「法人税」カテゴリーアーカイブ

特別償却準備金の積立不足額の積立順序(初年度特別償却の場合)

Q.中小企業者等が機械等を取得した場合の初年度特別償却について、前事業年度の特別償却準備金の積立不足額の繰り越しが150万円あり、当事業年度の特別償却限度額が300万円という場合に、400万円の積立てを行いますと、この400万円はどの事業年度のものから積み立てたものとして取り扱われますか。申告書の記載方法も説明してください。

A.特別償却準備金は、それぞれの特別償却対象資産ごとに積立てるもので、初年度特別償却は、その資産に対して1回だけ行われる措置です。前事業年度の不足分150万円と当事業年度の限度額300万円は、異なる資産に関するものであるため、400万円の積立てはどちらの年度のものとみなすか、企業の計算によって決められます。不足額を少なくするためには、まず前年度の150万円の不足分に対して積立て、残りの250万円を当年度の限度額300万円の一部として積み立てるのが良いでしょう。これにより、当年度の限度額のうち50万円が次年度への繰り越し不足分となります。申告書には、特定の形式でこれらの金額を記載します。

特別償却準備金の積立不足額の積立順序 (割増償却の場合)

Q.当社は倉庫用建物等の割増償却を準備金方式で計上していますが、その特別償却準備金について前事業年度の積立不足額の繰越しが150万円あります。当事業年度の特別償却限度額は200万円ですが、300万円の積立てを行いました。この積立額300万円は、どの事業年度のものから積み立てたものとして取り扱われますか。申告書の記載方法も説明してください。

A.当事業年度の積立額300万円は、まず当事業年度の特別償却限度額200万円に達するまで積立てたもの、そして前事業年度の積立不足額150万円のうち100万円を次に積立てたものとして扱われます。割増償却による特別償却準備金に関して、当事業年度の特別償却限度額と前事業年度の繰越した特別償却準備金の積立不足額がある場合、その積立は先に当事業年度の特別償却限度額に達するまでの金額、次に前事業年度からの繰り越した積立不足額を積立てたものと見做されます。前事業年度の積立不足額150万円のうち当事業年度に積立ができなかった50万円は、その事業年度で終了となります。割増償却には、特定地域の工業用機械の特別償却、事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械の割増償却、輸出事業用資産の割増償却、特定都市再生建築物の割増償却、倉庫用建物等の割増償却などが含まれます。申告書の記載には、別表十六(九)を使用します。

特別償却準備金の積立額と戻入額の差額処理

Q.特別償却準備金を剰余金の処分により積み立てる方法をとっています。当事業年度の積立限度額は150万円、要取崩額は40万円です。差額110万円の積立てができますが、50万円だけ積み立て、残りの60万円は積立不足額として1年間繰越しの規定の適用を受けようと思います。株主資本等変動計算書での記載方法と、申告書を作成する際の注意事項を教えてください。

A.当事業年度の特別償却準備金の積立限度額150万円のうち、60万円を積立不足額として、1年間繰越しの規定の適用を受けたい場合、当事業年度の積立額50万円は、150万円の積立限度額のなかの90万円の積立てと、前年度から繰り越した特別償却準備金40万円の取崩しの差額である必要があります。これを株主資本等変動計算書で明確にしなければなりません。もし、積立てとして50万円の記載のみがなされた場合、積立限度額150万円のうち50万円のみが積立てられ、差額100万円が積立不足額として翌期へ繰り越されます。また、要取崩額40万円は申告時に益金額に算入する必要があります。株主資本等変動計算書に90万円の積立てと40万円の取崩しの両方の記載がなくても、50万円の積立額の記載で、申告書別表十六(九)に90万円の積立てと40万円の普通益算入額を記載することで、税務上は90万円の積立てと40万円の戻入れがあったとして扱われます。租税特別措置法上の準備金を株主資本等変動計算書で積立てまたは取り崩す際の記載方法および申告調整方法については、詳細な規定を参照してください。

特別償却対象資産に取得後の事業年度で値引きがあった場合の特別償却額の修正

Q.特別償却の対象となっている資産について、取得後の事業年度に値引きを受けた場合、取得年度に損金に算入した特別償却額の修正は必要ですか。また、特別償却準備金として積み立てている場合はどうですか。

A.特別償却対象の資産を取得した後、事業年度内で値引き(値引き、キャッシュバック、割引など)を受けた場合、取得した事業年度に損金として計上した特別償却額を値引きに応じて修正する直接的な規定はありません。これは、特定の算式に従って自動的に帳簿上の価額が調整されるからです。同様に、特別償却準備金を作成した場合も、取得した事業年度に積み立てた特別償却準備金を修正する必要があるという規定はありません。

この内容は、資産の取得後に価格の値引きが生じた場合、帳簿上の価値を減少させることができるという規則に基づいています。ただし、値引きがあった事業年度の直前の事業年度から繰り越された償却不足額がある場合は、その不足額を特別償却限度額に基づいて修正することになります。特別償却準備金を用いている場合の不足額についても同じ処理が適用されます。

例えば、中小企業が機械を取得し、その後値引きを受けた場合の処理は次のとおりです。500万円で機械を購入し、150万円の特別償却限度額(購入価格の30%)のうち50万円を特別償却し、残りの100万円を翌事業年度への償却不足額として繰り越した場合、購入価格が50万円値引きされたことにより、取得価格が450万円に調整され、新たな特別償却限度額は135万円(450万円の30%)になります。この計算により、償却不足額100万円が85万円(135万円から特別償却した50万円を引いた額)に減額修正されることになります。

特別償却準備金の取崩し方法

Q. 特別償却準備金は、これを計上する基礎となった資産を廃棄して廃棄損を計上したとき取り崩す必要がありますか。

A. 特別償却を行う際の経理処理方法には、資産の帳簿価額から直接減額する「直接簿価減額方式」と、特別償却準備金として積み立てる「準備金方式」の2つがあります。ただし、税法では特別償却の直接簿価減額方式を認めていますが、会社法や企業会計基準に照らし合わせると、この方法は相当の範囲を超える償却であり、適切ではありません。一方で、税法は特別償却準備金を損金として積み立てる方法も認めており、これは剰余金の処分(繰越利益剰余金からの振替え)により行うべきです。特別償却を行った場合、直接簿価減額方式では資産の帳簿価額が低くなり、その資産を廃棄する際の廃棄損が少なくなる効果があります。準備金方式では、特別償却準備金の取り崩しは特定の年数を基準に均等に行いますが、特別償却対象資産をもはや保有していない場合には、特別償却準備金を取り崩す必要があります。また、資産を廃棄した際には、廃棄損と特別償却準備金取り崩し益の計上が必要になります。合併や現物分配によって特別償却対象資産が移転された場合、合併直前または現物分配に係る時点での特別償却準備金を取り崩すことがルールとされています。

割増償却の適用を受けなかった資産の事後の割増償却の適用

Q.令和3年8月に建築して事業の用に供している倉庫用建物について、租税特別措置法第48条の割増償却の規定の適用が受けられることに最近気づきました。令和5年3月期までの2事業年度において当該割増償却の規定の適用を受けていなくても、今後当該規定の適用を受けることができますか。また、直前事業年度(令和5年3月期)における割増償却限度相当額は、当事業年度(令和6年3月期)において特別償却不足額の繰越しとして認められますか。

A.特定の条件を満たした青色申告の法人であれば、昭和49年4月1日から令和6年3月31日の間に一定区域内で新設もしくは取得した倉庫用建物について、供用日から5年以内の期間において割増償却を適用することができます。この割増償却とは、通常の償却限度額に加え、特にこの期間内において許される特別償却限度額(通常償却限度額の8%相当)を含んだ計算方法です。令和4年3月31日以前に取得した資産については、この割増率は10%とされていました。もし割増償却の適用をこれまで受けていなかった場合でも、5年間の適用期限内であれば、その残り期間について割増償却を適用することが可能ですが、過去に適用していなかった分を後から繰り越して適用することはできません。特別償却不足額の繰越しに関しては、特別償却不足が発生した事業年度から直前事業年度までの確定申告書に、その繰越しに関する情報を記載した明細書の添付が必要とされます。貴社の場合、直前事業年度までにこの添付がされていないため、令和6年3月期の割増償却は、その年度の分だけが適用可能です。

中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却の計算方法

Q.中小企業者が機械等を購入し事業用に供した場合の特別償却の計算方法を教えてください。また、同じ機械が他の特別償却の対象となる場合、複数の特別償却を適用できるか教えてください。

A.中小企業者が平成10年6月1日から令和7年3月31日までの間に1台あるいは1基以上、取得価額が160万円以上の新しい機械や装置等を購入し、製造業や建設業など国内で行う特定の事業で使用した場合、その事業の用に供した事業年度の償却限度額は普通償却限度額と特別償却限度額(取得価額の30%相当額)を合わせた金額になります。例えば、令和5年4月に購入し事業用に供した価額1,000万円の機械(耐用年数8年)の場合、令和6年3月期の償却限度額は普通償却と特別償却を合わせて5,500,000円となります。翌事業年度における償却限度額は、直接簿価減額方式を選択した場合と準備金方式を選択した場合で異なり、後者の方法ではより多くの償却限度額が認められますが、特別償却準備金を取り崩して益金に算入する必要があります。ただし、同一の事業年度内で複数の特別償却規定の適用を受ける資産の場合、一つの規定のみの適用が認められ、複数の特別償却を同一資産に適用することはできません。

商標権の更新登録のための費用

Q.商標権の存続期間の更新登録のための費用は、資本的支出として無形減価償却資産に計上しなければなりませんか。

A.商標権の存続期間は、登録日から10年間ですが、保持者が更新登録を申請することで期間を延長できます。この更新登録費用は、新しい権利を獲得するためのものではなく既存の権利を維持するためのものなので、新しい商標権の取得費用には当たりませんが、既に持っている商標権に対する資本的支出にはなるのか、という問題があります。資本的支出は、固定資産の使用可能期間を延ばすため、またはその価値を増加させるための支出です。商標権の更新登録費用は権利を維持する目的の費用で価値を増やすものではありませんが、更新登録を行わないと商標権を失うため、使用可能期間を延長させる費用とみなせます。よって、これらの費用は無形の減価償却資産として計上する必要があります。

ソフトウエアに係る資本的支出と修繕費の区分

Q.ソフトウエアのプログラム修正を行った場合、資本的支出と修繕費の区分はどのように判断しますか?研究開発費等の会計基準による処理と同じですか?

A.ソフトウエアのプログラムを修正する際、その修正がプログラムの機能上の障害を取り除いたり、現状の機能を維持する目的であった場合、かかった費用は修繕費として認められます。これには、バグの修正や、ウイルスからの保護など、プログラムの効用を維持するための費用が含まれ、損金として計上することができます。一方で、新しい機能を追加したり、既存の機能を向上させたりする修正は、資本的支出とみなされます。さらに、ソフトウエアの仕様を大きく変更するための費用も、特定の例外を除いて、資本的支出に該当します。ただし、自社で使用するソフトウエアに関わる支出が、将来の収益増加や費用削減に寄与しないことが明らかな研究開発費であれば、これは資本的支出とはみなされません。研究開発費等の会計基準によると、ソフトウエア機能の重大な改良にかかる費用は原則的に資産として計上しますが、大幅なバージョンアップに該当する場合は研究開発費として処理します。税務上、修繕費として扱える費用は会計基準でも修繕費になりますが、重大な改良や大幅なバージョンアップに関わる費用は、会計基準では研究開発費として処理されることになり、これにより税務上の申告調整が必要となります。

建物内装部分の修理費用の法人税区分

Q.建物の内装部分の修理で180万円支出した場合、建物の取得価額が2,000万円、1,000万円、500万円のそれぞれにおいて、法人税基本通達7-8-4の「60万円基準」及び「10%基準」をどのように適用するか、さらに法人税基本通達7-8-5の「7・3区分基準」や「10%基準」を適用した場合の分類を説明してください。

A.法人税基本通達7-8-4の形式基準は、支出が資本的支出か修繕費かを判断できない場合に用います。質問のケースでは、まず「60万円基準」では、180万円は60万円未満でないため当てはまりません。次に「10%基準」では、取得価額が2,000万円の場合、180万円は10%の200万円以下なので修繕費とすることができますが、1,000万円や500万円の場合は10%を超えるため、この段階では修繕費とはできません。このような場合、法人税基本通達7-8-5の「7・3区分基準」と「10%基準」を適用します。「7・3区分基準」では、180万円の30%である54万円が修繕費の範囲となり、「10%基準」では、取得価額1,000万円の場合は10%である100万円、500万円の場合は50万円が修繕費の範囲です。修繕費として認められるのは、これらの中で少ない金額となります。したがって、1,000万円の取得価額の場合54万円、500万円の場合は50万円が修繕費となります。もし継続適用していない場合は、法人税法施行令第132条により、実質的な判断が必要になります。結果、この事例では取得価額に応じた資本的支出と修繕費の区分が以下の通りになります:2,000万円の場合は全額が資本的支出、1,000万円の場合は126万円が資本的支出で54万円が修繕費、500万円の場合は130万円が資本的支出で50万円が修繕費です。