「法人税」カテゴリーアーカイブ

債務者からの担保物受入れと代物弁済に関する処理

Q. 得意先A社が倒産した場合、受け入れた担保物を処分して売掛債権600万円の回収をしようとしたとき、以下の状況における会計処理方法は何ですか? 

1. 担保物の処分可能額を見積もり、それを売掛債権600万円から控除した残額を貸倒処理することは可能か。 

2. 取引停止後1年以上が経過した場合に、備忘価額を残して貸倒処理することはできるか。 

3. 処分が難しい担保物がある場合、どのように処理すればよいか。 

4. 上場有価証券でない株式を代物弁済で受け入れた場合の処理方法は何か。

A. 

1. 担保物を受け入れ、その処分によって売掛債権が全額回収できないと明らかになった場合、まずはその担保物を処分した後の残額を貸倒処理することができます。これは、法人税基本通達9-6-2に基づいて、貸倒損失として計上するためには、全額が回収できないことが明確になる必要があるからです。担保物を処分しないと、損失の額を決定できません。

2. 売掛債権に対する取引が停止して1年以上経過した場合の備忘価額を残した貸倒処理は、担保物の受け入れがある場合には適用されません。これは、担保物があるとその処分による回収可能性が考慮されるためです。

3. 担保物の処分が難しく、他に回収方法がない場合、回収不能と明らかになった金額に関しては、個別評価される金銭債権に関する貸倒引当金を設定できます。これは、その金額が特定の基準に基づいて個別に評価され、貸倒引当金の対象となるからです。

4. 代物弁済で上場していない株式を受け入れた場合、その株式の時価に基づいて弁済があったと見做し、それによって売掛債権の金額を減額し、残額を貸倒損失として処理します。この場合、代物弁済契約を結んだことで得意先A社に対して残額の請求はできなくなります。しかし、受け入れた株式の時価が売掛債権の額を上回る場合は、その差額をA社に返済する必要がある場合もあります。

割賦売掛金について備忘価額を控除しての貸倒処理

Q.割賦販売会社です。割賦売掛金が焦げついて1年以上経過した場合、法人税基本通達9-6-3の(1)の取扱いを適用して、備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理することができますか。

A.割賦販売会社が取引を停止してから1年以上が経過した場合、お客様から受けるべき売掛金(割賦売掛金)から備忘価額を差し引いた金額を損失として計上することができます。この損失は、担保がない売掛債権に限り適用可能です。ただし、この規定は継続的な取引が終了し、その後1年以上が経過した場合に限り適用されます。一度きりの取引の場合や、通常継続的に取引されていない割賦販売(一般消費者への販売など)では、この規定による貸倒れ計上は認められません。したがって、割賦売掛金が1年以上回収できなかったとしても、継続的な取引関係にない場合は、備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金とすることはできません。

破産債権と貸倒処理

Q.なぜ法人税基本通達 9-6-1の①には、破産債権について貸倒処理ができる事実が示されていないのですか?破産債権は破産手続上、どのような段階になれば貸倒処理をすることができるのですか?

A.法人税基本通達 9-6-1の①に破産債権に関する貸倒処理が示されていないのは、破産法に根拠があるからです。具体的には、もし破産手続が完了しても、配当を受けていない債権については、裁判所が免責を許可するまでは債権が消滅しないためです。加えて、免責が許可されたとしても、保証人やその他の者に対する債権者の権利や、第三者が提供した担保は維持されます。破産手続の終結には、「破産手続開始の決定の取消し」「廃止決定(同意廃止や費用不足による廃止)」「終結の決定」の3種類があります。②の費用不足による廃止決定や③の終結の決定がされた際、破産法人は消滅し、破産債権者に分配できる財産がないことから、債権の全額が失われたとみなすことが適切であり、貸倒処理が可能です。また、終結前でも配当金が0であることが証明された場合や、資産の処分が終了して今後回収が見込まれない状況であれば、貸倒損失を計上することが認められます。ただし、破産手続開始の決定の取消しや同意廃止の場合は、別の手続きで回収が可能なため、貸倒処理はできません。

保証債務の履行により取得した求償債権の貸倒処理

Q.取引先甲社の銀行借入金について債務保証していたところ、甲社が倒産し保証債務を履行せざるを得なくなりました。A銀行への保証債務1,000万円は甲社倒産直後に、B銀行への保証債務500万円はその後に履行しました。甲社には資産がなく、求償債権は回収見込みがありません。①A銀行に対する保証債務の履行によって取得した甲社に対する求償債権1,000万円を、令和6年3月期決算において貸倒処理できますか?②B銀行に対する保証債務履行前に、期末修正仕訳をして求償債権500万円を貸倒れ処理できますか?

A.甲社の資産状態や支払能力から、令和6年3月期末には甲社に対する求償債権が全額回収できないと判断できる状況であれば、その事業年度において貸倒れとして処理できます。つまり、①で述べたA銀行に対する保証債務の履行により取得した求償債権1,000万円の貸倒処理は可能です。B銀行に対する500万円の未履行保証債務は、B銀行の方針によるもので、A銀行への保証債務履行とは関係ありません。②に関して、貸倒れ処理は実際に保証債務の履行が完了し、求償債権を得た後の事業年度に行われるものであり、B銀行への保証債務履行前にはできません。そのため、B銀行に関する処理は翌事業年度に行うことになります。

金銭債権の一部の貸倒処理の可否

Q.当社が500万円の貸付金を有する相手先が経営不振で、その資産状況等からみて、そのうちの300万円が回収不能と判断されます。この300万円を貸倒処理することは、税務上認められますか。

A.金銭債権を貸倒処理として損金に含めることは税務上認められる条件がありますが、全額回収不能と明確になった場合に限ります。質問のケースにおいて、500万円の貸付金のうち300万円が回収不能と判断された場合、部分的な貸倒処理は税務上直接認められていません。ただし、特定の条件下で、例えば債権放棄が明確に書面で通知されているなど、貸倒れとして損金に算入できるケースも存在します。そのため、具体的な条件を満たしているか、または貸倒引当金を設定する別の方法が適用可能かどうかを検討する必要があります。

費途不明の交際費等は役員給与と認定されることがあるのか

Q.費途不明の交際費等は、法人が税務当局に説明しないと、そのお金を役員が個人的に使ったと考えられ、役員給与として認定されることはありますか。

A.法人が費用の使途を説明しない場合、費途不明の交際費等が役員給与として認定されるかどうかは、具体的な状況によります。過去には、課税当局がそのような費用を役員の個人的な消費として役員給与と認定するためには、代表者が個人で消費したことを積極的に証明する必要があるとした判決(昭和44年熊本地裁判決)があります。一方で、同族会社で代表者が経理や営業を含む経営全体を掌握し、合理的な費用の説明をしない場合は役員給与と認定された事例(昭和52年福岡高裁判決)もあります。このため、事案によって判断が異なることがあります。無理な推定課税を避けるためには、費途不明の支出を避け、内部統制を整え、必須の手続きを踏んで支出するようにしたほうが良いです。裏勘定を作り、そこから費途不明の交際費を支出することは絶対に避けるべきです。使途秘匿金の支出に関する追加課税制度があるため、費途不明の交際費等が役員給与と認定される場合は少ないかもしれませんが、その場合はその支出に関する法人税の追加課税は行われません。

費途不明の交際費等 と租税特別措置法第61条の4の交際費等の相違

Q.費途不明の交際費等は法人税基本通達9-7-20によって損金不算入とされていますが、これと租税特別措置法第61条の4の規定によりその全額又は一部の金額が損金不算入とされる交際費等とは、どのように相違しますか?

A.費途不明の交際費等は、事業との関連が明確でないため、税法上、全額が損金不算入とされます。これは、税理上の不正を防ぐためです。例として、資本金1億円以下の中小企業で交際費が800万円未満でも、費途不明の場合は全額損金不算入となります。一方、資本金が1億円を超える大企業では、接待飲食費以外の交際費の50%が損金不算入となりますが、費途不明の交際費等に関しては、租税特別措置法第61条の4に則した交際費としても、全額損金不算入となるため、所得には影響しません。これは、費途不明の交際費等が、前述の規定による交際費とは異なるためです。したがって、法人税申告では、「交際費等の損金算入に関する明細書」への記入は不要で、「その他社外流出」として別の箇所で処理する必要があります。

費途不明の交際費等と租税特別措置法第61条の4の交際費等の相違

Q. 費途不明の交際費等は法人税基本通達9-7-20によって損金不算入とされていますが、これと租税特別措置法第61条の4の規定によりその全額又は一部の金額が損金不算入とされる交際費等とは、どのように相違しますか。

A. 費途不明の交際費等は、事業との関連性が認められず、必要経費として認定できないため、税法上全額が損金不算入とされます。これは、課税上の不利益を防ぐためです。例えば、資本金または出資金が1億円以下の法人(大法人に完全支配されていない場合)では、たとえ交際費が800万円未満で損金算入できる余地があっても、費途不明の交際費等は全額損金不算入となります。一方で、資本金または出資金が1億円を超える法人や大法人に支配される法人は、接待飲食費以外の交際費の50%相当額が損金不算入となりますが、費途不明の交際費等はその規定にかかわらず損金不算入です。このため、法人税申告書では「交際費等の損金算入に関する明細書」には記載せず、「その他社外流出」として別の箇所で処理します。費途不明の交際費等は租税特別措置法第61条の4で定められた交際費等とは異なる取り扱いとなります。

使途秘匿金の支出額に係る追加法人税と他の税法上の規定との関係

Q.使途秘匿金の支出額に係る追加法人税の額は、法人税法や租税特別措置法の他の規定とどのように関係していますか。

A.使途秘匿金の支出額に係る追加法人税は、他の税法規定との関連で以下のように扱われます。

1. 特定同族会社に適用される特別税率の規定との関係では、追加法人税の額は留保金額から控除する法人税額に含まれます。

2. 租税特別措置法における特定の税額控除(例えば、研究開発投資に対する特別控除や設備投資に対する特別償却など)の計算基礎となる法人税額には、追加法人税の額は含まれません。

3. 中間申告における納税額との関係では、予定申告時の前事業年度の法人税額には追加法人税の額を含めませんが、仮決算に基づく中間申告時には、その中間申告に関するみなし事業年度で支出された使途秘匿金に係る法人税額を加算します。

4. 欠損金の繰り戻し還付を受ける場合、追加法人税額が還付所得事業年度の法人税額に加算されていても、還付対象となる法人税額からは除外されます。

5. 仮装経理に基づく過大申告の更正に伴う還付法人税額との関係では、更正があった事業年度の開始日から前年度にかけての法人税額に追加法人税額が加算されていても、還付の対象となる法人税額からは除外されます。

役員等に対する渡切交際費と使途秘匿金の関係

Q.役員等に対していわゆる渡切交際費も使途秘匿金になるのでしょうか。

A.役員や役員と特別な関係にある従業員への渡切交際費とは、接待費、交際費、旅費等といった名義で支払われたもので、その使用が明確に業務のためだと示されていないものを指します。この種の支払いは、役員等への経済的利益とみなされ、役員等への給与として扱われます。ただし、これらは使途秘匿金とはされません。

しかし、役員がこれらの費用を取引先への接待や贈答に使用した場合、間接的に使途秘匿金を支出したことになり、特定の追加課税の対象となりうることがあります。ですが、役員等への給与として処理されるものには、該当せず、渡切交際費としての給与処理を正しく行うことが重要です。

間接的な使途秘匿金の支出の可能性については、ある追加課税の対象になりますが、役員等に対する給与としての処理がされている場合は適用されません。ただし、これらを仮払金として処理した場合、使途秘匿金と見なされ、法人税の40%相当の追加課税が課されるリスクがあります。

したがって、役員等への給与として適切に費用処理を行い、所得税の源泉徴収も忘れずに実施することが必要です。