動所得に対する平均課税の税額計算は、課税総所得金額から平均課税対象金額の80%を引いた金額に税率を適用する方法と、その後その結果から調整所得金額を引き、その平均税率を適用することで求められる合計額で行います。平均課税対象金額とは、その年の変動所得から前年と前々年の変動所得合計額の半分を引いた残額と臨時所得の合計です。変動所得とは、例えば原稿料などの所得ですが、平均課税の適用の有無は関係ありません。従って、ご質問のケースでは、前年及び前々年の変動所得に平均課税が適用されていなかったとしても、今年分の変動所得からそれらの合計額の半分を引く計算をする必要があります。

名義書換料又は承諾料の取扱い

Q.店舗の賃借人がその権利を他に売却した際に、家主がその賃借人から一定の名義書換料を受け取ることがあります。この場合の名義書換料は、以後その建物を使用しない前の賃借人から受けるものなので、臨時所得に該当しないようですがいかがですか。

A.お問い合わせいただいたケースでの名義書換料(または承諾料)についてですが、転借人(権利の譲受人)の賃借期間が3年以上であり、そしてその契約に関わる賃借料の年額の2倍以上の名義書換料である場合には、臨時所得とされます。通常、賃借人が不動産を借りる際に支払うものが権利金などですが、前の賃借人が移転する際に支払われる名義書換料も、前の賃借人が新しい賃借人に権利を譲る代わりに受け取るものであり、そのお金の扱いは新しい賃借人が直接家主へ支払う場合と実質的には変わりません。従って、新しい賃借人が直接支払う場合のみを臨時所得として扱い、前の賃借人が支払う名義書換料を臨時所得としないのは不合理であるため、臨時所得に含まれるという扱いになっています。

また、不動産を貸し出す際に一時的に受け取る頭金、権利金、名義書換料、更新料、礼金等も、貸付期間に応じて収入金額への配分は認められず、全額がその年の不動産所得として扱われます。

権利金の授受と臨時所得の平均課税

Q.私が所有する土地にビルを建設するという条件で甲と賃貸借契約をしました。契約の内容は、契約期間が40年、借地権の対価としての権利金は500万円、地代年額240万円(必要経費25万円)となっています。なお、その土地の時価は2,000万円と見積もられます。このような場合、受け取った権利金は臨時所得として平均課税の適用を受けることにより一般に比べて有利な取扱いができると聞いていますが、私の場合もこれに該当するでしょうか。なお、私には他に所得はありません。

A.あなたが所有する土地にビルを建設するために甲と結んだ賃貸借契約に基づいて受け取った権利金については、一般的に資産の譲渡とされ、不動産所得となります。臨時所得としての平均課税適用を受けられるのは、特定の条件を満たす場合です。この条件には不動産や権利、特別の技術などを長期間(3年以上)他人に使用させることにより受け取る権利金などが含まれます。

あなたの場合、借地権の対価として受け取る500万円の権利金は、土地の時価の半分未満で不動産所得として扱われます。契約期間が40年と3年以上であり、地代年額の2倍以上であるため、この権利金は臨時所得に該当します。臨時所得に対して平均課税を適用するためには、その年の総所得金額の20%以上である必要があります。

あなたの場合、臨時所得の金額が総所得金額の20%以上になるため、平均課税の適用が可能です。具体的には、15,000,000円(地代年額240万円から必要経費25万円を引いた金額の合計)の20%よりも500万円の権利金が大きいため適用条件を満たしています。この場合、平均課税を選択することで、課税される総所得金額に係る所得税額が計算され、適用することで税額が軽減される可能性があります。

所得税の税率 と速算表

Q.所得税の税率は累進税率になっているそうですが、その税率と、税額の求め方を説明してください。

A.所得税のシステムは、より多くの収入がある人がより多くの税金を支払い、より少ない収入を得る人が比較的少ない税金を支払うという、能力に応じた税負担の原則を採用しています。累進課税制度を使っています。所得税の計算は主に次のステップで行われます。

1. まず課税所得金額を計算するために、所得控除を総所得金額から引き、足りない場合は山林所得金額や退職所得金額から順に引きます。また、課税所得金額の1000円未満の端数は切り捨てます。

2. 課税所得金額に対して、所得税率を適用し、税額を計算します。所得税率は以下の通りです:

   – 195万円以下:5%

   – 195万円超330万円以下:10%

   – 330万円超695万円以下:20%

   – 695万円超900万円以下:23%

   – 900万円超1,800万円以下:33%

   – 1,800万円超4,000万円以下:40%

   – 4,000万円超:45%

特別な計算方法として、課税山林所得金額の場合は、税額の算出に5分の1相当額に税率を適用した金額を5倍する「5分の5乗方式」が用いられます。

実際の税額を計算する際には、上記の税率を各所得区分に適用することが複雑になるため、速算表が提供されています。この速算表は、課税所得金額ごとに税率と控除額が指定されており、計算を簡単に行うことができます。

また、平成25年度から令和19年度まで、計算された所得税に加えて復興特別所得税が課税されます。復興特別所得税は基準所得税の2.1%で計算されます。

扶養親族等の所属の変更

Q.夫婦共に所得があり、子供2人の扶養控除を所得の多い事業所得者である夫の所得から控除していました。しかし、今年は夫の事業で損失が出たため、所得が減少しました。そこで、給与所得者である妻の所得から子供たちの扶養控除をしたいと考えています。妻は既に年末調整をして納税していますが、確定申告の際に扶養親族の所属を夫から妻に変更することは可能でしょうか?子供は2人とも16歳以上です。

A.家族が2人以上納税者がいて、家族の生計を一にしている場合、配偶者または扶養親族を納税者が選んでそのうちの1人のみに適用できる扶養控除があります。納税者は、予定納税額の減額承認申請書、確定申告書、給与所得者の扶養控除申告書などに記載して扶養親族を決めます。一度提出した後でも、事情が変われば扶養控除の適用を変更するために異なる記載をして申告書を提出することができます。ですので、元々夫の扶養親族としていた子供たちを、妻の扶養親族として申告変更することは可能です。ただし、確定申告書に修正申告書は含まれません。

老人扶養親族 と同居老親等又は同居特別障害者 との適用関係

Q.昨年まで、私の母は特別障害者に該当して所得控除の適用を受けていました。今年、母が70歳になったため、老人扶養親族としての割増控除の適用と、同居特別障害者としての障害者控除の適用を受けたいと思っていますが、可能ですか?

A.あなたのお母さんは現在70歳であり、そのため老人扶養親族に該当します。これは70歳以上の扶養親族を意味し、彼女は同居老親等の割増扶養控除58万円または老人扶養控除48万円を受けることができます。また、お母さんが特別障害者であり、あなたと同居している場合は、同居特別障害者に関する障害者控除として、更に35万円が加算され、合計75万円の控除を受けることができます。したがって、あなたのケースでは母親が特別障害者であること、そしてあなたとの同居が通常であることを条件に、同居特別障害者関連の障害者控除75万円と同居老親等関連の扶養控除58万円の両方を受けることが可能です。ただし、これらの控除を受けるための要件には、同居する「居住者」、「その配偶者」、または「居住者と生計を一にするその他の親族」が含まれており、この条件は広く適用されます。

夫が死亡した場合の配偶者控除と寡婦控除

Q.私は病気の夫を扶養しながら喫茶店を営んでいましたが、夫が本年10月に死亡しました。私は確定申告に際して配偶者控除と寡婦控除を受けることができますか。なお、私の本年中の所得は事業所得の120万円のみで、再婚はしておらず、住民票の続柄に未届の夫又は未届の妻などの記載はありません。

A.配偶者控除の適用可否は、その年の12月31日の状況に基づき判断されますが、控除対象者がその年に亡くなっていた場合には、死亡した時点で判断します。寡婦控除の適用可否は、12月31日の状況で判断されます。ですので、ご主人は10月に亡くなった時点で配偶者控除の対象であり、あなたも12月31日時点で未再婚であり、ご主人との間に未届けの関係が住民票上に記載されておらず、収入も500万円以下であるため、寡婦として認められます。したがって、あなたは配偶者控除と寡婦控除の両方を受けることが可能です。