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定例払い賞与の支給予定日を変更することの可否

Q.3月31日決算の法人です。就業規則を改訂して、毎年6月中旬に支給している夏季賞与全額の支給予定日を3月31日に変更し、同日に従業員全員にその支給額を通知して未払費用に計上し、損金処理を行い、実際の支給は従来どおり6月中旬とする場合、法人税法施行令第72条の3の第1号の賞与として、未払費用計上額の損金算入が認められますか?

A.法人税法施行令第72条の3の第1号の賞与については、事業年度終了日までに支給予定日が設定されており、従業員全員に支給額が通知されていて、かつ損金処理を行っていることが必要条件です。これらの条件を満たしていれば、第2号の賞与のように事業年度終了の翌日から1か月以内に全額支払わなければならないという要求はありません。従って、質問の内容に基づくと、条件は形式上満たされているといえます。しかし、就業規則を改訂して支給予定日を3月31日に設定しながら、実際の支給を毎年6月中旬まで遅らせることは、支払予定日やその翌日に賃金が支払われない場合と同様に見なされ、労働法に違反する可能性があります。実際に、従業員がこの支払スケジュールに同意しない場合もありえ、社会通念にも反すると考えられます。「第1号の賞与」については、例えば企業の財務状況により支給が遅れているケースなどを指しますが、質問の事例のように3月31日までに従業員全員に通知されているものの、実際の支給日を支給予定日から2か月以上遅らせると、その支給予定日は形式的なものに過ぎず、「第1号の賞与」には該当しないと考えられます。

法人税法施行令第72条の3における賞与の取扱い

Q.法人税法施行令第72条の3の第1号の賞与と第2号の賞与は、どのような点が違うのですか。

A.法人税法施行令第72条の3では、一般的に従業員への賞与の支払いを行った事業年度で費用として計上することになっています。しかし、第1号の賞与(労働協約や就業規則で決められた支給予定日のある賞与)と第2号の賞与(特定の条件を全て満たす賞与)には例外があり、特定の事業年度での損金計上が認められています。

第1号の賞与は、労働協約などで予定された支給日が事業年度の終了日までに来ているが、何らかの理由で支払いが遅れる場合の賞与です。一方、第2号の賞与は、定められた3つの条件を満たす場合に、その事業年度で費用計上できます。

例えば、事業年度の終了日が11月30日で、12月10日に年末賞与を支払うとされている法人の場合、その賞与は第1号には該当せず、もし3つの条件を満たせば第2号の賞与としてその年度に損金計上することができます。これらの条件の一つが、事業年度終了日までに全ての従業員に支給額を通知しているかどうかです。このように、第1号と第2号の賞与は支給予定日のタイミングと条件の達成状況によって区別されます。

使用人賞与の損金算入時期のあらまし

Q.使用人賞与の損金算入時期は、どのように規定されていますか。

A.法人が事業年度の終了日の次の日以降に最初に支給する使用人賞与の見積もりを、後で払う費用としてその事業年度の確定決算に反映させた場合、損金として無条件で認められます。しかし、これは債務の確定基準に反することがあり、実際には税法で定められた賞与引当金の計上と同じ状況を引き起こすことがあります。そのため、使用人賞与が損金として認められる事業年度に関するルールは厳しく設定されています。具体的には、 (1) 労働協約や就業規則で支給予定日が設定され、その支給額が使用人に通知されている賞与は、その支給予定日または通知された日のどちらか遅い日が含まれる事業年度に損金として認められます。 (2) 支給額が個別に通知され、しかもその通知日が含まれる事業年度終了日の翌日から1ヶ月以内に全ての使用人に対して支払われ、かつその通知日が含まれる事業年度に損金として計上されている賞与は、その通知日が含まれる事業年度で損金として認められます。 (3) 上記(1)と(2)に該当しない賞与は、支払われた日が含まれる事業年度に損金として認められます。この規定は、使用人だけでなく使用人兼務役員に支給される賞与にも適用されますが、退職給与、他に定期給与を受けていない者への定期支給、譲渡制限付株式や新株予約権を対価とする費用には適用されません。

子会社からの役員退職給与について

Q.子会社へ役員として出向していた親会社の使用人甲が、出向解除により当該役員を退任しました。子会社の株主総会で甲に対する退職給与の支給を決議しましたが、将来親会社を退職するときまで、甲には支給しないこととしています。甲に対する当該退職給与相当額を子会社から親会社へ送金し、親会社において預り金として受け入れること、または将来甲が親会社を退職する時に子会社から直接支給することの税務上の取り扱いはどうなりますか?

A.甲が子会社へ出向していた間も親会社の使用人の身分を保有していました。出向解除の際、甲への退職給与をすぐには支給せず、親会社退職時まで保留するのが一般的です。①の場面では、子会社から退職給与相当額を親会社に送金し、親会社で預り金として受け入れる場合、税務では甲が子会社から退職給与を受け取り、その後親会社へ預けたとみなされます。そのため、親会社での受け入れ額は、源泉所得税や特別徴収住民税を控除した金額になります。②の場合、将来の退職時に支給を約束し、その間会計処理を行わない場合には、税務上問題ありません。しかし、このような退職給与を未払金に計上せずに処理すると、企業会計が適正でなくなる可能性があります。支給額が決議によって確定した場合、長期未払金に計上することで、税務上も損金算入が認められることがあります。これは、株主総会等の決議により支給額が具体的に確定した事業年度に関連しており、退職給与の支払いが長期間行われない場合でも、確定債務であることと合理的な理由があれば、税務上の処理として認められると考えられます。

退任役員に生命保険に関する権利を与える場合の退職給与

Q.取締役甲を被保険者とし、死亡保険金及び満期保険金ともその受取人を会社とする養老保険に加入して、既支払保険料の合計額320万円を資産に計上しています。甲は次の株主総会終結の時をもって取締役を退任する予定ですが、甲と話合いの結果、上記の生命保険に関する権利を同人に対する退職給与の一部として支給することにしました。当該生命保険に関する権利の評価額はどのように計算するのですか。

A.退職給与として生命保険関連の権利を提供する際、その権利の評価は、保険契約を解除した場合に得られる解約返戻金、加えてもしあれば前納保険料や剰余金の分配額などを合計した金額で行います。例えば、解約返戻金が200万円であれば、退職給与200万円、雑損失120万円、生命保険料積立金320万円として記録します。この合計金額で退職者に対する退職所得に関する所得税の源泉徴収を行い、その金額が不当に高くないか確認する必要があります。なお、この権利の評価について特定のケースでの取り扱い(例えば、解約返戻金の額が支給時の資産計上額の70%未満である場合など)も規定されています。重要なのは、金銭以外の退職給与を提供する場合、それを承認するために株主総会等の決議を経る必要があるという点です。

取締役に対する退職給与の支給額の決定が遅れる場合

Q.定時株主総会終結の時をもって退任する取締役4人に対して、退職給与を支給することとし、その具体的な金額や方法は取締役会に一任する旨の決議を行います。しかし、会社の資金事情からすぐに4人全員に退職給与を支給することができないため、1人だけに先に支給し、残りの3人は翌事業年度以降に支給する予定です。このようなケースでの税務上の問題について教えてください。

A.取締役の退職給与は、通常、株主総会の決議をもとに、その後の取締役会で支給の具体的な金額や方法が定められます。税務上、退職給与が損金として認められるのは、取締役会で支給額が具体的に決定されたときの事業年度です。つまり、今回のケースでは、残りの3名の支給額が具体的に決められたときがその基準になります。遅れて支給する場合でも、その支払いが行われた事業年度で損金経理をして正しく算入することが許されています。ただし、ここで注意が必要なのは、全ての取締役に対して同様の対応を取らないことが、会社法や企業会計の原則に反する可能性がある点です。たとえ資金繰りの問題で一時的に支給できない場合でも、退職給与の支給額と方法を明確にして、未払いとして計上することが基本であるため、差し引きで計算しない方法は推奨されません。

役員退職金制度の廃止とその影響

Q.役員退職金制度を廃止し、在任中の役員に対して廃止した時までの在任期間に係る役員退職給与を打ち切り支給する旨の議案を株主総会に付議する予定です。この打ち切り支給額は、役員退職給与として損金算入することができますか?それとも役員給与として、定期同額給与等に該当しないため損金不算入となりますか?支給時期を各役員の退任時まで延期する旨を議案に追加した場合はどうでしょうか?

A.最近、役員退職金制度を廃止する企業が増加しており、これは在任中の役員への報酬を退職時の支給から在任中の業績に基づく報酬に変える動きの一環です。税法上では、不当に高額でない限り一般的に役員退職給与として損金算入されますが、業績連動給与の場合は特定の要件を満たさなければなりません。それ以外の場合、全額が役員給与として損金不算入となり、受取人にとっては退職所得から給与所得への変更により、所得税と住民税の負担が増加します。これは、報酬が業績と直接連動し役員のモチベーションが向上するなどの経営上の利点が税務上のデメリットを上回るために行われることがあります。また、業績が悪化した時や不祥事が起こった時に退職給与の支給を否決されるリスクも考慮されることがあります。役員退職金制度を廃止することにより、在任期間中の功労に対する報酬を支払う際には、退任がまだでないため、これは役員給与となり支払う側では損金不算入、受取る側では給与所得として課税されます。役員退職給与として会社で損金算入されるためには、質問にもあるように、支給時期を各役員の退任時まで延期する必要があります。支給時期を退任時まで延期しても、株主総会で役員退職金制度の廃止時までの在任期間に基づく退職給与の額が確定しているため、会計上は長期未払金として計上し、税務上は申告加算後、退任時に支払いが行われる際にこの長期未払金を取り崩して申告減算する必要があります。

分割払いとする役員退職給与の損金算入時期

Q.分割払いとする役員退職給与の損金算入時期について教えてください。

A.役員退職給与を一度に支払うことができず、10年間で分割して支払う場合、金額が不当に高くない限り、その支給が決定した株主総会での事業年度内で全額を長期未払金として損金算入できます。また、毎年支払う金額をその都度損金として計上することも可能です。しかし、10年間にわたる分割払いが実質的に退職一時金ではなく退職年金の性質を持つ可能性があります。税務上は退職一時金と退職年金は扱いが異なり、どちらに該当するかは支払いの決定された株主総会での定め方によります。もし、10年間の年賦払いが役員退職給与規程に基づくものであれば退職年金とはなりませんが、規程や合理的な支払い理由がなければ、退職年金と見なされる可能性があります。

取締役を退任して執行役員になった者に対する退職給与

Q.執行役員制度の導入により取締役から執行役員に就任することになった者に対して、役員退職給与の支給は税法上問題なく認められますか?

A.お尋ねの取締役が実際に役を退くことになる場合、たとえその後執行役員として会社と関わりを持つことになっても、取締役ではなくなることは明らかです。通常、執行役員は税法上役員とはみなされないため、税法の観点から役員退職給与を支給することに問題はありません。ただし、その執行役員が税法上「みなし役員」と見なされる場合は、会社法上の地位は失うものの、税法上はまだ役員の立場にあるとされます。この場合、役員退職給与の支給は税法上認められません。このように退任した取締役に対して退職給与を支給する際は、支給額を申告加算し、将来その人がみなし役員ではなくなる時点で申告減算し、経費として計上することになります。また、みなし役員は税法にのみ存在するため、会計上は支給時点で費用に計上し、執行役員退任時に退職給与として扱う適切な方法で処理するべきです。

指名委員会等設置会社において取締役と執行役との間を異動した者に対する打切退職給与

Q.指名委員会等設置会社で取締役から執行役へ、またはその逆へ異動した場合、役員退職給与の税務上の損金算入は認められますか。

A.指名委員会等設置会社において、取締役から執行役へ、または執行役から取締役へ異動した際に支給される退職給与の税務上の損金算入が許されるかについては、法人税基本通達に明確な指示はありません。取締役と執行役の間の異動は、彼らの職務や選任のプロセスが異なるため、明らかに職務の変更とみなせます。取締役と執行役は同一人物が両方を務めることができる点で、取締役と従業員の関係に似ています。そのため、一部の意見としては、従業員から取締役になった場合のように、取締役と執行役間の異動時の退職給与も税務上認められるべきと考えられるかもしれません。しかし、税法上、取締役も執行役も役員とみなされるため、役員間の異動に関連する退職給与の支給は、役員が実質的に退職した場合のみ認められる条件に該当しないため、税務上は認められません。取締役と執行役の間で兼務を終了してどちらか一方に専念する場合も、実質的には退職とは見なされないため、その時点での退職給与の支給は税務上認められません。