「所得税」カテゴリーアーカイブ

取引停止による貸倒処理

Q.貸金業者である個人が行った貸付について、一定期間取引を停止した後に弁済がない場合の貸倒処理の特例が適用されるかどうかについて説明してください。

A.このような貸付金の貸倒処理に関して、特定の条件下での取引停止後に弁済がない際の貸倒れの特例適用はありません。この特例は、支払い能力が低下した債務者との継続的な取引を停止した後、1年以上弁済がない場合に貸倒処理が認められるものです。主に一度限りの取引についての貸倒れの判断は、債務者の資産状況から回収可能性を評価した上で決定されます。また、最後の弁済が利息への充当であった場合でも、特例適用のためには最後の弁済から1年以上の経過が必要である点に変わりはありません。

山林の火災による損失

Q.私は専業農家で、子供に残すために4年前に山林を取得しましたが、今年3月にその山林が山火事で全焼しました。この損失は、保有期間が5年以内の山林の資産損失として雑所得に関わる損失となるのでしょうか。他に山林は所有していません。

A.山林の収入(伐採や譲渡によるもの)は保有期間が5年を超えた場合と5年以内で所得の種類が異なります。5年超は山林所得、5年以内は事業所得または雑所得とされます。しかし、取得から5年以内に災害や盗難、横領で失われた山林は、伐採や譲渡が不可能になるため、どの所得における損失かが問題になります。特に、雑所得の損失は損益通算の対象外で税負担への影響が大きいです。所得税法では、災害や盗難、横領による山林の損失(保険金等で補填される部分を除く)は保有期間に関わらず損失の生じた年の事業所得または山林所得の必要経費に算入できることとしています。あなたの場合、子供のために取得した山林で他に山林がないので、この損失は事業所得の必要経費にはならず、山林の収入がなくても山林所得の損失として扱われ、他の所得と損益通算することが可能です。

競走馬の事故による損失

Q.競走馬の馬主として、昨年は賞金を獲得しましたが、今年はレース中に競走馬が怪我をしてしまい、レースに出られなくなりました。この損失を昨年の所得から引くことは可能ですか?

A.生活に必要でない特定の資産の損失、例えば競走馬の災害や盗難による損失は、その年の譲渡所得または翌年の譲渡所得から差し引くことができます。この規則は、競走馬が事業として使われる場合には適用されません。また、楽しみや保養のために持っている家屋やその他の資産、生活に使う物のうち非課税でないものも含まれます。もし競走馬が事故で死亡したり、レースや繁殖の能力を失った場合、次の計算式に基づいて損失額を出し、その年または翌年の譲渡所得から差し引くことができます。計算式は「未償却残高 – (事故見舞金 + 競走馬保険金 + 処分可能価額) = 損失の金額」となります。ただし、昨年の賞金から直接差し引くことはできません。

建物貸付けの事業的規模の判定の時期

Q.今年6月に退職し、退職金でマンションを建てて10月から入居者を募集しましたが、12月末には空室があり損失が出ました。この場合、以前の貸家を取り壊した際の損失を不動産所得の計算で全額必要経費として算入できますか?

A.建物を貸し出す事業が事業的規模であるかによって、取り壊しによる損失を全額必要経費に算入できるかが決まります。事業的規模であれば、損失を全額算入できますが、そうでなければ、その年の不動産所得の金額を上限に損失を算入できます。問題のケースでは、取り壊した時点で事業的規模であったかが重要で、その時点では事業的規模には達していないため、損失はその年の不動産所得の金額を限度に必要経費として算入されます。

貸付けの規模が小規模な貸家住宅の取壊し

Q.不動産所得のある個人が、老朽化した2棟の貸家を取り壊し、そこに新しい貸家を建てた場合、取り壊した2棟の建物の未償却残額と取壊費用は、不動産所得の計算上必要経費に算入されますか。

A.不動産所得を生じる事業で使用されていた建物等の固定資産を取り壊し、除去、または失われたことによる損失は、保険金などで補填される部分や資産の売却などによって生じた損失を除いて、その損失が発生した年の不動産所得の計算において必要経費として扱われます。この場合、取り壊しの目的が新しい貸家の建設であっても、事業用固定資産の取り壊しによる損失は目的に関わらず同様に取り扱われます。取り壊しによる必要経費は、(取り壊した資産の未償却残額 – 発生資材の価値)プラス取り壊し費用で計算されます。ただし、個人が1棟だけ貸しているなど小規模な貸家の場合は、これらの損失は「事業用に供されている固定資産」に関するものではないため、上記と異なる扱いになるので注意が必要です。この場合、不動産所得の計算上必要経費として扱われる損失は、その年の控除前の不動産所得を限度としています。また、建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判断には、外形基準があり、アパートなどは独立した室数が10以上、独立家屋の貸付けは5棟以上がそれに該当します。

事業用固定資産の取壊損失

Q.店舗を取り壊して新築した場合、帳簿価額が250万円、取壊費用が40万円、廃材の処分価額が20万円、新築建物の建築費用が1,200万円である状況での取壊しに関する処理を教えてください。

A.事業用固定資産を取り壊し、除却、滅失などの理由で生じた損失は、資産を譲渡したり、譲渡に関連して生じた損失を除いて、事業から生じる不動産所得、事業所得、山林所得の計算において必要経費として考慮できます。この取り壊しは災害によるものでも、自己の判断で行うものでも含まれます。したがって、店舗が古くなって取り壊す場合、取り壊しによる損失や取壊費用などの扱いは以下の通りです。まず、古い店舗の未償却残額から取り壊した建物の廃材の処分見込み価額を差し引いた金額に取壊費用を加えた合計を、その年の必要経費として計上します。そして、取り壊した建物の廃材を処分した場合、実際の処分価額を収入とし、処分見込み価額を取得価額として譲渡所得を計算します。質問の状況では、廃材の処分見込み価額を20万円として問題ありませんので、(250万円 – 20万円) + 40万円 = 270万円を必要経費に算入します。

居住用建物の取壊しによる損失

Q.事業を開始するに当たって、今まで居住していた建物を取り壊してその敷地に工場用建物を建てたいと思っています。この場合、その居宅の取壊しによる損失及び取壊し費用の額は、新築する工場用建物の取得価額に算入して減価償却の対象とするのですか、それとも開業した事業から生ずる事業所得の経費に算入するのですか。

A.ご指摘の居住用建物を取壊すことによる損失や費用は、新たに建設する工場用建物のコストにも、事業所得から差し引く経費にも含めることができません。もし、建物の取壊しが土地を売却するために行われるものであれば、その損失や費用は土地の売却経費として差し引くことが可能です。これは、建物が居住用であっても事業用であっても同じ扱いとなっています。しかしながら、売却目的以外で取り壊した場合、事業用建物についてのみ、損失を事業所得計算上の資産損失として経費に算入することが認められています。非事業用資産、たとえば居住用の建物の取壊しによる損失は、この扱いにはなりませんし、新規建設する事業用建物のコストに加えて減価償却の対象とすることもできません。また、このような損失は「災害」や「盗難」または「横領」によるものではないため、雑損控除の対象にもならないことに注意が必要です。

事業用資産の有姿除却

Q.私は鉄工業を営む青色申告者で、工場内に受注がなく全く稼働していない機械設備があります。不景気で将来再び受注があるかどうか分からないため、除却したいと考えています。しかし、取り除くのに多額の費用がかかるため、そのままの状態で除却処理をしたいのですが、認められますか?

A.固定資産の耐用年数を過ぎたり、使用価値がなくなったとしても、その除却や廃棄に多額の費用がかかる場合や、僅かながら再使用の可能性があるために保留している場合があります。このような状況であっても、ただ放置しているだけや、わずかな再使用の可能性のために保有していることが除却処理を認めない理由になるのは現実にそぐわないことです。従って、次のような資産については、そのままでも未償却残額から処分見込価額を差し引いた金額を必要経費に算入できます。1) 使用を停止し、今後通常の方法で事業に利用する可能性がないと認められる固定資産、2) 特定製品の生産用に専用されていたが、その製品の生産中止により将来使用される可能性がほとんどない金型等です。しかし、質問の場合、景気が回復すればいつでも使用を再開する可能性があるため、除却にかかる費用だけが理由で現状のまま除却処理することは認められません。

死亡した場合の繰延資産の未償却額

Q. 令和元年9月から洋菓子小売業を営んでいた父が令和5年4月に死亡し、事業を引き継ぎました。父は店舗を賃借する際に支払った保証金の20%が返還されないため、この部分を繰延資産として5年間償却していましたが、父が亡くなった時に未償却の繰延資産が残っていました。この未償却の繰延資産を父の準確定申告で全額資産損失として必要経費に算入できるか。

A. 繰延資産は、特定の費用がその支出日から1年以上の効果を持つ場合に一定の条件で認められるものです。しかし、その支出した人の死亡によって効果が失われるかどうかで取り扱いが異なります。死亡によって効果が失われる繰延資産の場合、未償却額を資産損失として必要経費に算入できます。一方、効果に影響がない場合は、事業を引き継ぐあなたが償却を続けます。事業が承継されない場合は、未償却の繰延資産を資産損失として必要経費に算入することができます。

償却期間経過後における開業費の任意償却

Q.7年前に病院を開業した私は、これまで赤字だったため開業費の償却額を必要経費に算入していませんでした。今年黒字になったことで、本年分及び翌年分の確定申告においてこれらの開業費を必要経費として算入したいのですが、認められますか?

A.開業費は繰延資産とされ、これを60ヶ月にわたり均等に償却するか、あるいは任意で償却することが可能です。任意償却の場合は、償却の下限がないため、費用を支払った年に全額を償却することも、まったく償却しないこともできます。さらに、費用発生後60ヶ月が経過した後でも、未償却の開業費を必要経費として算入できる特別な規制はありませんので、いつでも必要経費として償却することが可能です。ただし、対象となる開業費の内容や金額が過去に必要経費として算入されていないことを明確に記録しておく必要があります。