「所得税」カテゴリーアーカイブ

棚卸資産の取得に要した負債利子

Q.建売業者が負債で取得した販売用土地について棚卸評価をする場合には、その負債の利子のうち、未販売の土地に対応する部分を計算し、棚卸価額に加算すべきですか。

A.一般的な会計慣行では、借入金にかかる利息は資本に関わる費用と見なされ、期間費用として処理されます。それにより、会計上は財務費用として原価には含めません。税法では、通常、資産の取得に使われた借入金の利息は必要経費になりますが、特例として取得価額に含めている場合に限り、取得価額に算入することが認められています。したがって、販売用土地の棚卸評価に負債の利子を加える必要はありません。

棚卸資産に係る登録免許税等

Q.建売業者が販売目的で取得した土地に関する登録免許税、不動産取得税等を全額必要経費に計上することは許されますか?

A.建売業者が販売のために土地を購入する際に支払った登録免許税や不動産取得税などは、棚卸資産の購入費用や販売用として直接かかった費用とみなせるため、原則としてそれらの税金を資産の取得価格に含めることができます。しかし、業務で使用する資産にかかる登録免許税や不動産取得税などは、業務に関連する所得の計算上、必要経費として計上できるようになっています。それと同じ理由から、棚卸資産に該当する土地購入時にかかった登録免許税や不動産取得税等も、取得価格に算入せずに必要経費として計上できることになります。したがって、以下の税金に関しては、納税者が選択して必要経費として計上することが可能です。

1. 固定資産税・都市計画税

2. 登録免許税(登録に必要な費用を含む)

3. 不動産取得税

4. 地価税(平成10年度分以降は適用停止)

5. 特別土地保有税(平成15年度分以降は適用停止)

販売目的で保有する不動産の評価方法

Q.建売業者ですが、造成中の土地と建物が2戸売れずに残りましたが、この場合の棚卸資産の評価方法を教えてください。

A.棚卸資産の評価方法には大まかに2つあります。原価法と低価法です。原価法の下ではさらに六つの方法があります: 個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法です。どの評価方法を選択するかは、事業の内容やどの種類の資産を保持しているかによって決まります。選んだ評価方法は書面で税務署に報告する必要があります。土地や建物のような棚卸資産にもこれらの評価方法が適用されます。税法上、どの原価法の方法を選択し使用するかは納税者が決められます。また、納税者は特別な評価方法を税務署長の承認を受けて使用することもできます。ただし、個別法は、一般に大量に取引される定価があるものには適用できません。これは、同じ種類の棚卸資産を個々に管理することが技術的に困難で、事業主が意図的に利益調整をする可能性があるためです。それでも、土地や建物のような特定のアイテムは個別法で評価することが推奨されます。一般に個別管理が可能な資産は、具体的に管理された商品、製品、半製品、仕掛品、またはそれらの製造に専用された原材料です。評価方法を選ばなかったり、選んだ方法で評価しなかった場合、法定評価方法である最終仕入原価法によって評価されます。一度選んだ評価方法を変更する場合、提出した変更承認申請書は、採用してから3年未満であると、特別な理由がなければ却下されます。また、3年を経過していても、合理的な理由が無い限り変更が却下されることがあります。

低価法による棚卸資産の評価

Q.私は青色申告者で、棚卸資産の評価に当たって、低価法を採用しようと思っておりますが、下記の資料の場合、売上原価はいくらになるのか教えてください。

A.棚卸資産の評価方法として低価法を採用すると、種類ごとに原価法で計算した価格とその年の12月31日の時価のうち、低いほうを採用することになります。原価法では総平均法を用います。総平均法に基づくと、年末時点での評価額は48,000円になります。

一方、年末の時価による評価は60,000円です。低価法では、これらのうち低い額を選びますので、48,000円が棚卸資産の評価額となります。この場合、売上原価は元の棚卸資産(50,000円)にその年の仕入れ額(410,000円)を加え、最終的な棚卸資産の評価額(48,000円)を差し引いて、412,000円と計算されます。

未使用消耗品の棚卸し

Q.暮れに荷造用材料が未使用のまま相当残りましたが、これは棚卸しをしなければなりませんか。また、棚卸しをしなければならないものには、どのようなものがあるか教えてください。

A.棚卸しは、売上原価を計算するために行います。所得税法によると、棚卸しをしなければならない資産には以下のものが含まれます:商品や製品、半製品、仕掛品(半完成工事を含む)、主要原材料、補助原材料、貯蔵中の消耗品、そしてこれらに準ずる物です。ご質問の荷造用材料は「貯蔵中の消耗品」に該当するため、原則として棚卸資産として計上する必要があります。ただし、包装材料、文房具、作業用消耗品、広告宣伝用の印刷物、見本品など、毎年一定量を購入し継続して消費するものは、特に問題がない限り棚卸しをせず、購入費を直接必要経費としても良いとされています。従って、毎年末に在庫量に大きな変動がないような場合、荷造用材料の未使用分は貯蔵品として計上する必要はないかもしれません。ただし、消耗品で製品製造等に必要な費用の性質を有する場合は製造原価に算入する必要があるので注意が必要です。また、棚卸資産に準ずる資産として、育成中の動植物や収穫前の農作物、未採取の水産植物、仕入れによって取得した空き容器などが挙げられます。

商品の事業用消費

Q.材木の販売業者が工場を増築する際に、仕入れた500万円の材木を使用した場合、この材木を売上に計上するのか、仕入価額から控除するのか、そして計上するなら販売価額で計上するのか。

A.商品を事業用に使用する場合、例えば広告宣伝用に使う、従業員に支給するなどは一般的であり、これらは通常、事業の必要経費として処理されます。しかし、これらの商品の価格は既に仕入れ価額に計上されているため、再度必要経費として計上すると二重計上になってしまいます。そのため、事業用に使用した場合は、該当商品の仕入れ価格を仕入れ額から控除し、適切な勘定(例:広告宣伝費や給料)に振り替える必要があります。材木を自社の工場増築に使った際は、500万円を仕入れ価格から引いて、建物勘定に振替え経理します。減価償却費も工場使用開始日から計算し、必要経費に加えます。また、商品を従業員に支給したら、一般販売価格で評価し、給与として処理する必要があります。実務上、商品を事業用として使用した際、仕入れ勘定からの振替経理なしに、販売価格で売上げに計上し、同額を必要経費に加える経理処理が行われることもありますが、通常はこの方法でも問題ありません。

エコカー補助金の総収入金額不算入

Q.エコカー補助金は課税上どのように取り扱われますか?

A.エコカー補助金、または正式名称でクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金(CEV補助金)は、国の予算に基づいて「一般社団法人次世代自動車復興センター」を通じて交付されるため、国庫補助金等として扱われます。この補助金は、国または地方公共団体から固定資産の取得または改良のために交付され、その年の12月31日までに返還不要が確定し、目的に適合した固定資産の取得または改良を行った場合、総収入金額には算入しないとされています。ただし、この規定を適用するには、確定申告書にこの規定の適用を受ける旨の記載と、総収入金額に算入しない金額の記述をする必要があります。規定の適用を受けると、トラックなどの減価償却費の計算では、補助金額を差し引いた実質の取得価格を用いて行うことになります。

法人成りの場合の資産の引継価額

Q. 法人の設立に際して、個人事業当時に所有していた事業用資産を法人に引き継ぎましたが、その引継価額の適切さについて教えてください。

A. 個人事業を法人に変える際、個人が持っていた資産や負債を法人に引き継ぐことがあります。このとき、どのように評価するかが問題になります。通常、固定資産のような物は市場価格で売買されるため、個人から法人へ譲渡する際も、市場価格に基づいて行うのが一般的です。譲渡価額が市場価格より高い場合、個人は法人から贈与を受けたことになります。逆に、譲渡価額が市場価格より低い場合、その差額は個人が法人に贈与したことと見なされます。税法上では、市場価格の半分以下で資産を譲渡したとき、実際は市場価格で譲渡したと見なされ、所得申告が必要です。また、設立した法人が同族会社で、時価より低く譲渡し税負担が不当に減少する場合、税法上その行為は否認されます。法人税法では、市場価格より高く購入した場合、その超える部分は事実上の贈与と見なされます。また、市場価格より低い価額で引き継いだ場合、その差額は法人の利益に入ります。したがって、通常は市場価格を基準にすることが望ましいとされています。あなたが引き継いだ車両の価額は、市場価格に基づいているため、問題ないと思われます。商品についても、その引継価額が通常の販売価格の70%以上であれば問題ないとされています。

飲食店の自家消費

Q.ビール1本当たり265円で仕入れ、これを400円で顧客に提供している飲食店が、このビールを家事用に消費する場合、事業所得の収入金額に算入する売上金額は通常売価の70%と見積もって1本当たり280円としなければなりませんか。もし、この自家消費分の仕入代金を事業主貸勘定から支払うこととし店の仕入額に含めないこととしたらどうなりますか。

A.通常、ビジネスで使う資産を家庭用に消費する場合、その取得価額(もしくは通常販売価格の70%の価値がそれを下回る場合)を売上として扱わなければならないというのが基本です。しかし、飲食店の場合、米や副食材、お酒などは家庭で直接使用するものであり、事業用として購入したものは実質的に家庭での必需品とみなすことができます。そのため、自家消費分の仕入れを事業主の借方勘定に移して、売上原価から外す、そして売上として計上しない方法が望ましいです。しかし、これは飲食店で自家消費が完全に不可能というわけではなく、家族の慶弔事で従業員の助けを借りて食料やお酒を消費するような場合には自家消費の記録が必要になり、その場合は1本280円で売上に計上することになります。

預り保証金の経済的利益

Q.物品販売業を営む私が所有する土地をテナントビルの所有を目的としてA株式会社に設定した一般定期借地権の契約下で預かる無利息の保証金1億円について、課税関係はどうなるのでしょうか。保証金は店舗の改築費用、自宅の建築費用、及び定期預金に運用されています。

A.土地をA株式会社に貸し出し、無利息で保証金として1億円を預かった場合、この保証金に対する経済的利益は課税の対象となります。具体的には、保証金を運用した目的に応じて税の取り扱いが以下のように区分されます。

1. 保証金が不動産所得や事業所得などの資金として使われている場合: 適正な利率で計算した利息相当額を不動産所得等の総収入に含めます。また、同じ金額を必要経費にも算入します。

2. 保証金が金融資産に運用されている場合: 金融資産からの利子収入は、保証金の経済的利益とみなされ、課税対象となります。この場合、保証金の経済的利益の計算は不要です。

3. 1と2以外の場合: 適正な利率で計算した利息相当額を不動産所得等の総収入に含めます。

従って、あなたの保証金の運用方法に基づき、店舗の改築費用は第1区分、自宅の建築費用は第3区分、定期預金は第2区分に該当します。令和4年分の不動産所得の総収入に算入される保証金の経済的利益は、2,100円となります。また、店舗の改築費用にかかった経済的利益の額600円は、事業所得の計算上、必要経費に算入されます。