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事前確定届出給与の届出をしている場合における使用人兼務役員に支給する賞与の取扱い

Q.事前確定届出給与に関する届出を行っている場合、使用人兼務役員に支給する賞与は月額給与と同様に区分する必要がありますか?

A.はい、必要があります。事前確定届出給与または業績に基づく給与として損金算入することが可能ですが、使用人兼務役員に支給する賞与に関しても、役員としての賞与部分は事前確定届出給与として扱うべきです。そのため、賞与を役員賞与部分と使用人賞与部分に区分し、それぞれ適切に届出する必要があります。また、使用人賞与部分を損金算入するためには、他の使用人の賞与と同じ時期に支給することが重要です。例えば、使用人兼務役員に対して夏季賞与を支給する場合、使用人分と役員分の支給タイミングを適切に設定し、事前確定届出給与に記載することが必要となります。

使用人兼務役員に対する使用人分の給与として相当な金額

Q.使用人兼務役員の使用人としての職務に対する給与の額は、どのようにして算定するのですか。

A.使用人兼務役員の給与は、役員としての業務ではなく、使用人(従業員)としての業務に対して支払われる部分についてのみ特別な計算方法が用いられます。この給与の算定には、他の従業員への給与支給状況を参考にして、「足切り計算」という方法を使います。この計算法は、使用人兼務役員が行っている使用人としての職務が他の従業員の職務と大体類似している場合に、その他の従業員(比準使用人)に支払われた給与額と相当する部分を、使用人兼務役員の使用人部分の給与とみなします。例えば、取締役総務部長に100万円支給されている場合、比準使用人である人事部長が80万円の給与を受け取っていれば、取締役総務部長の100万円のうち80万円が使用人としての給与として適切とされ、残りの20万円が役員給与となります。特殊な技術や特定の資格を持つ等、特別な事情がある使用人の給与が基準として用いられる場合は、その特別な事情を考慮しない給与額で計算を行います。社内に比準使用人がいない場合は、使用人兼務役員が以前受け取っていた給与、ベースアップの状況、または最上位の使用人への給与などを参考にして適切な給与額を見積もります。

役員に供与した経済的利益と仮装経理等により支給した役員給与の関係

Q.役員に毎月定額の渡切交際費を支給した場合や、法人が毎月役員の家事使用人の給料を負担した場合、そのような費用を支出することが仮装経理に該当し、仮装経理等により支給した役員給与として、その全額が損金不算入とされますか。

A.ご質問の主旨は、「毎月定額で支給される渡切交際費や家事使用人の給料が、仮装経理等による役員給与とみなされ、全額が税務上の損金算入の対象外になるか」ということです。ここでいう仮装経理とは、実際の経済的取引を偽装する会計処理を指します。例えば、会社が役員に無利息でお金を貸し出すケースでは、このお金に対する利息相当額を役員給与として処理しない限り、事実の隠蔽にはならず、これは仮装経理には該当しません。しかし、貸し出される元本そのものが帳簿に記載されていない場合、無利息の貸付けそのものが経済的利益として認識され、事実隠蔽となり得ます。

また、渡切交際費や家事使用人の給料は、実際の費用内容を隠す目的があるため、これらは仮装経理に該当する恐れがあります。しかし、会社がこれらの費用について役員給与として所得税の源泉徴収を適切に行っていれば、事実を隠蔽しているわけではないため、税法上意図的な違反とはみなされません。したがって、これらの支出が自動的に損金不算入の対象になるわけではありません。

仮装経理等により支給された役員給与の損金不算入

Q.事実を隠蔽し、または仮装して経理をすることにより役員に対して支給する給与の額が損金不算入と規定されていますが、この規定が設けられた趣旨を説明してください。法人税法第55条第1項の「不正行為等に係る費用等の損金不算入」の規定との関係はどのようになりますか。

A.事実を隠蔽したり、仮装した経理手法を用いることで役員に支給される給与は、法人の損金に計上することができないと法律で定められています。この規定の意図は、売上を除外したり架空の経費を計上して捻出した資金から不正に役員給与を支給しているケースが税務調査で発見された場合に、これらの不審な取引を認めず、完全に損金に算入できないようにすることにあります。これにより、事実の隠蔽や仮装経理に対する税法の制裁を可能にしています。

次に、法人税法第55条第1項は、企業が不正な行為で税負担を減らそうとした場合、その不正行為にかかった費用や失った額は損金に算入できないと規定しています。この規定では、不正行為で使われた費用やその行為による損失が対象ですが、不正に得た資金(裏金など)で行われた支払いには適用されません。したがって、このような裏金で支払われた役員給与は法人税法第34条第3項に基づき損金として算入できないのです。

監査役報酬の規定と過大給与について

Q.特定の監査役に対する報酬の支給額が監査役間で協議した額を超える場合、それは過大な役員給与となりますか?

A.株主総会では監査役報酬の総額のみを決め、個々の監査役への分配は監査役同士の協議により決定されます。この分配プロセスには取締役会は関与しません。もし、全ての監査役に対して支払われる報酬の合計が株主総会で決定された上限を超えない限り、特定の監査役に協議により定められた金額以上が支払われたとしても、それが税法上の過大な役員給与とは見なされません。

事業年度の途中で就任した役員の役員給与の支給限度額等

Q.事業年度の途中で臨時株主総会で選任されて就任した役員に対する役員給与について、当該臨時株主総会でその選任に伴う支給限度額の増額変更決議をしていない場合、税務上どのように取り扱われますか。

A.役員給与の税務上の取り扱いは、役員給与の支給限度額がどのように定められているかによって異なります。一般的には、全役員の支給限度額が総額で定められている場合が多いです。この場合、新任役員に対しては、役員給与の支給限度額が定まっていなければ、その給与が適切かどうかを判断する法の規定のみが適用されます。なお、通常は役員の異動を考慮して、全役員に対する給与の支給限度額を決定しています。そうであれば、新任役員の給与を含む支給日現在の支給限度額と比べる必要があります。支給限度額を超える場合は、過大な役員給与として経費に算入できない金額が発生します。一方で、各役員ごとに支給限度額を定めている場合、新任役員についてはまだ支給限度額が定まっていないため、同様に法の規定のみが適用されます。指名委員会等を設置している企業では、報酬の決定が個人ごとに行われるため、新任役員の報酬が未定になることは通常ありません。また、新任役員の給与を事前確定届出給与とする場合、特定の期限内に関連する書類を税務署に提出する必要があります。

特定の取締役に対する報酬支給額が取締役会で決定した額を超える場合

Q.株主総会で取締役報酬の総額を決議し、各取締役の報酬額の決定を取締役会に委ねた場合、取締役Aの報酬が取締役会で定めた額を超えた場合、その超過分は過大役員給与とされるか?

A.この場合、株主総会で取締役報酬の総額が5,000万円以内に決められ、各取締役の報酬は取締役会で個別に決定されています。過大役員給与は、株主総会で決定された取締役報酬の限度額と、実際に支払われた金額を比較して判断します。全体の取締役報酬総額が株主総会での決議内であっても、取締役個別に見た場合、取締役Aの報酬が取締役会で定めた額より200万円超えた2,000万円支払われているため、この超過分は過大役員給与と判断されます。国税庁の指針によると、株主総会で全体の取締役報酬の総額を決め、その内訳を取締役会で決定する場合、取締役会で決めた個々の報酬限度額が過大役員給与の判断基準となります。

役員給与の増額に関する株主総会等での決議の方法

Q.定時株主総会等で役員給与の支給限度額を増額する際、前回の決議で使用人兼務取締役の給与を含まないと定めていた場合、再度その旨を定める必要があるか。

A.役員給与の支給限度額を変更する決議を行った場合、以前の決議はその効力を失うため、新たに変更された支給限度額に関しては、金額はもちろんのこと、対象とする給与の範囲など必要な内容も再度決議する必要があります。特に、使用人兼務取締役の給与を役員給与の計算に含めないという決議が前にあった場合でも、それを再確認する形で決議を行うべきです。金額のみを新たに決議した場合、その後はすべての給与が役員給与として扱われることになり、使用人兼務取締役の給与も含めて計算されることになります。これにより、役員給与が株主総会で定めた上限を超えることがあり、結果として税務上認められない損金が発生する可能性があります

会社の設立費用と発起人報酬の取扱い

Q.株式会社の原始定款に記載しないで設立費用と発起人報酬を会社に負担させると、会社法違反だと思いますが、税務上もこのような設立費用及び発起人報酬は、損金不算入になりますか。

A.会社法では、株式会社の設立に際して、発起人に支払われる報酬や特別の利益など、定款に記載しなければならない事項があります。設立費用や発起人報酬を定款に記載せずに会社の負担にする行為は、原則として違法とみなされますが、税務上はそれほど厳しく扱われません。まず設立費用については、通常必要とされる範囲内であれば、たとえ定款に記載されていなくても、法人税法上は法人の負担と見なされます。また、発起人報酬に関しても、基本的には設立費用と同じ扱いで、損金処理が認められます。ただし、発起人報酬が明らかに高額である場合には、その高額部分は損金に算入できない可能性があります。つまり、発起人報酬が同業他社と比較して不当に高い場合、その超過部分は税務上、損金不算入とされることがあります。

役員給与の限度額等の規定のみなし役員に対する適用の有無

Q.株主総会等の決議で定める役員給与限度額等の規定に関する税法の規定は、みなし役員にも適用されますか。

A.法人が定款や株主総会の決議で役員給与の限度額を定めている場合、その限度額を超えて支給された役員給与部分は、過大な役員給与とされて損金には算入されません。この規則は、限度額を定められた役員給与を受け取る対象の役員にのみ適用されます。みなし役員に関しては、彼らは会社法上の役員ではないため、株主総会で定められた役員給与の限度額の規定は当てはまりません。そのため、みなし役員に支払われた給与については、過大な役員給与に該当するかどうかの判定に別の規定が適用されます。