「消費税法」カテゴリーアーカイブ

適格返還請求書の記載事項

Q.適格返還請求書の記載事項について教えてください。

A.適格返還請求書は、課税事業者から対価の返還が行われる場合に交付される必要があり、以下の内容が記載されている必要があります。

1. 適格請求書発行事業者の名前または社名と登録番号

2. 対価の返還やその基となる課税資産の譲渡を行った日付

3. 課税資産の譲渡に関する内容と、それが軽減税率の対象である場合はその旨と対象資産の内容

4. 税抜き価額または税込み価額を税率ごとに分けての合計額

5. 消費税額または適用税率

対価の返還やそれに基づく課税資産の譲渡には、適格請求書の交付が必要です。

対価の返還に関する金額と消費税額や適用税率が明記されている必要があります。

参考:インボイス通達3-1

適格簡易請求書の記載事項

Q.小売業者として、軽減税率制度に対応した適格簡易請求書の交付が可能ですが、その記載事項について教えてください。

A.適格請求書発行事業者が多くの顧客に物品やサービスを販売する際、適格請求書の代わりに適格簡易請求書を交付できます。この適格簡易請求書の記載事項は、次の5項目です。

1. 適格請求書発行事業者の名前や名称と登録番号

2. 商品やサービスを提供した日付

3. 提供した商品やサービスの内容、軽減税率の対象であればその旨も記載

4. 税率ごとに分けた商品やサービスの税抜き価格または税込み価格の合計額

5. 税率ごとに分けた消費税額または適用税率(どちらか一方の記載でも、両方の記載も可能)

適格請求書と比較して、「書類の交付を受ける事業者の名前や名称」が不要であり、「税率ごとに分けた消費税額」または「適用税率」のどちらか一方の記載で足ります。ただし、登録番号を記載しないレシートは、令和元年10月1日から令和5年9月30日までの間における区分記載請求書に該当します。

 軽減税率制度での適格簡易請求書の具体的な記載事例

 適格請求書発行事業者が交付できる適格簡易請求書の記載事項の要約

所有権移転外ファイナンス・リース取引における適格請求書の保存

Q.所有権移転外ファイナンス・リース取引で、賃借人が賃貸借処理した際に支払ったリース料を分割で課税仕入れとして処理する場合、リース資産の譲渡時に受け取った適格請求書の保存によって仕入税額控除の適用を受けることはできますか?

A.はい、可能です。所有権移転外ファイナンス・リース取引では、リース資産の引渡し時にリース取引全額に対する適格請求書が交付されるものとされています。賃借人が賃貸借処理によりリース料に関して支払うべき日の属する課税期間ごとに分割で課税仕入れとして処理している場合でも、リース資産の引渡し時に受け取った適格請求書を保存することで、そのリース料に関して支払うべき日の属する課税期間ごとに計上した課税仕入れに係る仕入税額控除の適用要件を満たせます。ただし、この適格請求書は、リース料の最終支払期日の属する課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日から7年間保存する必要があります。

適格請求書発行事業者の情報記載要件

Q.取引先コードに登録番号を追加することで、適格請求書の記載事項を満たすことは可能ですか?

A.適格請求書には、「適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号」の記載が必要です。もし、その取引先コードが登録番号と紐付けられ、取引先コード表を通じて双方の間で共有され、購入者もそのコードから登録番号を確認できる場合は、「適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号」の記載要件を満たしたと認められます。そのため、取引先コードに登録番号を追加することで、適格請求書の要件を満たします。ただし、売手が適格請求書発行事業者ではなくなった場合は、取引先コード表の修正が必要ですし、売手が適格請求書発行事業者であった期間を確認できるような対策も必要です。

参考:新法57の4①一、インボイス通達3-3

適格請求書の記載事項

Q.令和5年10月から必要となる適格請求書の記載事項について、どのような対応が必要か教えてください。

A.適格請求書には、以下の事項が記載されている必要があります。これらは、既存の請求書の記載事項に加えて、①発行事業者の名前や登録番号、④税抜きまたは税込価格を税率ごとに区分して表示した金額と適用税率、⑤税率ごとに分けた消費税額などが新たに必要となります。従って、貴社では適格請求書として必要な事項を記載することが求められます。なお、登録番号を記載しない請求書は、軽減税率制度開始時に区分記載請求書として扱われることに注意してください。

参考:法30⑨、新法57の4①、平28改法附34②

資産の譲渡等の時期の特例 と適格請求書の交付義務

Q.工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例(工事進行基準)など、資産の譲渡等の時期の特例を適用した場合、適格請求書の交付義務はどのようになるでしょうか。

A.工事の請負やリース譲渡において、資産の譲渡等の時期の特例を利用した場合、その特例により資産の譲渡等を行ったものとみなされる部分については、適格請求書の交付を要しないことになります。つまり、工事進行基準の適用を受ける工事の請負における資産の譲渡等や、リース譲渡における資産の譲渡等の時期の特例による課税売上げの計上では、適格請求書を発行する必要がありません。ただし、工事の完了時やリース資産の譲渡(引渡し)時には、適格請求書の交付義務が発生します。これは、特例を利用していても、実際に資産の譲渡等が行われた時点で課税事業者からの要請に応じる必要があるためです。

参考:法16~18、60②、新法57の4①、令74②、新令70の9①

対価を前受けした場合の適格請求書の交付時期

Q.システム保守業を営む当社では、定期保守契約に基づき、保守開始前に1年分の代金を先に受け取り、その際に請求書を交付しています。この請求書は適格請求書等保存方式の下で適格請求書として取り扱っても問題ないでしょうか。

A.適格請求書発行事業者は、日本国内で課税対象の物品やサービスの提供があった場合、それを求める税務上の課税事業者に適格請求書を交付する義務があります。この義務は、物品やサービスの提供が実際に行われる前であっても、要求があれば適格請求書を事前に交付することが認められています。そのため、お社が定期保守の代金を請求する際に交付している請求書に適格請求書として必要な事項を記載することで、その請求書を適格請求書とすることができます。ただし、提供されるサービスについて後に変更が生じ、適格請求書の内容に修正が必要になった場合は、修正された適格請求書を改めて発行する必要があります。

参考:新法57の 4①

適格請求書の記載事項の誤りに対する対応

Q.交付した適格請求書の記載事項に誤りがあった場合、何か対応が必要ですか?

A.適格請求書を発行した事業者が、交付した適格請求書、適格簡易請求書、または適格返還請求書に記載された事項に誤りがある場合は、誤りを修正した新しい適格請求書、適格簡易請求書、または適格返還請求書を、請求書を受け取った課税事業者に再度交付しなければなりません。これにより、受け取った課税事業者は、修正された請求書に基づき仕入税額控除を適切に行うことができます。なお、受け取った事業者は、自ら請求書を修正または追記することはできません。

参考:新法57の4④⑤

適格請求書の電子データによる提供

Q.当社は、インターネットを通じて請求書データを取引先に提供していますが、この方法で適格請求書とすることは可能でしょうか。

A.適格請求書発行事業者は、国内で課税資産の譲渡などを行った際、相手方から適格請求書の提供を求められた場合、それを交付する必要があります。しかし、適格請求書の内容を電子データ形式で記録し提供することで、紙の請求書を交付することに代わることが可能です。ただし、電子データとして提供された適格請求書を保存する際には、特定の条件を満たして保存する必要があります。

適格請求書の電子データ提供方法には、光ディスクや磁気テープなどの記録媒体を使った方法、EDI取引における電子データの提供、電子メールによる提供、インターネット上のサイトを通じた提供などがあります。

参考:新法57の 4①⑤、インボイス通達3-2

売手が負担する振込手数料相当額

Q.適格請求書等保存方式の開始後、売手が代金請求の際に既に適格請求書を交付している場合、売手が振込手数料相当額を負担する商慣行においてどのような対応が必要ですか?

A.取引当事者間の契約により、以下のような対応が必要です。

1. 売手が振込手数料相当額を売上値引とする場合:

売手は、振込手数料相当額を売上値引と考えているとき、原則として、適格返還請求書を買手に交付する必要があります。しかし、振込手数料相当額が1万円未満の場合、この適格返還請求書の交付義務は免除されます。例えば、売上値引きが440円の場合は、適格返還請求書の交付は不要です。振込手数料相当額の売上値引きに関して適用される税率は、その課税資産の譲渡に関する税率に準じます。

2. 売手が代金決済上の役務提供(支払方法の指定に関する便宜)を買手から受けた対価とする場合:

売手は、買手から請求金額から差し引かれた振込手数料相当額について、仕入税額控除を受けるために適格請求書の保存が必要になります。また、売手は、振込手数料相当額に関する仕入明細書などを作成し、買手の確認を得て仕入税額控除を行うことができます。

3. 買手が売手のために金融機関に対して振込手数料を立替払した場合:

買手が売手に代わって振込手数料を立替払いした場合、売手は、買手が金融機関から受け取った振込手数料に関する適格請求書及び買手が作成した立替金精算書などの交付を受け、振込手数料に関連する仕入税額控除を行います。買手が金融機関のATMを使用して振込手続を行った場合は、ATM手数料は自動販売機特例の対象となり、適格請求書及び立替金精算書の保存は必要ありません。

参考:新法30⑨三、57の 4③、新令70の 9③二、平28改法附53の 2、 平28改令附 24の 2①