「所得税」カテゴリーアーカイブ

短期勤続年数に関する退職手当の計算方法

Q.令和5年1月末に会社を退職しました。勤務期間は4年で、役員等ではありませんでした。退職手当の受け取りがありましたが、その退職所得金額の計算方法を教えてください。

A.退職所得とは、退職時に受け取る退職手当やその他の給与など退職に伴う給与のことです。この退職所得の金額は通常、その年に受け取った退職手当等の収入金額から特定の控除額を除いた残額の半額がその金額になります。しかし、退職手当等が「短期退職手当等」に該当する場合、以下の2つの方法で計算されます:

1. 収入金額から控除額を引いた残額が300万円以下の場合、その残額の半分が退職所得の金額。

2. 収入金額から控除額を引いた残額が300万円を超える場合、150万円にその余分(300万円を超える部分)を加えた金額が退職所得の金額。

短期退職手当等とは、勤続年数5年以下の非役員に対して支払われる退職手当のことを指します。ご質問のケースでは、短期勤続年数に該当するため、上記のいずれかの方法で退職所得の計算を行います。

参考:

所法30①、所法30②、所法30④、所令69の2①、所法30⑤

退職することを条件にしたストックオプションの所得区分

Q.役員退職慰労金制度を廃止し、新株予約権を無償で付与することにしました。これは実質的には退職金の代わりとなりますが、権利行使が退職を条件としている場合、この新株予約権の利益は退職所得として扱ってもよろしいでしょうか。

A.役員等が新株予約権を付与され、これを行使する場合、その所得は基本的に給与所得とみなされます。ただし、退職後に権利行使が行われ、その結果得られる利益が主に職務遂行とは関連しない場合、雑所得とすることもあります。しかし、退職を理由に一時的に支払われる給与に相当する新株予約権の権利行使益は、退職所得として課税することが適当です。これは、退職後短期間に行わなければならない権利行使や、譲渡の制限があるため、給与所得や雑所得とは異なり、退職に基づくものと解釈されるためです。

参考:基通23~35共 -6(1)イ、基通23~35共 -6(1)イ ただし書、基通30-1

企業内退職金制度の改廃等による一時金の取扱い

Q.企業内退職金制度の改廃などにより、引き続き勤務する従業員に支払われる一時金は、どのように扱われますか?

A.企業内退職金制度の改廃などで引き続き勤務する従業員に支払われる一時金は、一般的に給与所得として扱われます。しかし、退職給与規程の新設や改正、または中小企業退職金共済制度や確定拠出年金制度への移行などの理由で支払われ、その支払いが退職する際に基づいて計算された給与で、その計算基準に勤続期間が加味されない条件があれば、退職所得として扱われることがあります。つまり、退職の事実がなくても、特定の条件を満たす場合には退職所得として取り扱われます。

参考:

– 所法30①

– 基通30-1

– 基通30-2(1)

解雇予告手当

Q.業績不振により突然解雇された際、会社から受け取った予告手当30万円は給与所得として取り扱われるのでしょうか?

A.労働基準法では、労働者を解雇する際には少なくとも30日前の予告が必要で、予告なしに解雇する場合は30日以上の平均賃金を支払う必要があります。このように支払われる金銭が解雇予告手当です。解雇予告手当は退職に伴い一時的に支払われるものであるため、この場合の30万円は退職所得として扱われます。

参考:労働基準法第20条第1項、基通30-5

退職金に代わる生命保険契約の名義変更の税務処理について

Q.役員Bの退職に伴い、株式会社Aが加入していた生命保険契約の保険金受取人をBに変更した場合の課税関係はどのようになりますか?

A.役員の退職に際して生命保険契約の名義をその役員に変更した場合、この保険契約に関する権利が退職金とみなされます。具体的には、名義変更時にこの契約を解約した場合に支給される解約返戻金相当額(解約返戻金の他、前納保険料の金額や剰余金の分配額等が含まれる場合はその合計額)が退職所得の収入金額となります。

参考:基通36-37

使用人から役員になった場合の退職金

Q.私はA社の取締役に就任することになりましたが、使用人として勤務してきた期間の退職金として2,000万円を支給されました。この2,000万円は退職所得になりますか?

A.従業員が退職時に受け取る退職金は、長年の勤務に対する報酬であり、退職後の生活の支えになるため、給与所得とは別に扱われます。あなたの場合、使用人としての勤務期間に対して支払われた2,000万円が、将来の退職手当ての計算においてその期間を考慮しない場合には、退職所得に該当します。

参考:基通30-2(2)

退職所得と死亡退職金

Q.会社役員をしていた夫が亡くなってから3ヶ月後に、相続人である私は夫の退職金500万円を受け取ることになりました。この退職金には所得税がかかりますか?また、相続税とはどのような関係にありますか?

A.会社役員の退職手当に関して、役員が亡くなった場合、退職手当の収入時期はその死亡日以降になるため、亡くなった役員に対して所得税がかからないことになります。一方、相続税については、退職金が死亡から3年以内に支払われた場合、相続人が受け取ることとなり、相続税の対象となります。あなたが受け取る退職金には所得税はかからず、相続税の計算に含める必要があります。

参考:

– 基通36-10(1)

– 相法3①二

– 基通9-17

転勤に伴う自宅借上げ家賃の所得税申告について

Q.勤務している会社が、転勤によって住むことができなくなった自宅を借り上げ、その対価として月額1,500円を支払ってくれる場合、この金額を不動産所得として申告できるか。

A.所得税法に基づくと、不動産や不動産に関する権利、または船舶や航空機の貸し出しから得られる所得は不動産所得とみなされます。しかし、質問のケースでは、借り上げによる対価は実質的に不動産の貸し出しから得た所得ではなく、転勤により受けられなくなった低利融資に対する利子補給にあたるため、不動産所得には含まれません。そのため、収入から減価償却費などの不動産所得に関わる必要経費を控除して申告することはできません。このような給与の支払者からの利子補給は給与所得に算入されます。

参考:所得税法第26条

勤務先から受けた献策等の報償金

Q.会社に提出した事務合理化のアイデアが採用され、報酬を受け取ることになりました。この報酬はどのような所得に分類されますか?

A.社員として提出した事務合理化のアイデアに対する報酬は、職務の範囲内での行為と考えられるため、給与所得として扱われます。

参考:

– 譲渡所得:発明、考案や創作に関する特許権、実用新案権、意匠権を使用者に移転し、その対価を一時に受け取る場合

– 雑所得:特許権、実用新案権、意匠権の承継後や実施権取得による支払、継続的支払がある場合

– 給与所得:通常の職務の範囲内での工夫、考案等に対する支払

– 一時所得:災害等防止功績、社会的顕彰による支払、工夫や考案以外での支払

給与等の受領を辞退した場合の税務処理

Q.事業不振に伴い、役員賞与を辞退しようと考えています。辞退すると、その賞与相当額に対して税金がかかりますか?

A.給与等の支払いを辞退する際には、辞退の意志を支給期限前に明示した場合に限り、その給与等に対する課税はされません。また、法人が特定の財務状態にあるなど、特別な場合に役員が立場上やむを得ず未払いの役員賞与などを辞退した場合、その辞退した部分については収入として認められないため、源泉徴収や課税の対象となりません。特定の財務状態には以下のような状況が該当します:

1. 特別清算の開始命令を受けた場合

2. 破産手続き開始の決定を受けた場合

3. 再生手続き開始の決定を受けた場合

4. 更生手続きの開始決定を受けた場合

5. 事業不振で会社整理の状態になり、債権者集会等で債務の切捨てを行った場合

参考:

– 特別清算の開始命令を受けたこと

– 破産手続開始の決定を受けたこと

– 再生手続開始の決定を受けたこと

– 更生手続の開始決定を受けたこと

– 事業不振で会社整理の状態になり、債権者集会等で債務の切捨てを行ったこと

保険外交員の所得

Q.保険の外交員として固定給と歩合給をもらっています。所得の種類はどのようになりますか。

A.保険の外交員が保険会社と結ぶ契約には、雇用契約と委任契約があります。この契約の形式に基づいて、雇用契約の場合は給与所得、委任契約の場合は事業所得となります。しかし、契約の形式とは異なる実際の支給方法が存在する場合もあり、税法では支給の実情に基づいて所得の種類を次のように定めています。

1. 旅費とそれ以外の報酬が明らかに区分されている場合、旅費は非課税で、その他の部分は給与所得です。

2. 固定給とそれ以外に明らかに区分されている場合、固定給は給与所得、それ以外は事業所得です。ただし、一定期間の成果に基づいて自動的に固定給の額が決まる場合、または資格に応じて固定給が自動的に決まる場合は、事業所得として扱います。

3. 上記以外の場合は、提供する役務のための旅費などの費用やその他事情を総合考慮して、給与所得または事業所得の区分を判定します。

参考:

– 基通204-22