「法人税」カテゴリーアーカイブ

特殊関係使用人に対する過大な退職給与のうちの高額な部分の金額

Q.特殊関係使用人に支給する退職給与に法人税法第36条の規定は適用されますか?また、特殊関係使用人が厚生年金基金や確定給付企業年金などから給付を受ける場合、その給付金はどのように取り扱われますか?

A.はい、特殊関係使用人に支給される退職給与には、法人税法第36条の規定が適用されます。この規定では、退職する使用人に対して支給される退職給与の金額が、その人の勤務期間、退職の理由、および同じ業界の似た規模の会社での一般的な退職給与の額を考慮して妥当と認められる額である必要があります。ただし、この妥当な金額を超える部分は、経費として計上できないことになります。このルールは、役員退職給与に対しても同様の原則が適用されますが、役員と一般使用人の違いによるものです。退職給与の不相当に高額な部分の額の評価には、その特殊関係使用人が受ける厚生年金基金、確定給付企業年金などからの給付も考慮に入れられます。これらの給付金額は、本来会社が支払うべき退職給与の一部と見なされるため、その資金の出所が会社にあることがこの処理の根拠となっています。

特殊関係使用人に支給する給与の額のうち不相当に高額な部分の金額

Q.法人税法第36条の過大な使用人給与の損金不算入の規定が適用される「特殊関係使用人に支給する給与の額のうち不相当に高額な部分の金額」とはどのような給与の額ですか。

A.特殊関係使用人に支払われる給与で、その額が使用人の仕事内容やその法人の収益、他の従業員への給与の支払い状況、または同じ業種で似た規模の事業を行う他の法人の従業員への給与の支払い状況などを考慮した上で、その使用人の仕事への対価として適切だと認められる金額を超える部分のことを言います。法人税法第36条に基づき、この超過する部分の金額は損金から除かれます。この規定は特殊関係の従業員だけではなく、毎月の給与、賞与、退職金にも適用されます。ただし、役員給与の扱いと異なり、特定の形態の給与(例: 定期同額給与など)である必要はありません。しかし、同族会社の特定の使用人が経営に関わっている場合、役員に該当することがあるため、その際の給与は特定の条件下でのみ損金から除外されます。

特殊関係使用人の範囲と同族会社に該当しない法人での取扱い

Q.「役員と特殊の関係のある使用人」とは、どのような使用人ですか。この規定は、同族会社に該当しない法人にも適用されますか。

A.「過大な使用人給与の損金不算入」の規定は、「役員と特殊の関係のある使用人」、すなわち特殊関係使用人に適用されます。これらは役員の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)、役員と事実婚関係にある者、役員から経済的支援を受けて生活する者、およびこれらの者と生計を共にする親族を指します。つまり、特定の親族関係にある者や経済的に役員に依存する者が対象です。

この規定は特に、同族会社の경우適用例が多いですが、同族会社に限らず、非同族会社や普通法人、協同組合など他の法人にも適用されます。これは、特殊な関係を持つ使用人に対して支払われる過大な給与の不適切な部分を損金として計上できないようにするためのものです。したがって、規定は法人全般に対して有効であり、同族会社に該当しない法人も含まれます。

特殊関係使用人に対する過大な給与の損金不算入の規定の概略

Q.法人税法第36条の「過大な使用人給与の損金不算入」の規定は、どのような理由で設けられているのですか。

A.この規定は、法人がその役員やその役員の親族に対して支払う給与が過大である場合、税の負担を不当に軽くする手段として利用されることを防ぐために設けられています。法人の役員が配偶者や子供などの親族を役員にすると、その親族に支払われる給与は法人税法により役員給与として扱われ、損金として計上するためには特定の要件を満たす必要があります。その給与が過大である場合、法人税の軽減が図られるリスクがあります。逆に、親族を役員にせず、かつ経営に従事していない場合でも、支払われる給与が過大であれば法人税の軽減が可能になります。この問題に対応するため、役員や特定の関係のある使用人に対して支払われる、不相当に高額な部分の給与については、損金の額に算入しないこととされています。

簿外預金から支給した使用人賞与の損金算入は認められるのか

Q.簿外預金から支給した使用人賞与は、税務調査によって発覚して更正される際に、損金算入が認められるか?

A.使用人賞与の支給が簿外預金から行われた場合であっても、役員給与と異なり、直接損金算入を否定する規定は存在しません。しかし、不正行為に関する費用の損金算入を否定する規定(法55)が問題となります。この規定は、事実の隠蔽や仮装行為によって法人税負担を不当に減少させた場合、その行為にかかった費用や生じた損失は損金に算入しないとしています。 

質問の中で問われている簿外預金が事実の隠蔽や仮装によって形成された場合、その資金から支払われた使用人賞与は隠蔽や仮装行為に直接かかった費用とはみなされませんが、「隠蔽仮装行為によって生じた損失」とみなすことはできません。なぜなら、使用人賞与は損失ではなく費用であり、通常の労務対価としての性質を持つためです。その結果、簿外資金からの支払い自体を理由にして使用人賞与の損金算入を否定することはできません。実際に労務提供の対価として支払われた使用人賞与は損金として認められ、税務調査が行われた際に発覚した簿外資産による増額更正額と相殺されることが可能です。

しかし、その前に、隠蔽や仮装行為による青色申告の承認取り消しや推計による更正が行われる場合があります。

定例払い賞与の支給方法を変更することの可否

Q.3月31日決算の法人が夏季賞与の支給対象期間を変更し、前年12月1日から当年2月末までと、当年3月1日から5月31日までに分け、それぞれを4月上旬と7月上旬に支給することにした場合、税法上、前者の期間に係る賞与を事業年度終了日に未払費用に計上できるかどうか。

A.3月31日決算の法人が夏季賞与を4月に支給することは一般的ではありません。そのため、このように夏季賞与を分割し、一部を4月に支給する場合に税法上未払費用として計上できるかが問題となります。賞与を年3回支払うという方法は、賞与の支払いに特定の時期のみを指定するものではないため、提案された方法は税法上問題ないと考えられます。ただし、賞与を年3回支払うことによる手続きの増加や、労使間の交渉が必要となること、未払費用として計上するためには特定の条件を満たす必要があるなど、いくつかの問題を考慮する必要があります。また、夏季賞与と年末賞与の支給対象期間を異なる方法で設定することは税務上の問題は生じませんが、税務対策のみを目的とした不自然な対応と見なされる可能性もあります。

法人税法施行令第72条の3第2号の賞与支給の遅延に関して

Q.法人税法施行令第72条の3の第2号にある賞与の支給が遅れた場合、損金計上できるのはどの部分ですか?

A.賞与の支給が資金繰りの悪化などで遅れることはあります。このような場合に、事業年度終了時点で計上された未払いの賞与の中で、損金として計上できないのはどの部分かという問題が発生することがあります。この点について、税法では賞与の通知を受けた全ての使用人に対して、その通知があった事業年度の終了日の翌日から1ヶ月以内に完全に支払うことが求められています。したがって、通知された金額の一部がこの期間内に支払えなかった場合は、この要件を満たしていないと見なされ、その事業年度で計上した未払費用全額の損金算入が認められなくなります。

使用人に賞与の支給通知後のカットに関する取り扱い

Q.法人税法施行令第72条の3の第1号又は第2号の規定により使用人に支給額の通知をした賞与の一部を支給カットした場合、前事業年度終了の時に未払費用に計上した賞与のうち損金不算入となるのは、その全額ですか。それとも支給しなかった部分の金額だけですか。

A.法人税法施行令第72条の3の第1号及び第2号は、使用人賞与に関する「事業年度終了日までの債務確定」の要件を設けています。事業年度終了日までに使用人全員に賞与の支給額の通知を行いましたが、その後一部を支給しない決定をした場合、未払費用に計上した額の全てが「確定債務」とはみなされず、そのため全額が損金不算入となります。翌事業年度以降に資金状況の悪化や業績の下降などの理由で賞与の一部支給をカットする必要が生じた場合でも、一度通知した支給額については修正ができないため、未払費用として計上した額の損金算入もできません。さらに、支給日までに退職した使用人に対して賞与を支給しなかった場合、同様に全額が損金不算入となります。ただし、支給日までに不祥事などで懲戒処分を受けたことにより賞与が支給されない場合は、支給されない合理的な理由が認められるため、該当する使用人に対する賞与相当額は益金の額に算入する扱いとなります。

使用人に対する賞与支給額の通知の方法

Q.使用人に対する賞与の支給額の通知は、どのような方法で行うべきですか。支給額や支給率が全使用人一律の場合、掲示するとか労働組合が配布するビラに記載するだけでは不十分ですか。その他この通知について注意すべき事項を教えてください。

A.賞与の支給額通知に関して、法人税法施行令では、事業年度終了の日までに使用人に対して支給額を文書で通知することが、損金算入の要件とされています。賞与の支給額が全使用人一律であっても、掲示や労働組合によるビラ配布だけでは不十分で、使用者から使用人各人に直接文書で通知しなければなりません。例としては、年末賞与の明細書を各使用人に手渡して通知する方法が挙げられます。さらに、在職する使用人のみに賞与を支給する場合、通知日の属する事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に退職した使用人には支給しない場合、損金算入は認められません。また、パートタイマーや臨時雇用者と正規職員の間で賞与支給が異なる場合、区分ごとに通知しているかどうかが重要であり、正規職員と臨時職員で賞与支給日が異なる場合でも、税務上は認められることがあります。

法人税法施行令第72条の3の第1号に該当する賞与

Q.法人税法施行令第72条の3の第1号に掲げられている賞与にはどのようなものが含まれますか?また、支給予定日が事業年度終了の日までに来ている場合、その翌日から1ヶ月を超える日に支給しても問題ないのでしょうか?

A.法人税法施行令第72条の3の第1号の賞与は、事業年度の終了日までに支給予定日が来ているものの、何かの理由で支給が遅れている賞与です。これに該当するためには、事業年度の終了日までに従業員に支給額を通知していなければなりません。例えば、支給予定日が来ているにもかかわらず労使交渉が長引き支給額がまだ決まっていない場合は、支給額の通知がされていないため該当しません。事業年度終了日までに支給予定日が来ており、従業員に支給額の通知をしたが、資金繰りなどの理由で支給が遅れている場合には該当します。このケースでは、事業年度の終了日の翌日から1ヶ月以内に支払う必要はなく、数ヶ月にわたる分割支払いでもその金額を当該事業年度の未払費用として計上し、損金に含めることができます。事業年度終了日までに従業員に支給額の通知が必要である点や、損金経理が必要である点は第2号の賞与と同じですが、事業年度終了日までに支給予定日が来ている必要がある点、その翌日から1ヶ月以内に支払う必要がない点が異なります。これは、支給予定日が来ている賞与は、未来の日付で支払われる予定の第2号の賞与と比較して、債務の確定性が高く、資金状況などで支払いが遅れても損金算入が認められるという意味です。