「所得税」カテゴリーアーカイブ

受け取った義援金

Q.大震災で自宅が全壊したことから、10万円の義援金を受け取りました。雑損控除の申告をしたいと考えていますが、損害額の計算上この義援金の額を差し引かなければならないのでしょうか。

A.雑損控除で考慮する損害額を計算する際は、その資産が受けた損害から保険金や損害賠償金などによって補填された金額を引く必要があります。しかし、あなたが受けた義援金は、災害によって受けた見舞いであり、資産的損害を補填する目的のものではありません。そのため、この義援金は雑損控除の計算において差し引く必要はありません。

東日本大震災による税制上の措置

Q.東日本大震災により事業用資産や棚卸資産などに被害を受けた個人事業者を対象とする、被災事業用資産の損失に係る取扱い、純損失の繰越控除、被災代替船舶の特別償却などの税制上の措置について説明してください。

A.東日本大震災で被害を受けた個人事業者向けの税制上の措置には以下が含まれます。

1. 被災事業用資産の損失処理: 大震災による棚卸資産や事業用資産の損失は、必要経費として計上可能で、青色申告者は過去の所得に繰り戻し還付請求ができます。

2. 純損失の繰越控除: 損失の一定割合以上を被った事業者は、損失額を5年間繰り越して控除が可能です。具体的には、震災損失額の割合が一定以上の場合、青色申告者はその年の純損失額を、白色申告者は被災事業用資産の損失額と変動所得に関する損失額の純損失金額をそれぞれ繰り越せます。

3. 被災代替船舶の特別償却: 大震災により失われた船舶等を置き換えた場合、その取得価額に対して特別償却を適用できます。この適用期間と償却率は資産の種類によって異なります。

4. 特定事業用資産の買換え等の特例: 譲渡資産を一定期間内に買換え、かつ同時期に買換資産を事業用に供したり、供する見込みがある場合、譲渡所得の課税を繰り延べることができます。また、この特例は相続事業用資産の譲渡や買換資産の取得期間にも適用されます。

震災特例法のあらまし

Q.震災特例法に係る所得税の特例のあらましについて、その主なものを説明してください。

A.平成23年4月27日に公布、施行された「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」(震災特例法)は、東日本大震災で被害を受けた人たちに対して、以下のような特例措置を提供します。

1. 災害減免法と雑損控除の特例:被災した住宅や家財の被害に対して、災害減免法による税の軽減か雑損控除のどちらか有利な適用を選べ、所得税の軽減が可能です。通常は平成23年分の所得税に適用されるものですが、特例により平成22年分の所得税にも適用することができます。さらに、雑損控除でカバーできない損失に関しては、翌年から5年間繰り越すことが可能です。

2. 被災事業用資産の損失の必要経費算入特例:被災した店舗などの事業用資産の損失に対し、平成22年分の事業所得などの必要経費に算入する選択が可能です。

3. その他の主な特例措置として、震災関連の寄附金控除特例、財産形成住宅貯蓄契約の要件に該当しなくなった場合の課税特例、被災代替船舶の特別償却、被災者向け優良賃貸住宅の割増償却、被災した個人の債務処理計画に関する課税特例、特定事業用資産の譲渡所得の課税特例、住宅取得時の所得税額特別控除適用期間特例、住宅借入金の特別控除額特例などがあります。

災害被害者の源泉所得税の徴収猶予及び還付

Q.サラリーマンであり、集中豪雨によって家屋や家財に被害を受けた場合、所定の手続きをすれば給与等に対する源泉所得税の徴収猶予や還付を受けることができると聞きましたが、どのような場合に受けられますか?

A.災害による被害を受けた給与所得者や公的年金受給者が、所得税と復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けられるかは、その年の合計所得金額の見積もりや災害発生の時期などによって異なります。災害によって家屋や家財の損害がその価値の半分以上で、かつその年の所得見積もりが1,000万円以下である場合に、税制上の救済措置が適用されます。例えば、災害を受けてから一定期間内に受け取る給与や公的年金に対する所得税と復興特別所得税の徴収が猶予されるか、支払い済みの税金が還付されることがあります。具体的には、所得額によって救済の範囲が異なり、500万円以下、500万円を超え750万円以下、750万円を超え1,000万円以下の場合に分けられ、災害発生日から一定期間内に支払われる所得に対して、所得税額及び復興特別所得税額の全額または半額が徴収猶予され、既に徴収された税金についても同様の取り扱いがされます。さらに、災害による損害が家屋や家財の価値の半分に達しない、またはその年の所得が1,000万円を超える場合でも、税の軽減免除は受けられませんが、雑損控除の適用で税額が軽減される可能性があります。雑損控除は、災害による損失額から一定の計算により算出され、所得から差し引くことができます。損害が大きい場合、翌年以降3年間に渡って所得金額から控除することも可能です。

災害減免法による減免措置と雑損控除の選択適用

Q.災害減免法の規定による減免措置を受けているが、確定申告時に雑損控除を選択することは可能ですか?また、どちらを選ぶべきかも教えてください。

A.はい、可能です。災害減免法による減免措置を受けているサラリーマンや事業所得者は、確定申告時に所得税法に基づく雑損控除を適用することができます。これは、納税者にとって有利であれば、災害減免法の適用から雑損控除へと切り替えることが可能とされています。ただし、同一の災害で生じた損害に対して、雑損控除と災害減免法の減免措置を同時に適用する、または部分的に分けて適用することは許されていません。選択はどちらか一方のみとなります。

どちらが有利かは、被災者の所得状況や保険からの補償額、損害の程度によって異なります。一般的に、所得金額が500万円以下の場合は災害減免法が、1,000万円を超える場合は雑損控除が有利となる傾向があります。500万円から1,000万円の間では、損害額が所得に近ければ雑損控除が、少なければ災害減免法が有利となります。

給与所得者等の徴収猶予及び還付を受けるための手続

Q.自宅が集中豪雨による山崩れで全壊したため、給与等に対する源泉所得税の徴収猶予と還付を受けようと思いますが、その手続を教えてください。

A.被災して損害を受けた給与所得者が所得税や復興特別所得税の軽減、免除、または徴収の猶予を受けるには、給与や公的年金などの支払者を通じて、または直接、納税者の住所地にある所轄税務署長に対して「源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予承認申請書」や「還付申請書」を提出する必要があります。具体的に、災害減免法に基づき徴収猶予や還付を受けるには、以下の形式で申請を行います。

1. 災害減免法に基づく徴収猶予で、「令和年分源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予・還付申請書(災免用)」を給与等や公的年金等の支払者を通じて提出する。

2. 災害減免法に基づく還付だけを求める場合は、直接納税地の所轄税務署長に申請書を提出する。

提出した申請書に基づいて徴収猶予される源泉所得税および復興特別所得税は、申請書を提出した後に受け取る給与などに適用されます。また、災害減免法による徴収猶予や還付を受けた人は、年末調整を行わず、確定申告を提出することで所得税額の精算を行います。

損害金額の判定

Q. 火災によって住宅を全焼し、家財も一部消失してしまいました。損害額はそれぞれどうなっていますか?また、この場合に所得税の災害減免法による減免を受けることはできますか?同一年中に複数の災害があった場合の損害金額の判定方法についても教えてください。

A. 

住宅と家財が火災により損害を受けた場合、災害による損害金額は、被災前の価値から被災後の価値と受け取った保険金などを差し引いた後の金額で判断します。具体的には、災害で受けた住宅や家財の損害が元の価値の半分以上なら、所得税の減免が可能です。

質問のケースでは、住宅の損害額は被災前の1,600万円から保険金600万円を差し引き、結果として1,000万円の損害が認定されました。この損害は被災前価値の半分以上です。しかし、家財については、損害額が30万円であり、被災前価値の半分に満たないため、この部分については減免の対象にはなりません。

もし同一年に複数の災害があった場合は、各災害ごとの損害金額が半分未満でも、年間の累積損害額が半分以上になれば、その累積した損害額をもって減免の条件として考慮されます。

このシナリオにおける所得は450万円しかないため、所得金の上限要件(1,000万円以下)を満たし、災害減免法の適用を受けることができます。

住宅及び家財の意義

Q.災害減免法の規定により所得税の軽減免除の制度が適用されるのは住宅又は家財に損害を受けたときとされていますが、この「住宅」又は「家財」には、別荘や生活に通常必要でないものは含まれないと思いますが、どのような範囲のものをいうのですか。

A.災害減免法に基づいて所得税が軽減または免除される「住宅」と「家財」は以下のように定義されています。

「住宅」については、所有者自身や所有者と一緒に生計を立てる配偶者や親族が普段生活している家を指します。この定義から、以下の点が明確にされています:

1. 生活の本拠地でなくても、もし所有者やその家族が2か所以上で生活していれば、それらの住宅はすべて「住宅」と認められます。

2. ただし、普段は生活していない別荘などは「住宅」には当てはまりません。

3. 普段使っている家の倉庫や物置などの付属建物も「住宅」に含まれます。

加えて、生活とその他の目的で使われる「共用住宅」の場合、生活に使われる部分が明確に区別されているなら、その部分のみを「住宅」として扱います。主要な部分が住宅として使われている場合には、「住宅」とみなされますが、そうでない場合は住宅ではないとされます。

「家財」に関しては、所有者や家族が日常生活で普通に必要とされる家具、衣服、書籍などの動産を指します。ただし、価値が高い貴金属や美術品など、日常生活に必要以上のものは「家財」には含まれません。

災害減免法による所得税の軽減免除

Q.菓子小売業を営んでおり、事業所得が500万円でした。今年、火災で住宅と家財に大きな損害を受けましたが、住宅は全焼し、損害額は住宅と家財の価額の50%を超えています。このような場合、災害減免法による所得税の軽減免除が受けられるか説明してください。

A.災害により住宅や家財が大きな損害を被り、その年の合計所得金額が1,000万円以下であり、更にいくつかの条件に該当する場合、災害減免法によって所得税と復興特別所得税の軽減または免除を受けることができます。主な要件は、(1) 災害によって本人または同居する家族が所有する住宅や家財に被害を受けたこと、(2) 災害による損害額が、保険金等で補填された後の額が住宅や家財の価値の半分以上であること、(3) 合計所得金額が1,000万円以下であること、(4) その損失額について所得税法に基づく雑損控除の適用を受けていないことです。また、合計所得金額に応じて免除される所得税の額が異なります。あなたの場合、事業所得が500万円なので所得税の全額が免除される見込みです。災害減免法の適用を受けるためには、確定申告書に災害の被害状況や損害金額を記載し、所轄の税務署に提出する必要があります。また、予定納税額の減額申請を事前に行い、翌年の確定申告で精算することも可能です。災害減免法が適用される「災害」には自然災害だけではなく、火災や交通事故などの人為的なものも含まれますが、自己の意図による火災は含まれません。

再調査の請求に対する決定と審査請求

Q.私は税務署長から更正処分を受けたので再調査の請求をしましたが、再調査の請求に対する税務署長の決定はどのような種類がありますか。また、再調査の請求の決定について不服申立てができますか。

A.税務署長からの更正処分に対し再調査を求めた際、税務署長が下す決定には、却下、棄却、取消し(一部取消しと全部取消し)、そして変更の4つの種類があります。却下は再調査請求が期限切れや不適法な場合に、形式的な審理で決定されます。棄却は再調査請求が適法であるものの、内容に理由がないと判断された場合です。取消しは再調査請求に理由ありと判断された場合で、問題の処分の一部または全部を取り消します。変更は再調査請求に理由ありとされ、例えば納税猶予期間を調整するなど、具体的な処分の内容を変更しますが、これは請求人に不利益をもたらす変更は許されません。再調査の決定に不服がある場合は、その決定の受け取り翌日から1か月以内に国税不服審判所へ審査請求が可能です。また、直接国税不服審判所に審査請求を行うことも選択できます。