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減価償却費の計算

Q.私は、製造業を営む個人事業者ですが、令和5年1月に機械(耐用年数10年)を100万円で購入し、事業用として使用しています。具体的な計算の方法を教えてください。

A.あなたが購入した機械の減価償却費は、定額法か定率法かによって計算方法が異なります。

定額法では、機械の取得価額(100万円)に耐用年数に応じた固定の割合(定額法の償却率)をかけて、毎年同じ額を減価償却費として計上します。この方法では、機械の耐用年数が経過した時に1円まで償却します。

定率法では、機械の取得価額から、既に計上した減価償却費の累積額を引いた金額(未償却残高)に、毎年一定の割合(定率法の償却率)をかけて減価償却費を計算します。この割合は、機械の耐用年数に応じて定められ、毎年逓減していきます。ただし、調整前償却額が特定の計算額(償却保証額)に満たない場合は、改定取得価額に改定償却率をかけた計算に切り替えます。

定額法の具体的な計算例として、令和5年分の減価償却費は100,000円、令和6年分から令和13年分まで毎年100,000円、令和14年分では99,999円となり、未償却残高を1円にします。

定率法の場合、令和5年分の減価償却費は200,000円、令和6年分以降は前年の未償却残高に定率法の償却率をかけた金額を償却費として計上し、令和11年から令和13年分では償却費が65,536円、令和14年分では65,535円と計算され、最終的に未償却残高を1円にします。

減価償却制度の改正

Q.平成19年の改正によってどのような変更があったのか、また、平成23年12月の改正によって「定率法」がどのように変更されたのか教えてください。

A.平成19年の改正では、減価償却制度が大きく見直されました。その主な変更点は以下の通りです。

1. 償却可能限度額と残存価額の廃止:

   平成19年4月1日以降に購入された減価償却資産については、償却可能限度額と残存価額がなくなりました。平成19年3月31日以前に取得した資産の場合、必要経費として計上された累積額が償却可能限度額に達した際、次の5年間で1円まで償却する規定が設けられました。

2. 新しい償却方法の導入:

   平成19年4月1日以降に購入された資産のための新しい「定額法」と「定率法」が導入されました。また、平成19年3月31日以前に購入した資産に関しては、償却方法の名前が変更され、「旧定額法」、「旧定率法」になりました。

3. 資本的支出が発生した場合の取扱い変更:

   平成19年4月1日以後に資本的支出があった場合の償却方法が見直され、新たに取得したものとみなされて償却されるようになりました。平成19年3月31日以前に取得した資産の資本的支出の場合は、加算して計算でき、新たな償却が施されます。

平成23年12月の改正により、平成24年4月1日以降に購入された減価償却資産に使用される定率法について、償却率の計算方法が変更されました。新たな償却率は、耐用年数に基づく定額法の償却率の2倍とされ、これまでの25倍からの変更となりました。また、この改正で特定の過渡措置も設けられました。

減価償却の強制償却

Q.個人の場合の減価償却は、強制償却といわれていますが、どういう意味かを説明してください。

A.個人が事業で使用している資産の価値が減少することを減価償却と呼び、この計算方法には特定のルールがあります。法人では任意に減価償却費を決めることができる場合がありますが、個人事業主の場合はそうはいきません。個人事業主は所得税法に基づいて厳密に計算した減価償却費を必要経費として計上する必要があります。もし計算した減価償却費よりも少ない金額を計上した場合、不足分は減価償却が行われたとみなされます。これを「強制償却」と言います。このため、減価償却費を少なく計上したり、全く計上しないと、後に訂正しない限り、その金額は必要経費とは認められず、税務上の機会損失を生じさせてしまうことになります。

貸ガレージの整地費用

Q.自分の土地を貸ガレージとして貸すために土砂を敷き整地した場合、その整地費用は不動産所得の計算上、必要経費に算入できますか?

A.土地を貸ガレージ用に整地する際にかかる費用は、土地の価値を高めることとなるため、必要経費とはみなされず、土地の取得価額として計上されます。しかし、貸ガレージの利用を開始した後に、頻繁な自動車の出入りでできたくぼみを修復するための費用や人件費は、原状回復の費用として必要経費に該当します。

復旧費用 (その3)

Q.私は美容室を経営していますが、このたび、災害により店舗に相当の被害を受けました。被害があまりに大きいため、その店舗を復旧せずに取り壊した上で、新たに建築することにしました。この場合、この建築費用は、修繕費として必要経費になりますか。

A.個人が経営している事業で使っている資産が災害で被害を受けた時、その被災した資産の元の機能を保つために必要な補強工事などの費用は、一部例外を除いて、修繕費として事業収入や不動産収入から差し引ける必要経費として計上できます。ただし、被災した資産を修理する代わりに新しく資産を購入した場合、その費用を修繕費として計上することはできません。質問のケースでは、新しい店舗を建築するとのことで、この建築費用は新たな資産の取得費用とみなされ、修繕費として必要経費に算入することはできません。さらに、新しい店舗の取得のために支出したその他の費用も、店舗の取得価格に含まれることになります。ただし、取り壊した店舗に関しては、その損失を事業収入計算上の必要経費として計上することができます。

復旧費用 (その2)

Q.私はブティックを経営していますが、災害により店舗にかなりの被害を受けました。このたび、店舗の修繕改築工事を併せて行うことにしましたが、この工事代金はすべて修繕費として必要経費となりますか?なお、この修繕改築工事は一つの工事により行いますので、どこまでが修繕のための工事でどこまでが改築の工事かについては不明です。

A.災害等により店舗などが損壊し、その建物を復旧する場合は、原状回復のために価値を増加させる改良工事も含めて行うことがあります。このような場合に工事費用を原状回復の費用とその他の部分の資本的支出に分けるのが困難な場合、雑損控除の適用を受けていない限り、工事費用の30%を原状回復のための費用とし、70%を資本的支出とする簡便計算が認められています。だから、質問の場合も工事費用をこれに従って分ける必要があり、全額を必要経費として扱うことはできませんが、この計算方法で原状回復費と資本的支出を決定できます。しかし、所得税法では、事業用固定資産の損壊による損失は強制的に資産損失として必要経費となり、工事費用のうち原状回復のためとされた部分も、損壊直前のその資産の帳簿価額に至るまでの金額が資本的支出となるため、工事費用全額の30%をそのまま修繕費として必要経費にすることはできません。前述したように、工事費用が被害前の効用を維持するための補強工事等に要する費用である場合、その全額を修繕費として必要経費に算入できます。

復旧費用 (その1)

Q.災害により被害を受けた工場の二次災害を回避する目的で行った補強と土砂崩れの防止のための工事費用は、修繕費として必要経費になるのか、資本的支出として減価償却が必要か。

A.事業用資産が災害で被害を受けた際に、被災前の状態を保つために行う補強や排水、土砂崩れ防止などの工事で発生した費用は、一部の例外を除き、その年の修繕費として必要経費に算入できます。ご質問のケースでは、工場の二次災害を防ぐための工事は修繕費として必要経費に該当すると考えられます。ただし、この工事費用に資本的支出の部分が含まれている場合は、その部分は除外されるため、注意が必要です。

資本的支出と修繕費の形式的区分における取得価額の判定

Q.物品販売業を廃業し、事業用資産を譲渡後に特定事業用資産の買換えの特例を適用してアパートを建築しました。そのアパートの修理や改良に100万円を支出した場合、この支出が資本的支出であるか修繕費であるかの区分を、支出金額が取得価額の10%以下かどうかで判断する際、特例適用後の取得価額か特例適用前の実際の取得価額のどちらを基準として判定すべきですか?

A.このケースでは、特例適用後の取得価額である900万円を基準に判断します。支出した修理や改良の費用が、この取得価額の10%、つまり90万円を超える場合、形式の基準によっては修繕費には該当しないと判断されます。ただし、実際の判断では資本的支出と修繕費の実質的な違いも考慮されます。例えば、家屋の床や畳の修理、瓦やガラスの取替えなどは一般的に修繕費と考えられています。また、修理や改良の費用の全額について、その30%相当額と資産の前年末の取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出として計算し、確定申告を行う方法もあります。ただし、原状回復費用のうち、除却損失に相当する部分は必要経費に算入できないため注意が必要です。

60万円に満たない資本的支出と修繕費の判定

Q.建物が古くなり、屋根と床の修理を行った場合、それぞれの工事代金が60万円未満であれば、修繕費として計上できるのでしょうか。

A.資本的支出と修繕費の区分は以下の通りです。年に支出された修理や改良にかかった費用に対して、(1)物理的に付加された部分、(2)用途変更のための改造や改装、(3)機械の部品を高品質や高性能なものに交換した際の追加コスト、これらを除いた金額が①60万円未満か、または②その年の末における資産の取得価額の約10%以下であれば、修繕費として計上できます。あなたのケースでは、屋根と床の修理を合わせて114万円が支出されましたが、これは60万円の基準を超えています。しかし、建物の取得価額が1,300万円であるため、この114万円は10%以下の範囲に収まります。したがって、全額を修繕費として必要経費に計上することができます。

海外渡航費

Q.取引契約のためパリへ渡航することになりましたが、通訳が必要なので、ちょうどフランス語を専攻している長女 (大学生)を連れて渡航した場合、渡航費用の全額を必要経費に算入してもよいものでしょうか。また、渡航したついでに、スイスのほうも観光してきた場合はどうなりますか。

A.海外出張の際の旅費は本来、必要経費として計上することが可能です。ただし、事業に関係ない家族や常時従事していない人を同伴する場合、その費用は原則必要経費としては認められません。しかし、以下のような例外があります:

1. 常時補佐が必要な身体障害者が補佐人を同伴する場合

2. 国際会議出席などで配偶者の同伴が必要な場合

3. 目的達成のために特定の言語能力や専門知識が必須で、適任者が家族や臨時委嘱した者である場合

このため、渡航目的に直接関わる通訳として長女が必要な場合は、費用を必要経費に計上できますが、長女がフランス語学習のために同伴されるだけではこれに該当しません。

また、仕事と観光を兼ねた旅行の場合、仕事関連の費用のみが必要経費に算入されます。パリまでの旅費は問題ありませんが、スイスへの観光など、パリ以外での費用やパリでの観光にかかった費用は必要経費には含められません。業務と観光の日数に応じて費用を按分し、業務に必要な分のみを必要経費として算入することになります。