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所得税法上課税されない役員に対する経済的利益

Q.法人が役員に提供する経済的利益のうち、所得税法で課税されない利益にはどのようなものがありますか?

A.所得税法上課税されない役員に対する経済的利益には、以下のものがあります。

1. 出張旅費、転任旅費、退職者や遺族に支給される旅費など、必要と認められる範囲のもの。

2. 通勤手当で、公共交通機関または有料道路を利用する場合は最大150,000円まで、自転車やその他の交通手段の場合は距離に応じて4,200円から31,600円まで。また、最も経済的かつ合理的な定期乗車券の価格など、特定の基準に合うもの。

3. 制服や必要な装備品の供与や貸与、それによる利益。

4. 海外勤務手当が物価や生活環境に照らして通常の給与に加算しても利益と認められない部分。

5. 勤続年数などに照らして社会通念上相当と認められる表彰記念品や旅行、観劇への招待費用。

6. 社会通念上記念品として望ましい、創業何周年記念などのもので、価額10,000円以下のもの。

7. 自社製品の法人からの値引き販売による経済的利益で、法人が原価以上で販売し、値引率が30%以内のもの。

8. 残業や宿直後の食事の支給。

9. 寄宿舎等での電気、ガス、水道等の料金で、寄宿舎に住むため通常必要と認められる範囲のもの。

10. 災害や疾病で一時的に多額の資金が必要な者への合理的な返済期間中の無利息や低利の貸し付け。

11. 法人の事業用役の無償または低廉価格での提供、福利厚生施設の利用。

12. 職務上必要な技術や知識の習得、資格取得のための研修会や聴講費用。

13. 社会通念上行われるレクリエーション費用、特定の条件を満たす慰安旅行。

14. 社会保険料や保険契約に基づく保険料で、月額合計300円以下のもの。

15. 法人が支給する食事で、食事の価値の50%以上を徴収し、差額が月額3,500円以下のもの。

役員賞与引当金の性格と業績連動給与との関係

Q. 貸借対照表の流動負債に「役員賞与引当金」を計上している上場会社がありますが、この引当金の性格はどのようなものですか。法人税法第34条 第1項 第3号の業績連動給与との関係は、どのようになりますか。

A. 上場会社が貸借対照表に計上している「役員賞与引当金」とは、役員に支払われる賞与を会計期間の費用として処理するという「役員賞与会計基準」に基づいています。この基準によると、役員賞与はその会計期間に発生した費用とみなされ、株主総会で決議されるまでの額または見込み額を原則として引当金として計上します。

役員賞与の会計処理は会社法の施行によって変化しました。以前は、役員賞与が未処分利益の減少として扱われていましたが、会社法施行後は役員賞与が役員がその職務執行の対価として受ける利益とされ、そのための費用として会計期間に計上されるようになりました。役員賞与は株主総会での決議がなされる次の事業年度に支払われるため、事業年度末の貸借対照表では流動負債として「役員賞与引当金」が記載されます。

法人税法での業績連動給与と「役員賞与引当金」との関係については、役員賞与引当金は税法上での規定がないため、計上された事業年度では申告時に加算されます。給与が実際に支払われると、申告されていた「役員賞与引当金」は減算されて利益積立金額から除去されますが、その給与が税法上損金として認められるかは、業績連動給与としての要件を満たしているかに依存します。要件を満たす場合には、支払われた事業年度において損金として計上することが可能です。

業績運動給与の算定の基礎となる指標

Q.業績連動給与の算定の基礎となる指標について、税法でどのように定められていますか。また、具体的に用いることができる指標にはどのようなものがありますか。

A.業績連動給与の算定基礎になる指標は、税法によって利益、株式価格、売上高に関する指標として規定されています。これらの指標は以下の詳細に分かれます。

1. 利益に関する指標には、実際の利益額、減価償却費や支払利息などの費用を考慮した利益額、売上高や総資産といった金額を基にした利益の割合、過去のデータや目標値との比較結果があります。具体的な指標としては、営業利益、経常利益、税引前利益、当期純利益、EBITDA(利払い前等利益)、売上高利益率、ROA(総資産利益率)、ROE(自己資本利益率)、1株当たり利益などが考えられます。

2. 株式市場価格に関する指標は、特定期間または日の株価、株価の平均値、株価の目標値との比較、発行済み株式数を用いた株式時価総額などがあります。具体例としては、株価、平均株価、株価上昇額、株価上昇率、株式時価総額、株主総利回り(TSR)があります。

3. 売上高に関する指標は、利益や株価と併用する場合に限り指定され、有価証券報告書に記載された売上高の額や、特定費用を差し引いた売上高などがあります。具体的な使用例としては、売上高、セグメント毎の売上高、特定費用を除いた売上高などが挙げられます。

これらの指標は、企業の業績をより正確に反映し、適切な給与の算定に寄与する目的で設定されています。

損金算入の要件を満たす業績運動給与の意義

Q.法人税法第34条第1項で、損金不算入となる役員給与から除外されているものの第3号に掲げられている「所定の要件を満たす業績連動給与」とは、どのような給与ですか。

A.業績連動給与とは、会社の利益や株価など、会社の業績を示す指標に基づいて決まる金銭、株式、新株予約権などの給与のことです。具体的には、会社やその関連会社の業績に連動した金銭的報酬、株式か新株予約権を提供する給与、さらに特定の条件下で変動する特定譲渡制限付株式や特定新株予約権を用いた給与などが含まれます。ただし、これらの給与が損金算入されるには、(1)同族会社以外の会社やその完全子会社が支給するもの、(2)業務執行役員に対して支給されるもの、(3)他の役員と同様の算定基準に基づくもの、(4)算定基準が客観的な業績指標に基づくもの、など全部で10項目の厳しい要件を満たす必要があります。また、これらの給与制度の設定にあたっては、報酬委員会の決定など、適正な手続きが事前に行われることが求められます。

親会社が負担した出向役員賞与の子会社での取扱い

Q.親会社からの出向者である専務取締役甲に対して、業績悪化のため賞与を支払えない状況で、親会社がその賞与を負担した場合、その賞与支給に関する子会社の税務上の取扱いはどのようになりますか?

A.まず、親会社が子会社の役員に対して賞与を負担した場合、一般的には「役員給与(賞与)/親会社よりの受贈益」と仕訳されることになります。この時、受贈益は益金算入され、役員給与は損金算入されず、申告加算が必要になる可能性があります。しかし、このケースでは、親会社は雇用契約に基づき賞与の支払い義務があるため、親会社が子会社に代わって直接役員に賞与を支給する形ではなく、子会社が親会社からそれを受贈しているとは見なされません。従って、このような仕訳を認定することはできず、役員給与の申告加算は不要です。

それでも、子会社自身が賞与を支給する能力があるにも関わらず、親会社が賞与を負担している場合は、親会社から見て寄附金、子会社から見て受贈益と役員給与の支給として税務上認定されることになります。さらに、子会社が親会社の完全子会社である場合は、親会社からの寄附金は損金不算入、子会社での受贈益は益金不算入となります。

子会社への出向者の賞与を全額負担した場合

Q.子会社への出向者の給与について、当社と子会社との給与較差金を以前から当社が負担しています。今年子会社では業績悪化のため賞与を支給することができませんので、出向者の賞与は全額当社が負担しようと思いますが、給与較差金として認められますか。出向者が子会社で役員になっているときは、いかがでしょうか。

A.親会社が子会社から出向している社員に対して支払う給与較差補てん金は、子会社への贈与ではなく、損金として計上できます。もし子会社が業績不振で賞与を支払えない状況であっても、親会社が出向者の賞与を全額負担することは給与較差補てん金として認識されます。一方、出向者が子会社の役員となっている場合でも、役員賞与は通常、その役員の業績に対して支払うものですが、出向者は基本的には親会社の社員として、業績にかかわらず給与を受ける権利があります。子会社の業績が悪くて賞与を支払うことができない場合でも、親会社は雇用契約に基づき出向者に賞与を支払う義務があるため、役員ではない出向者と同じ扱いで問題ありません。

親会社からの出向役員に対する賞与の月割額を給与負担金に含める場合

Q.親会社が甲に支給する賞与の額の一部を12等分して、毎月子会社から受け入れる給与負担金に加えることとした場合、賞与の月割配分額も、子会社において定期同額給与として認められますか。

A.この質問は、親会社に勤め出向している専務取締役の甲が、親会社から毎月60万円の給与を受け取り、年2回合計250万円の賞与をもらう状況で、親会社が子会社から毎月受け取る給与負担金が70万円、その中の10万円が甲の賞与の月割額になるかということです。ここで、毎月の給与負担金の10万円は、親会社がプールしておき、年に2回の賞与支給時に甲に渡されますが、これが子会社における定期同額給与にはならない可能性があります。しかしながら、子会社が毎月同額の70万円を役員給与として計上することは、この額が定期同額給与に該当することになります。親会社が受け取った給与負担金がその後どのように甲に支給されるかは、子会社における定期同額給与の判断基準には影響しません。

出向役員に支払う給与と出向先から受け入れる給与負担金の差額の取扱い

Q.親会社において甲に支払う給与の額と子会社から受け入れる給与負担金の額との間に差額がある場合、その差額は税務ではどのように取り扱われますか。

A.この状況には二つの主なケースがあります。

1. 親会社が甲(出向役員)に支給する給与が子会社から受け取る給与負担金を超えるとき、この場合の差額は「較差補てん金」と見なされます。この金額は、出向が親会社の必要によるものであり、甲には親会社に対する給与請求権があるため、親会社の損金として扱われます。さらに、子会社が経営不振で甲に賞与を支払えない場合や、子会社が海外にあり出向中の家賃手当を親会社が負担する場合も、この較差補てん金の扱いに該当します。一方、子会社の負担額が計算された給与ベースを下回る場合、その差額は親会社から子会社への寄附金として扱われます。

2. 親会社が子会社から給与額を超える給与負担金を、例えば経営指導料として受け入れる場合には、その超過額が相当と認められるかどうかで税務上の判断が異なります。超過額が甲の出向以外の経営指導など正当な対価として扱われれば問題ありませんが、そうでなければその超過額は子会社から親会社への寄附金として扱われます。また、社会保険事務などの費用も、その金額が相当と認められれば寄附金ではないとされます。

出向役員の給与負担金に関する税的取扱い

Q.親会社から子会社に派遣された専務取締役について、親会社が支給する給与を子会社が給与負担金として支払う場合、その給与負担金は子会社で全額損金算入できますか?

A.はい、出向役員の給与負担金は、特定の条件を満たす場合に、子会社で損金として全額算入できます。親会社から派遣された役員が子会社で給与を受ける場合、基本的にその給与負担金は子会社において出向役員への給与として扱われます。しかし、賞与に関しては、事前に納税地の税務署へ届出を行い、届出通りに給与負担金を支払う必要があります。出向役員が子会社で役員になる場合は、株主総会などでの決議と出向契約で明確に給与負担金を定める必要があります。この給与負担金を損金として算入するには、出向先の法人がその出向契約等に基づいて所管の税務署に内容の届出を行うことが必須です。ただし、出向元法人が支給する給与額を超える部分については、損金としての性格をもちません。また、給与負担金として支出した額が、期間ごとに支払われる給与の額と明確に区分できる場合、それぞれ適切な税務処理が可能です。

役員給与の決定時期について

Q.当社は、3月31日を事業年度の終了日とし、毎年6月下旬の定時株主総会で取締役が選任された後に社長が報酬決定委員会に諮問して、その後に取締役に支払う報酬額を決めています。この報酬決定委員会の答申が出るのに1か月余りを要しますので、取締役給与の改定を会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行うことができません。どのようにすればよいでしょうか?

A.役員給与を損金算入するには、定期同額給与、事前確定届出給与、または特定の要件を満たす業績連動給与である必要があります。24時間以内の選任後に取締役の報酬額を決めることができない場合には、定期同額給与または事前確定届出給与が適切です。ご質問のケースでは、報酬決定委員会の答申が出るまでの期間が定時株主総会から1か月余りとなり、この間に取締役給与の改定を行うことができないため、定時同額給与として扱うことが可能です。これは特別な事情があると認められ、定期的に毎年特定の時期までに決定される場合に限ります。一方、報酬決定委員会によって定められた報酬額で事前確定届出給与として扱おうとする場合、届出期限に間に合わせるためには、定時株主総会の日から1か月以内に支給額を決定し、届出ができるようにする必要があります。