「法人税」カテゴリーアーカイブ

解散した株式会社の解散の日の翌日以後の事業年度

Q.株式会社が事業年度の途中で解散した場合、解散の日の翌日から開始する最初の事業年度は、その日から定款に定めている事業年度の終了日までですか?

A.法人税法によれば、内国法人が事業年度途中に解散した場合、その事業年度は解散日に終了し、次の事業年度は解散の翌日から始まります。この場合、解散事業年度(最後に事業を行った事業年度)の確定申告は、解散の翌日から2ヵ月後(確定申告書提出期限が延長されていた場合は延長後の期限)までに行う必要があります。解散日は、株主総会などで解散が決定された日、または解散原因が発生した日とされています。また、法人が破産手続きの開始決定を受けた場合、その日が解散日となります。株式会社が途中で解散して清算中の最初の事業年度は、解散の翌日から始まる1年間となり、例えば3月31日決算の会社が11月30日に解散した場合、清算中の最初の事業年度は12月1日から翌年11月30日までの1年間となります。これは、株式会社が清算中においても、定款で定められた事業年度とは関係なく、会社法に基づく清算事務年度に従うためです。ただし、株式会社が破産手続きの開始決定によって解散した場合には、この規定の適用はありません。

租税特別措置の適用額明細書の作成と提出

Q.「租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律」について、その創設の趣旨とこの法律による制度の概要を説明してください。

A.「租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律」(以下、租特透明化法といいます)は、租税特別措置に関する適用の実態を調査し、その結果を国会に報告することで、透明化を図り、税制の適切な見直しを推進して、公明で透明性の高い税制の構築を目指すための法律です。この法律は2010年3月31日に公布され、翌4月1日から施行されました。法律では、法人税関連の特別措置の適用を受ける法人は、法人税申告書に「適用額明細書」を添付することを義務付けています。これには、法人税軽減、免除、還付などの措置や、納税義務や課税標準の特例が含まれます。適用額明細書を提出しない、または虚偽の記載をした場合、関連する特別措置の適用を受けられなくなりますが、誤りがなく正しい明細書を後から提出すれば適用可能です。ただし、故意の不提出や虚偽記載が認められる場合、宥恕規定の適用はありません。法人税申告時には、この適用額明細書の提出が必須であり、漏れや誤りがある場合は速やかに正しい提出が必要とされます。

税効果会計の適用初年度の処理と申告書の記載方法

Q.税効果会計を初めて適用する場合、過年度遡及会計基準の適用による会計処理及び税務申告書の作成方法はどのようになりますか?

A.税効果会計を初めて適用する際は、この変更が会計方針の変更とみなされます。そのため、変更後の会計方針を過去の期間に遡って適用し、この遡及適用の結果生じる前期やそれ以前の累積効果を当期の期首残高に反映させる必要があります。具体的には、これによって影響を受ける資産や負債、純資産(繰越利益剰余金に反映)の処理を行います。適用初年度の直前事業年度にもし税効果会計が適用されていたら、次の処理が行われているはずです:1)将来減少する一時差異に基づき計算される金額を「繰延税金資産」として資産に、将来増加する一時差異に基づく金額を「繰延税金負債」として負債に記録する、2)圧縮積立金や特定の準備金などは法定実効税率を乗じた後、繰延税金負債へ振り替え、その額を準備金等から減少させるという処理です。この処理を前事業年度の計算書類に行わずに実施するため、申告書の記載方法も変わりますが、差引合計額は変わらないものの、記載内容は異なります。期首、期中、期末における一時差異の増減状況や具体的な仕訳例なども注意して記載する必要があり、これによって繰越利益剰余金や繰延税金資産・負債の額が変動します。最後に、期首残高の調整やその他の影響を考慮した「積立金方式による諸準備金等の種類別の明細表」等の記載も適用初年度の税務申告書では特に重要になります。

会計方針の変更 (棚卸資産の評価方法の変更)をした事業年度の会計処理と税務申告書の作成方法

Q.棚卸資産の評価基準を原価基準から低価基準に変更した場合、過年度遡及会計基準による会計処理、当期の計算書類での表示方法及び税務申告書の作成方法はどのようになりますか?具体例で教えてください。

A.棚卸資産の評価基準を原価基準から低価基準に変更した場合の会計処理と計算書類での表示方法について、次のような手順で行います。例えば、前期末の棚卸資産が原価基準で1,000万円だった場合に低価基準で評価すると900万円になるとします。この場合、100万円の差額は特別損失ではなく繰越利益剰余金を70万円減少させ、繰延税金資産に30万円を計上することになります。この100万円の変動は税効果会計による将来的な減算一時差異として扱い、法定実効税率30%を適用しています。

この変更により、当期の株主資本等変動計算書では繰越利益剰余金が当期首残高800万円から変動額△70万円を引いた730万円として表示されます。当期純利益が2,000万円であれば、その合計として当期末残高は2,730万円になります。株式会社以外の場合は、損益計算書に当該変動額を明示します。繰延税金資産は最終的に法人税等調整額に振り替えられます。

税務申告書作成における処理では、税務上認められていない会計処理のために、売上原価の調整等を行い、損益計算書と異なる扱いとなります。具体的には、棚卸資産の差額を加算あるいは減算して税務上の調整を行います。また、会計上と税務上の差異による仕訳を反映させ、各種別表に記載することで税務申告を行います。

過年度遡及会計基準の概要

Q.過年度遡及会計基準について、その概要を説明してください。会計方針の変更があった場合以外に、この基準による会計処理が必要になるのは、どのような場合ですか。

A.過年度遡及会計基準とは、会計上の変更や過去の誤りをどのように取り扱うかについて定めたルールです。この基準では、会計方針の変更、表示方法の変更、過去の誤謬の訂正は遡及処理を行い、会計上の見積りの変更は遡及処理をしないとされています。会計方針の変更と見積りの変更を区別することが難しい場合は、見積りの変更と同じく遡及処理をしません。たとえば、固定資産の償却方法の変更は本来会計方針に当たりますが、この変更は見積りの変更として扱われ遡及処理はされません。

遡及適用は、新しい会計方針を過去の財務諸表にも適用し、誤謬の訂正は過去の財務諸表における誤りを訂正します。そして、遡及処理によって、過去の財務諸表を改めて処理し、最も古い期間の期首の資産、負債、純資産の額に反映させます。会社法では、計算書類の開示は当期のみが必要ですが、遡及適用や修正再表示を行うと、前期と当期の計算書類の繰越額に不一致が生じ、法人税申告書に影響を及ぼす可能性があります。

この基準による会計処理は、会計方針の変更、表示方法の変更、過去の誤謬の訂正が必要な場合に適用されます。

繰延税金負債についての申告調整の事例

Q.特別償却準備金の積立限度額が生じた場合の、X1期とX2期における税効果会計の適用と申告調整方法はどのようになりますか?

A.税効果会計では、特別償却準備金や準備金等の損金算入額は将来税金額が増える一時差異として扱われます。この一時差異に法定実効税率を乗じて得られる金額が繰延税金負債として計上されます。X1期には、700万円の積立額のうち65%相当額(税率補正後の額)が繰越利益剰余金に振り替えられ、残り35%は繰延税金負債として計上されます。申告時には、法人税等調整額として245万円を加算し、繰延税金負債として245万円を記入します。特別償却準備金455万円も記入し、合計700万円の損金算入分を、「特別償却準備金認容」として減算します。

X2期では、剰余金の処分で100万円の取り崩し後には600万円になります。この600万円に対して法定実効税率を適用した後の金額と、X1期の積立額との差額が新たな繰越利益剰余金となり、また繰延税金負債の調整が行われます。具体的には、繰越利益剰余金に35万円を、繰延税金負債に65万円の減少分をそれぞれ仕訳します。申告時には、法人税等調整額65万円を減算し、繰延税金負債65万円を記入し、特別償却準備金35万円を益金算入される形で別表記入します。

全処理は、確定申告書に添付される「積立金方式による諸準備金等の種類別の明細表」に正確に記載されなければなりません。

税効果会計と準備金等の繰延税金負債相当額の扱い

Q.税効果会計を適用する場合、繰越利益剰余金からの振替えによる圧縮積立金や準備金等の積立額は、これらに係る繰延税金負債の額を差し引いた額とするとのことですが、税法は準備金等として積み立てることを条件に損金算入を認めていると思います。上記のような方法では、繰延税金負債相当額として差し引いた金額は、損金の額に算入することができなくなるのではありませんか。

A.税効果会計を適用する際に、資本部分に計上される準備金等に関しては、該当する繰延税金負債を控除した後の金額で計上されることになっています。このやり方により、準備金の積立額が本来可能な積立限度額よりも少なくなることで、お問い合わせの税法上の疑問が生じますが、これは正式な手続きに基づいています。その根拠となる実務指針は、日本公認会計士協会が作成し、国税庁含む関連機関との調整を経て公表されたもので、これに基づく明細表の作成を通じて税務上の問題は解決されると明記されています。つまり、準備金等への積み立てが剰余金の処分により行われた場合、損金算入の対象となるのは、実際に積み立てた金額と計上された繰延税金負債の合計額です。そして、この合計額は、法人税申告書に添付する特定の明細表により明確になります。この明細表には、準備金等の増減や繰延税金負債の額が詳細に記されています。

繰延税金資産についての申告調整の事例 (2)

Q.税効果会計では、税法上の繰越欠損金と外国税額の繰越控除限度超過額も将来減算一時差異に準ずるものとして繰延税金資産を計上する場合があるとのことですが、次の事例について税効果会計を適用する場合の仕訳と申告調整方法は、それぞれどのようになりますか。

A.繰越欠損金や外国税額の繰越控除限度超過額のような項目は、税法上の未来の税金減少を見込む理由になるので、税効果会計において繰延税金資産として計上されます。例として、法人税法に基づく繰越欠損金の適用が見込まれる場合や、外国税額の控除が将来受けられる見込みの場合があります。これらの場合には、計上された繰延税金資産の金額を基に、申告調整が行われます。

まず繰越欠損金の事例では、有効税率の変動が予測される場合、欠損金の繰越による税負担減少の見込み分を繰延税金資産として記録し、申告書にその効果を反映させます。具体的には、将来の課税所得減少分に対し、法定実効税率を適用して得られる金額を繰延税金資産として計上し、これを税務申告書に記載して調整を行います。

外国税額の繰越控除限度超過額については、将来の控除余裕額によって税額控除が可能と見込まれる場合、その見込み額を繰延税金資産として計上します。この場合にも、申告書への記載を通じて税負担の見込み調整が行われます。

これらの処理により、将来の税負担軽減を予測して財務報告に反映させることが税効果会計の目的の一つです。

繰延税金資産についての申告調整の事例(1)

Q.間27-201Xl期に棚卸資産評価損100万円を計上しましたが、税務上は損金不算入となりました。X2期にこのうちの80万円を処分して当該額だけ損金算入した場合、Xl期とX2期における①税効果会計の適用に当たっての仕訳と、②申告調整方法はどのようになりますか。なお、法定実効税率はXl期末は35%でしたが、X2期末には税法改正によって30%になりました。

A.Xl期の処理では、棚卸資産評価損100万円に対し、その35%に当たる35万円を繰延税金資産として計上しました。この際の仕訳では、35万円を繰延税金資産(借方)として記入し、同額を法人税等調整額(貸方)として処理します。申告調整では、法人税等調整額の35万円を減算して、繰延税金資産を記入します。X2期には、処分した80万円に対して30%の税率を適用し、残った20万円に対して6万円の繰延税金資産が生じます。これにより、以前の35万円から新たに計算された6万円を引いた29万円を調整して記録します。税効果会計では、資産負債法を使用しており、将来税率の変更があった場合は、それに基づいて繰延税金資産や負債の額を再計算します。また、繰延税金資産の回収可能性が必要とされますので、申告時にはそれらの要素を考慮して処理を行う必要があります。

税効果会計を適用したときの申告調整方法

Q. 税効果会計の適用によって、貸借対照表に計上される繰延税金資産又は繰延税金負債は、どのような方法で申告調整すればよいのですか。

A. 税効果会計とは、貸借対照表に計上されている資産や負債の金額と、課税所得を計算することで算定される資産や負債の金額の間に生じる差異(「一時差異」と呼びます)に関連する法人税等の金額を、適切に期間にわたって配分する会計処理のことです。この処理により、税前の当期純利益と法人税等の額を合理的に一致させることが目的です。

一時差異には、将来の損金算入が早いもの(将来減算一時差異)と、将来の益金算入が遅いもの(将来加算一時差異)があります。将来減算一時差異は、例えば減価償却費や繰延資産の償却費、貸倒れのための引当金など、会計上は費用や損失として計上される時期が、税務上の損金算入時期より早い場合に生じます。将来加算一時差異は、例えば圧縮積立金や特定の準備金などで、会計上は費用や損失として計上されないものの、税務上は損金算入され、後年度に益金として算入されるものです。

繰延税金資産または繰延税金負債の申告調整方法ですが、将来減算一時差異を有する事業年度末には、「当該一時差異の金額 × 法定実効税率」の法人税等の額が減少するため、繰延税金資産(借方)/法人税等調整額(貸方)の仕訳をして、繰延税金資産を貸借対照表の資産として計上します。そして、損金算入された事業年度には、この逆の仕訳を行います。将来加算一時差異を有する場合は、その額が益金算入される事業年度に「当該一時差異の金額 × 法定実効税率」相当額の法人税等の額が増加するため、法人税等調整額(借方)/繰延税金負債(貸方)の仕訳をして、繰延税金負債を貸借対照表の負債として計上します。益金算入された事業年度にて、この逆の仕訳を行います。これらの処理により、繰延税金資産や繰延税金負債は税務上資産性や負債性を持たず、利益積立金の計算時には繰延税金資産がマイナス項目、繰延税金負債がプラス項目と考慮されます。これにより、申告調整が行われます。