「消費税法」カテゴリーアーカイブ

仕入税額控除の適用要件

Q.令和元年10月1日から令和5年9月30日までの間、仕入税額控除を受ける際の要件として採用された「区分記載請求書等保存方式」では、どのような帳簿や請求書等を保存する必要がありますか?

A.令和元年10月1日から令和5年9月30日まで、「区分記載請求書等保存方式」においては、軽減税率適用品目とそれ以外の商品の区分を明確化するため、特定の内容を記載した帳簿と請求書等の保存が必須です。保存が必要な帳簿には、課税仕入れの相手方名、行った日付、仕入れた資産やサービスの内容、支払い金額が含まれます。一部の業種では相手方名称の記載が省略可能です。保存が必要な請求書等は、課税対象の資産の譲渡等について、作成者の名前、譲渡日、内容、軽減税率と標準税率の合計額、受け取り事業者の名前が記載された書類を含みます。これらの書類は、確定した課税期間の末日から7年間保存する必要があります。

参考:法3∝)D⑨ 、令49、 50、 平28改 法附34②

いわゆる「95%ルール」の適用要件

Q.仕入税額控除制度において、「95%ルール」とは何か、その適用要件を教えてください。

A.「95%ルール」とは、その課税期間における課税売上高が5億円以下の事業者に限り適用されるルールです。課税売上割合が95%未満の場合や、課税売上高が5億円を超える場合には、仕入控除の計算を個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかで行う必要があります。課税期間が1年未満の場合、その期間の課税売上高を年間に換算して5億円を超えるかどうかで適用の判定を行います。また、「課税期間における課税売上高」とは、その期間中に発生する消費税が課税される取引と免税売上の合計から、売上返品や売上値引き等の金額を差し引いた金額を指します。

参考:法30②⑥

免税期間の資産の譲渡に関する対価の返還等の取扱い

Q.免税事業者であった期間に課税資産を譲渡した後、課税事業者になってから仕入れや売上げに関する返品や割戻しを行った場合、消費税法における対応はどのようになりますか?

A.免税事業者であった期間に課税資産を譲渡した場合の消費税額の調整は、課税対象となった対価が返還された際に行われます。この期間に譲渡した資産について、課税事業者になった後に生じた仕入れや売上げの返品・割戻しは、消費税免除期間の活動に基づくものであるため、仕入れに対する消費税額の控除の特例(消費税法第32条第1項)や売上げに対する消費税額の控除(消費税法第38条第1項)の適用外です。しかし、免税期間に課税仕入れに関する返還があった場合で、消費税法第36条の適用を受けた棚卸資産に関しては、仕入れに対する消費税額の控除の特例が適用されます。基準期間における課税売上げの計算や課税売上割合の計算では、この期間の売上げに関する返還があっても、その売上げに基づく消費税額は考慮されず、課税売上高及び課税売上割合の計算から除外されます。

参考:法9②、32①、36、38①、令48①、基通12-1-8、14-1-6

消費者に対するキャッシュバックサービス

Q.メーカーとして新製品キャンペーンで製品購入者全員にキャッシュバックサービスを行う予定ですが、これは売上に対する対価の返還と見なされますか?

A.事業者が販売促進を目的として卸売業者や小売業者など取引先に対して販売数量や販売高に応じて支払う販売奨励金は、売上に対する対価の返還と見なされます。そのため、メーカーが製品購入者にキャッシュバックを行う場合も、売上に対する対価の返還と考えられます。

参考:法38① 、基通14-1-2

貸倒引当金勘定に繰り入れた損失見込額と貸倒れに係る消費税額の控除について

Q.売掛金に対して貸倒引当金を繰り入れた場合、その売掛金に係る消費税額も控除できるのか?

A.貸倒れに係る消費税額の控除は、国内で税を含む資産の譲渡等を行った際、その譲渡等の相手方への売掛金やその他の債権が回収不能になった場合に適用されます。この回収不能は、例えば会社更生法による更生計画の認可等、特定の事実に起因するもので、売掛金などの資産から得られるはずの税込みの金額のうち、一部または全部を受け取ることができなくなった場合、その受け取れなかった部分に相当する消費税額を控除することができます。しかし、貸倒引当金を繰り入れる行為は回収不能見込額の認識であり、実際に回収不能になったわけではないため、消費税額を控除の対象とすることはできません。

参考:法39① 

免税事業者となる場合の棚卸資産に関する消費税額の調整

Q.当社は、翌課税期間で免税事業者となる見込みです。このとき、当課税期間中に仕入れた棚卸資産を翌課税期間に売上げた場合、消費税はどのように扱われるのでしょうか?

A.免税事業者となる予定の課税期間直前に課税仕入れをした棚卸資産をその期間の末に保有している場合、その棚卸資産に関わる消費税額を当該期間における仕入税額控除の対象とすることはできません。つまり、仕入れた棚卸資産を翌課税期間以降に売上げる場合、その消費税額については当課税期間で仕入税額控除することはできなくなります。

参考:法36⑤

免税事業者から課税事業者への変更時の棚卸資産に関する取り扱い

Q.免税事業者であった期間に仕入れた商品を、課税事業者となった後に販売する場合、その商品に対する消費税の取り扱いはどうなりますか?

A.免税事業者が課税事業者になる直前に保有している棚卸資産で、免税期間中に課税対象の仕入れを行った商品については、その商品の仕入れにかかった消費税額を、課税事業者としての課税対象の仕入れ等の消費税額とみなして仕入れ税額控除の対象にすることができます。つまり、免税期間中に仕入れた商品を課税期間に販売する場合も、その仕入れにかかった消費税額を控除することが可能です。

参考:法36①

居住用賃貸建物の取得に関する消費税の仕入税額控除の制限

Q.居住用賃貸建物の取得にかかる消費税の仕入税額控除について知りたいです。我が社は、令和5年5月に契約した居住用賃貸建物を取得し、その後家賃収入を得る予定です。当社の課税売上高は5億円以下で、課税売上割合は95%以上ですが、この建物の消費税の仕入税額控除には制限があると聞きました。具体的にどのような制限があるのでしょうか?

A.居住用賃貸建物の取得にかかる消費税の仕入税額控除は、特定の条件を満たす建物に対して制限が設けられています。具体的には、居住目的でない明らかな事業用途の建物や旅館・ホテルなどの施設、棚卸資産として取得した建物等は、仕入税額控除の対象外とされます。居住用賃貸建物が自己建設の高額特定資産の場合、建設費用が1,000万円以上であれば、その後の課税期間における仕入税額について控除の対象となります。ただし、資本的支出に関する課税仕入れ等についても、高額特定資産に該当する場合は注意が必要です。令和5年5月の契約基づく居住用賃貸建物の課税仕入れに関しては控除できない場合がありますが、課税賃貸用に供したり、他者に譲渡した場合には仕入控除税額を調整することができます。

参考:法30条⑩、35の2、令和2の2、基通11-7-1~11-7-5

課税業務用固定資産の非課税業務用への転用時の調整

Q.課税業務用固定資産を非課税業務用に転用した場合、消費税法上で固定資産に関する控除税額の調整は必要ですか?

A.はい、必要です。課税事業者が固定資産を課税事業用のみに使用するために仕入れた後、3年以内に非課税業務用に転用する場合、その転用した課税期間に仕入れに関する消費税額から調整を行う必要があります。この調整には、以下の概要があります:

– 課税仕入れを行った日から1年以内に転用した場合は、控除済み消費税額の全額を調整します。

– 課税仕入れを行った日から2年以内に転用した場合は、控除済み消費税額の2/3相当額を調整します。

– 課税仕入れを行った日から3年以内に転用した場合は、控除済み消費税額の1/2相当額を調整します。

また、非課税業務用から課税業務用へ転用する場合も同様の方法で増額調整が必要です。

参考:消費税法34条、35条、基本通達12-4-1

調整対象固定資産に関わる資本的支出の取り扱い

Q.資本的支出があった場合、消費税法における調整対象固定資産についてどのように取り扱うのでしょうか?

A.調整対象固定資産にかかる資本的支出は、その固定資産の価値の一部を形成します。資本的支出を独立した資産として判断することで、調整対象固定資産に該当するかを決定します。また、資本的支出に関わる課税仕入れにおける支払い額が100万円以上の場合、消費税法第33条第1項に基づく調整対象固定資産の消費税額調整規定が適用されます。 

参考:法律第2条①十六、令5、基通12-2-5