「資産税」カテゴリーアーカイブ

信託の取扱い (贈与とみなされる場合④)

Q.私の父は、信託を設定し、父自身が受益者になっていますが、私が残余財産受益者とされています。この場合の信託設定時の課税関係はどうなりますか。

A.あなたが信託法による残余財産受益者として指定されている場合、お父さんからあなたへの信託に関する権利の贈与とみなされます。つまり、信託を設定することによって、お父さんからあなたへ、信託に関わる一定の権利が移転すると見なされ、それによって課税の対象になります。権利の評価方法については特定の基準に基づいて行われます。信託法には受益者を「受益権を有する者」と定義しており、残余財産受益者は信託終了時に残余財産を受け取る権利があるため、実質的に権利を有していると認められ、「受益者等」として扱われます。しかし、信託終了後に残余財産の帰属対象となる者は、信託終了まで特定の権利を有していないため、「受益者等」には該当しません。

信託の取扱いと税法

Q.私の父は、私と私の兄を受益者として信託を設定しました。兄が受益権を放棄する場合、課税関係はどうなりますか?

A.お兄さんが受益権を放棄すると、贈与税の観点から、兄が持っていた信託に関する権利を贈与として受け取ったとみなされます。信託において、一部の受益者がいなくなると、残った受益者が新たな利益を受ける場合、その利益は以前の受益者から贈与として得たものと考えられます。これは、信託の権利が離れた受益者によって分配されるためです。また、受益者が亡くなることによって新たな利益を受ける場合、その受け取りは遺贈とみなされ、相続税の対象になります。

信託の取扱い (贈与とみなされる場合②)

Q.私の祖父は、私の父を受益者として不動産を信託していましたが、この度、受益者を父から私へ変更するとのことです。この場合の課税関係はどうなりますか。

A.受益者の変更時に、父から直接権利を譲り受けた形となるため、あなたがその信託の権利を贈与されたものとみなされます。信託において、正当な代価を支払わずに新たな受益者になる場合、以前の受益者から権利を贈与されたと見なされるからです(民法の一部をなす相続法の条項に基づく)。ただし、もし受益者の変更がそれまでの受益者の死亡が原因である場合は、これを遺贈(遺言による贈与)と見なされ、相続税の対象となる点に注意が必要です。

信託の取扱い(贈与とみなされる場合①)

Q.不動産を信託財産として銀行に信託し、受益者を長男にした場合、贈与税の課税関係はどうなりますか。

A.その信託を行った時点で、あなたからご長男へその信託に関する権利が贈与により取得されたものとみなされます。信託は他人にあなたの財産を管理や処分させるために、その人に財産権を移転することです。財産を信託する際、通常、信託契約でその信託から利益を受ける者(受益者)を指定しますが、その受益者が委託者以外で適正な対価を支払っていない場合、その信託に関する権利(信託の受益権)を贈与によって取得したものと見なされます。

白色事業専従者が限度額以上の給与を受けて取得した不動産

Q.私は飲食店を経営している白色申告者ですが、生計を一にしている板前の長男A(30歳)に事業専従者給与として月額16万円の報酬を払ってきました。この報酬のうち白色事業専従者控除限度額を超える部分は私の所得計算上必要経費に算入されていません。今度、Aはこの報酬を貯めた預金で土地を購入しましたが、購入資金のうち、限度超過額に相当する部分については、私からの贈与とみなされるのでしょうか。

A. Aさんが取得した不動産の資金が限度超過額の専従者給与から来ているとしても、それだけで贈与とは見なされません。生計を一にしている家族が納税者の経営する事業に働いており、納税者が白色申告者である場合、一定額以上の報酬を支払うことがありますが、その超過部分を所得の計算で必要経費にできないだけであり、実際にもらった給与そのものが否定されるわけではありません。従って、Aさんがもらった月額16万円はAさんの所得です。Aさんが家族と生計を共にしている場合でも、Aさんの生活費は自身の収入から支払われると判断されます。今回の不動産購入で使われた資金が、Aさんの収入から日常の生活費や雑費を除いた残額から来ているかどうかを検討する必要があります。

親子間などの金銭貸借

Q.夫と妻、親と子、祖父母と孫などの特殊関係者間の金銭貸借は贈与されたものと取り扱われるのでしょうか。

A.夫と妻、親と子、祖父母と孫などの特殊関係者間での金銭貸借が生じた場合、すべてが贈与として扱われるわけではありません。実際に貸し借りと認められる条件を満たしていれば、贈与税の対象にはなりません。

通常、特殊関係者間のやりとりとして捉えられがちですが、これらが贈与として扱われることはありません。ただし、実際に夫婦や親子、祖父母と孫の間で行われる金銭の貸借において、返済の期日や利率が定められていないような場合、返済の催促がない状態や、将来の返済能力が生じた際に返済する約束など、その実態が贈与に近いものがあります。このような特性から、一般的には贈与とみなされやすいです。

特殊関係者間の金銭貸借が贈与とみなされないためには、返済期限、通常の利息が設定されていることや、銀行振り込みのような返済方法が第三者によって確認できることが重要です。

共稼ぎ夫婦の間における住宅資金の贈与

Q.共稼ぎ夫婦ですが、居住用不動産を取得する際、登記とローンは夫名義で、返済は共稼ぎの収入から行う予定です。この場合、贈与税の課税関係はどのようになりますか?

A.ご夫婦のお話の場合、贈与税は次のようになります。住宅ローンの返済を夫婦の収入で共同で行う場合、返済金額のうち、あなたが負担した分に相当する金額が、ご主人への贈与とみなされます。ただし、これは一般的な夫婦が共に稼いだ収入で返済している場合に限ります。夫婦の一方がローンを使って家や土地を購入し、もう一方がそれを返済する際の負担部分は、本来その返済負担者からローンを契約した人への贈与と考えられます。しかし、両者の収入により返済が行われている場合は、その収入に応じた割合で負担したとみなされます。具体的な金額に属する贈与は、ローン返済の都度、発生するものとして取り扱われます。

本来の納税義務者に代わって相続税及び贈与税の納付があった場合

Q.本来の納税義務者に代わって、他の相続人若しくは贈与者が相続税及び贈与税を納付した場合、贈与があったものとみなされるのでしょうか。

A.基本的に、他の相続人や贈与者が本来の納税義務者の代わりに相続税や贈与税を支払った場合、贈与とみなされ贈与税が課されます。相続税や贈与税は、財産を相続や贈与で受け取った人(納税義務者)が支払うべきものです。ただし、相続税法では、納税義務者が経済的に支払いが困難な場合を考慮して、他の相続人や贈与者が連帯して税金を納める義務を負う規定があります。この規定に基づき支払いが行われた場合でも、求償権(他人が代わりに支払った税金を納税義務者から請求できる権利)を放棄したり、明らかに求償権を行使しないと判断される場合には、贈与として扱われます。

負担付贈与

Q.私は、父から時価1,000万円の住宅の贈与を受けましたが、その代わり父の借金600万円を返済することが条件となっています。この場合でも贈与を受けた財産の価額は1,000万円として申告しなければなりませんか。

A.この場合、受け取った住宅の時価1,000万円から、あなたが返済する条件となっている父の借金600万円を引いた400万円を贈与として申告すれば良いです。このような、何らかの負担を条件に財産をもらうことを「負担付贈与」といい、贈与された財産価額からその負担額を差し引いた額が、実質的に贈与された額とみなされます。なお、この場合、住宅の価額の計算は、相続税で使われる評価額ではなく、実際の取引での価格が基準になります。また、お父さん側では、この住宅を贈与という形であなたに渡したことで、600万円分の借金をあなたが肩代わりすることになるので、本来であればお父さんが支払う必要があった600万円を、住宅をあなたに譲渡したことで補填したことになります。そのため、お父さんはこの600万円を売却収入として考え、それから必要経費を差し引いた後の利益があれば、それに対して所得税の申告を必要とします。

負担付贈与の負担額が第二者の利益に帰する場合

Q.父から時価1,200万円の土地を贈与されましたが、このとき、弟の借金700万円を代わって返済することが条件でした。この場合、贈与税の課税はどのようになりますか。

A.この場合、あなたには500万円(1,200万円 – 700万円)に対して贈与税が課税されます。また、あなたの弟には700万円(負担額)に対して贈与税が課税されます。贈与時に贈与財産から負担額を差し引いた金額が贈与として扱われます。ここで、あなたが弟の借金を返済したため、弟はそれに相当する経済的利益を受け取ったとみなされます。このケースでは、その負担額が弟の利益になるため、弟はその金額を贈与として受け取ったことになります。