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適格請求書等保存方式の帳簿の記載事項

Q.仕入税額控除の要件として、適格請求書等保存方式において保存する必要がある帳簿の記載事項を教えてください。

A.適格請求書等保存方式では、仕入税額控除を受けるために以下の情報を帳簿に記載して保存する必要があります。

1. 課税仕入れの相手方の氏名または名称

2. 課税仕入れを行った年月日

3. 課税仕入れに関わる資産または役務の内容(もし課税仕入れが他者から受けた軽減対象資産の譲渡などに関わる場合は、その内容と軽減対象資産に関わることを記載)

4. 課税仕入れに関わる支払対価の額

この情報は適格請求書等保存方式において、仕入税額控除を適切に管理するために必要な記載事項です。また、課税仕入れの相手方の氏名または名称、及び課税仕入れに関わる資産または役務の内容は、取引先コードや商品コードなどの記号・番号による表示でも構いませんが、その場合は該当する資産や役務が明確に判別できる必要があります。

参考:法30③、新法30③、平28改法附34②、インボイス通達4-5

帳簿のみの保存での仕入税額控除の要件

Q.適格請求書等保存方式の下で、帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件ですが、帳簿のみの保存で仕入税額控除の要件を満たす場合はどのような時ですか?

A.適格請求書等保存方式のもとでは、通常、帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除を受けるための必要条件です。しかしながら、請求書等の受け取りが難しい場合など、以下のような状況では一定事項を記載した帳簿のみの保存でも仕入税額控除が可能です。

1. 公共交通機関による3万円未満の旅客運送で、適格請求書の交付義務が免除されている場合。

2. 入場券などが使用時に回収され、適格簡易請求書の要素(取引年月日を除く)が記載されている取引(上記1に該当しないもの)。

3. 適格請求書発行事業者ではない古物営業業者からの古物購入(古物営業者の棚卸資産に限る)。

4. 適格請求書発行事業者ではない質屋からの質物取得(質屋の棚卸資産に限る)。

5. 適格請求書発行事業者ではない宅地建物取引業者からの建物購入(宅地建物取引業者の棚卸資産に限る)。

6. 適格請求書発行事業者ではない者からの再生資源及び再生部品の購入(購入者の棚卸資産に限る)。

7. 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品購入で、適格請求書の交付義務が免除されている場合。

8. 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類を対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに投函されたものに限る)。

9. 従業員等に支給される出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当など通常必要と認められる出費。

参考:新法30⑦、新令49①、新規15の4

立替金

Q.当社が取引先のB社に経費を立て替えてもらっており、その際にB社の名称が記載された適格請求書を保存すれば、仕入税額控除のための保存要件を満たすかどうか。

A.貴社がB社から受け取ったC社宛の適格請求書を保存しただけでは、C社から貴社に交付された適格請求書とは見なされません。しかし、B社から経費の支払先であるC社に対する立替金精算などを通じて、その課税仕入れが貴社に帰属することが分かれば、その適格請求書と精算書の保存で仕入税額控除の保存要件を満たすことになります。この場合、立替えを行ったB社が適格請求書発行事業者でなくても、C社がそれであれば仕入税額控除が可能です。また、立替金精算書等の作成が難しい場合でも、特定の条件を満たした帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられる場合があります。この場合は、適格請求書や立替金精算書の保存は必要ありません。

仕入税額控除の要件として、請求書等の保存が必要です。立替えを受けた際に、適格請求書のコピーとともに、立替金精算書を作成し保存する必要があります。立替金精算書には、仕入税額控除を受けるために必要な事項を記載することが必要です。

参考:インボイス通達4-2

軽減税率の適用対象となる商品がない場合の適格請求書の記載事項

Q.当社は日用雑貨の卸売業者であり、軽減税率の適用対象となる商品の販売がありません。軽減税率制度実施後、仕入税額控除のための請求書等の記載事項を満たす請求書を取引先に交付しています。請求書を適格請求書とするためには、記載内容にどのような変更が必要ですか?

A.請求書を適格請求書とするためには、適格請求書発行事業者の名称または氏名と登録番号、課税資産の譲渡等を行った日付、課税資産の譲渡等に関する資産やサービスの内容、課税資産の譲渡等の税抜価格または税込価格を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率、そして税率ごとに区分した消費税額等を記載する必要があります。軽減税率の適用対象商品がない場合、「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載は不要で、課税資産の譲渡等の対価の額(税込価格)の記載があれば、結果として「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」の記載があり、適用税率(10%)や消費税額等の記載が必須になります。

適格請求書発行事業者の名称または氏名と登録番号

課税資産の譲渡等を行った日付

課税資産の譲渡等に関する資産やサービスの内容

課税資産の譲渡等の税抜価格または税込価格を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率

税率ごとに区分した消費税額

参考:新法57の 4①

一括値引がある場合の適格簡易請求書の記載

Q.小売業を営む当社が、飲食料品と飲食料品以外のものを同時に販売し、合計金額から1,000円の値引きを行う割引券を発行している場合、令和5年10月から値引きを行った際に当社が発行するレシートにはどのような記載が必要ですか?

A.割引券を使用して商品を値引きした場合、レシートには税率ごとに区分した値引き後の税抜き価額または税込み価額を明確に記載する必要があります。値引き前の価額と値引き額が税率ごとに区分されてレシートに記載されていれば、それにより値引き後の価額が確認できるため、記載が必要です。さらに、レシートには値引き後の「消費税額等」も、税率ごとに区分して計算した金額から詳細に記載する必要があります。

顧客が割引券を利用して行った一括の値引き額は、その資産の税率ごとに合理的に区分され、レシートまたは領収書に記載されます。例えば、税込み価格が異なる商品を販売した場合、割引額または値引き後の価額を税率ごとに区分して合計し、明示する必要があります。

複数書類で適格請求書の記載事項を満たす場合の消費税額等の端数処理

Q.当社は、商品を納品する度に取引先に納品書を交付していますが、それに加えて、納品書に税率ごとの税込価額と消費税額、請求書に登録番号を追記すれば、これらの書類で適格請求書の記載事項を満たせますか?また、その場合の端数処理はどうすれば良いですか?

A.はい、納品書に課税対象の税抜または税込額を税率ごとに区分し合計した金額と該当する税率、そして消費税額を記載し、加えて請求書に登録番号を記載すれば、納品書と請求書を合わせたもので適格請求書の記載事項を満たすことが可能です。この場合、納品書で税率ごとに一度の端数処理を行う必要があります。請求書には消費税額の記載は必須ではありませんが、納品書で記載された消費税額の合計を記載しても問題ありません。ただし、この消費税額の合計については、適格請求書に求められる記載事項とは異なる点に注意してください。

参考:インボイス通達3-1

消費税額等の端数処理

Q.適格請求書に記載が必要な消費税額等を計算する際、1円未満の端数処理はどのようにすればよいですか?

A.適格請求書で消費税額等に1円未満の端数が出た場合、一つの適格請求書について、税率ごとに一度だけ端数処理をする必要があります。端数の処理方法は、切り上げ、切り捨て、四捨五入など、どの方法を用いても構いません。ただし、一つの適格請求書に記載された商品ごとに消費税額の端数処理をしてその合計を記載することは許されていません。

参考:新令70の10、インボイス通達3-12

令和5年9月30日以前の請求書への登録番号の記載

Q.令和5年9月30日以前に交付する区分記載請求書等に登録番号を記載しても問題ないですか?

A.はい、問題ありません。令和5年9月30日以前に交付された区分記載請求書等において、記載事項が全て記述されている場合、取引の相手方はこれを適切に保存することができます。この期間中に発行される請求書が、適格請求書の記載要件を満たしていれば、区分記載請求書等として扱うことができ、登録番号を含んでいても構いません。

参考:新法57の4①、平28改法附34②

適格請求書と仕入明細書を一つの書類で交付する方法

Q.適格請求書と仕入明細書を一つの書類で交付する必要がありますか?

A.国内で課税資産の譲渡等を行った場合には、適格請求書発行事業者は課税事業者からの請求に応えて適格請求書を交付する義務があります。そのため、配送料に関する適格請求書は仕入明細書とは別に交付するか、あるいは仕入明細書に適格請求書の記載事項を含めた一つの書類で対応する必要があります。重要なのは、両書類の必要な情報を適切に記載することです。仕入明細書には、仕入れを行った日付、商品やサービスの内容、支払った金額などを、適格請求書には、発行者の氏名や登録番号、譲渡された資産やサービスの内容、取引の価額などを含める必要があります。これにより、適格請求書と仕入明細書の要件を満たした一つの書類で法的な義務を果たすことができます。

仕入明細書の作成者の氏名又は名称

課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号

課税仕入れを行った年月日

課税仕入れに係る資産又は役務の内容

税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率

税率ごとに区分した消費税額等

適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

課税資産の譲渡等を行った年月日

課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容

課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率

税率ごとに区分した消費税額等

書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

参考:新法57の 4①、新令49

軽減対象資産の譲渡等の記載方法

Q.適格請求書における「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載方法はどのようにすれば良いですか?

A.適格請求書で「軽減対象資産の譲渡等である旨」を記載する際は、その取引が軽減税率が適用された課税資産の譲渡等であることが客観的に明らかになるような表示をすれば十分です。記載方法として、以下の三つがあります。1) 同一の適格請求書内で、軽減対象資産の譲渡等の取引ごとに特定の記号や番号を使用して表示し、その記号や番号が軽減対象資産の譲渡等に関するものであることを明確に示す。2) 同一の適格請求書内で、軽減税率が適用される商品とそれ以外の商品を区分けして記載し、軽減対象の取引ごとに「軽減対象資産の譲渡等である旨」を表示する。3) 軽減対象資産の譲渡等に関する取引とそれ以外の取引を分けて別々の適格請求書を作成し、軽減対象の取引が行われた適格請求書において「軽減対象資産の譲渡等である旨」を表示する。これらの方法で、軽減税率が適用された課税資産の譲渡等であることが明示されれば、適切に記載されているとみなされます。

参考:インボイス通達18