「資産税」カテゴリーアーカイブ

山林所得の範囲 (1)

Q.山林所得とはどのようなものですか。また事業所得とどのように区分されているのですか。

A.山林所得とは、山林(立木)の伐採や譲渡から得られる所得のことです。立木は、主にパルプ材や建築用材として使用される目的で植えられ、成長させられます。そのため、立木を伐採して売ったり、立木の状態で売却するときに得られる所得は、米や麦などの農作物の収穫や製品の製造・販売から得られる所得と根本的に違いはありません。ただし、山林では、植林から伐採までの期間が長く、資本を投じてから収益を得るまでの時間が非常に長い特徴があります。また、伐採や譲渡から得られる所得は、その長い期間にわたって蓄積された所得が一度に実現されるという特徴も持っています。このような所得を、資本の回転期間が短く、毎年の資本効果が明確に現れる事業から生じる所得と同様に課税するのは、税制上の公平を損なうことになるため、所得税法では山林所得と事業所得を区分し、分離課税方式、5分5乗方式、特別控除の制度など特別な措置が取られています。

合理的な再生計画 に基づ く私財提供非課税措置 の特例

債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例

Q.債務処理計画に基づき法人に対して資産を贈与した場合の課税の特例があると聞きましたが、その概要を教えてください。

A.債務処理計画に基づいて、中小企業者である再生企業の保証人である経営者が、平成25年4月1日から令和7年3月31日までの期間に中小企業者へ一定の事業用資産を贈与する場合、特定の条件を満たすと課税が特例としてみなされます。この特例の条件には以下が含まれます:

1. 経営者が債務処理計画に従って、保証債務の一部を履行していること。

2. 贈与と保証債務の一部の履行後も、経営者が債務処理計画に従って保証債務を持ち続けていること。

3. 贈与を受けた内国法人が、受け取った資産を事業で使用することが債務処理計画で定められていること。

4. 平成31年4月1日以降に行われる贈与に関しては、以下のいずれかを満たすこと:

   a. 内国法人が金融機関から受けた事業資金の条件変更により債務の弁済負担が軽減されていること。

   b. 債務処理計画が平成28年4月1日以降に策定され、かつ特定の支援組織の支援対象となっていないこと、などが含まれます。

上記条件を満たす場合、贈与による課税が特別な扱いを受けることができます。これは中小企業者の再生や支援を目的とした制度であり、経営者が再生企業への支援をしやすくするためのものです。

申告後に求償権の行使ができなくなった場合

Q.私は、長男が主宰するA法人の銀行借入れについて保証をしていました。昨年、銀行より借入金の返済を迫られましたが、A法人には返済資金がなかったため保証人である私の土地を譲渡し、その譲渡代金でA法人の銀行借入金の返済をしました。A法人は営業を続けておりましたので、求償権の行使ができるものとして、本年3月には譲渡所得の申告を済ませましたが、10月になってA法人が経営不振に陥りついに倒産してしまいました。このため、A法人への求償権の行使ができなくなったのですが、申告済の譲渡所得について何か考慮されないでしょうか。

A.求償権の全部または一部を行使できなくなった日から2ヶ月以内に所轄の税務署長に「更正の請求」をすると、行使できない部分の譲渡についてはなかったものとして扱われます。つまり、保証債務の履行のために財産を譲渡した場合で、その履行に伴う求償権を全部または一部行使できなくなった場合、その事実が発生した日の翌日から2ヶ月以内に限り、その事実をもって「更正の請求」を行うことができます。これは、申告後に求償権の行使ができなくなった場合に考慮する特例です。

債務者の資力喪失後の債務保証の場合

Q.長男が経営するAI会社が経営不振で何年も赤字を出しており、資金がなくなった状態になっています。再建を試みるための銀行借入の際、私が保証人となりましたが、会社は結局倒産しました。このため、私が所有する土地を売って借入金の返済に充てました。この土地の売却による所得について、保証債務履行のための資産譲渡の特例税制を利用できますか?

A.保証人が債務の履行のため資産を譲渡した場合、通常は特例税制の対象となる可能性があります。しかし、主債務者が既に資金力を失っている状態で保証が行われた場合、これが実質的には債務の引き受けや贈与と見なされる時には、その特例税制は利用できません。

手形裏書人が割り引いた手形債務を支払うための資産の譲渡

Q.私は、友人が振り出した約束手形を裏書譲渡し、その譲渡代金を友人に貸し付けていましたが、友人が事業に行き詰まり、その手形が不渡りとなってしまいました。私はやむを得ず土地を譲渡し、その代金で手形を買い戻しました。友人は、所在不明の状態にあり手形代金の回収をすることはできません。このような場合、手形の裏書が友人の資金調達のための保証として、譲渡した土地の譲渡所得について、保証債務の履行の場合の特例の適用が受けられるでしょうか。

A.あなたは友人への支援の一環として、その友人が振り出した約束手形を裏書し、譲渡代金を友人に貸し付けました。しかし、それは友人の借金に対する直接の保証とは認められません。その結果、手形の支払いが滞り、代わりに土地を売って手形を買い戻す事態になっても、土地の譲渡から生じた所得について、保証債務の履行による税の特例を適用することはできません。

保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例の対象となる資産

Q.友人Aの債務保証をしていたところ、Aが破産し、債権者から返済請求があったとき、手持ちがなく、土地や建物も使っているため、所有していた株式を売った例で、この株式売却による譲渡所得も「保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例」の対象になりますか?

A.はい、その株式売却による譲渡所得も特例の対象になります。株式は、譲渡所得を生じる資産の一つであり、他の条件をクリアすれば、保証債務を履行するために資産を売った際の特例を適用できます。

預金等で保証債務の履行を行った後に資産を譲渡した場合

Q.私は、友人Aの事業資金の借入れについて債務保証をしていました。しかし、Aが事業失敗で倒産し、借入金の返済ができなくなりました。そのため、債権者から返済を請求され、急遽手持ちの国債を売却して保証債務を履行しました。その後、土地が売れ、その代金を国債購入に充てましたが、この土地の譲渡は保証債務を履行するために資産を譲渡したことになりますか?

A.そのケースでは、保証債務を履行するための資産譲渡とは言えません。所得税法には「保証債務を履行するために資産を譲渡した場合」と規定されており、原則として、資産を売ってその代金で借金返済をするような状況を指します。つまり、資産を譲渡する時点で、保証債務の返済責任が現実的にある必要があります。您の事例では、土地を売った時点で既に手持ちの国債を使って友人Aの債務を返済済みで、保証債務の履行義務はもうありません。したがって、その後の土地売却は保証債務を履行するためとは認められないのです。

連帯保証人間の求償権

Q.私の長男が代表者として関わっていたM建設株式会社が、経営不振で倒産しました。私と長男は連帯保証人となっていたため、私が所有する不動産を売却して借入金の返済を行いましたが、M建設株式会社には残余財産もなく事業再開の見込みもありません。この場合、保証債務の履行のために資産を譲渡した場合の課税の特例の適用を受けることはできますか?

A.あなたは長男に対して求償権を行使することが認められるため、その求償権を行使できる部分に関しては課税の特例の適用がないことになります。解説によると、M建設株式会社は残余財産もなく、事業再開の見込みもないため、M建設株式会社に対する求償権の行使は不可能です。しかし、民法では複数の保証人がいる場合、一人の保証人が全額または自己の負担を超える部分を弁済した際には、他の保証人に対して各々の負担部分について求償権を持つと規定されています。

他人のために農業協同組合等から借り入れた債務の弁済

Q.私は、A社の代表取締役でしたが、3年前A社の運転資金をB農協から借り入れる際に、B農協の要求により私個人名義で借り入れました。これは、A社がB農協の組合員でないため組合員である私名義で借り入れたもので、借入金は全額会社が受け入れ、帳簿及び決算書にもB農協よりの借入金として計上しています。ところが、A社が倒産しましたので、B農協の借入金は、名義人の私が農地を譲渡して返済することになりました。この借入金は、実質上A社の債務ですので保証債務の履行があったものとして取り扱われますか。

A.はい、実質上の債務者であるA社に対する求償権を行使できない場合、保証債務の履行があったものとして扱われます。これは、名義上の借り手であるあなたがその資金を直接運用せず、またその資金から利益を得ていない場合に、実質上の債務者のために債務を保証したものと見なされるためです。ただし、この特別の取り扱いが適用されるには、以下の条件をすべて満たす必要があります:1) 実質上の債務者が農業協同組合等の組合員ではないことにより、組合からの借入れが不可能で、その組合員が自身の資格を利用して組合から資金を借り、それを実質上の債務者に融資した場合のように、債務保証に代わるものとして行われたこと、2) 実質上の債務者が融資を受ける際に資力を喪失していなかったこと、3) 名義上の借り手が借り入れた資金を直接実質上の債務者に融資し、その運用がなかったこと、4) 名義上の借り手が、その融資により実質上の債務者からの利益や金利相当の金銭を受け取っていなかったことです。もし、実質上の債務保証に関して保証料等の利益を受け取っている場合、この特例は適用されず、求償権の行使不可能な額は損失としてその年の雑所得の費用となります。

借入金により保証債務の履行を行った後に資産を譲渡した場合

Q.友人の債務保証をしていたところ、友人が事業に失敗し、借入金の返済ができなくなりました。私は返済のため銀行からお金を借りて、その後自分の土地を売って借りたお金を返しました。このような場合にも、保証債務の履行のために資産を譲渡したことになるのでしょうか?

A.はい、保証債務の履行のために資産を譲渡したとみなされます。このようなケースでは、資産の譲渡が保証債務の履行を行った日からおおむね1年以内に行われた場合、特定の税制上の特例を受けることができます。もし譲渡が1年を超えて行われた場合でも、その譲渡が実質的に保証債務を履行するためだと明確に証明できれば、同様に特例の対象となります。ただし、この際の借入金の利息は、資金調達のための費用として計上されるため、保証債務の履行に含まれません。