「所得税」カテゴリーアーカイブ

預り品の焼失による弁償金

Q.クリーニング店を経営していて、火災で店舗と客から預かった衣類が全焼してしまいました。この事故による客への賠償金は事業所得の必要経費になりますか?

A.クリーニング店で発生した火災により、お客様の衣類を焼失してしまうという事態において、故意や重大な過失がなければ、お客様に支払った損害賠償金は事業所得の必要経費として計上することができます。通常、業務において他人の物を預かり中に損害が発生した際、その損害賠償金や、信用維持のために支払う見舞金などは業務実施に関連した費用として扱われ、必要経費に算入されます。また、災害により第三者の物品に損害が生じた場合には、その損害賠償金も事業用資産の損失として扱い、翌年以降に損失額を繰り越すことが可能です。

信用保証協会に支払う保証料

Q.運転資金不足のためA銀行から600万円の融資を受けることになりましたが、私には担保がなく、信用保証協会の保証を受けることになりました。10年間の返済期間で、保証料として57万円を支払いました。この保証料の取扱いはどのようにすればよいのでしょうか。

A.信用保証協会は、中小企業者が銀行などからの融資を保証する際、保証料という手数料を受け取っています。この保証料は、借入期間全体にわたって提供される保証の対価であり、もし期間内に借入金を繰上げ返済した場合、残りの期間に相当する保証料の一部が返金されます。質問の状況では、保証料は10年間の返済期間に対する手数料として扱われます。従って、この保証料は前払費用とみなして、返済期間に沿って分配し、会計上の取り扱いをするのが適切です。

税理士職業賠償責任保険の保険料

Q.税理士職業賠償責任保険に加入している場合、その保険料を税理士業務に関する事業所得の計算上、必要経費として扱っても良いのでしょうか。

A.税理士業務による過失で損害賠償を担う必要が生じた際に補填される保険料は、その性質に応じて必要経費として扱うことができます。しかし、個人的な費用や故意、または重大な過失により生じた損害賠償金の場合は、必要経費とはなりません。税理士職業賠償責任保険がカバーする損害賠償金は、故意や禁止された行為によるものを除外しており、基本的には必要経費として扱われるとされています。

事業主が特別加入している政府労災保険の保険料

Q.私(事業主)は政府労災保険に特別加入し、保険料を支払っています。これを事業所得の金額の計算上、必要経費とすることはできますか?

A.中小の事業主や個人事業主(例えば大工や左官など)も利用できる「労災特別加入制度」というものが存在します。この制度は、事業主が従業員と同じ条件で仕事をしていても、事故などのリスクを保険でカバーするためのものです。そこで事業主が自分自身を保険の対象として保険料を支払う場合がありますが、これは業務上生じた費用には該当しないため、支払った保険料を事業所得から必要経費として計上することはできません。ただし、支払った保険料は社会保険料控除の対象になります。

融資を受けるために付保された生命保険契約の支払保険料

Q.病棟建設のための長期融資を受ける際、B銀行から生命保険加入を条件とされたA医師は、支払う保険料を事業所得の計算上必要経費として算入できるか?

A.事業の遂行のために必要な場面で加入した生命保険契約にかかる保険料であれば、これを事業所得から必要経費として差し引くことができます。例えば、従業員の退職金確保のために契約した生命保険で、掛け捨てタイプの場合は、支払保険料を必要経費に含めることができます。しかし、質問のケースでは、A医師が病棟建設資金の融資を受けるために加入した生命保険で、保険金受取人がA医師本人となっており、B銀行への二次的な担保提供目的であるため、この保険料は事業所得の計算における必要経費として扱うことはできません。

事業主を被保険者とする生命保険契約の保険料

Q.自分が亡くなったときの従業員の退職金用に、自分が契約者及び被保険者、従業員が受取人の掛け捨て生命保険に加入しています。この支払った保険料は、事業所得の計算上、必要経費になりますか。

A.事業主が自分自身を契約者として生命保険に入る場合、その保険契約は事業の運営に直接必要なものではないとみなされます。また、従業員の退職金のために積み立てる資金に関しては、特定の退職金積立方法に限定されており、自分で任意に保険に加入して積み立てるケースは、必要経費として認められていません。そのため、この場合の生命保険料は、事業所得の計算上、必要経費とは認められません。さらに、従業員がこの生命保険契約に基づいて保険金を受け取った場合、その金額は退職所得とはみなされず、相続税が適用される可能性があります。

従業員を被保険者とする生命保険契約の保険料

Q.従業員を被保険者とし、保険金受取人を事業主とする掛け捨ての生命保険契約について事業主が負担する保険料は必要経費となりますか。また、この保険契約に基づき事業主が受け取る一時金は従業員の負傷、死亡による支払退職金に充当するためのものですが、この一時金は事業主の一時所得となりますか。

A.事業主が支払う保険料は、会社の利益を計算するときにかかった費用(必要経費)として考慮することができます。また、事業主が保険から受け取るお金は一時所得として扱われず、むしろ事業から得た収入(事業所得)の一部として扱われます。従業員を被保険者として事業主が保険料を負担する場合、その保険が返戻金を含まない掛け捨てタイプのものであれば、必要経費として認められます。これは、従業員を雇用することにより将来かかる費用をカバーするためのものであり、事業運営に直接必要な経費とみなされるからです。ただし、保険金収入は通常一時所得とされますが、事業関連で受け取る保険金に関しては、違った扱いとなり、事業所得の一部とされます。

従業員を被保険者とする生命保険(養老保険)契約の保険料

Q.私は個人事業主で、従業員を被保険者とする養老保険に加入し、保険料を負担しています。この保険料は事業所得の計算上必要経費に算入できるか。また、満期保険金の課税関係はどうなるか。

A.法人事業主の場合、養老保険に関連する保険料は支払った保険料の半額を経費として計上し、残り半額を資産に計上することが認められています。個人事業主の場合、明確な規定はありませんが、従業員の福利厚生目的で養老保険に加入し保険料を負担しているならば、法人と同様に保険料の半額を必要経費に算入し、残り半額を資産計上して差し支えないと考えられます。満期保険金を受け取る際には、受け取った金額を事業所得の総収入として計算に入れ、資産計上した保険料の半額相当を必要経費として計上する必要があります。生命保険の満期保険金は通常、一時所得として課税されますが、事業関連で受ける場合は課税対象外になります。ただし、福利厚生とみなされるためには、従業員全員を対象とし、契約期間や保険料支払い方法が適切であること、事業主と従業員の間で退職金の基金に充てるなどの取り決めが必要です。また、事業主は関連する取引全てを正確に記録している必要があります。

売上げの一部を寄附した場合の必要経費の取扱い

Q.個人で食料品の小売販売をしており、コロナウイルス禍を受けて売上げの一部を医療機関に寄附する取組を始めました。この取組では、指定商品の売上金額の一定割合を寄附金額とし、寄附先や寄附日などを事前に設定し、店内ポスターやホームページで周知することにしました。予定どおり医療機関に寄附をしましたが、この支出は、事業所得の計算上、必要経費に算入できるでしょうか。

A.質問に対する回答として、医療機関への寄附金が、事前に広く一般に周知していた取組による場合に限り、事業所得の計算上、必要経費に算入できます。所得税法では、必要経費は収入を得るために直接要した費用や販売費、一般管理費などの業務に関連する費用とされています。あなたの取組は、新型コロナウイルスの下での社会的支援としての医療機関支援に加え、集客目的の広告宣伝効果も持つと認められます。また、顧客が指定商品を購入する際、取組に合意しているため、あなたには寄附する義務があり、そのための支出は事業の遂行上で発生した必要なものとされます。しかし、周知内容が不明確な場合などは必要経費に算入できない場合があるので注意が必要です。個人事業主が寄附金で必要経費に算入されない場合、それは個人の家事上の経費となり、寄附先が国や地方公共団体などの寄附金控除の対象であれば、控除を受けることができます。

税込経理方式を採用している個人事業者の消費税等の必要経費算入時期

Q.税込経理方式を採用している個人事業者です。令和5年1月1日から同年12月31日までの消費税課税期間の消費税等は、令和6年3月に申告・納付することになりますが、この税額は、事業所得の計算上、令和5年分の必要経費とすることはできないでしょうか。

A.税込経理方式を採用している個人事業者の場合、課税売上げに係る消費税等は収入金額に含まれるため、納付する消費税等の額は必要経費に算入できます。この消費税等の算入時期は、基本的に次の2点によって決まります。

1. 納税申告書に記載された税額は、納税申告書が提出された日が属する年の事業所得等の計算上、必要経費に算入します。

2. 更正あるいは決定に関する税額は、更正または決定があった日が属する年の事業所得等の計算上、必要経費に算入可能です。

もし、翌年3月に提出予定の納税申告書に記載すべき消費税等の額を未払金として計上した場合、その金額を未払金として計上した年の事業所得等の計算上、必要経費として算入できます。そのため、令和5年12月末日時点で納付すべき消費税等の額を未払金として計上すれば、令和5年の事業所得計算に必要経費として算入できることになります。