「消費税法」カテゴリーアーカイブ

高額特定資産を購入した場合の簡易課税制度の適用制限

Q.課税事業者や資本金1,000万円以上の新設法人が高額特定資産を購入した場合、簡易課税制度の適用制限はどのようなものですか?

A.課税事業者が高額特定資産を購入した際、または自己建設高額特定資産の建設に1,000万円以上を要した場合、簡易課税制度の選択届出ができない期間が発生します。具体的には、該当する高額特定資産を購入した日または自己建設高額特定資産の建設が完了した日から3年間、簡易課税制度の選択ができません。また、この制限は該当資産を処分した後も続きます。

高額特定資産:課税仕入れの対価が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産。

自己建設高額特定資産:自ら建設した、課税仕入れの対価が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産。

参考:法12の 4、 37③ 三、令25の 5、 基通1-5-22の 2

調整対象固定資産を購入した場合の簡易課税制度の適用制限

Q.課税事業者や資本金1,000万円以上の新設法人が調整対象固定資産を購入した場合、簡易課税制度の適用に制限はありますか?

A.はい、制限があります。課税事業者を新たに選択した場合、課税事業者としての活動を始めてから2年間は、調整対象固定資産の課税仕入れがあった場合、その仕入れを行った課税期間において一般課税で申告している限り、その仕入れを行った日が属する課税期間の開始日から3年を経過する日が属する課税期間の最初の日が来るまでは、簡易課税制度の選択をすることができません。また、資本金1,000万円以上の法人が基準期間がない事業年度中に調整対象固定資産の課税仕入れを行い、その仕入れを行った課税期間に一般課税で申告する場合でも、仕入れを行った課税期間の開始日から3年を経過する日が属する課税期間までは、免税事業者となることや簡易課税制度の選択をすることはできません。ただし、事業開始日や新設法人の設立日を含む課税期間から簡易課税制度を選択する場合、その課税期間の末日までに選択届出書を提出する必要があります。

参考:法2十六、37、令5、56①②

消費税法第37条の2における災害等の範囲

Q.消費税法第37条の2の「災害その他やむを得ない理由」にはどのようなものが該当しますか。

A.「災害その他やむを得ない理由」とは、以下に示す例が該当します。

1. 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりなどの自然現象による災害

2. 火災、火薬類の爆発、ガス爆発などの人為的に起こった異常な災害

3. 上記1や2に記された災害に準じる、自らの過失でない不可抗力の事態

参考:法37の2、基通13-1-7

災害等があった場合の簡易課税制度の届出に関する特例

Q.災害等があった場合の中小企業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の届出に関する特例の概要を教えてください。

A.災害やその他のやむを得ない理由で被害を受けた事業者が、簡易課税制度の適用を変更する必要がある場合、税務署長の承認を受けることで、災害が起きた課税期間から簡易課税制度を選択し直したり、やめたりできる制度があります。通常、簡易課税制度の変更には前もっての届出が必要ですが、災害による特別な事情がある場合は、承認を受けた時点からその適用の変更が可能です。この特例を利用したい事業者は、災害等が終わった日から2ヶ月以内に特例承認申請書を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。

参考:法37の2

簡易課税制度における事業区分未実施時の取扱い

Q.簡易課税制度で、第一種事業から第六種事業までの区分を行っていない場合の取扱いについて教えてください。

A.簡易課税制度では、第一種事業から第六種事業までを区分していない場合、その課税売上全体を最も低いみなし仕入率を適用する事業の売上として扱います。例えば、第一種と第二種事業の売上が区分できていなければ、全てを第二種事業の売上として扱います。同様に、第一種から第三種まで、あるいは第一種から第四種まで区分できていない場合は、それぞれ全てを第三種、第四種事業の売上とします。第五種事業の売上とその他の売上が区分されていない場合も、全て第五種事業の売上と扱います。この取扱いの例外として、例えば第一種と第二種事業の合計売上が全体の75%以上で区分できていない場合、その売上を全体の75%以上とみなして特例を適用できます。

参考:法37、令57④

簡易課税制度における事業の区分方法

Q.簡易課税制度において、複数の異なる事業を営んでいる場合に、課税売上高を事業の種類ごとにどのように区分するのですか。

A.簡易課税制度では、第一種事業から第六種事業まで複数の事業を営む場合、それぞれの事業に応じたみなし仕入率を適用するため、課税売上高を事業ごとに区分する必要があります。この区分は以下の方法で行うことができます:

1. 帳簿に事業の種類を明記する。帳簿を事業ごとに分ける必要はありません。

2. 納品書、請求書、売上伝票の控えなどに事業の種類を記載する。記号等で事業の種類が判明する場合でも良いです。

3. レジペーパーに販売商品の品番等が印字されている場合、その印字を基に区分する。

4. ひとつの事業場で一種類の事業のみを行っている場合は、事業場ごとに区分することもできます。

また、2種類の事業を行っている場合に、一方の事業の課税売上高が明確に区分されている場合、残りの売上高は自動的にもう一方の事業のものとして区分できます。

参考:法37、令57②③、基通13-3-1、13-3-2

簡易課税制度におけるみなし仕入率の適用について

Q.3種以上の事業に関する課税売上がある場合、簡易課税制度におけるみなし仕入率の適用関係はどうなりますか?

A.簡易課税制度では、事業の種類に関係なく特定の1種の事業が全体の75%以上の場合、その事業のみなし仕入率を全体に適用できます。また、特定の2種類の事業が全体の75%以上の場合は、他の事業にはその2つの中で低い方のみなし仕入率を適用できます。例えば、第二種事業の課税売上が全体の75%以上の場合、全体に第二種事業のみなし仕入率を適用できます。加えて、第一種事業と第二種事業の課税売上の合計が75%を超える場合、第一種事業にはそのみなし仕入率を、それ以外には第二種事業のみなし仕入率を適用することが可能です。

参考:法37、令57③、基通13-4-2

多角的経営と消費税の簡易課税制度

Q.当社が多角的経営を行っており、全ての課税売上げがある場合において、簡易課税制度での仕入控除税額の特例について教えてください。

A.簡易課税制度では、複数の事業を営んでいる場合、各事業区分ごとの売上げに関する消費税額を基に仕入控除税額を計算します。ただし、特定の2種類の事業に関する課税売上高が全体の75%以上を占める場合は、その2種類の事業以外の課税売上に関しては、2つのうち低い方のみなし仕入率を適用することが可能です。例えば、貴社が第一種事業と第三種事業の売上が全体の75%以上を占める場合、第一種事業には90%のみなし仕入率を、残りの部分には第三種事業の70%のみなし仕入率を適用できます。この計算をするためには、事業の種類ごとに課税売上高を明確に分けておく必要があります。

参考:法37、令57②、③二

簡易課税制度における複数事業の取り扱い

Q.当社が主に製造業を営んでいるが、少量の製造業以外の収入がある場合、消費税の簡易課税制度では、全ての取引を事業の種類ごとに分類し、それぞれのみなし仕入率を適用する必要があるのでしょうか?

A.簡易課税制度では、複数の事業を行っている場合、原則として、各事業ごとに事業の種別に応じたみなし仕入率を適用して消費税額を計算します。しかし、ある1種類の事業に関する課税売上高が全体の75%以上を占める場合には、全ての課税売上にその事業のみなし仕入率を適用できる特例があります。例えば、製造業からの課税売上高が全体の75%以上の場合は、製造業のみなし仕入率(70%)を全ての課税売上に適用できます。ただし、この特例の適用は任意であり、必要に応じて事業ごとに異なるみなし仕入率を適用することも可能です。重要なのは、課税売上高を事業種別に区分記録しておくことです。

参考:法37、令57②③一、基通13-4-1

事業用固定資産の売却収入の事業区分

Q.当社は卸売業を営んでいて、事業で使用していた固定資産を譲渡しました。この固定資産の譲渡は簡易課税制度において、第一種事業に該当すると考えてよいでしょうか。

A.消費税の簡易課税制度における第一種事業とは、購入した商品をその性質や形状を変えずに他の事業者に販売する事業のことです。質問の事業用固定資産は商品ではないため、その性質や形状を変えずに譲渡しても、第一種事業には該当せず、第四種事業に該当します。ただし、貴社が第一種事業に係る課税売上高が全体の75%以上である課税期間の場合、全体に対して第一種事業のみなし仕入率を適用することができます。

参考:法37、令57③⑤⑥、基通13-2-9