「所得税」カテゴリーアーカイブ

中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却(医療用機器の取得)

Q.中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却について、器具及び備品についても対象となる場合があると聞きましたが、例えば、開業医が超音波診断装置、人工腎臓装置、CTスキャナ装置、歯科診療用椅子などの医療機器を設置したような場合にも、この特別償却は適用されますか。

A.中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却は、次の条件を全て満たす必要があります。まず、従業員数が1,000人以下の青色申告者であること、取得するものが新品の機械及び装置等であり、取得価額が一定額以上あること、そして、製造業や農業など特定の業種に属していることが要件です。質問の医療用機器は「器具及び備品」のカテゴリに属しますが、開業医が取得した場合は、これらの条件に該当せず、特別償却の対象とはなりません。なお、平成29年度の税制改正以降、器具及び備品は特別償却の対象外となっていますが、それ以前に取得した特定の機器については、以前の規定が適用されます。また、今後の税制改正によっては、特定の資産が特別償却の対象から除外されることもあります。

少額減価償却資産の即時償却

Q.私は洋服店を営む青色申告者で、本年25万円のショーケースを購入し事業用として使用しています。このショーケースは、法定耐用年数8年で償却することになりますか?また、本年はこのショーケース以外に取得した減価償却資産はありません。

A.お問い合わせの件ですが、中小事業者にあたる青色申告者が平成18年4月1日から令和6年3月31日の間に、取得価額が30万円未満の少額減価償却資産を購入し、それを事業で使う場合、その年に購入価格の全額を経費として計上することが可能です。ただし、一年間に購入した少額減価償却資産の合計額が300万円を超える場合は、300万円分までが経費計上の上限になります。したがって、ご質問の25万円のショーケースは、全額を経費として計上できます。この特例を適用するには、確定申告書に資産の詳細が記入された明細書を添付する必要がありますが、青色申告決算書の減価償却費の箇所に特例適用の旨を記載し、資産の詳細を別途保管している場合は、明細書の添付を省略できます。

太陽光発電設備の設置における余剰電力の売却

Q.私は小売業をしており、2階建ての建物の1階を店舗、2階を自宅としています。この度、太陽光発電設備を設置し、発電した電力を自宅兼店舗で使用するほか、太陽光発電の余剰電力買取制度に基づきその余剰電力を電力会社に売却しています。この場合、余剰電力の売却収入に係る所得区分及びこの設備の減価償却費等の計算はどのようになりますか。なお、年間発電量は10,000kWh、売却電力量は3,000kWh、店舗の使用割合は70%であり、発電した電気は自宅と店舗の両方で使用されますが、どちらでどのくらい使われたかが分かる仕組みにはなっていません。

A.もし、あなたが小売業を営むビルで太陽光発電設備を設置し、その余剰電力を売っている場合、その収入は一般的に雑所得または事業所得のどちらかになります。太陽光発電設備があなたのビジネスに直接貢献している場合、その設備は事業用の減価償却資産とされ、その収入は事業所得と見なされます。減価償却費の計算においては、設備の事業利用の割合をもとに算定します。この割合は、設備の年間発電量に対する売電量とビジネス使用量の合計の割合で求められ、あなたの場合、79%が事業用割合となります。そして、減価償却費の計算に用いる耐用年数は17年です。

法人成りした場合の一括償却資産の必要経費算入

Q.私は本年、それまで個人事業として営んできた電器小売業を法人成りすることにしました。私が事業で使っていた資産の中には、一括償却資産があり、前年までに必要経費に算入されていない金額があります。この一括償却資産を法人に引き継ぐ際、必要経費に算入されていない金額はどのように扱われますか?

A.一括償却資産に関しては、その資産を構成する各減価償却資産が、たとえ売却や廃棄等があった場合でも、その取得価額に対応する金額を売却所得等の計算上で取得費用として差し引いたり、損失として記録することはできません。一括償却資産は、取得後3年間、年間均等償却しなければなりません。相続の場合、一括償却資産の取得価額の中で、まだ必要経費に算入されていない部分については、原則として故人が亡くなった年度の事業所得の必要経費として計上でき、例外的には、故人が亡くなった年度の翌年以降についても、業務を引き継いだ者が必要経費として計上することが認められています。あなたが法人化する場合、個人事業が廃止され、相続による事業承継とは異なるため、一括償却資産の取得価額の中でまだ必要経費に算入されていない部分は、すべて廃業した年度の事業所得の必要経費として計上する必要があります。

括償却資産の必要経費算入

Q.自己申告者として、今年11月に150,000円の金属製キャビネットを購入し、業務に使用しています。このキャビネットは法定耐用年数15年で減価償却することになりますか?

A.少額減価償却資産の制度では、取得価額が10万円未満の場合が対象です。しかし、質問のケースでは、取得価額が10万円以上20万円未満のキャビネットは一括償却資産に分類され、その取得価額の1/3を次の3年間で必要経費として計上できます。つまり、150,000円のキャビネットであれば、毎年50,000円を必要経費として計上することができます。ただし、この方法を選ぶ場合、関連する書類を確定申告書に添付し、計算に関する書類を3年間保管する必要があります。また、この期間中に資産が損失した場合でも、3分の1の必要経費の計上を続ける必要があり、除却損は計上できません。

相続により取得した建物の減価償却方法

Q.父が亡くなり、相続によりマンションを受け取りました。平成10年4月1日以降に取得した建物は、基本的に定額法または旧定額法で減価償却を計算することになっていますが、父が使用していた定率法での計算は可能ですか?

A.平成10年4月1日以降に取得した建物の償却方法は、定額法または旧定額法を使用することが規定されています。平成10年3月31日以前に取得した建物については、定額法または旧定率法から選ぶことができます。購入、建設、または相続、遺贈、贈与によって建物を取得した場合も含まれます。あなたのケースでは、令和5年10月に相続によってマンションを取得したとのことなので、定率法による減価償却の計算は認められません。さらに、相続によって取得した建物の取得価格は、以前の所有者が持っていた価格とみなされ、減価償却の計算に利用されます。減価償却費の計算時には、取得価格(未償却残高)だけではなく、耐用年数や経過年数も引き継がれますので、新たに耐用年数の見積もりや簡便法による計算は行えません。

資本的支出があった場合の減価償却費の計算(定額法)

Q.不動産事業を経営している者ですが、令和5年7月にマンション一棟について500万円の資本的支出をしました。この場合、減価償却費の計算はどのように行うのでしょうか?

A.資本的支出が発生した場合、その取扱いは以下のようになります。まず、平成19年4月1日以後に資本的支出があった場合、原則として、その支出は新たに取得した減価償却資産とみなし、定額法または定率法を用いて償却費を計算します。また、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に対する資本的支出がある場合には、特例として、その支出金額を既存の減価償却資産の取得価額に加算し、加算後の金額で全体を償却することができます。これは、原則に基づく計算と特例による計算のどちらも可能です。

ご質問のケースでは、令和5年7月に資本的支出を行ったため、原則的な計算と特例による計算を両方することが可能です。

原則的な計算では、マンション本体の減価償却費は6000万円 × 旧定額法償却率0.022 × 残り耐用年数で計算し、1,188,000円になります。資本的支出部分は500万円 × 定額法償却率0.022で、55,000円になります。

特例による計算では、令和5年分のマンション本体と資本的支出部分を分けて計算し、令和5年分のマンション本体の減価償却費は同様に1,188,000円、資本的支出部分の減価償却費は49,500円になります。令和6年分以後はマンション本体と資本的支出部分の合計、つまり6,500万円 × 旧定額法償却率0.022 × 残り耐用年数で計算し、1,287,000円になります。

これにより、ご質問のマンションに対する減価償却費の計算方法が理解できると思います。

資本的支出があった場合の減価償却費の計算 (定率法)

Q. 私は印刷業を営んでいますが、令和5年7月に所有する機械について1,500,000円の資本的支出を行いました。償却方法は定率法を採用していますが、減価償却費の計算はどのように行うのでしょうか。

A. 平成19年の改正により、減価償却資産に平成19年4月1日以降資本的支出を行った場合、その支出は新たに取得したものとみなして定額法または定率法で減価償却費の計算をします。平成24年4月1日以降の減価償却資産の場合、定率法の償却率は耐用年数の逆数の20倍です。したがって、このケースでの減価償却費の計算は以下の通りです。

1. 機械本体の計算では、期首未償却残高1,843,200円に定率法の償却率0.200を乗じます。

2. 資本的支出の部分では、1,500,000円に同じく定率法償却率0.200を乗じます。

3. 令和5年分の償却費は、上記1と2を合計した金額、つまり368,640円と150,000円を足した合計518,640円となります。

年の中途で譲渡した減価償却資産の償却費

Q.事業用の機械を年の中途で売却し、その際の償却費を事業所得の計算上の必要経費に算入しました。この処理は正しいですか?

A.年の中途で事業用として使わなくなった減価償却資産(例えば、機械など)の償却費は、通常その年の使用月数に基づいて計算します。しかし、年の途中でその資産を売却した場合、その年の償却費は譲渡所得の計算時に取得費から差し引かず、不動産所得、事業所得、山林所得、雑所得のいずれかの計算で必要経費として算入できます。従って、譲渡所得の取得費に計上せずに事業所得の必要経費に算入したあなたの処理は許されます。ただし、譲渡資産が建物や無形固定資産などの場合、償却費を譲渡所得の取得費に含めるか、必要経費として算入するかによって、事業税の計算上の取り扱いが異なる可能性があることに気を付けてください。

非業務用資産を営業用に転用した場合の減価償却

Q.令和5年2月に室内装飾店を開業し、同時にレジャー用に使用していた乗用車を営業用に転用しました。この乗用車は平成31年2月に140万円で購入し、営業用に転用した時点での評価額は100万円でした。この場合、今年の減価償却費は100万円を基として計算すればよいのでしょうか。

A.所得税法では、非業務用として使っていた資産(例えば乗用車など)をビジネスで使用するように転用した場合、その転用の日をその資産が売却されたとみなして、その資産の取得費と考えられる金額を新たな償却の基礎として減価償却費を計算します。この計算は、資産の取得価格から、その資産がビジネスで使用されていなかった期間の間、減価償却を1.5倍した耐用年数に基づいて計算した減価償却の額を引くことで行います。そして、この方法で計算された未償却残高が転用日におけるその資産の償却後の価額となります。従って、お持ちの乗用車の場合、140万円から特定の式に基づいて計算した結果、未償却残高は840,560円となり、この金額を基に減価償却費を計算します。定率法あるいは定額法を選択して計算した結果、減価償却費はそれぞれ256,581円または214,317円となります。この計算では、転用時の市場価格100万円ではなく、実際の購入費用等を基にした計算が必要です。また、乗用車の取得価額とその後の未償却残高との差(この場合は559,440円)は事業所得計算上、必要経費として扱われます。