「消費税法」カテゴリーアーカイブ

売上割引と仕入割引における消費税の扱い

Q.売上割引や仕入割引の際、これらは消費税の非課税対象になるのでしょうか?

A.売上割引は資産の譲渡等に係る対価の支払いを受けたことを理由に行われ、仕入割引は支払いを受けることを理由に行われます。これらは利息計算に似た方法で算定されるため、会計上は受取割引料または支払割引料として扱われます。しかし、消費税の観点からは、これらの割引は売上や仕入れの対価の返還として扱われるため、売上割引は課税する売上の対価から差し引かれ、仕入割引は課税される仕入れの金額から差し引かれます。

参考:法32、38、基通6-3-4、10-1-15、12-1-4

割賦、延払いの方法による課税仕入れの場合の税額控除

Q.割賦販売または延払い条件付きの販売で課税される仕入れを行った場合、税額控除はどのように行うべきですか?

A.割賦販売や延払い条件付き販売で課税される仕入れの場合でも、仕入れに関する消費税額全額をその仕入れ資産の引き渡しがあった課税期間内に一度に控除することになります。ただし、割賦販売などの契約で手数料が別途明記されている場合、その手数料には消費税が課されないため、課税仕入れにはできません。

参考:法2①十二、30、令10③九、十、基通11-3-2

新株発行費用等の仕入れに係る消費税額の控除

Q.繰延資産とされる新株発行や社債発行をする際の事務委託費等について、その消費税を支払い時に一括して控除できるか。

A.創立費、開業費や開発費などの繰延資産に含まれる課税仕入れに対する消費税額は、繰延資産の償却時期に関係なく、課税仕入れがあった課税期間内で控除対象となります。ですから、新株発行や社債発行に伴う事務委託費等も課税仕入れに該当するので、それが行われた課税期間内で消費税額の控除が可能です。

参考:法 2①八、九、十二 、30①② 一 、基通 11-2-13

海外工事に要する課税仕入れ

Q. 海外での建設工事に要する資産の国内における課税仕入れは、個別対応方式による場合、課税売上げにのみ要する課税仕入れとなるのですか、あるいは、課税・非課税共通用の課税仕入れとなるのでしょうか。

A. 海外での建設工事に使用する資産のための国内での課税仕入れは、消費税法の規定により、その課税仕入れにかかる消費税額の控除が可能です。個別対応方式で仕入控除税額を計算する場合、課税仕入れは、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、非課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税・非課税資産の譲渡等に共通して要するものに区分されます。非課税資産の譲渡等は、国内で行われる資産の譲渡等で、消費税法の特定の項目に該当するものです。したがって、国外で行う資産の譲渡等のための課税仕入れは、課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当します。この場合、課税仕入れに対する消費税額の全額が控除対象になります。

参考:法2①八、九、十二、30①②一、基通11-2-13

貸ビル建設予定地上の建物の撤去費用等

Q.当社が貸ビルを建設するために取得する土地上に建っている借地権者の店舗を撤去し、その間仮店舗を自社の土地に建設して無償で貸し付ける場合、これらにかかる費用は消費税法上、仕入税額控除の対象になりますか?

A.土地上の店舗を撤去するための費用および仮店舗の建設費用は、両方とも課税仕入れに該当します。これらの費用は、土地の取得(非課税取引)とは異なり、建物の撤去や仮店舗の建設という具体的な役務提供の対価として支出されるものだからです。したがって、このような場合、個別対応方式を用いて仕入れ控除税額を計算している場合は、これらの費用に関して仕入税額控除を受けることができます。この控除は、費用がビルの建設およびこれを貸し付けるため、すなわち課税資産の譲渡等に直接必要な課税仕入れとして認められるからです。

参考:法30②、基通11-2-12

休業補償金の消費税取扱い

Q.貸ビルの建替えのためにテナントに一時退去を求め、休業補償金を支払う場合、この補償金は消費税の仕入税額控除の対象になりますか?

A.消費税は、国内の事業者が資産の譲渡、貸付け、またはサービスの提供で得た対価に対して課税されます。休業補償金や収益補償金、営業補償金などは資産の譲渡やサービスの提供の対価とは認められないため、これらは消費税の非課税対象となります。そのため、これらの補償金に対して消費税の仕入税額控除を受けることはできません。

参考:法 2(1)八、十二、令 2(2)、基通 5-2-10

グリーン・エネルギー・マークの使用料に関する消費税の扱い

Q.製造小売業を営む当社は、「グリーン・エネルギー・マーク」を製品に添付することにしました。このマークの使用料は消費税の仕入税額控除の対象となりますか?

A.「グリーン・エネルギー・マーク」の使用許諾契約に基づいて支払う使用料は、製品の製造に必要な電力を再生可能エネルギーから得たことを示すためのもので、広告宣伝効果を期待して支払うものです。マークの使用料は使用量に応じて設定されており、対価性があるため、仕入税額控除の対象となります。

「グリーン・エネルギー・マーク」とは、製品の製造に再生可能エネルギー由来の電力を使用していることを示すマークで、2008年5月に制定されました。

マークは、風力、太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電からの電力を使用していることを製品に添付して表現します。

マークの使用許諾は、マークの商標権を持つ財団法人日本エネルギー経済研究所との契約により、特定の企業への使用を許可します。

利子等を明示した場合のリース資産の仕入税額控除

Q.所有権移転外ファイナンス・リース取引において、利子等が明示されており、据付工事費及び運賃等を含むリース資産の取得費用について、消費税額はどのように計算するのか。

A.個別対応方式を採用している場合、リース契約で利子等が明示されていると、リース料は課税取引とされる資産の譲渡対価と非課税取引とされる利子等の対価に区分されます。この場合の仕入税額控除計算では、課税・非課税売上げに共通して要するものを区分して算出します。据付工事費及び運賃等を含むリース資産の取得費用は、課税取引に対する費用として扱われ、課税仕入れに係る消費税額を計算する基礎となります。これにより、仕入税額控除額を①課税資産の譲渡等にのみ要するものとして計算することになります。

参考:法30② 一

土地付建物の仲介手数料

Q.土地と建物をセットで1億円で売却した場合、土地の売却価格が8,000万円、建物が2,000万円の時、仲介手数料に関して消費税の仕入控除を個別対応方式で計算することは可能ですか?

A.はい、可能です。個別対応方式では、課税売上と非課税売上に直接関わる仕入れ、または課税売上と非課税売上の両方に関わる仕入れを明確に区分する必要があります。土地付建物の仲介手数料は原則として、課税売上と非課税売上の両方に関わるものと考えられます。しかし、土地売却の8,000万円と建物売却の2,000万円を合理的に分けている場合、仲介手数料を課税売上のみ、または非課税売上のみに要するものとして分けることができます。そして、このように区分した後の仲介手数料については、消費税法の規定に従って仕入控除を受けることができます。

参考:法30②一、基通11-2-19

株式の売買に伴う課税仕入れの取扱い

Q. 当社が行っている財務テクニックとしての株式の売買において、委託売却手数料、投資顧問料、保管料等の支払いに関して、個別対応方式で仕入税額控除を計算する場合、これらの費用は非課税資産の譲渡等の際だけに発生する課税仕入れに関する支払いとして仕入税額控除の対象にはならないか。

A. はい、それらの支払いはすべて、非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに関する支払い対価となります。例えば、株式を売却する際の委託売却手数料は、株式の譲渡に伴う費用であり、仕入税額控除の対象とはなりません。また、株式購入時の委託売却手数料も、売却時に要する支払いと認識され、非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに関する支払い対価に該当します。投資顧問料も、専門的な助言を受けるための支払いであり、これも同様に非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに関する支払い対価となります。さらに、株式の保管料も、将来的な売却を目的とした支出であり、非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに関する支払い対価です。

参考:法30②