「消費税法」カテゴリーアーカイブ

飲食料品の定義と軽減税率の適用範囲

Q.軽減税率が適用される「飲食料品の譲渡」での「飲食料品」とはどういったものですか?

A.「飲食料品」は食品表示法に定められている食品のことで、ここでは人が飲んだり食べたりするためのものを指します。ただし、酒税法で定められたお酒や、人の飲食以外の目的で販売される工業用塩などは含まれません。食品表示法では、全ての飲食物を「食品」としており、医薬品や医薬部外品、再生医療等製品のほか、食品衛生法における「添加物」も含まれます。さらに、食品とそれ以外のものが一体となって販売される場合(価格が一体となって提示されているものに限る)、一定の要件を満たせば「飲食料品」とみなされます。しかし、「外食」と「ケータリング」サービス、また一定の条件に該当する「一体資産」は軽減税率の適用外となります。

有料老人ホームなどで提供される飲食料品

食品と食品以外の資産が一体となっている資産で、税抜価額が1万円以下であって、食品に係る部分の価額が全体の2/3以上であるもの

参考:平 28改 法附34① 一 、平28改令 附 2、 3

軽減税率制度の概要

Q.「軽減税率制度」とはどのようなものですか。

A.「軽減税率制度」とは、特定の品目の販売に適用される税率を通常の10%から8%に引き下げる制度です。この制度により、次の2つの品目が対象とされます。1つ目は、酒類を除いた飲食料品です。ただし、外食やケータリングは除外されます。2つ目は、週に2回以上発行される定期購読に基づく新聞です。また、保税地域から引き取られる飲食料品も軽減税率の対象となります。

この制度の導入に伴い、事業者は取引ごとに異なる税率を適用する必要があり、軽減税率と標準税率の区分経理が必要になります。また、中小事業者には税額計算の特例が適用され、2023年10月1日からはインボイス制度が開始されます。

参考:新法30① 、57の 2、 57の 4、 平28改 法附34①②、38~ 40 

値引販売における価格表示の取扱い

Q.スーパーマーケットなどで、特定の時間に限り特定商品の価格を下げたり、売れ残りを避けるために一定時間後に生鮮食料品の価格を下げたりする場合でも、総額表示は必要ですか?

A.値引販売時の価格表示において、「○割引き」や「○円引き」という表示は、総額表示の義務からは除外されます。ただし、値引き後の価格を表示する場合は、その価格を総額表示しなければなりません。

参考:総額表示通達7

レシートや請求書における表示

Q.レシートや請求書における表示も、総額表示義務の対象ですか?

A.総額表示義務は、値札や店舗内の掲示、チラシ、商品カタログなどを通じて、商品やサービスの価格を一般の人々に事前に示す場合に適用されるものです。したがって、取引が確定した後に発行される「レシート(領収書)」や「請求書」に関しては、総額表示義務の適用対象外です。

参考:法63、総額表示通達8

単価、手数料率の取扱い

Q.商品の単価や手数料率も総額表示が必要ですか?

A.はい、商品やサービスの単価や手数料率を含む、最終的な取引価格が明示されない場合でも、実質価格を示しているとみなされる表示に対しては総額表示が必要です。例としては、肉の量り売りやガソリンの単価、不動産仲介手数料や有価証券の取引手数料などの表示があります。どれも取引の際の価格の一部を表しており、総額表示のルールに従って修正された価格表示が要求されます。

肉の量り売り:「100g 200円」→「100g 216円」

ガソリン、灯油:「1リットル 100円」→「1リットル 110円」

不動産仲介手数料:「売買価格の3.00%」→「売買価格の3.3%

希望小売価格の取扱い

Q.「希望小売価格」は総額表示が義務付けられていますか?

A.「希望小売価格」に関しては、製造業者、卸売業者、輸入総代理店など小売業者以外の者が設定するものであり、消費者に対する価格表示ではないため総額表示の義務はありません。しかし、小売店が「希望小売価格」を商品パッケージに記載し税抜き価格で販売する場合は、消費税額を含めた総額を表示する必要があります。もし「希望小売価格」が税込み価格であれば、総額表示の必要はなく、これは小売店にとって便利です。

参考:総額表示通達6

総額表示義務の対象となる価格の表示媒体

Q.総額表示が義務付けられる価格表示は、どのようなものがありますか?

A.課税事業者が消費者に対して事前に行う価格表示は総額表示の対象となります。これには以下のような価格表示が含まれます。

1. 値札、商品陳列棚、店内表示による価格表示。

2. 商品、容器または包装による価格表示及びこれらに付随する物による価格表示。

3. チラシ、パンフレット、商品カタログ、説明書面その他これらに類似するものによる価格表示(ダイレクトメールやファクシミリ等を含む)。

4. ポスター、看板(プラカードや建物、電車または自動車等に掲載されたものを含む)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似するものによる価格表示。

5. 新聞、雑誌その他の出版物、放送、映写または電光による価格表示。

6. 情報処理用機器による価格表示(インターネット、電子メール等を含む)。

ただし、口頭による価格の表示(電話によるもの含む)は総額表示の対象外です。

参考:総額表示通達8

専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合の意義

Q.不特定かつ多数の者に対して課税資産の譲渡等を行う場合であっても、「専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合」は、総額表示義務の対象から除くこととされていますが、どのような場合が該当するのですか。

A.「専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合」とは、その資産やサービスの種類や性質が、ほとんどの場合、事業でしか使用されないようなものであることが明らかな取引のことを言います。例として、建設機械の販売展示、または事業用資産のメンテナンスサービスなどが挙げられます。

参考:総額表示通達4

税込経理方式の場合の交際費等の取り扱い

Q.消費税の経理処理を税込経理方式で行いたいと思っていますが、交際費の税込処理または税抜処理で法人税法上の取り扱いが変わりますか。

A.税込処理または税抜処理では所得金額は基本的に同じになりますが、交際費など一部または全額を損金として計上できない費用については、税込経理方式を採用した場合、課税所得金額が税抜経理方式よりも多くなることがあります。例えば、資本金が1億円を超える会社の場合、交際費の50%を超える部分は損金に算入できなくなります。例えば交際費が1,100万円(税込み)だとすると、税抜方式と税込方式では課税所得の計算に差が出ます。税込処理をする場合、消費税含む金額で資産取得価額や費用を認識するため、このような差が生まれます。

参考:平成3年1月直法2-1

控除対象外の仕入税額の処理方法

Q.税抜経理方式を採用している場合、非課税売上げに対応する消費税等の控除されない部分の金額はどのように処理すればよいですか?

A.税抜経理方式を採用している場合、課税対象となる仕入れ等の消費税の計算で、控除できない仕入税額が生じることがあります。この控除対象外の消費税額は、法人税の所得計算で次のように処理します。

1. 課税売上割合が80%以上の場合:

   – 資産(棚卸資産を含む)に関する部分は即時に損金処理をするか、資産の取得価額に含めることができます。

   – 経費に関する部分は即時損金処理が可能です。

2. 課税売上割合が80%未満の場合:

   – 資産(棚卸資産を除く)に関する部分で、控除対象外の消費税額が20万円未満のものは即時損金処理が可能です。それを超えるものは、控除対象外消費税額を60で割り、その事業年度の月数を乗じた額を損金処理の限度とします。

   – 棚卸資産に関する部分は即時損金処理が可能です。

   – 経費に関する部分は即時損金処理が可能です。

この処理は所得税においても同様です。

参考:法令139の4