「資産税」カテゴリーアーカイブ

同族会社の新株の割当ての失権

Q.同族会社が新株を発行し、株主に新株の割当ての権利を与えた場合、その権利を受けずに失権した場合に贈与税の課税関係は生じますか?

A.同族会社から新株の割当ての権利を与えられたにもかかわらず、その新株を取得しなかった人は、新株を取得した他の株主から見て、ある種の利益を受けたと見なされます。これは、新株を取得した場合と実際に取得しなかった場合の株式評価額の差に基づきます。その結果、利益を受けたものとして贈与税が課される可能性があります。計算には、新株の発行前後の株式総数、取得しなかったことによる評価額の変動、および失権した株主への影響(特に、失権株主が親族である場合に該当する利益の計算)など、複数の要素が考慮されます。

同族会社の募集株式引受権

Q.同族会社の募集株式の引受けの権利を受けた場合に、贈与を受けたものとみなされて、贈与税が課税される場合があると聞きましたが、どのような場合に課税されるのか説明してください。

A.同族会社が新しい株式を発行する際に、その新しい株式の引受権が同族会社の株主の家族などに与えられたとき、家族などがその引受権を株主から贈与されたものとして扱われます。このような状況では、家族などがその新しい株式を取得した場合、原則として贈与税が課税されます。ただし、この引受権が旧株主全員に公平に提供されていない時の税務処理は、以下の3点に大別されます。1) 旧株主と新株を引き受けた者が家族などの関係にあるか、また同族会社であるかに関わらず、その利益が給料や退職金として与えられた場合、所得税が課税されます。2) 上記1)に該当しないが、株主と新株を引き受けた者が家族などの関係にあり、その会社が同族会社である場合、贈与税が課税されます。3) 上記1)と2)に該当しない場合は、一時所得として所得税が課せられます。同じ考え方は、合同会社や合資会社の資本増加にも適用されます。

同族会社に対する私財の提供等

Q.自分が経営している同族会社に、時価3,000万円の土地を2,000万円で譲渡しました。同族会社に資産を低額で譲渡した場合には、株主について贈与税の問題が起こると聞きましたが、それはどういうことですか?

A.株主は、会社が時価よりかなり低い価格で資産を取得したことで、株式の価値が上がったと見なされ、その増価分をあなたからの贈与として得たとみなされます。これは、同族会社の会社が何らかの理由で価値が上がった場合、その価値が増えた部分については、それぞれの場合に、関係する人(財産を提供した人など)から贈与を受けたものとして扱われます。具体的には、会社に無償で財産を提供した場合、時価より明らかに低い価格で財産を会社に譲渡した場合、債務を無償で免除した場合などが該当します。ただし、会社が資力を失った状態で、会社を支援するために無償で資産を提供したり債務を引き受けたりした場合は、その贈与分について課税されない特例もあります。

定期金受取人以外の者が掛金を負担していた定期金

Q.母が死亡し、母が受け取っていた年金の継続受取人になりました。掛金はすべて父が払い込んでおり、年金の給付は年2回で1回120万円、最終給付日は課税時期の5年7か月後で残り11回給付されるなどの条件があります。この場合の課税関係はどうなりますか?

A.この場合、あなたは父親から贈与を受けたと見なされ、定期金を受給する権利(12,533,400円)を取得したことになります。定期金給付契約において、定期金の給付を受ける権利の一部または全部の掛金を、受け取り人以外が支払っていた場合、その部分は贈与と見なされます。あなたのケースでは、あなたが継続受取人として定期金を受け取る権利を相続の際に、掛金を支払った父親から贈与として取得したとみなされます。定期金給付契約の贈与の価値は、解約返戻金額、一時金の金額(該当する場合)、または給付されるべき金額の1年当たりの平均額に残存期間の予定利率による複利年金現価率を掛けた金額のうち、最も高い金額で評価されます。具体的には、給付期間、年平均給付額と予定利率を元に計算され、予定利率による金額(12,533,400円)が解約返戻金の金額(12,500,000円)より多いため、12,533,400円が課税される価値とみなされます。

受取人以外の者が保険料を負担した生命保険金

Q.今年祖父が亡くなり、私はA保険会社から500万円の生命保険金を受け取りました。この保険は祖父が契約したものですが、保険料は祖父が50万円、父が200万円支払っています。祖父の死亡によって取得したものですから、全額相続財産として申告すればよいのでしょうか。

A.受け取った保険金のうち、100万円は祖父からの遺贈によって取得したものとして相続税の課税対象になります。残る400万円は父からの贈与により取得したものとして贈与税の対象です。生命保険金は受け取った人が保険会社から直接得るものなので、本来は相続財産や贈与財産ではありません。しかし、経済的には遺産や贈与と同じ効果があるため、相続税法ではこのような場合、相続(遺贈)もしくは贈与として取り扱われます。具体的には、保険料を受取人以外の人が支払っていた場合、その保険料を支払った人が亡くなった場合は相続財産、亡くなった人以外の場合は贈与財産とみなされます。保険料が両方から支払われていた場合、その割合に応じて相続される金額と贈与される金額が計算されます。したがって、あなたの場合、保険金500万円の中で100万円は祖父の遺贈、残りの400万円は父からの贈与として取り扱われます。

定期金給付契約について契約者の変更があった場合の贈与税

Q.母が全額を支払った定期金の給付契約の契約者を母から私に変更するとき、定期金給付の権利に対して贈与税は課税されますか?

A.契約者をあなたに変更しても直接の贈与税課税はありません。しかし、将来、給付を受ける事由が発生した時には、その権利をお母さんから贈与されたものとして贈与税がかかります。相続税法の規定によれば、定期金を受け取る人が掛金や保険料を支払っていない場合、給付事由が発生した際には、その掛金や保険料を支払った人からの贈与と見なされます。ですので、契約者を変更しても贈与税はかかりませんが、給付を受ける際は贈与税の対象になります。ただし、契約を解約して解約返戻金を受け取った場合は、その返戻金が贈与と見なされて贈与税がかかります。

みなし遺贈の放棄と贈与税

Q.父の死亡により生命保険金1,000万円を受け取ることになりました。この生命保険は、父が生前保険料を負担していたもので、保険金の受取人は私になっていたものです。私は分家 している手前、相続放棄をしておりますが、生命保険金についても受取を放棄し、兄に受け取ってもらいたいと思っていますが、この場合の課税関係はどうなりますか。

A.父からの生命保険金を受け取ることになっている状況で、相続放棄をしていたとしても、生命保険金に関してはまず受取人であるあなたが受け取ることになり、この受け取りは遺贈(遺言により財産を受けること)と考えられ、あなたに対して相続税がかかります。その後、その生命保険金を兄に渡した場合、あなたから兄への贈与と見なされ、贈与税がかかることになります。生命保険金を直接受け取らずに兄に渡したい場合でも、保険会社は指定受取人であるあなたにしか支払わないのが一般的です。したがって、生命保険金を受け取った上で、兄に渡す形になり、それに伴う税金が発生します。

受益者等が存しない信託

Q.まだ生まれていない孫を受益者とする信託を設定しましたが、受益者等が存在しない信託に該当するとして、受託者に法人税が課税されることになりました。将来、その生まれていない孫が出生し、受益者となった場合の課税関係はどうなりますか。

A.お孫さんが生まれて受益者になった際には、お孫さんに対して贈与税がかかります。これは、受益者がいない信託に関して、その信託を始めた時に受益者が存在しなかった場合で、その受益者が将来信託の契約者(設定した人)の親族になった時、その人が受益者となると、その信託によって得られる権利は個人からの贈与とみなされ、贈与税の対象となります。これにより、生まれていない孫を受益者とする場合に限らず、法人税や贈与税がかかることで、相続税のかからない方法として利用することを防ぎ、税金の公平を保っています。ただし、受益者が契約時の委託者の親族でない場合は、受益者がその信託による権利を得ても、所得税や贈与税はかかりません。

受益者等が存しない信託と税金の課税

Q.受益者等が存しない信託を設定した場合に、贈与税が課税されることがあるそうですが、どのような場合ですか。

A.受益者等がまだ指定されていない信託に資産を託した際、将来的に受益者となり得る人が信託設定者の親族などの場合、信託設定時に受託者に対して贈与税または相続税が課税されます。例えば、未来に生まれる子どもが受益者の信託などです。ここで、受託者が親族であるとき、信託が発効する瞬間に、受託者は贈与と見なされ贈与税が課されます。また、受益者等がいない信託の場合、受託者(法人)には設定時に法人税が課されます。この場合、法人税相当額(地方税を含む)が贈与税から差し引かれるため、贈与税は法人税を超える額に対してのみ課税されます。委託者が亡くなって信託が発効する場合は、贈与税ではなく相続税が課されます。法人が受託者であっても、贈与税や相続税が課税され得る点に注意が必要です。

信託の取扱い (贈与とみなされる場合⑤)

Q.私の父は、信託を設定し、父自身が受益者になっていますが、私が帰属権利者となっています。信託が終了した場合の課税関係はどうなりますか。

A.あなたが信託法第182条第1項第2号に規定されている「帰属権利者」である場合、信託が終了すると、その信託の残った財産はあなたがお父さんから贈与により取得したものと見なされます。つまり、信託が終わったときに適切な対価を支払わずに信託の残余財産を受け取る予定の人がいれば、その受け取るべき残余財産は受益者からの贈与として扱われることになります。ただし、あなたが信託法第182条第1項第1号で定められた「残余財産受益者」である場合、その残余財産の贈与の受け取り時には贈与税が課税されるので、信託が終わってその財産があなたに渡る時には追加で税金はかかりません。