「法人税」カテゴリーアーカイブ

常務取締役を退任して監査役に就任した役員の退職給与

Q.常務取締役を退任して監査役に就任した役員に対して退職給与を支給したいと思います。税務上これは認められますか?また、逆に監査役を退任して取締役に就任した役員に支給する退職給与はどうですか?

A.役員が役割や責任範囲の変更、または再選によって異なるポジションに就任した際、特定の条件の下で退職とみなされる場合、その役員に対して支給される給与を退職給与として扱うことが可能です。この条件には、常勤役員から非常勤役員への変更、取締役から監査役への変更、および給与の大幅な減少(おおむね50%以上)が含まれます。したがって、常務取締役から監査役への就任は、特定の基準に合致しなければ税務上退職給与としての支給が認められます。反対に、監査役から取締役への就任に関しては、現在の税務処理では退職給与の支給を認めていません。これは、一般的に監査役から取締役への移動は、職務上の昇進とみなされるためです。しかし、取締役と監査役の職務内容は異なり、両者の間には位階の上下は存在しません。監査役の役割の重要性や取締役からの独立性が高まっていることから、監査役から取締役に就任した際の退職給与も認められるよう税務処理の見直しが求められています。

死亡した役員の社葬費用と受領した香典等の取扱い

Q.死亡した役員の社葬費用は、どの程度まで会社の費用として認められますか。この支出について、取締役会の決議等が必要ですか。後日税務調査で会社の支出額の一部が遺族の負担すべきものとして否認された場合、死亡退職金の追加として認められますか。また、葬儀当日会葬者から受領した香典等は、会社の収入とすべきですか。

A.役員が亡くなった際に会社が行う社葬の費用は、その役員に対する敬意を示す公式な式典として見られるため、社会で通常認められる範囲内であれば会社の経費として認められます。具体的には、通常社葬にかかる費用であれば、その年の損金に計上可能です。ただし、個人的な費用(例:墓石の購入や仏壇の費用など)は会社の経費として認められません。社葬関連の費用について取締役会の決議は特に必要ではなく、税務調査で会社の支払いが部分的に否認されたとしても、それを死亡退職金に追加することはできません。なぜなら、そういった支払いが株主総会などで承認されたものではないからです。そして、社葬で会葬者から受け取る香典については、これは基本的に遺族に対する哀悼の意を示すものであり、社会の常識として遺族が受け取るのが一般的です。そのため、香典を会社の収入と見なさず、遺族の収入として扱うことも認められています。

決算期末直前に死亡した役員を被保険者とする生命保険金の益金算入時期と死亡退職金の損金算入時期の関係

Q.専務取締役が事業年度終了の日の直前に死亡しました。同人を被保険者とし、当社を保険金受取人とする生命保険3,000万円に加入していますが、この保険金は当事業年度末に未収入金に計上して益金の額に算入しなければなりませんか。同人に対する死亡退職金は、当社の内規では約2,000万円と算定され、前記の生命保険は主としてこの退職金の支出に備えて加入したものです。したがって、保険金を益金の額に算入すべきことになるのならば、この死亡退職金も当事業年度末に未払金に計上して損金の額に算入されないと課税だけが先行しますが、いかがでしょうか。

A.専務取締役が事業年度の終了日の直前にお亡くなりになった場合の退職金については、その金額が事業年度の終了日までに支払われているか、または同日までに具体的に金額が決定していなければ、その事業年度で損金として認められません。たとえ、質問にあるような生命保険金を受け取り、それを益金に計上したとしても、死亡退職金の損金としての計上は認められないのです。生命保険金については、保険会社に支払請求を行い、保険会社から支払通知が発行された事業年度に益金として計上します。もし、その事業年度が質問者の場合では翌事業年度になる可能性が高いです。これは、生命保険金の受取権が保険事故発生時ではなく、保険請求後の保険会社の審査等の手続きが完了した後に確定するからです。

事業年度の途中に死亡された役員に係る退職弔慰金

Q.事業年度の途中に死亡された役員の遺族に対して、取締役会の決議により退職弔慰金を支払いました。当社及び当該役員の遺族に対する課税関係を教えてください。

A.役員が退職した際の退職給与の損金算入は、通常は株主総会等の決議で金額が具体的に決まった場合の事業年度に行われます。しかし、法人が退職給与を実際に支払った事業年度で損金処理した場合も認められます。役員が死亡した場合の退職給与は通常次の事業年度の株主総会で承認されますが、礼儀を考慮してすぐに支払われることが一般的です。法人税法では退職給与の損金算入に際して株主総会の承認が必須ではなく、また、遺族が受け取る死亡退職金についての相続税は支給時期に基づいて課税されますから、損金算入時期はこれに合わせる必要があります。支給前でも実際に支払いが行われた場合、税務上はこれを認めています。ただし、株主総会での追認が必要で、追認されない場合は支給した役員に対して返済義務が生じます。特定の役員向けには、支給前に報酬委員会の承認を得ることも可能です。死亡退職金は基本的に相続財産と見なされ、相続税の対象となりますが、退職弔慰金は遺族への哀悼を意図したもので遺族による相続財産には含まれません。役員の死亡退職金には課税対象外となる部分があり、これは相続税法の規定に基づきます。また、非課税の範囲内で相続税が課されます。遺族に支払われる退職弔慰金と退職金の区分についても具体的な基準が示されており、その基準を満たした金額は死亡退職金として扱われます。不当に高額な退職金の部分については法人の所得計算上、損金に算入されません。

退任する役員にだけ直前事業年度の業績に対する賞与を支給しない場合

Q.3月31日決算の会社が毎年6月下旬に定時株主総会で前事業年度の業績に対する賞与を役員に支給していますが、今年、定時株主総会の終了時に退任する取締役へは、賞与相当額を退職給与に加算して支給しようと計画しています。この加算が税務上問題を生じますか。

A.税務上、役員に支給される退職給与の中で、次の3点は経費として認められません。1)業績連動給与として損金算入の要件を満たさない部分、2)不相当に高額な退職給与の部分、3)会計処理を偽装して支給される退職給与。貴社が退任する取締役に賞与相当額を加算して支給する計画は、もしその金額が役員在任期間や退職の事情を考慮しても過大ではないと判断できる場合には、基本的には問題ありませんが、支払われる給与が役員退職給与として実際に退職所得とみなされるかどうかは所得税法に基づき判断されます。具体的には、退職に際して役員に支給される退職給与が、本来退職しなかったとしたら支給されなかったものであり、退職が原因で一時に支給されるものであるかどうかがポイントです。他の役員に比べて特別な事情がない限り、退任する役員への賞与相当額を退職給与に加算することは、その部分の金額を役員給与として扱い、損金不算入となり、源泉所得税も賞与としての扱いになります。したがって、この加算自体が問題になるわけではありませんが、税務上の取り扱いには注意が必要です。

使用人の職務に従事している監査役に支給する給与

Q.従業員の1人を名目上監査役としました。監査役就任後も職務の内容は就任前と変わらないのですが、同人に支給する給与について、使用人分給与を区分することが認められますか。

A.会社法上監査役として選任されている人は、たとえ実際には経営に関わっていなくても、税法上は監査役として扱われます。つまり、監査役としての職責以外の仕事をしていても、監査役の報酬から使用人としての給与を区分できません。過去の裁判例では、監査役が使用人としての職務も行っている場合、その報酬は監査役としての職務のみに基づいて計算されるべきで、使用人としての報酬部分は過大報酬とみなされ損金に算入できないとされました。これは、監査役の公正な職務遂行を保障するためです。ただし、現行法では、名目上でも実際に役員として登録されている人は全員、税法上役員として扱われます。さらに、会社法でも監査役が他の使用人の職務を兼務することは禁じられています。したがって、お問い合わせのようなケースでは、監査役の改選を検討する必要があります。

常務取締役に昇格した者への賞与について

Q.常務取締役に昇格した者に、使用人兼務役員であった期間の賞与を支給する場合、使用人分の賞与額を区分することは可能ですか?

A.はい、可能です。使用人兼務役員であった期間に支給する賞与については、使用人兼務役員であった期間に係る賞与として認められる部分は、使用人に支給した賞与として認められます。例えば、7月に支給する賞与の場合、その全額が使用人兼務役員であった期間に係るものであり、12月に支給する賞与のうち、4月から6月までの3か月分が該当します。これにより、他の使用人と同じ時期に賞与を支給している場合、7月に支給する賞与の全額と12月に支給する賞与の3か月分を使用人分の賞与として区分することができます。さらに、使用人兼務役員であった期間の賞与を区分できるとしているのは、使用人兼務役員とされない役員に昇格した直後に支給される賞与ですが、賞与の支給対象期間が明確に定められていれば、12月に支給される賞与の使用人兼務役員であった期間に係る部分も対象にすることが可能です。

比準使用人として適当な者がいない場合の使用人分給与の区分計算

Q.比準使用人がいない場合、使用人兼務役員に支払った賞与のうち使用人分の正確な額をどのように見積もれば良いのでしょうか?

A.比準使用人として適切な者が見つからない場合、企業は使用人で最も高い地位にある人の賞与額を基にして、使用人兼務役員に支給された賞与の適切な使用人分を見積もる必要があります。例えば、取締役総務部長であるAに支払われた賞与が180万円で、そのうちの給料が役員としては月額10万円、総務部長としては月額50万円である場合、最も高位の総務課長であるBが120万円の賞与を受け取り、月額給料が40万円の場合、Bに支払われた賞与額を基準に計算します。この例では、Aに支払われた180万円の賞与のうち、120万円が使用人分で、残りの60万円が役員分となります。また、もし総務課長Bが適切な比準使用人ではない時、Bの賞与120万円(月額給料40万円×3ヶ月分)を基にして、Aに支給された賞与180万円のうち、総務部長としての月額給料50万円×3=150万円が使用人分で、残りの30万円が役員分と計算されます。この計算を行うには、正しく設定された従業員給与規定が存在し、AおよびBの月額給料が事前に決定されていること、そしてAに対する月額給料60万円が従業員給与規定に基づいて計算され、50万円が使用人分、残りの10万円が役員分として扱われていることが必要です。適正に設定された従業員給与規定があれば、比準使用人が不在でも、使用人の中で最も高位にいる人の賞与額を参考にして、使用人兼務役員に支払われた賞与の中で使用人分を正確に計算することができます。

比準使用人として適当な者がいない場合の使用人分給与の区分計算

Q.役員になる直前に受けた賞与が夏季賞与であった場合、年末賞与のうち使用人分賞与の額はどのように見積るべきですか?また、昨年の年末賞与の額を基にして、業績の向上で年末賞与の支給率を高くした場合、その点を加味して算定できますか?

A.役員になる直前の賞与が夏季賞与であった場合でも、年末賞与の支給率がそれより高い場合は、昨年の年末賞与の額を参考にして使用人分賞与の額を計算できます。また、昨年の年末賞与を基にした計算を行う場合でも、今年と昨年の年末賞与の支給率差やベースアップ率を考慮に入れることができます。例えば、昨年末に支給された賞与が150万円で今年の年末賞与が210万円である場合、計算により使用人分賞与は189万円となり、残り21万円が役員賞与になります。年末賞与の支給期間が特定の月に限られている場合は、その期間に応じて使用人分賞与と役員賞与の割り振りを行うことができます。

比準使用人として適当な者がいない場合の使用人分給与の区分計算

Q.6月末日に役員に昇格した取締役工場長甲が、役員昇格前に受け取っていた月額給与60万円をもとに、使用人分給与の額をどのように算定すれば良いか。また、同工場長が役員昇格せず、7月度の給与が63万円にベースアップしていた場合、使用人分給与を63万円としても問題ないか。

A.使用人兼務役員の使用人分給与の算定では、比準使用人として適切な者がいない場合、役員昇格直前の給与額、その後のベースアップを含む状況、使用人の中で最も高い給与を受け取っている者の給与額などを参照し、適切に見積もった金額を使用人分給与として設定することが可能です。このため、甲氏に対しては、ベースアップ後の給与額63万円を使用人分給与として設定することができます。また、翌年度に比準使用人がいなく、7月のベースアップにより給与額が66万円になる場合でも、その66万円を使用人分給与として設定することが認められます。