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適格組織再編成 (6)一適格株式分配の意義

Q.法人税法第2条 十二の十五の三に規定されている適格株式分配とはどのようなものか、説明してください。

A.適格株式分配とは、2017年度の税法改正により導入されたルールで、法人が実行する現物分配の一種です。このルールでは、ある法人(完全子法人)が自身の全ての株式を別の法人に分配する形式のものを「株式分配」と呼びます。これは一定の条件下で、企業が事業部門を切り離す(スピンオフ)場合などに適用されます。「適格株式分配」は、その株式分配の中で、完全子法人が独立して事業を行えるようにすることを目的とし、以下の要件を全て満たすものです。

1. **非支配要件:** 株式分配前に完全子法人が他法人に支配されていないこと、および株式分配後に完全子法人が他の者に支配されることが予見されていないこと。

2. **役員等引継要件:** 株式分配前の完全子法人の特定役員が分配に伴って全員退任するわけではないこと。

3. **従業者相当数の引継要件:** 株式分配前の完全子法人の従業員の約80%以上が引き続きその子会社で働くことが予見されていること。

4. **事業継続要件:** 完全子法人が分配前に行っていた主要な事業を分配後も引き続き行うことが予見されていること。

これらの要件を満たす場合、株式分配は「適格株式分配」として扱われ、特定の税制上の優遇措置が適用されます。

適格組織再編成 (5)一適格現物分配の意義

Q.法人税法第2条十二の十五に規定されている適格現物分配とはどのようなものなのか、説明してください。

A.適格現物分配とは、100%グループ法人税制に基づく制度により、グループ内の企業間で資産を移転する際、その損益を繰り延べることができるようになった仕組みです。この制度は、平成22年の税制改正によって導入されました。具体的には、完全に支配する子会社から親会社へ剰余金の形で資産移転を行う場合、資産の譲渡とはみなされず、適格現物分配制度を利用することによって対応します。

「現物分配」は、法人がその株主に対して、金銭以外の資産を交付することを指します。これには剰余金の配当や利益の配当、解散時の残余財産の分配などが含まれます。適格現物分配は、直前に完全支配関係にある内国法人(普通法人や協同組合等)間での現物分配を指し、適格合併や適格分割、適格現物出資といった他の制度に比べて特定の要件がないのが特徴です。

この制度の多くの事例としては、完全支配下の子会社から親会社へ剰余金の形での資産移転や、完全子会社の解散に伴う残余財産の分配があります。また、100%グループ法人税制内での株式保有関係において、内国法人間での現物分配が行われる場合も、適格現物分配に該当します。

適格組織再編成 (4)一適格現物出資の意義

Q. 税法上適格現物出資とされるのは、どのような要件を満たす現物出資ですか。

A. 税法上、適格現物出資と認められるのは、以下の条件のいずれかを満たす現物出資です。ただし、外国法人への国内資産などの移転を含む一定のケースは、この適格現物出資の対象外となります。

1. 企業グループ内での現物出資、特に

   – 完全支配関係にある法人間の現物出資:現物出資前(単独新設現物出資の場合は、現物出資後)、現物出資法人と被現物出資法人(複数新設現物出資の場合は、他の現物出資法人も含む)の間に、完全支配関係があれば、それに応じた特定の条件を満たす必要があります。

   – 支配関係にある法人間の現物出資:上記の完全支配関係にあたらないが、現物出資前(単独新設現物出資の場合は、現物出資後)に現物出資法人と被現物出資法人の間に支配関係が存在し、その支配関係が現物出資後も続く場合、主要な資産及び負債の移転、従業者相当数の引き継ぎ、事業の継続という3つの要件を全て満たす必要があります。

2. 共同事業を行うための現物出資、特に

   – 現物出資法人と被現物出資法人の事業が相互に関連し、事業規模がある程度類似しており、主要な資産及び負債の移転、従業者の大部分の移転、事業の継続が見込まれ、さらに現物出資により交付された株式が、現物出資法人(適格合併により株式が合併法人に移転する場合を含む)によって継続して保有される見込みがある場合です。

適格組織再編成 (3)一適格分割の意義

Q.会社分割のなかで、税法上適格分割とされるのは、どのような要件を満たすものですか。

A.税法上の適格分割は、以下の条件のいずれかを満たす必要があります。まず、分割の対価として、分割承継法人または分割承継親法人の株式以外の資産が支払われないことが条件です。具体的には、企業グループ内で完全支配関係にある法人間の分割、または特定の条件を満たす支配関係がある場合の分割や、共同事業のためや分割法人の事業を独立して行うための分割などが対象です。これらの分割では、株式の交付が分割法人の発行済株式の割合に応じる等、特定の基準に則った形で行われます。また、特定の役員の引き継ぎ、主要な資産及び負債の移転、従業員の大半が新会社で働くこと、事業の継続性、そして株式の継続保有などの要件があります。これらの規定は、分割を通じて事業の効率化や新事業の立ち上げ等を円滑にするため、税法が設ける特例です。

適格組織再編成(2)一適格合併の意義

Q.税法上適格合併とされるのは、どのような要件を満たす合併ですか。

A.税法上、適格合併とは、以下のいずれかに該当する合併のことを指します。この種の合併では、被合併法人の株主に、合併法人またはその親法人から、株式や出資以外の資産(剰余金の配当等として交付される資産、合併に反対する株主への買取り請求に基づいて交付される資産、または合併直前に合併法人が被合併法人の株式や出資の大部分を保有している場合に他の株主に交付される資産を除く)が交付されないケースを言います。適格合併には、企業グループ内の合併や、共同事業のための合併が含まれます。これらの合併では、特定の支配関係や従業員の継続雇用、事業の継続、事業の相互関連性や規模の類似性、そして株式の継続保有などの条件が設けられています。これらの要件を満たすと、合併によって生じる可能性がある税負担を軽減することが可能になります。

適格組織再編成(1)

Q.企業組織再編税制では、組織再編成が適格組織再編成に該当するときは、組織再編成により移転する資産等の譲渡損益の計上の繰延べが認められるとのことですが、適格組織再編成の種類ごとに説明してください。

A.適格組織再編成は、資産や負債が一つの法人から別の法人に移転する場合に、特定の条件を満たすと譲渡損益の計上を後回しにできる税制です。具体的には、適格組織再編成には適格合併、適格分割(適格分割型分割と適格分社型分割を含む)、適格現物出資、適格現物分配、適格株式分配、適格株式交換、適格株式移転があります。これらの再編成では、移転時に帳簿価額を基に資産や負債を引き継ぐことになり、譲渡による損益は将来の譲渡時に計上されることになります。各再編成タイプで異なる取扱いがあるものの、基本的には移転時の帳簿価額での引継ぎが認められ、税の計算上での損益の認識を遅らせることができるシステムです。これにより、税負担の繰延べやキャッシュフローの改善に寄与することが期待されます

合併又は分割により合併法人等へ資産及び負債を移転させたときの被合併法人等の処理方法

Q.合併又は分割によって、被合併法人又は分割法人が合併法人又は分割承継法人へ資産及び負債を移転させた場合、原則として移転時の価額による譲渡があったものとして所得の金額を計算するとのことですが、帳簿価額で移転する処理をしたときは、どのように申告調整をするのですか。

A.合併や分割によって、被合併法人や分割法人が合併法人や分割承継法人へ資産や負債を移転した際、通常はその時の価額で譲渡があったと見なして所得金額を計算します。これによって生じた譲渡利益や譲渡損失は、合併があった最終事業年度、つまり被合併法人が合併日の前日を含む事業年度において、所得からの控除(益金あるいは損金)として計上します。しかし、合併や分割が特定の条件を満たす適格合併や適格分割の場合は、合併日前の最終事業年度終了時や分割前事業年度の終了時に帳簿価額で移転したとみなされ、この場合、譲渡損益は先延ばしにされます。また、合併の日から見て前日までの期間を最終事業年度とします。分割の場合には、分割承継法人が受け取った資産や負債の譲渡利益や損失は、分割の日が属する事業年度における益金または損金として計上されます。そして、被合併法人等が帳簿価額で資産や負債を移転した際は、この譲渡に関連する利益や損失を最終事業年度や分割の日が属する事業年度の所得計算を行った後、別表四の「非適格合併又は残余財産の全部分配等による移転資産等の譲渡利益額又は譲渡損失額」欄に、プラスまたはマイナスとして記録し、その形で申告調整を行います。この移転による利益や損失は、所得金額の計算には含まれないため、寄附金の控除限度額や特定同族会社に課される留保金額の特別税率の計算には影響しない点に注意が必要です。

大法人による完全支配関係がある普通法人に対する中小企業向け特例措置の不適用

Q.大法人による完全支配関係がある普通法人は、事業年度終了の時の資本金の額又は出資金の額が1億円以下であっても、中小企業向け特例措置の適用ができないとのことですが、その内容を説明してください。

A.大法人による完全支配関係がある普通法人について中小企業向け特例措置が適用されないというルールがあります。この規則に該当する法人は、一般的には資本金または出資金の額が1億円以下の普通法人ですが、大法人と完全支配関係にある場合、特定の条件を満たす必要があります。特例措置の適用を受けられない例外には、大法人によって完全に支配されている普通法人、資本金または出資金が5億円以上の大法人、および完全支配関係を有するその他の法人が含まれます。

特例措置としては、利益に対する税率の軽減、特定の留保金に対する特別税率の不適用、貸倒引当金制度、交際費等の控除限度額、青色申告書を提出した場合の欠損金の繰越控除なし、および欠損金繰り戻しによる還付制度の適用などがあります。

大法人による完全支配関係や資本金の額等の円換算に関する注意事項もあり、完全支配関係の有無がキーポイントになります。直接または間接に発行済株式のすべてを保有する大法人と普通法人との関係や、外国法人である場合の円換算による資本金の額の判定などが重要です。

100%グループ内の法人の株式をその発行法人へ譲渡した場合

Q.法人が所有する100%グループ内の法人の発行した株式を、その発行法人に譲渡した場合、100%グループ法人税制ではどのように処理することになるのですか。

A.内国法人が、完全支配関係のある他の内国法人から自身が発行した株式を引き受けた際には、特定の条件下でみなし配当となることがあることがこの規定の要点です。みなし配当は、通常、資金やその他の資産を交付して株式を引き受ける場合、会社の資本の返還や解散による財産の分配、または出資の返還といった場合に発生しますが、抱えている株式を引き続き持っている場合や、株式をもはや持っていない場合(例えば、残余財産の分配を受けることが確定しない等)に限定されます。この場合、株式の譲渡対価は譲渡原価と同じ金額と見なされ、譲渡による損益は計上されません。また、特定の事由によって起こるみなし配当は、合併や自己株式の取得など、特定の条件を満たした場合に限られています。譲渡で発生した利益や損失の相当額は、会社の資本金などに加算または減算されます。種類株式を発行する法人の場合には、資本金などへの加算または減算額は、各種類株式の時価の割合に基づいて算出されます。なお、子会社が解散することで残余財産の分配が確定した場合、子会社の株式が消滅して生じる損失は損金として認められず、子会社の損失を引き継ぐことは可能です。

適格現物分配による資産の移転をした場合の税務での処理方法

Q.適格現物分配、すなわち100%グループ内の法人間だけで行われる現物分配によって、当該法人間で資産の移転があった場合、100%グループ法人税制ではどのように処理するのですか?

A.適格現物分配は、被現物分配法人が分配前に内国法人と完全支配関係にあり、その法人が普通法人や協同組合等に限定される場合に限ります。適格現物分配により被現物分配法人に資産が移転された場合、その移転された資産は分配直前の帳簿価額で譲渡されたものとみなされます。もし適格現物分配が残余財産の全部の分配である場合、その残余財産の確定日の翌日において、確定時の帳簿価額により譲渡したものとみなされます。この場合、被現物分配法人の資産取得価額はその帳簿価額相当の金額とされ、適格現物分配による資産移転で生じる収益は、その帳簿価額相当の金額を利益積立金に加算しますが、事業年度の所得の計算上の益金には算入されません。また、適格現物分配に関わる資産について、みなし配当計算の際の払戻財産の価額は、その資産の交付直前の帳簿価額相当の金額とされます。適格現物分配により移転される減価償却資産は、他の適格組織再編成に準じた措置が講じられ、期中損金経理額の損金算入規定の対象となります。100%グループ内の資産移転においては、現物分配法人は資産を帳簿価額で譲渡し、被現物分配法人は時価ではなく帳簿価額で資産を受け入れることになります。