「所得税」カテゴリーアーカイブ

一括評価による貸倒引当金の対象となる貸金の範囲

Q.青色申告者ですが、今年から一括評価による貸倒引当金を設けたいと思います。使用人に対する貸付金についてもこの貸倒引当金を設けることができるそうですが、家主へ支払った保証金や仕入先へ支払った手付金についてもこの貸倒引当金を設けることができますか。

A.事業を行っている青色申告者は、売掛金や貸し付けた金など、事業で生じた金銭債権について貸倒引当金を設けることができ、これは経費として計上できます。しかし、保証金や手付金など、資産の取得や費用の前払いなどに使われた金額については、貸倒引当金の対象外となります。つまり、家主への保証金や仕入先への手付金は、貸倒引当金の設定対象とはならないということです。また、従業員に対する貸付金に関しても、将来精算されるような前払給料の性質を持つものや概算払いの旅費などは対象外です。

専従者給与額の変更

Q.青色申告者ですが、年々所得が増加しておりますので、専従者給与も毎年10%程度増額しております。この場合でも専従者給与額の変更届を毎年出さなければ認められませんか。

A.青色申告者が専従者の給与を決める際、特にその金額を変更する場合には税務署に届け出る必要があります。ただし、毎年の定期昇給のようなものは最初の届出の際にその昇給の方法も記述しておけば、その後毎年変更届を出す必要はありません。これは給与や賞与の金額を変更する時に限らず、変更の内容や理由もしっかり記入して提出しなければなりません。ですが、もし規約に基づかない急な給与の上昇がある場合は、その都度変更届を出さなければなりません。

専従者に支払った退職金

Q.個人事業主が事業を廃止して法人化する際に、個人事業時代の従業員に退職金を支払った場合、事業専従者にも同じ退職金を支払うことは必要経費として認められますか?

A.事業専従者に支払う退職金を必要経費として認めることはできません。これは、所得税法第57条第1項により、専従者に支払う給料が給与所得として扱われることにありますが、退職金は必要経費に算入される専従者の給与の一部とは見做されないからです。専従者の給与が一般の従業員と異なって扱われることも、この判断の根拠となっています。

青色事業専従者のアパート賃借料

Q.長女の夫が海外勤務のため、長女と孫が同居することになり、家が手狭になったため、青色事業専従者である長男を近くのアパートに住まわせることにしました。このアパートの家賃は必要経費になりますか?なお、長男は独身で、以前と同様に食事や入浴は私の家でするとのことです。

A.所得税法では、必要経費は収入金額を得るために直接必要だった費用や販売費、一般管理費など、所得を生み出すために発生した費用と定められています。しかし、特定の青色事業専従者のアパート賃借に関しては、賃借の理由が家族が増え家が手狭になったためという家庭生活上の必要からであり、長男がアパートに住んだ後も家族としての生活を共にしており、生計を一にしているため、この場合のアパートの費用は家族の生活費としての性質を持ち、必要経費とは認められません。さらに、家族関係を理由にアパートを賃借している場合でも、入居している親族が事業に従事していたとしても、そのアパートの費用が必要経費とはならないと解されます。

専従者給与相当額の借入れ

Q.青色専従者給与の必要経費算入は、その給与を実際に事業専従者に支払うことが条件となりますか。また、帳簿上は支払ったことにして、これを直ちに事業資金として借り入れた場合、あるいは年末に一括してその年中の支給額を借り入れ、実質的に給与が未払となっているような場合はどのように取り扱われますか。

A.青色専従者給与を必要経費として認めるためには、専従者への実際の給与支払いが必須です。もし支払われた給与がすぐに事業資金として借り入れられる場合、その借り入れが実際に貸し借りと認められるかが問題となります。親族間の借り入れは、返済期限や利率が設定されていないことが多く、実際には贈与と見なされることが多いです。そのため、借り入れが贈与と同じ状況である場合、給与支払いがあったとは見なされず、以下のように扱います。(1)専従者給与の未払額を必要経費に算入するかどうかは、未払いになった経緯に妥当な理由があり、かつ、短期間内に実際の支払いがある場合のみ認められます。その他の場合は支払われなかったとみなされます。(2)毎月適切に支払われていた専従者給与が年末に一括して借り入れられた場合、借り入れに妥当な理由があり、かつ、返済可能な状況下で実際に返済が行われている場合に限り認められます。そうでない場合は、支払いがなかったものとして扱われます。質問の状況にある専従者給与相当額の借入れは、実質的に未払給与と同じです。借り入れに妥当な理由があり、返済可能な状況で返済が行われているなら認められますが、そうでなければ必要経費としての算入は認められません。

事業所得が赤字の場合の専従者給与

Q.青色申告者です。今年は売掛金の貸倒損失が生じたことで事業所得が赤字となりましたが、青色事業専従者に支払った専従者給与は必要経費に計上できますか。

A.青色申告者の場合、事業所得が赤字であっても、専従者給与は、それが適切な金額であると認められれば必要経費に計上できます。適切な金額であるかどうかの判断は、専従者の労務期間、労務の性質や提供程度、他の従業員の給与状況、事業の種類や規模、収益状況など、様々な状況を総合的に考慮して行われます。ただし、事業が貸倒損失や災害などの偶発的な損失により赤字になった場合は、専従者給与を適切に勤務の状況や支給状況と照らし合わせて評価し、必要経費として認められる可能性があります。しかし、偶発的でない原因により毎年のように損失が発生している場合は、収益の状況を考えると不合理と見なされ、給与の金額や支給状況を再考する必要があるかもしれません。

年の中途で結婚した娘の事業専従者控除

Q.長女が11月に結婚するまでは、食料品店の販売を手伝ってくれていたので事業専従者控除の適用を受けたいのですが、12月末日現在では生計は別であり、長女は夫の配偶者控除の適用を受けています。この場合、私の事業所得の計算上、事業専従者控除(50万円)の必要経費算入は認められますか。また、適用ができるとすれば、控除額を10月までの月数により按分計算する必要はありませんか。

A.白色申告者の場合、事業専従者控除を受けるためには、従事者が生計を一にする親族であり、その年の6ヶ月以上その仕事に専ら従事していたことが必要です。結婚して生計が別になった後も、結婚前は生計が一つで長期にわたり事業を手伝っていた場合は、事業専従者控除が適用されます。また、娘が別の家庭で配偶者控除を受けていたとしても、事業専従者控除の適用には影響しません。事業専従者控除の額は定額で50万円ですので、月割りの必要はありませんが、控除前の事業所得が少ない場合にはその所得額が上限になるので注意が必要です。さらに、事業専従者控除として認められた額は、事業専従者の給与所得として扱われます。

他に職業を有する場合

Q.私と妻はそれぞれ、整形外科と美容整形外科の診療所を営む青色申告者です。私の営む整形外科の診療所は午前9:00〜12:30、午後15:00〜18:00の診療時間で、妻が営む美容整形外科の診療所は午後のみです。午前中は私が営む整形外科の診療所で妻にも診療してもらいたいと考えています。妻に支払う給与を青色事業専従者給与として必要経費に算入することはできますか?

A.青色事業専従者給与を必要経費に算入するためには、その人が事業に全ての時間を割いて専念している必要があります。あなたの整形外科の診療時間は午前9:00〜12:30、午後15:00〜18:00ですので、基本的にはほとんどの時間をその事業に費やす必要があります。しかし、妻が午前中のみあなたの整形外科で働くことは、「専ら従事」するとは見なされないため、妻に支払う給与を青色事業専従者給与として必要経費に算入することは認められません。

二つの事業に専従することの可否

Q.長男甲の妻が甲が営むアパート業と甲の母乙が営む貸家業に専ら従事しており、甲から月額6万円、乙から月額4万円の青色専従者給与を受け取っています。甲及び乙の不動産所得を生ずべき事業に同時に専従することは可能でしょうか?

A.配偶者や親族がある事業に専ら従事しているかどうかは、通常、その年を通じて6ヶ月以上その事業に従事しているかどうかによって判断されます。ただし、青色事業専従者の場合、死亡、病気、結婚、その他特別な理由で年中その事業に専念できなかった時には、年間の半分以上その事業に専ら従事していれば要件を満たしたとみなされます。しかし、一人が同時に二人の納税者が営む事業に専念する場合、一方の事業に年間の半分以上従事した場合、もう一方の事業に年間の半分以上専念することはできません。そのため、長男の妻は甲または乙のどちらか一方の事業にのみ専念することができ、両方の事業に青色事業専従者として同時に従事することは認められません。

共有アパートの事業専従者控除

Q.私と妻が共有している賃貸アパートの事業で、同居している母を事業専従者として管理させています。この場合、私と妻はそれぞれ母を事業専従者として専従者控除を50万円ずつ適用できるでしょうか。

A.専従者控除や専従者給与に関する取扱いは、親族への支払いを例外的に必要経費として認める特例です。ただし、一緒に暮らす親族を事業に専従させる場合が該当します。しかし、この控除を適用できるのは、専らその事業に従事する配偶者や扶養親族に限られ、一家庭に複数の納税者がいる場合、扶養控除を受けるのは一人の納税者に限られます。これは、一家庭内で複数の人が同じ親族を事業専従者として重複して控除を申請することが基本の趣旨に反するためです。従って、お問い合わせのケースでは、夫婦それぞれが母を事業専従者として50万円の専従者控除を適用することはできません。専従者として認められるのは夫婦のどちらか一方です。どちらを専従者とするかは確定申告書の記載によって決まります。