「所得税」カテゴリーアーカイブ

廃業後に生じた貸倒損失

Q.私は、令和4年9月に鉄工業を廃業しました。廃業時に売掛金500万円が残っていましたが、そのうち400万円について、令和5年7月に売掛先の甲社が倒産したため回収不能となりました。この場合の貸倒損失の金額400万円は、どのように取り扱われるのでしょうか?なお、廃業した令和4年分及びその前年の令和3年分の申告した所得の内容は以下の通りです。令和4年分の事業所得の金額は100万円、給与所得の金額は200万円、令和3年分の総所得金額は400万円、事業所得の金額は300万円、給与所得の金額は200万円です。

A.お問い合わせの貸倒損失400万円については、最初に令和4年分の事業所得100万円から差し引くことができます。令和4年分で控除しきれない残りの300万円は、令和3年分の事業所得200万円から差し引くことが可能です。しかし、それでもまだ残る100万円は、損失として認められず、切り捨てられます。この特例利用のためには、売掛金が回収不能になった事実が生じた翌日から2ヶ月以内に更正の請求を行う必要があります。

支給された賞与の返還による更正の請求

Q. 会社が不況で欠損が確定したため、役員賞与を返還しました。この返還した賞与について、確定申告後に更正の請求は可能ですか?

A. 一部の所得を除き、収入金額や総収入金額の全部または一部が回収不可能になったり、返還することになったら、その金額を所得計算上なかったものとして扱えます。この場合、事実が生じた日から2か月以内には更正の請求が可能です。しかし、質問のケースでは、役員から会社に返還された賞与は任意の寄付とみなされ、給与所得計算上除外されるものではなく、更正の請求の対象にはなりません。

貸倒引当金の繰入れを撤回するための修正申告

Q.前年分の確定申告で適法に貸倒引当金を必要経費に算入しましたが、今年の利益が高額になるため、繰り入れなかった方が有利かもしれません。この場合、前年分の修正申告により貸倒引当金の必要経費算入を撤回することは可能ですか?

A.青色申告者は、一括して評価する債権に関する貸倒引当金を費用として計上する特例を受けることができますが、この特例を利用するかどうかは青色申告者の選択に委ねられています。一度選択して確定申告をした場合、選択した内容に基づき税金が計算されます。この選択した内容は、法律で変更が認められている例外を除き、変更できません。そのため、前年分の確定申告で貸倒引当金を費用として計上した後にそれを撤回することは、原則として認められません。

少額配当の申告を撤回する更正の請求

Q.少額配当の総額30万円を確定申告に算入した後、税率が上がることが分かり不利になると検討した結果、申告を撤回し少額配当を除外するための更正の請求をすることは可能ですか?

A.納税者は確定申告で少額配当を総所得金額に含めるかどうかを選択できます。しかし、一度提出した確定申告を後で撤回し、少額配当を除外するための更正の請求や修正申告をすることは、税法上認められていません。これは、確定申告や更正の請求制度の本来の目的に沿わないため、高い税率を避けるための意思表示の変更は許されないことになります。また、もし少額配当を総所得金額に含めずに提出した確定申告について、少額配当所得を除外したことで計算ミスがあったとしても、これを更正の請求で修正することはできません。

外国税額控除の適用による更正の請求

Q.昨年、米国に投資用マンションを購入し不動産所得を得ました。今年、この不動産所得について初めて確定申告をしましたが、外国税額控除を適用し忘れました。この場合、更正の請求により外国税額控除の適用を受けることができますか?また、外国税額控除額を少なく申告した場合、更正の請求はできますか?

A.外国税額控除は、確定申告時に金額を記載し忘れていたり、申告した金額が少なかった場合でも、修正申告や更正の請求を通じて適用を受けることが可能です。このプロセスにより、適用される外国税額控除の額を増やすことが認められています。そのため、申告時に外国税額控除を適用しなかったり、控除額を過小申告した場合でも、更正の請求をすることにより、外国税額控除の適用を受けることができます。ただし、更正の請求をする際には、外国税額控除に関する明細書や外国で税金を支払ったことを証明する書類を添付する必要があります。

修正申告 と更正の請求の相違

Q.確定申告書を提出した後に、税額等に変更が生じた場合には、修正申告又は更正の請求の取扱いがあると聞きましたが、その相違点について説明してください。

A.確定申告後、税額に変更が生じた時、修正申告と更正の請求という2つの対応方法があります。修正申告は、納税者が自身の税額が少ないか、又は還付金額が多いと判断した際にする申告で、税務署への報告により税額を増額修正します。一方、更正の請求は、納税額が多いか、又は還付額が少ないと納税者が判断した場合に税務署長へ請求する方法で、申告額の減額を目指します。これらの違いは、修正申告が税額の増額を目的とするのに対し、更正の請求は税額の減額を求める点です。更正の請求時には、該当する事実の証明書類を提出することが必要です。

修正申告に対する更正の請求

Q.修正申告書を提出した後、その修正申告で過大申告をしてしまった場合、更正の請求をすることは可能ですか?

A.はい、可能です。国税通則法の第23条によると、納税者が申告書を提出した後、その内容の計算に誤りがあったり、所得税法に従わなかった計算が原因で納付すべき税額が過大になってしまった場合、原則としてその申告の法定申告期限から5年以内であれば更正の請求をすることが許されています。このルールは、修正申告書にも適用され、修正申告書によって納付すべき所得税額が過大になった場合でも更正の請求をすることができます。更正の請求の期間は、修正申告書の提出日とは無関係に、法定申告期限から5年以内になります。

修正申告による特例計算の選択可否

Q.青色申告をしている内科医ですが、会計のミスで一般診療収入の一部が申告漏れとなりました。修正申告をする際に、租税特別措置法による社会保険診療報酬の特例計算を申請できますか?

A.個人で医業または歯科医業を営む方が、健康保険等から受け取る社会保険診療報酬が5000万円以下、かつその収入が7000万円以下の場合、その年の事業所得の計算において、特別な計算方式(特例計算)を用いることができます。これは、実際に支払われるべき金額に特定の比率を乗じる方法で、通常の必要経費の計算規定とは異なるものです。ただし、この特例計算を利用する場合、通常は確定申告書にその旨を明記しなければなりません。あなたのケースでは、元の確定申告書に特例計算の適用についての記載がなかったため、修正申告時に特例計算を適用することはできません。そのため、元の申告で使用した通常の収支計算方法に従うことになります。

総収入金額報告書

Q.総収入金額報告書は、どのような者が提出しなければなりませんか。また、その報告書にはどのような事項を記載するのですか。

A.総収入金額報告書は、一定の収入を得た人が提出する必要があります。具体的には、その年に不動産所得、事業所得、または山林所得があった人がこれに該当します。これには青色申告者も含まれ、その年の総収入金額の合計が3,000万円を超える場合に提出が必要とされています。ただし、その年分の確定申告書を提出している場合は除きます。提出期限は、その年の翌年3月15日です。

報告書に記載すべき内容は、提出者の住所、氏名、個人番号とともに、以下の事項が求められています:

1. 不動産所得、事業所得、または山林所得について、その年中の総収入金額の合計額及びそれぞれの所得ごとの内訳。

2. 不動産所得、事業所得、または山林所得の基となる資産や事業の所在地、またはそれらの所得発生場所。

3. 参考となるその他の事項。

提出期限を過ぎてしまっても、提出が必要となりますので注意が必要です。

電子取引データ保存制度

Q.「電子帳簿等保存制度」内の電子取引データ保存について、その概要を説明してください。

A.所得税(源泉徴収に関わる所得税は除く)や法人税に関して保存義務がある場合、電子取引が行われた際には、特定の条件のもとでその取引情報に関わる電子レコードを保存する必要があります。ただし、2023年12月31日までの電子取引に関しては、必要な電子データを印刷して保存し、税務調査の際に提示や提出が可能であれば、電子データを保存していなくても問題ありません。しかし、2024年1月からは、保存要件に従った電子データの保存が求められています。それでも、2024年1月以降でも以下の二つの条件を満たす場合は、改ざん防止や検索機能など特定の要件を満たす必要がなく、電子取引データをただ保存しておけばよくなりました。その条件とは、電子取引データを保存すべき要件に従えなかったことについて税務署長が妥当な理由があると認める場合と、税務調査時に電子取引データのダウンロードや印刷された書面の提示・提出に応じられるようにしている場合です。「電子取引」とは、電子的方法で行われる取引情報のやり取りのことを指し、EDI取引、インターネットを通じた取引、電子メールでの取引情報の交換(添付ファイル含む)、インターネット上のサイトを通じて取引情報をやり取りする取引などが含まれます。