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新設法人と簡易課税制度の適用

Q.令和5年6月25日に設立した株式会社(資本金1,000万円、4月末決算)が、新設法人として消費税の納税義務がありますが、初期2期に簡易課税制度を適用できるか?

A.新設法人で資本金1,000万円以上の場合、消費税の納税義務が免除されません。簡易課税制度は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合に適用できます。お社の場合、基準期間内の売上高がないので、初期2期に簡易課税制度の適用が可能です。この制度を適用するためには、課税期間の開始前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要がありますが、新規で事業を開始した場合はその課税期間の最終日までに提出すれば、当該課税期間から簡易課税制度を適用できます。従って、令和6年4月30日までに提出すれば、1期目から簡易課税制度を利用できます。

参考:法9①、法12の2①、法37、令56①、基通1-5-19、様式通達第24号様式

新設法人に該当する場合の届出

Q.当社は、令和5年6月25日に設立された4月末決算法人で、資本金が1,000万円です。消費税法第12条の2第1項に定める新設法人に該当し、1期目及び2期目は課税事業者になります。この場合、何か届出の必要はあるのでしょうか。また、3期目が引き続き課税事業者になる場合及び免税事業者になる場合、それぞれどのような届出が必要ですか?

A.新設法人に該当する場合、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要がありますが、法人設立時に「法人税法第148条」に基づき提出する「法人設立届出書」に消費税の新設法人に該当する旨を記載している場合は、別途届出書の提出は不要です。3期目で課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者に該当するため、「消費税課税事業者届出書」を提出します。免税事業者となる場合は追加の届出は不要です。ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも特定期間の売上高が1,000万円を超える場合は課税事業者になります。

届出者の名称及び納税地

届出者の行う事業の内容

設立の年月日

事業年度の開始及び終了の日

新設法人に該当する事業年度の開始の年月日

その事業年度の開始日における資本金の額または出資の金額

その他参考となるべき事項

参考:法9① 、9の 2、 57① 一、②、規26⑤、基通1-5-18、 1-5-20、 様 式通達第 3号様式、第10-(2)号様式

外国法人である「新設法人」

Q.消費税法第12条 の2第 1項の「新設法人の納税義務の免除の特例」は、国外に本店や主たる事務所を持つ法人(外国法人)にも適用されますか?また、消費税法でいう「新設法人」とはどのような法人を指し、外国法人にもこの法の適用がある場合、「資本金の額や出資の金額」はどのように判定されるのでしょうか。

A.消費税法の「新設法人」に関する規定は、外国法人にも適用されます。これは、外国で設立されてから2年間で、事業年度開始日時点での資本金の額や出資の金額が1,000万円以上あれば、その法人も新設法人と見なされ、課税資産の譲渡などを行った場合でも、消費税の納税義務は免除されません。資本金や出資金の判定については、設立初年度は日本国内での登記上の資本金や出資金額で、2年目は前事業年度の貸借対照表の額で判定されます。外国通貨で表示された資本金や出資金の円換算には、法人税基本通達の考え方が適用され、事業年度開始日の電信売買相場の仲値によって換算されます。

参考:法12の2①、法基通20-5-36

新設法人の範囲

Q.消費税法第12条の2第1項の規定により、創立初めの2年間で納税義務が免除されないこととなる資本金または出資金が1,000万円以上である法人は、法人税法第2条第9号に定義されている普通法人だけですか?

A.いいえ、株式会社などの普通法人だけでなく、農業協同組合や公益法人、さらに地方公営企業等も、出資金が1,000万円以上ある場合は、消費税法第12条の2第1項の規定に基づく納税義務の免除の特例の対象となります。ただし、社会福祉法人については、通常は非課税の資産の譲渡などしか行わないため、出資を受け入れる場合でもこの規定の適用外となります。

参考:法12の2①、令25、基通1-5-16

設立2期目に「新設法人」に該当する場合の納税義務の免除の特例

Q.当社は資本金300万円で設立された株式会社ですが、設立初年度と次の年度の消費税の納税義務が免除されます。もし初年度の途中で資本金を1,000万円に増資した場合、次の年度の消費税の納税義務はどうなるのでしょうか。

A.消費税法に基づくと、設立時に資本金又は出資の金額が1,000万円以上であると新設法人に該当し、納税義務免除の対象外となります。したがって、設立初年度の途中で資本金を1,000万円に増資した場合、その次の年度は新設法人に該当することになり、消費税の納税義務免除は適用されません。

参考:法12の 2①、基通1-5-15

新設法人における納税義務の免除の特例

Q.令和5年6月25日に新設した資本金1,000万円の法人ですが、消費税の納税義務は免除されますか?

A.新設法人の場合、最初の2年間は基本的に消費税の納税義務が免除されますが、その期間でも資本金が1,000万円以上の場合は免除されません。従って、貴社の場合は納税義務が免除されないことになります。この納税義務の免除条件は、第1期目だけでなく第2期目においても同じ条件が適用されます。ただし、合併や分割等で設立した法人や、納税義務が免除される法人でも課税事業者を選択することは可能です。

参考:法9①④、11~12、12の2①、基通1-4-6、1-5-17

分割があった事業年度の納税義務の免除の特例

Q.当社は会社組織の再編成を目的として会社の分割を計画しており、消費税の納税義務はどのようになるでしょうか。

A.会社の分割に伴う消費税の納税義務については以下の通りです。

1. 分割があった日の属する事業年度及びその翌事業年度について

   – 新設分割した場合、新設分割子法人が、分割によって新たに設立され、基準期間のない事業年度で、分割前の親法人の課税売上高のいずれかが1,000万円を超える場合、または新設法人が資本金1,000万円以上の場合、納税義務は免除されません。

   – 分割後の新設分割親法人や吸収分割により営業を承継した法人、分割法人は、それぞれ基準期間内の課税売上高によって納税義務の有無が判定されます。

2. 分割があった日の属する事業年度の翌々事業年度以降について

   – 新設分割子法人及び新設分割親法人が特定の要件に該当し、それぞれの基準期間内の課税売上高とそれに対応する期間の課税売上高の合計が1,000万円を超える場合、納税義務は免除されません。

   – 吸収分割の場合における分割承継法人及び分割法人も、基準期間内の課税売上高に基づき納税義務の有無が判断されます。

参考:法9の2、12、12の2①、令24、基通1-5-6の2

前事業年度または前々事業年度に合併があった場合の納税義務の特例

Q.前事業年度または前々事業年度に他の法人を吸収合併した場合、消費税の納税義務の判定に特別な規定はありますか?

A.前事業年度の基準期間の初日の翌日から事業年度開始日の前日までに吸収合併があった場合、合併法人及び被合併法人の基準期間の課税売上高を合算した金額が1,000万円を超えると、その事業年度の消費税の納税義務が免除されないことになります。計算方法には、合併法人と被合併法人の課税売上高を特定の方式で計算し加算するものです。したがって、合併後の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで消費税の納税義務の有無を判定します。

参考:法9の2、11②、令22②、基通1-5-6、1-5-7

合併があった事業年度の納税義務の免除の特例

Q.当社が吸収合併したA社の年商が約5,000万円である場合、合併後も消費税の免税事業者として扱って良いのでしょうか?

A.事業年度の途中で他法人を合併した場合、その年度の基準期間の課税売上高が一定額以下でも、合併された法人の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合、合併後のその年度の間は消費税の納税義務が免除されません。A社の年商が5,000万円ならば、基準期間の課税売上高も同程度であると仮定すると1,000万円を超えるため、合併後のその事業年度においては課税事業者となります。

参考:法9、1l①、基通1-5-6

前年 又は前々年に相続があった場合の納税義務の免除の特例

Q.私は食料品の小売業を営んでおり、令和3年分の課税売上高が1千万円以下です。令和4年2月に父が亡くなり、父が営んでいた雑貨品小売業を相続しました。この場合、令和5年分には免税事業者となることができるでしょうか。

A.前年または前々年に相続によって事業を承継し、その年の基準期間の課税売上高が1千万円以下の場合でも、相続した事業と自身の事業の課税売上高の合計が1千万円を超える場合には、消費税の納税義務から免除されません。従って、令和3年分の課税売上高と相続した雑貨品小売業の売上高の合計が1千万円を超えている場合は、令和5年分の消費税の納税義務が発生します。

参考:豪法9①、9の2、10②、基通1-5-1、1-5-4