「法人税」カテゴリーアーカイブ

評価損益の対象にならない資産

Q. 法人について再生計画認可の決定等特定の事実が生じた場合、法令で定める評定を行うことにより算定された評価益は益金算入、評価損は損金算入されますが、当該評価損益の対象とならない資産には、どのようなものがありますか。現金、売掛金、貸付金その他の債権はいかがでしょうか。

A. 質問された評価損益の対象にならない資産には、以下の5つがあります。①特定の期間内に特定の税法上の規定や税制優遇を受けた減価償却資産、②短期売買商品及び暗号資産、③売買目的有価証券、④償還有価証券、⑤少額の減価償却資産または一括償却資産として法の定める特例の適用を受けた減価償却資産です。また、評価損の対象となる資産には制限がないため、預金や貯金、貸付金、売掛金その他の債権も評価損の対象资产となります。ただし、法人の持つ金銭債権は、特定の法的整理が発生した場合を除き、評価換えの対象にはなりません。金銭債権の帳簿価額を減額した場合、その減額分は法人税法により貸倒引当金の額として扱われます。預金及び貯金は金銭債権ではないので、これらは評価換えの対象となります。

資産の評価益の任意計上について

Q.業績不振の建設会社です。入札に当たって納税証明が必要なため、固定資産として保有している土地の時価と帳簿価額の差額の一部について評価益を計上し、わずかでも法人税を納めたいのですが、認められるでしょうか。

A.資産に関する会計規則は、特別な法律がない限り、資産を取得価額で帳簿に記載することを原則としています。つまり、評価益を自由に計上することを禁じています。税法も同様で、資産の時価による帳簿価額の増額は、益金には算入されません。従って、土地の評価益を計上しても、法人税の納税額を増やすことはできません。ただし、特定の条件下での評価換えによる増額分―例えば、会社の再生計画の認可があった場合や保険会社が特定の法律に基づいて株式の評価換えを行った場合など―は益金の算入が認められています。また、特定の債務処理計画がある場合に限り、資産評定による評価益の算入が許可されることもあります。

別表十六 (六 )に記載を要する一時償却が認められる繰延資産の償却額

Q.当事業年度中に有償による新株の発行を行い、株式交付費を支出しました。これは全額損金に計上するつもりです。この場合、申告書別表十六(六)の「Ⅱ 一時償却が認められる繰延資産の償却額の計算に関する明細書」に記載する必要がありますか?

A.はい、記載する必要があります。税法上、株式交付費は一時償却が可能な繰延資産の一つと認められており、支出した事業年度に全額を経費として処理できます。しかし、そのような繰延資産に対して一時償却した金額がある場合、確定申告書に「繰延資産の償却額の計算に関する明細書」として別表十六(六)を添付する必要があります。株式交付費のように一時償却が認められている繰延資産で、その範囲が明確な場合には、その一部を繰延資産として計上したか、または前期から繰り越した繰延資産を一部または全部償却した場合にも、この明細書の記載が必要です。

分割払いの繰延資産の税務での処理方法(2)

Q.商店街の共同のアーケードの負担金30万円を、6年間に毎年5万円ずつ分割で支払うことになった場合、その償却方法はどのようになるのでしょうか?また、アーケードの分割負担金をその工事着工前から商店街振興組合で積み立てていく場合と、商店街振興組合が借入金でアーケードの工事を着工し、その後に負担金を徴収する場合とでは、処理方法が異なりますか?

A.商店街の共同アーケードを設置するための負担金は、商店街及び一般公衆が利用する共同施設の設置費用として、税務上は繰延資産と考えられます。このような資産の償却期間は通常5年間と規定されています。ただし、アーケードの実際の耐用年数が5年より短い場合には、その耐用年数が償却期間となります。しかし、アーケードの耐用年数は15年であるため、これには該当しません。したがって、質問のケースでは、分割で支払われる負担金の償却期間は法律で規定された5年よりも実際の支払い期間6年の方が長くなります。

また、分割で支払う負担金に関しては、その徴収期間が償却期間以上であること、支払額が均等であることが要求されます。問題となるのは、負担金の徴収がアーケードの工事開始後に行われるかどうかです。アーケードの設置費用を工事開始前から積み立てる場合は、この要件を満たさず、工事着工後に負担金を分割で徴収する場合は要件を満たします。その結果、工事開始前に積み立てるケースでは、毎年の支出を前払費用として扱い、工事開始後は5年間で均等に償却します。一方、工事着工後に負担金を徴収するケースでは、支出した費用をその年の損金として計上できます。

分割払いの繰延資産の税務での処理方法 (I)

Q. 負担金の支払いを5年分割で行う場合、分割払いした負担金が繰延資産として償却を開始できるタイミングはいつですか?また、会館完成後に負担金の分割未払額が残っている場合、その未払額の繰延資産としての償却はどのようになりますか?

A. まず、分割払いした負担金についてですが、企業が同業団体などに会館の取得や改良のための費用を分担する場合、まずその支払った負担金は前払費用とします。そして、税法上、繰延資産として扱い償却を開始できるのは、団地組合等がその会館の建築工事を開始した時点からです。つまり、分割で前払いされた負担金は建築着工時から繰延資産として償却を始めることが可能です。

会館完成後に分割未払額が残っている場合、この未払額も繰延資産とみなされ、支払われるたびに繰延資産として計上して償却を進めます。5年間の分割払いの場合、たとえ総額が確定していても、一括で償却することはできず、各分割支払の都度、繰延資産として扱います。例えば、総額100万円を5年かけて年20万円ずつ支払い、償却期間が120ヶ月(10年)であれば、償却限度額は年度ごとに増え、12年目に全額償却が完了します。

また、20万円未満の少額繰延資産は即時損金処理が可能ですが、分割払いの場合は全期間の支出金額合計が20万円未満かどうかで判断するため、1回の分割払いが20万円未満でも即時損金処理はできません。さらに、公共または共同施設の設置・改良に関わる負担金を支出した場合、一定の条件を満たせばその年の損金に算入できますが、5年間の分割期間は通常の繰延資産償却期間未満と考えられますので条件には該当しません。

共同的施設の設置のために支出する負担金の税務での処理方法

Q.当社が工業団地の組合の会館建設のために支出する負担金の処理方法について教えてください。

A.当社が支出した負担金は、共同的施設の設置のためのものであり、その効果が1年以上にわたることから、税務上繰延資産として扱われます。具体的には、団地組合や商店街などに属する法人が共同で施設を建設や改良するのに必要な費用を負担する場合にこれに該当します。会館の建設においても、団地組合の事務所として使用される部分を含め、共同の用途に供されるため、これが適用されます。しかし、共同的施設の一部が団地組合の主な用途以外で使用される場合、その部分に関する負担金は寄附金として扱われます。

繰延資産の償却期間は以下のように定められています。第一に、施設が共同の用途に供される場合、施設の耐用年数に応じた年数が償却期間となりますが、団地組合の主要な用途に供される建設費用については、償却期間が10年を超える場合でも、暫定的に10年とされます。第二に、共同の利用に加えて一般公衆の利用にも供される施設の場合、5年が償却期間とされますが、耐用年数が5年未満の場合はその耐用年数が償却期間となります。ただし、一般公衆のための簡易な施設に充てられる負担金は、繰延資産とせず当該事業年度の損金に算入できます。当社の場合、会館の共同の用途に供される部分の負担金の償却期間は会館の耐用年数に応じ、組合の本来の用途に供される部分の負担金の償却期間は10年です。

JR会社に施設負担金を支出した場合の処理

Q. JR会社の某駅の裏側にある当社工場への通勤時の臨時改札口を設置してもらうため、その施設負担金をJR会社に支出しました。この支出金は、税法上どのように取り扱われますか。

A. 会社が公共的な施設の設置や改良費用として出費する場合、その費用は税法上繰延資産と分類されます。したがって、質問の内容にあるJR会社への施設負担金もこの扱いになります。この繰延資産の償却は、支出が効果を発揮する期間にわたって均等に行われ、その期間が各事業年度の償却限度額となります。公共的施設に関する費用の具体的な償却期間は、施設がその負担をした者専用の場合は施設の耐用年数に、それ以外では施設の耐用年数に相当する期間になります。質問にある臨時改札口が会社の従業員専用であれば前者に、一般公開されている場合は後者の償却期間に従います。

公共的施設の用途変更があった場合における償却期間の変更の可否

Q. 当社の工場への通路に架設している橋は、当初は当社だけが使用する目的で建てられ、その耐用年数に応じた年数で費用を償却してきました。しかし、最近になってその橋の近くに一般の人も利用できる公道が作られました。この場合、橋の償却期間を耐用年数に見合った新しい年数に変更することは可能ですか?

A. 減価償却資産は、その用途が変わった場合、変更後の耐用年数に基づいて償却限度額を新たに計算できるとされています。専用利用から一般利用に変わった場合も、事業年度の初めから新しい耐用年数に基づいて計算が可能です。従って、貴社の橋が一般の人も利用できるようになったことで、専用ではなくなったその年度の開始日から、償却期間を新しい耐用年数に見合ったものに変更し、そのための費用の償却限度額を計算することができます。

市への道路用地の寄附とその舗装のための費用の負担金

Q.会社の建物を建て替えるための建築許可を市に申請した際、公道の拡幅用地として前面道路に接する土地の一部を市に寄附し、その舗装費用も負担するよう求められました。この寄附した土地の帳簿価額と舗装費用を全額損金に算入できますか?

A.国や地方公共団体への寄附金は、損金算入の上限にかかわらず、全額損金の額に算入できます。しかし、その寄附によって建設された設備をその寄附をした人が専ら利用するなど、寄附をした人に特別の利益が及ぶ場合には、これは寄附金と見なされません。そのような場合、自分が利益を受ける公共施設の設置や改善のためにかかった費用は、税法上繰延資産として扱われます。あなたの場合、寄附した公道の拡幅部分をあなたの会社が使用し利益を受けることになり、また、ビルの建て替えが必要だったための寄附と舗装費用ですので、税法上繰延資産となります。ただし、公道であるため、あなたの会社が専ら使用するわけではないので、償却期間は寄附した舗装路面の耐用年数に応じた年数になります。寄附する土地は帳簿価額ではなく時価で繰延資産に計上し、時価と帳簿価額の差額を益金に算入するかという問題については、法人が自らの施設や工作物を無償で国などに提供した際には、その施設または工作物の価額に相当する金額を示すだけで、帳簿価額か時価かを明示していません。しかし、自らの施設を無料提供する点を考慮して、帳簿価額で繰延資産に計上することが認められています。その償却期間は、土地と舗装費用を区分せずに市に提供した点を考慮し、舗装道路と舗装路面の最長耐用年数である15年をその施設や工作物の耐用年数として、その期間の償却が認められています。

工場騒音に対する近隣からのクレームに対する補償費

Q. 当社の工場騒音に対して近隣からクレームを申し立てられ、周辺の住家の窓を二重サッシに取り替える費用を負担しました。この費用は、税務上一時に費用処理することができますか。

A. ご質問の費用は、あなたの会社の工場から出る騒音に対する近隣のクレームへの対応として、二重サッシの設置費用を負担したものであり、これは補償費用とみなされます。このように、会社の工場をこれからも稼働させるために支払った費用は、税法上「自社のために支出した費用」として扱われ、繰延資産(法律に基づく一定期間、費用を分割して計上する資産)に該当します。このため、支払った費用は、効果が続く期間にわたって均等に償却(費用計上)されます。具体的には、このような支出によって得られる資産の耐用年数に基づいて償却期間を定めますが、耐用年数の計算では1年未満の端数は切り捨てられます。質問の二重サッシの場合、設置された建物の耐用年数や使用される材質などを考慮して、耐用年数を合理的に見積もり、その年数を償却期間とします。ただし、二重サッシが設置された建物が他人の所有物である場合でも、賃貸物件における内装工事の耐用年数の取り扱いが参考になるでしょう。