「所得税」カテゴリーアーカイブ

競走馬の保有損失と貸金利子との相殺

Q.競走馬を保有する個人が、競走馬の保有によって損失(賞金収入に対する経費超過によるもの)を生じた場合、その損失は貸金利子による所得から控除できますか?また、控除しきれない損失は翌年に繰り越すことができますか?

A.競走馬の保有によって発生した損失は、基本的に雑所得として扱われ、雑所得の計算で損失として認識されます(特定の条件下では事業所得と見なされ、その場合には一般的な事業所得の赤字処理が可能で、青色申告者は未消化の赤字を翌年へ繰り越せます)。ただし、雑所得の損失は他の種類の所得との損益通算は認められず、同種の所得内でのみ控除が可能です。貸金利子から得た所得が事業にあたらない金銭貸付からのものであれば、これも雑所得に分類され、範囲内で競走馬の保有による損失の控除が許可されます。しかし、貸金利子による所得を上回る損失が発生した場合、その損失は雑所得の計算上の損失とみなされ、他の所得との損益通算は許されません。青色申告者でも、このような損失を翌年に繰り越すことはできません。

競走馬の譲渡による損失が生じた場合、その損失は同年の競走馬の保有による雑所得から控除可能ですが、未消化の損失分について他の所得との損益通算は認められません。また、競走馬以外で生活に必要でない資産(例:別荘)の譲渡による損失は、他の資産の譲渡所得から控除できますが、他の所得との損益通算は許されません。

通勤用 自動車の売却損

Q.通勤用の自動車を新車に買い換えるため下取りに出すことにしましたが、下取価格が使用期間中の減価償却費を差し引いた残額よりも低い場合、その損失を給与所得から控除できるか?

A.通勤用の自動車は生活に必要な物として扱われ、その売却から得られる利益は非課税対象です。これは、売却によって生じた利益、または損失が税の対象外であることを意味します。よって、通勤用自動車の売却による損失は、給与所得から控除することができません。ただし、レジャー用などの他の目的で使用される自動車の売却利益は課税対象であり、損失は他の譲渡所得がある範囲内でのみ控除可能ですが、それを超えた部分を他の所得から控除することは認められていません。通勤用自動車の売却に関連する特別な控除については、別の節で詳しく解説しています。

競走馬の譲渡損失

Q.会社の社長である甲が所有する競走馬を売却した際の損失は、事業用資産の損失として他の所得との損益通算が可能か?

A.通年で6ヶ月以上登録されている競走馬を5頭以上所有している場合、その年における競走馬の所有に関する所得は事業所得とみなされます。この基準は年の最終日だけでなく、1年間の任意の時点で判断できます。したがって、質問のケースでは、11月1日に競走馬を売却する前に既にこの条件を満たしているため、競走馬の売却による100万円の損失は事業用資産の損失として他の所得と一緒に損益通算が可能です。ただし、必要な書類として「登録馬の証明書」を確定申告書に添付する必要があります。

さらに、過去3年間のうちに6ヶ月以上競走馬を2頭以上保有し、その期間内のいずれかの年に黒字だった場合にも、同様に競走馬の所有による所得は事業所得と見なされます。この「2頭以上」の条件も同じ方式で判断されます。

ゴルフ会員権の譲渡損失

Q.マイホーム取得のため、ゴルフ会員権を売却して50万円の譲渡損失が発生しました。この損失は他の所得から控除できますか?

A.日常生活に必要ではないものに関する損失は、競走馬の譲渡損失を除いて、他の収入から差し引くことは認められていません。このルールによると、趣味や娯楽のために所有しているゴルフ会員権など、普段の生活に必要でない資産から生じた損失は他の所得から差し引くことができません。したがって、あなたがゴルフ会員権の売却で生じた50万円の損失は、他の所得から控除することはできません。

リゾートホテルの賃貸と損益通算

Q. リゾートホテルの1室を取得して不動産賃貸借契約をB社と結びました。休日や特定期間は自分で利用し、それ以外の日はB社が客室として使います。私はB社から基本料を受け取り、同額の管理費を支払います。また、運用分配金も得ます。この賃貸による所得で赤字が出た場合、その赤字を他の所得と損益通算することは可能ですか?

A. 一般的には、不動産から生じた損失は他の所得から控除することができます。しかし、生活に必ずしも必要でない贅沢な資産から生じた損失は、損益通算できないと見なされがちです。このような資産には、主に趣味や娯楽、保養のために所有する家屋などが含まれます。あなたが取得したホテルの1室は、優先的に使用する権利を持ち、保養地に位置しており、基本的に運用分配金が少ないなど、生活に必要ない趣味の資産と見なされる可能性が高いです。そのため、このホテルの1室の貸出による赤字を他の所得と損益通算することはできないでしょう。

低額譲渡により生じた譲渡損失

Q.サラリーマンである私は、20年前に宅地を1,000万円で取得し、現在時価2,400万円の更地を長男に400万円で譲渡しました。同時に、父から相続した土地を3,000万円で譲渡し、2,000万円の譲渡益が発生しています。この場合、長男に譲渡した宅地の譲渡損と父から相続した土地の譲渡益との損益を通算して譲渡所得の金額を計算できますか?

A.時価の半分未満で資産を譲渡した場合、その取引が法人間であれば時価での譲渡とみなされますが、個人間での取引では実際の譲渡価格が譲渡所得計算の基礎となります。ただし、譲渡によって損失が生じた場合、その損失は計算上存在しなかったことになるため、他の譲渡所得と通算して計算することはできません。従って、長男に低額で譲渡し損失が生じた場合、その損失を父から相続した土地の譲渡益と通算することはできません。なお、長男がその宅地を取得する際の価格は、譲渡者であるあなたの取得価格1,000万円を継承します。低額で財産を譲り受けた場合、その価格差に対して贈与税が課税される可能性もあります。

土地建物等の譲渡所得がある場合の損益通算 (そ の 1)

Q.個人が、土地建物等を譲渡して赤字が生じた場合、他の所得と損益通算をすることができるのでしょうか。

A.個人が土地や建物を売却した結果、損失が出た場合、その損失は同じ種類の土地や建物の売却で得た利益と相殺できます。ただし、これらを相殺してもまだ損失が残る場合、その余った損失は他の種類の所得、例えば給与所得などとは相殺できません。また、土地や建物以外の資産売却や他の所得種類で発生した損失も、土地や建物の売却利益とは相殺できないことになっています。さらに、前年からの純損失は土地や建物の売却所得から引くことができないものの、雑損失は引くことが可能です。所有期間が5年を超える住宅関連の資産を売却して生じた損失に限り、特定の条件を満たす場合、他の所得との相殺や3年間の繰越控除が許されます。

土地建物等の譲渡所得がある場合の損益通算 (その2)

Q.紙卸売業の事業所得が赤字になりました。先祖からの土地を売却して、この赤字を補填しました。この事業所得の赤字200万円を、譲渡所得300万円から控除できますか。

A.所得税法では、一人が一年間に得た所得を10種類に分け、それぞれの所得別に金額を計算します。不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得が赤字の場合、その赤字を黒字の所得から控除し、控除後の金額で税金を計算します。これを損益通算といいます。しかし、特定の所得で赤字が出た場合は、その赤字を無かったことにし、損益通算をすることができません。例として、分離課税される土地や建物の譲渡所得、株式に関する事業所得や譲渡所得、先物取引に関する所得などがあります。そのため、質問の事例において、事業所得の赤字を土地の譲渡所得から控除することはできません。

事業主貸と事業主借

Q.55万円又は65万円の青色申告特別控除の適用を受ける場合に、確定申告書に添付する貸借対照表の「事業主貸」勘定や「事業主借」勘定には、どのようなものを計上するのですか。

A.「事業主貸」勘定と「事業主借」勘定に計上する項目は以下の通りです。

1. 「事業主貸」勘定では、

   – 事業用の現金を生活費として家計に渡した金額、

   – 決算整理時に、家事関連費のうち必要経費から除外した金額、

   – 業務用と家事用に併用する建物や自動車などの減価償却資産で、取得価額を業務用と家事用に分けずに減価償却していた場合、決算整理時に家事用として使用する部分の減価償却費を家事分として除外した金額、

   – 事業用固定資産を売却して譲渡損が生じた場合のその差額 (例えば、固定資産の帳簿価額が100万円で、60万円で売却した場合は40万円を事業主貸に計上します)。

2. 「事業主借」勘定では、

   – 家事用の現金等で支払った事業上の必要経費、

   – 事業用預貯金の利息 (税引後)、

   – 事業用固定資産を売却して譲渡益が生じた場合のその差額 (例えば、固定資産の帳簿価額が80万円で、100万円で売却した場合は20万円を事業主借に計上します)。

これらの記録は確定申告書に添付する貸借対照表に反映され、青色申告特別控除を受ける際に必要となります。

現金主義と55万円または65万円の青色申告特別控除

Q.前々年の所得金額が300万円を超えた場合は、現金主義の取りやめの手続きをしなくても55万円または65万円の青色申告特別控除を適用できますか?

A.前々年の所得金額が300万円以上であれば、現金主義の所得計算の特例は適用されません。したがって、他の条件を満たしていれば55万円または65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。

Q.現金主義の適用者がその年の3月15日までに取りやめの手続きをしないで、年初から記帳の方法をいわゆる発生主義に変更している場合には、55万円または65万円の青色申告特別控除を適用できますか?

A.その年の前々年の所得金額が300万円以下であり、3月15日までに現金主義の取りやめの手続きをしていない場合、たとえ記帳方法を発生主義に変更していても、現金主義の特例が適用されます。このため、55万円または65万円の青色申告特別控除を受けることはできません。