「資産税」カテゴリーアーカイブ

純資産価額方式により評価する場合の賃借権の範囲

Q.法人税と相続税の課税上の取り扱いにおいて、構築物の所有を目的とした土地の賃貸借契約がどのように評価されるのか、また、相続税において取引相場のない株式を純資産価額方式で評価する際、どのように評価すべきかについて教えてください。

A.構築物の所有を目的とする土地の賃貸借契約は、法人税では通常の借地権として評価されますが、相続税では賃借権として評価されることになっています。相続税において取引相場のない株式を純資産価額方式で評価する場合、財産評価基本通達に基づき、「賃借権」としてその賃借権の残存期間に応じて評価します。これは、相続税では財産評価上、構築物の所有を目的とする賃借権は、借地借家法に基づく特定の借地権や賃借権に限られ、それ以外の構築物の所有を目的とする賃借権は、その特性に応じて個別に評価するため、一般的な借地権の範囲には含まれないからです。

直後期末の方が課税時期に近い場合

Q.当社の事業年度は毎年10月1日から翌年9月30日までです。9月10日に相続が発生し、類似業種比準方式で株式を評価することになりましたが、直前期末よりも直後期末を基に計算した方が、実態をより反映できると考えます。直後期末を採用してもいいですか?

A.直後期末が課税時期により近くても、類似業種の株式評価には直前期末のデータを用いて評価します。株式の評価方法において、類似業種比準価額の計算には、1株あたりの配当金額、年利益金額、及び純資産価額といった要素が含まれます。これらの要素は、全国の金融商品取引所に上場している会社たちから、業種ごとにグループ分けされ、各グループの代表となる上場企業群のデータから算出されます。類似業種の株の評価は、これらの算出されたデータと、評価する会社の同じ要素を比較して行います。このプロセスにより、比較されるデータが同一の基準で算出されていることが重要であり、課税時期の後における影響を排除する考慮も必要です。そのため、実際には直後期末に近いとしても、株式の評価には直前期末のデータを使用すると定められています。

類似業種比準価額よりも純資産価額が低い場合の取扱い

Q.取引相場のない株式のうち大会社の同族株主が取得した株式は、原則として類似業種比準価額で評価するとのことですが、純資産価額で評価した金額の方が低くなります。この場合でも、類似業種比準価額で申告しなければなりませんか。

A.純資産価額で申告することができます。取引相場のない株式、特に大会社の同族株主が取得した株式は、通常、類似業種比準価額で評価することになっています。しかし、納税者は純資産価額を用いた評価を選ぶこともできます。これには条件があり、相続などによって株式を取得した場合、その人とその家族などが持つ議決権の総数が評価対象の会社の議決権の半分以下であっても、純資産価額を80%にして計算する特別なルールは適用されません。

類似業種比準価額の計算方法

Q.類似業種比準価額の計算上の利益金額の特例について教えてください。

A.一般的に、類似業種比準価額の計算においては、直前期末以前1年間の利益金額と直前期末以前2年間の年平均利益金額のうち、低い方を基に1株当たりの年利益金額を計算します。例えば、ある設定では直前期末以前1年間の利益金額が123,220千円で、直前期末以前2年間の年平均利益金額が118,720千円となり、後者が低いため、この金額を基に計算を行います。これは、評価会社の利益金額が一時的に前年を大幅に上回る場合、その年の利益を基にした評価が妥当ではない可能性があるためです。よって、納税義務者は直前期末以前2年間の利益金額を基に計算する選択が可能です。

具体的な計算例として、あるケースでは以下の手順で計算されます:

1. 直前期末以前1年間の利益金額: 法人税の課税所得金額とその他の調整後、123,220千円となります。

2. 直前期末以前1年間の利益金額(前々期): 同様に計算し、114,220千円となります。

3. 直前期末以前2年間の年平均利益金額: 上記の金額を平均し、利益金額の比較を行います。

4. 1株当たりの年利益金額: (3)の計算結果が低ければ、その金額を基に1株当たりの年利益金額を計算します。

この結果、非経常的な利益は排除し、経済的な収益力を反映させる形で1株当たりの利益金額が算定されます。利益が経常的か非経常的かの判断は、評価会社の事業内容や利益の発生原因などに基づき、個別に行われます。

固定資産の売却が数回ある場合の利益金額の計算

Q.類似業種比準方式で株式を評価する場合において固定資産の売却が数回あるとき、1株当たりの利益金額はいくらになりますか。

A.ご質問のシナリオでは、法人税の課税所得金額から固定資産の売却による利益や損失を通算した結果、利益金額は1,000万円です。具体的には、課税所得2,000万円から、固定資産の売却益1,400万円と200万円の合計から売却損600万円を差し引いた金額です。法人税の課税所得金額を計算する際には、固定資産の売却による非経常的な利益は通常除外されます。ここで、複数回の固定資産売却による利益や損失は通算して考慮し、最終的な利益がある場合はこれを所得金額から差し引きます。もし通算結果が負の場合は、非経常的な利益として0を採用します。

年利益金額の計算

Q.次の設定で、年利益金額はどのように計算しますか?課税時期は令和5年2月15日、決算期は以前は毎年3月と9月の年2回でしたが、令和4年3月の決算後は毎年10月の年1回に変更されました。

A.年利益金額の計算方法は、令和4年4月1日から令和4年10月31日までの利益と、令和3年10月1日から令和4年3月31日までの利益の5/6を合計することで求めます。会計期間の変更があったため、直前の期末、つまり令和4年10月31日までの1年間は、令和3年11月1日から令和4年10月31日までと定義されますが、この期間だけで利益を直接算出することはできません。これは、令和3年10月1日から令和4年3月31日までの6ヶ月間と、令和4年4月1日から令和4年10月31日までの7ヶ月間に分けて利益を計算する必要があるためです。したがって、令和4年4月1日から令和4年10月31日までの7ヶ月間の利益に、令和3年10月1日から令和4年3月31日までの6ヶ月間の利益の5/6を加えて、一年間の利益とみなす計算方法が適切です。

配当金額の計算

Q.次の設例のような場合、類似業種比準価額の計算上必要な1株当たりの配当金額は、どのように計算すればよいですか?

A.1株当たりの配当金額の計算方法は、以下のステップで実行します。まず、直前期末以前2年間の配当金額を合計します。これは、2年間での配当金額を加算し、特別な配当(この場合は記念配当)を除外した額です。次に、1株当たりの資本金等の額を50円と仮定した場合の発行済株式数を計算します。この例では、資本金総額を1株あたりの仮定した金額で割ります。最終的に、合計配当金額を仮定した発行済株式数で割り、1株当たりの配当金額を算出します。ここでは、合計配当金額を、仮定した発行済株式数で割ることで、1株当たり10円の配当金額が導き出されます。重要な点は、特別配当は継続性が期待できないため、計算から除外することです。この方法で、どのような資本金等の額であっても、一律に50円として計算します。

兼業会社の類似業種の判定

Q.取引相場のない株式を評価する場合、評価会社が2以上の業種を兼業しているときの類似業種比準価額の計算は、どのようにするのですか。

A.取引金額が50%を超える業種を用いて、類似業種比準価額計算での業種として評価されます。具体的には、業種ごとの取引金額の割合で最も大きな部分を占める業種を選びます。もし50%を超える業種が見つからない場合は、特定のルールに従って選びます。例えば、類似する小分類の業種目の割合の合計が50%を超える時は、その類似業種群が対象となります。一方、類似しない小分類または中分類の業種目に属しており、それらの割合の合計が50%を超える場合は、より広い分類の業種目が適用されます。いずれにも当てはまらない場合は、最後の手段として「その他の産業」として処理されます。

類似業種比準方式の計算方法

Q.類似業種比準方式で株式を評価する場合の計算方法について説明してください。

A.類似業種比準価額は、評価対象の会社が行っている事業が似ている業種の株価や、その業種の企業一株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額などを基にして計算します。この評価は、企業の規模(大、中、小)に応じて、一定の割合を適用して求められます。類似業種比準価額の具体的な計算方法は、類似する業種の企業の株価や、一株あたりの配当金額、年間の利益金額、純資産価額(帳簿上の計算額)を基として、特定の計算式により求められます。計算で使用する各数値は、評価会社の業種と似ている業種から選ばれます。さらに、評価将来性や経済的環境など多くの要素が株価に影響するため、類似する業種での基本的な要素と、数値化可能な要素に焦点を当てて評価を行います。企業規模に差異があると、類似性が薄れるため、大企業、中企業、小企業ごとに割合を設定し、評価の安全性を考慮しています。

会社規模の判定と総資産価額の計算

Q.会社規模の判定に当たって、評価会社が収用等により圧縮記帳を行っている場合には、課税時期の直前期末における「総資産価額(帳簿価額によって計算した金額)」はどのように計算するのでしょうか。

A.確定決算で積み立てた金額や確定決算における剰余金の処分を通じて積み立てられた積立金は、各資産の帳簿価額の合計額からは差し引きません。法人が収用や代替資産の取得、特定資産の買い換え等で圧縮記帳を行う場合、その結果貸借対照表上の数値は損金経理、積立金としての積み立て、剰余金の処分による積立金としての積み立てなど様々な方法で表記されます。しかし、会社規模の判定においては、これらの方法で計算された「総資産価額(帳簿価額によって計算された金額)」が直接使用されるわけではなく、これは会社規模を適切に評価するための基準とされています。そのため、税法上特に問題がなければ、簡便性を考慮することも認められており、原則として各資産の帳簿価額の合計額を用いて総資産価額を計算します。