「所得税」カテゴリーアーカイブ

展示品の減価償却

Q.造園業を営んでいます。庭園の見本を造って展示しておりますが、これは売ることはできないので、庭園として減価償却することができますか。

A.造園業で作られた展示用の庭園も、税法上は減価償却資産として取扱われます。これは、展示される庭園が来訪者の観賞用として使われ、結果として灯篭や庭木、庭石などの注文を促進する目的があるためです。このような展示用庭園は、一般的な庭園での使用と同じく、人々が楽しむ目的で設置されているため、基本的には同じ扱いを受けます。しかし、この庭園内にある灯篭や庭石、植えられた樹木などは、移設しても価値が変わらないため、美術品や骨董品と同じ扱いを受け、造園業の在庫資産として扱われます。そのため、これら移設可能なアイテムを除き、泉水、池、築山、休憩所、花壇などの固定的な要素は、庭園の法定耐用年数である20年に沿って減価償却が可能です。

見積耐用年数によることができない中古資産

Q.中古の機械を200,000円で取得しましたが、使用可能にするために800,000円を修理や改良に費やしました。この機械は法定耐用年数を全て経過していますが、見積もり耐用年数2年で償却できますか?新品価格は1,500,000円です。

A.中古の資産を購入し、それを事業で使うためにお金をかけて修理や改良をした場合、その費用は資産の取得価額に含めて、減価償却を計算します。中古資産を事業で使い始めた時点での残りの使用可能期間に基づき、その耐用年数を計算することができます。しかし、修理や改良の費用が再取得価格の50%を超える場合には、法定耐用年数を用いて償却することになります。この場合、機械の新品価格が1,500,000円であり、800,000円を修理や改良に費やしているため、質問の機械は法定耐用年数6年に基づき償却を行う必要があり、見積もり耐用年数2年での償却はできません。

空撮専用 ドローンの耐用年数

Q.空撮専用 ドローンの耐用年数は何年となりますか。

A.空撮専用のドローンに関しては、人が乗れない構造であり、航空機には該当しないため、耐用年数省令別表第一の「航空機」としての扱いは受けません。このドローンは主に空撮用として設計されており、写真撮影が主要な機能です。カメラは取り外しが可能ですが、カメラ機能と移動機能は一体となっており、空撮という固有の機能を果たします。そのため、カメラと移動手段を別々に減価償却することは適切ではありません。このドローンは「器具及び備品」の中の「4 光学機器及び写真製作機器」に分類される「カメラ」として考えられ、その耐用年数は5年となります。もしカメラが組み込まれているドローンでも、規模、構造、用途が同じ場合は耐用年数は同じく5年です。

賃借建物に対する内部造作の耐用年数

Q.鉄筋コンクリート造の建物を賃借し、小料理店にするための内部造作を施した場合、その造作の減価償却は建物本体の耐用年数に従うべきですか、それとも木造建物の耐用年数に従うべきですか。賃借契約には貸付期間の定めがなく、有益費の請求や造作の買取請求もできないことになっています。

A.賃借建物に追加した内部造作の減価償却基準となる耐用年数は、賃借契約の内容によって異なります。具体的には、賃借契約で賃借期間の定めがあり、その期間を更新できない場合は、賃借期間を耐用年数とします。しかし、賃借期間の定めがない、更新可能、あるいは賃借期間の終わりが明らかで有益費や買取請求ができる場合は、建物の耐用年数、造作の種類、用途、使用材質などを総合的に考慮して、耐用年数を合理的に見積もります。ご質問のケースでは、賃借期間の定めがないため、造作の耐用年数を合理的に見積もる必要があります。建物と造作の材質が異なるため、同じ耐用年数を適用するのは不適切です。内部造作の種類や材質に基づき、個別の使用可能年数による年間償却費を計算し、その加重平均によって全体の耐用年数を見積もる方法が妥当ですが、結果として木造建物の耐用年数に近くなることが予想されます。

2以上の用途に共用されている建物の耐用年数

Q.5階建ての鉄筋コンクリート造のビルを建築し、1階と2階は飲食店、3階以上は住宅用として貸し付けています。この場合の耐用年数は用途ごとに違うので、用途ごとに区分して適用しても問題ありませんか。

A.ビルの耐用年数は通常、ビル全体が古くなり使用できなくなるため、構造や用途が大きく異ならない限り、同じ耐用年数を適用します。耐用年数はビルが同時に複数の目的で使用されている場合、その使用状況などを考慮して合理的に決定します。その際、決定した耐用年数は、基礎となる事実が大きく変わらない限り、継続して適用されます。従って、質問の事例では、1階と2階は飲食店用、3階から5階は住宅用として使用されているので、使用状況から見て、住宅用の耐用年数47年を適用するのが合理的です。

借地権付建物の取得価額

Q.繁華街にある店舗を3,000万円で購入しましたが、土地の所有者は別になっていますので、一時に買い取ることもできず、当分の間賃借することとし、賃貸借契約の名義変更も完了しました。この場合、地主には権利金を支払っていませんので、店舗の購入価額を建物取得価額として減価償却をしても問題はありませんか。

A.建物の所有者とその建物が建てられた土地の所有者が異なる場合、建物を買った人は、その土地を使う権利も一緒に手に入れたとみなされます。つまり、あなたが3,000万円で店舗を購入した際、この金額には建物の価値と共に、土地を使う権利(借地権)の価値も含まれているということです。借地権の取得費には、敷地の賃借契約を結ぶ際に土地所有者や既存の借地権者に支払った金額だけでなく、建物購入代価の一部、土地整備費、契約にかかった手数料なども含まれます。ただし、建物購入代価の内、借地権の対価と認められる部分が全体の約10%以下であれば、これを特に区別せず建物取得費に含めても良いとされています。したがって、建物の価値と借地権の価値は区別して計算されることが一般的ですが、あなたの場合は購入価格から建物の価値を判別することで借地権の価格を求めることができます。加えて、契約の名義変更時に地主に支払う名義書換料も借地権価額に加えるべきです。

減価償却資産の値引き等による再計算の可否

Q.昨年1月に2,000万円で購入し事業に利用していた機械について、今年6月に土地を売って残金を一括払いし、100万円の割戻しを受けました。この割戻しは減価償却資産の値引きと同じであり、前年度に遡って減価償却費の再計算をするべきだと思いますが、これは認められますか?

A.ビジネスで使う減価償却資産に対して値引きや割戻しがあった場合、その金額は原則その年の事業所得計算において総収入金額に加算されます。しかし、特定の計算式に基づき、値引き等があった日の属する年の1月1日時点でのその減価償却資産の取得価額や未償却残額を減額することができます。そのため、質問のケースにおいては、前年度に遡って減価償却費を修正することはできませんが、値引き等によって減価償却資産の取得価額等を減額することが認められます。こうして算出した金額(割戻し額から削減した額)は、その年の事業所得の計算において総収入金額に加える必要があります。この場合、昨年分の減価償却費の額は200万円、本年分の減価償却資産の取得価額及び未償却残額の減額可能額は90万円であり、本年分の減価償却費の新しい計算結果として1,910万円が求められます。さらに、本年度の事業の総収入金額に加算すべき金額は10万円となります。

満室になっていないアパートの減価償却

Q.11月にアパートを建て入居者を募集しましたが、交通が不便なのか年内に20室のうち10室しか入居がありませんでした。この場合でも建物の全体の減価償却費を必要経費に算入できますか。

A.はい、入居者が募集されていて、いつでも貸し出せる状態にあり、維持や補修がされている場合、アパートが満室じゃなくても減価償却費を計上できます。アパートを建てて入居者募集を始めた時、または最初の入居者が入った時をもって事業開始と見なすことができますので、その時点から減価償却費を計上することができます。

受取保険金で新築した工場の取得価額

Q.今年3月に未償却残高900万円の工場が全焼し、4月に保険金1,000万円を受け取り、その保険金と銀行からの借入金1,000万円で新たに工場を建築しました。この場合、工場の取得価額はいくらになりますか?

A.受け取った保険金で新築した工場の取得価額は、建築に要した費用合計、つまり2,000万円となります。損害保険から支払われる保険金で資産の損害を補填し、その資産を取得した場合、その保険金は非課税とされます。ただし、所得税法では保険金で取得した資産の取得価額を圧縮して記載する規定はないため、新築工場の取得価額は建築費用に基づいて2,000万円と計算されます。

入居中のアパートを取得した場合の取得価額

Q.既に入居者のあるアパートを購入した場合、減価償却計算の基となる取得価額はいくらですか?アパートの前所有者が預かっていた入居者の敷金のうち、返還を要する部分については、入居者が立ち退く際にアパートの新所有者である私が返還をすることになっています。購入の際の支払い代金は4,000万円、前所有者は入居者から総額500万円の敷金を受領しており、敷金についてはその20%を返還しない特約があります。

A.このケースでは、アパートの取得価額は購入時に支払った代金と将来入居者に返還しなければならない敷金に関わる負債を合計した金額になります。つまり、アパートを4,000万円で購入したということは、前所有者が預かっていた敷金に関する債務を引き継ぐことで可能になったわけです。このため、購入の対価は4,000万円に引き継いだ債務の額を加算したものとなります。同じ理屈は、担保にされている資産をその担保債権の弁済を引き受ける条件で取得した場合にも当てはまります。代金の支払いがなかったとしても、引き継いだ債務相当額を対価として取得価額と見なすことになります。したがって、この場合の取得価額は次の計算で求められた4,400万円になります。計算は、4,000万円加えて(500万円から500万円の20%を引いた額)で、合計4,400万円です。