「所得税」カテゴリーアーカイブ

労働者協同組合の従事分量配当

Q.私は労働者協同組合の事業に従事したことから、その程度に応じた剰余金の分配金を受け取ることになりました。この分配金は、どのように課税されるのですか。

A.労働者協同組合から得られる分配金は、労働者協同組合が利益を得た後、必要な経費を除いて配当されるものです。具体的には、組合の損失補填、準備金、就労創出等の積立金、教育繰越金を引いた後の利益から配当されます。さらに、剰余金の配当は、組合員が事業にどれだけ関わったかに基づいて決定されます。これは従事分量配当と呼ばれ、単純な出資額ではなく、事業への貢献度に応じて分配されます。労働者協同組合は法人税法上、一般の法人と同じ扱いを受けるため、分配金は法人税で既に課税されたあとの所得から支払われるので、所得税では「配当等」として扱われます。また、この分配金に対しては、支払時に20%の税率で源泉徴収されることになります。さらに、平成25年から令和19年までの期間には、復興特別所得税も適用されます。

信用取引で受け取る配当金と税金の取り扱い

Q.株式の信用取引をしており、株主名簿閉鎖日5日前に買い付けた株式の配当金を証券会社から受け取りました。この配当金は配当所得として申告する必要がありますか?また、配当金に15.315%の源泉徴収税が引かれていますが、これは所得税額から控除できますか?

A.信用取引では、証券会社からお金を借りて株を買っても、その株を実際には所有していないため、本来の配当金を受け取ることはできません。しかし、買った株に配当があれば、証券会社から配当相当の金額(配当落調整金)を受け取ることがあります。受け取った配当落調整金は、買った株式の取得価額から差し引く形で処理されるため、配当所得として申告する必要はありません。また、15.315%の源泉徴収税額については、配当落調整金の計算に使われるだけであり、実際の税金として計算される訳ではないので、所得税の計算で差し引くことはできません。

配当金の受領を辞退した場合

Q.前期決算分の未払配当金を辞退したのですが、配当所得の申告は必要ですか。

A.配当金の辞退理由によって異なる取り扱いがあります。

(1) 配当金が支払不能な状況にある場合、配当金の一部または全てが支払われないとき、支払不能となった金額については収入がなかったものとみなされます。この際の支払不能の判定は、貸倒れの判定基準に準じます。

(2) 上記以外の理由(例えば、法人に対する資金援助目的での辞退など)で配当金を辞退した場合は、配当金が実際に支払われたとみなされます。したがって、この場合は源泉徴収の対象となり、配当所得として申告する必要があります。

確定申告を要しない配当の株式に係る負債利子

Q.非上場のA株式とB株式を借入金により取得し、それぞれ配当収入を得ています。A株式は1年決算で配当が10万円以下で確定申告をしないことを選択しようと思っていますが、その株式を取得するための負債利子をB株式の配当から控除することはできますか?

A.特定の株式を購入するために必要だった借り入れの利子が発生している時、その株式の配当に対して確定申告を行わない選択をした場合、その借り入れの利子を控除することはできません。もし、ある株式の配当について確定申告をしない部分とする部分がある場合、確定申告をしない配当に対応する負債利子の計算は特定の式によって行われ、その利子を控除することは不可とされています。したがって、あなたの場合、A株式の配当について確定申告をしない選択をすれば、その株式を購入するための負債の利子をB株式の配当から控除することは不可能です。

株式の一部の譲渡があった場合の負債利子

Q.従前から2万株を所有していた株式の増資に伴う新株の割り当てを受け、金融機関から借入れして新株払込金に充てた後、翌年土地の購入資金のため一部の株式を売却しましたが、新株払込金に充てた借入金の返済は行っていません。この年の配当所得の計算上で控除する負債利子の算入金額はどう計算するのでしょうか? この年の当該借入金に係る利子の額は12万円です。

A.配当所得の計算において、元本を取得するために要した負債の利子は、その負債で取得した株式の配当収入だけでなく、他の株式の配当収入からも控除できます。また、同一銘柄の株式の一部を負債で取得し、後に一部を売却した場合、その負債額は売却前の総株式数と売却後の総株式数の割合で按分されます。しかし、株式等の譲渡から生じる収入からは、その株式の取得に要した負債の利子を控除しないことになっています。従って、譲渡した5000株に対応する負債利子は配当所得から控除できず、この場合の負債利子の控除額は100,000円となります。

配当所得に係る「その年中に支払う」負債利子

Q.増資払込み時に他の関係会社から借入れた8,000万円の利息について、土地を譲渡するまで支払う必要がなく、未払いの場合、配当所得の計算時にこの未払いの利息を控除できるか。

A.配当所得の計算で控除できる負債利子は、「その年中に支払うもの」と規定されています。これは、現金主義に基づいてその年に支払われた利息のみを認めるわけではなく、また支払期日が到来したものだけを指すわけでもありません。必要経費の算出は「債務の確定」によりますが、収入の計算とは異なり、「支払うべき日」の到来を待たずに計算できます。利息は日々発生し、その年中の借入期間に対応する利息を意味します。質問の借入金の利息に関しては、利率がはっきりしており、毎年末に債権者から元本と利息の合計が通知されるため、土地を譲渡して返済するまでの各年の利息をその年ごとの「支払うもの」として計算できます。したがって、元本を所有している間は、その年に発生した利息を配当所得の計算で控除できます。

源泉徴収選択口座内の配当等の申告の要否の判定

Q.私は、甲証券会社で上場株式であるA社、B社及びC社の株式を保有しており、各社からの配当を甲証券会社の源泉徴収選択口座で受け取りました。また、年の途中でA社の株式を譲渡し、譲渡損失が発生しました。この場合、確定申告をするに当たって、A社及びB社からの配当については申告不要の特例を適用し、C社からの配当についてのみ申告することは可能でしょうか。

A.上場株式などからの配当には、大口株主以外の場合、配当所得の一部または全部を確定申告から除外できる申告不要の特例があります。この特例を利用する条件として、配当に源泉徴収が行われている必要があります。しかし、源泉徴収選択口座を使っている場合、この口座内での損益通算の結果、実際に源泉徴収されないこともあります。源泉徴収選択口座内で損益通算が行われた場合、配当と源泉徴収額が一致しなくなり、どの配当に対して源泉徴収がされたのか特定が難しくなります。そのため、申告不要の特例を適用する際は、源泉徴収選択口座単位で該当年に受け取った配当ごとに決めることになります。ですので、あなたのケースでは、甲証券会社の源泉徴収選択口座で受け取ったA社、B社、及びC社からの配当全てを申告するか、全てを申告しないかの選択をする必要があります。つまり、C社からの配当のみを申告することはできません。

少額配当の申告の要否の判定

Q.非上場会社である甲社から本年、次のとおり配当を受けました。これらの配当は合計すると10万円を超えていますので、確定申告をする必要がありますか。①みなし配当額7万円②決算配当額(年1回決算)8万円

A.非上場株式等から受ける配当について、その額が一定以下であれば確定申告の必要がない「少額配当の申告不要制度」があります。この制度が適用されるかどうかは、特定の計算方法によって判断されます。この計算方法では、期間に応じた配当が10万円以下であれば、申告不要とされています。みなし配当の場合、その計算期間は基本的に12ヶ月とみなされます。質問で挙げられたみなし配当7万円と年1回の決算配当8万円は、どちらもこの基準を下回るため、確定申告の必要はありません。

株式投資信託の収益の分配及び解約差損の課税関係

Q.年金所得者として、株式投資信託の受益証券を購入し分配金を受け取り、解約時に差損があった場合、その差損を分配金から差し引くことは可能ですか?

A.株式投資信託の分配金に関しては、平成16年1月1日以降に支払いを受けた分配金は、源泉分離課税の対象外となり、源泉徴収税額を確定申告で調整する方法や申告分離課税を選択する方法があります。特に平成21年1月1日以降に受ける分配金に関しては、申告分離課税の選択が可能です。更に、平成21年以降の上場株式等に関する譲渡損失がある場合、その損失を、申告分離課税を選択した場合の配当所得額限度内で計算上控除できます。このルールは、株式投資信託の終了や一部解約によって生じた損失にも適用されるため、解約時に生じた損失は収益の分配に関する配当所得と通算することが認められます。ただし、上場株式等に関する配当所得について総合課税を選択した年は、この損益通算の適用を受けられない点に注意が必要です。また、平成21年1月以降、公募株式投資信託の解約や償還によって生じた差損益は、株式等の譲渡所得等として扱われます。平成25年から令和19年まで、所得税に加えて復興特別所得税も課税される点も留意する必要があります。

株主優待乗車券

Q.株式を所有して配当を受けているが、株主優待乗車券も配当所得になるのか。

A.配当所得とは法人からの剰余金の配当や利益の配布を含み、株主への利益供与もこれに含まれます。しかし、法人から株主に提供される経済的利益のうち、法人の利益有無に関わらず供与される特定のもの(例えば、旅客運送業からの株主優待乗車券や、映画館の株主優待入場券など)は、それらが剰余金や利益の処分として扱われない場合、配当所得には含まれません。つまり、A電鉄会社から受け取った株主優待乗車券は、それが剰余金や利益処分として扱われなければ、配当所得には当たらないとされています。ただし、個人の株主が受けるこういった経済的利益は、配当等に含まれない場合雑所得に該当する可能性があります。