「所得税」カテゴリーアーカイブ

専従者が他の専従者を扶養控除の対象とすることの可否

Q.専従者が他の専従者を扶養控除の対象とすることは可能ですか?

A.配偶者控除や扶養控除の対象となる人物は、青色事業専従者や事業専従者、つまり給与を受け取る仕事をしている人ではない必要があります。ですから、ある専従者が扶養親族の所得基準を満たしていても、その人を別の専従者が扶養控除の対象にすることは認められません。

雑所得における筆耕料の扱い

Q.給与所得の他に原稿料で得た雑所得があり、必要経費の中に家族に支払った筆耕料が含まれていますが、この筆耕料は必要経費として算入できますか?

A.不動産所得、事業所得、山林所得を生じる事業に関与する居住者と生計を一にする家族への支払いは、支払った人がその額を必要経費として計上できないこととされています。同様に、支払いを受けた家族側もその額を自身の所得として計上しません。これは、「事業」と認められる収入においてはさらに詳細な取扱いがなされていないものの、雑所得を生じる「業務」への支払いにおいても、必要経費として認められないと解釈されています。したがって、あなたが娘さんに支払った筆耕料45万円は、必要経費として計上できないため、雑所得は810,000円ではなく、1,260,000円となります。ただし、筆耕料は娘さんの所得には含まれないため、特定の条件を満たす場合、娘さんを扶養家族として扶養控除を受けることができます。

青色事業専従者 と扶養控除等の関係

Q.青色事業専従者である人はなぜ扶養控除や配偶者控除の対象とされないのですか?

A.青色事業専従者給与の取り扱いは、親族に支払う報酬を必要経費に計上する特例です。この特例のため、一般の給与所得者と違い、年齢や過大な給与に関する特別な制限があります。これは、親族間での給与条件の決定に自由度が高く、税制の公正性を守るための措置です。一方で、一般の給与所得者は、年間の所得が一定額以下の場合、扶養控除等を受けることが可能です。しかし、青色事業専従者にはこれが適用されず、理由は専従者給与の計上と扶養控除の適用が同時に行われることにより、その効果が事業主に倍増されることを避けるためです。青色事業専従者給与と扶養控除を重複して適用すると、実質的には控除額を大きくする同じ効果が発生します。一般の給与所得者の場合、必要経費の計上と扶養控除は異なる対象に対して行われるため、このような倍増効果は発生しません。このような背景から、青色事業専従者給与と扶養控除の重複適用を認めない理由がわかります。また、専従者給与に関しては、適正な額で支払われている限り認められ、結果として扶養控除等の減税効果をその給与でカバーできるとされています。ただし、青色事業専従者は、専従者給与を必要経費に計上したうえで、扶養親族や控除対象配偶者として申告することはできないので注意が必要です。

事業に「専ら従事」することの意義 (その2)

Q. 私は、一週間のうち月曜日から水曜日までは実家の両親の介護をしておりますが、木曜日と金曜日が空いているので、夫の金融業を手伝うこととしました。夫は、青色申告の承認を受けていますので、私を青色事業専従者として届け出ようと思いますが、認められますか。

A. 青色事業専従者として認められるためには、事業に「専ら従事」する必要があります。仮にご主人の金融業が月曜日から金曜日までの営業であり、専従者はその全ての期間において業務に従事する必要があります。したがって、木曜日と金曜日のみを従事する場合は、通常の専従者としては認められません。しかし、あなたの業務が木曜日と金曜日のみ従事する業務であれば、その時間内で専ら従事していると認められれば、青色事業専従者として届け出ることが可能です。

事業に「専ら従事」することの意義 (そ の 1)

Q.青色事業専従者給与は、事業に専ら従事する期間が6か月を超えていることが適用要件の一つとされていますが、この「専ら従事」とは具体的にどのように考えればいいのですか。

A.「専ら従事」するとは、基本的には、事業の内容やその家族の仕事の内容により、その家族がその仕事にかけるべき時間の大部分を実際に働いている、または働ける状態にあることを意味します。これは、必ずしも全ての勤務時間を事業に費やさなければならないわけではありませんが、他の職業を持っているなどして事業に専念することが難しい場合、この条件を満たしていないと見なされることがあるので注意が必要です。

事業専従者控除額の計算

Q.白色申告者の事業専従者控除額の計算方法について説明してください。

A.事業専従者控除額は、以下の二つの金額のうち低い方を適用します。

1. 事業専従者が事業主の配偶者の場合は86万円、それ以外の場合は50万円。

2. 事業所得から事業専従者控除額を差し引く前の金額を、事業専従者の数に1を加えた数で割った金額。

例えば、事業所得が180万円で、事業主の配偶者と子どもが事業に専従している場合は以下のように計算します。

配偶者に関する計算:

– 86万円

– 事業所得180万円を事業専従者2人+1で割った金額は60万円。

– この場合、低い金額は60万円なので、配偶者に対する事業専従者控除額は60万円となります。

子どもに関する計算:

– 50万円

– 事業所得180万円を事業専従者2人+1で割った金額は60万円。

– この場合、低い金額は50万円なので、子どもに対する事業専従者控除額は50万円となります。

白色の事業専従者控除と青色事業専従者給与との相違

Q.白色申告者の場合は、6か月を超える期間事業に専従していなければ専従者控除はできませんが、青色申告者については、1か月だけ事業に専従している場合でもその専従に係る給与の必要経費算入が認められる場合があると聞きましたが、本当でしょうか。また、両者の相違点について詳しく説明してください。

A.事業主が家族に支払う対価は原則として必要経費に算入することはできませんが、青色申告者は事業主の家族に対して支払われる専従者給与を一定条件下で必要経費に算入できる特例があります。青色申告者は届出による完全給与制度があり、給与の必要経費算入を容易にします。それに対して、白色申告者は定額を事業専従者控除として必要経費にみなします。具体的な違いは、青色事業の場合は専従者の給与を必要経費として認められる条件がより柔軟であり、例えば1か月の専従期間でも必要経費算入が認められる場合があります。一方、白色事業の場合は、専従者控除として認められる金額が定められており、6か月以上の専従が必要で、確定申告書への記載が必要です。

確定申告税額の延納 に係 る利子税

Q.事業所得者として、令和5年3月の確定申告で3期分の所得税額について、資金繰りの都合で半額を5月31日まで延納しました。この延納による利子税は、所得税を滞納した際の延滞税と同様に、必要経費にはならないのでしょうか。

A.所得税とその附帯税は基本的に必要経費に算入されません。しかし、不動産所得、事業所得、または山林所得などの事業から得た所得に関連する所得税額に対する延納による利子税は、特定の計算方法に基づく金額に限り必要経費に算入することが許されています。具体的には、延納による利子税を特定の収益から生じた金額に対して算出し、その金額を必要経費に含めることができます。この計算方法は、総合課税の長期譲渡所得や一時所得、分離課税の譲渡所得においても適用され、特定の条件を満たす場合に限り、これらの所得税の利子税も必要経費として扱うことが可能です。さらに、延払条件付き譲渡に関する所得税の利子税で、その事業から生じた山林所得に関する利子税の額も山林所得の必要経費に算入できます。

交通事故による損害賠償金の扱い

Q.商品の配達途中に交通事故を起こし、相手の入院治療費20万円、収入の補償30万円、慰謝料50万円で和解した場合、この損害賠償金は必要経費に算入できるか?また、休日に店の車で事故を起こし、損害賠償金20万円を支払った場合、これも必要経費に算入できるか?

A.業務遂行上で生じた交通事故による損害賠償金は、故意や重大な過失がなければ原則として必要経費に算入できます。損害賠償金には、慰謝料や示談金など、他人への損害を補填するために支払ったすべての費用が含まれます。しかし、故意や重大な過失によって他人の権利を侵害した場合や、家事関連の損害賠償金は必要経費にはなりません。提出された質問の場合、業務の遂行中に起きた事故であり、故意や重大な過失がない限り、損害賠償金の合計100万円は事業所得の計算上、必要経費として考慮されます。一方で、使用人が休日に事故を起こし損害賠償金を支払った場合も、事業主に重大な過失がなく、雇用主としてやむを得ず負担したものであれば、これも必要経費に算入できます。

転勤により自宅を貸した場合の支払家賃

Q.会社の都合で転勤になった個人が、転勤前に居住していた自宅を他に貸し、自分は転勤先で借家に入居して家賃を支払っています。支払家賃を、自宅の貸付けによる不動産所得の計算上必要経費に算入することはできませんか。

A.自宅を貸し出して得た不動産収入を得るために直接要した経費のみが不動産所得計算上の必要経費として認められます。ですから、転勤先で支払っている家賃を不動産収入から差し引くことはできません。転勤先での家賃は生活費の一部とみなされ、通常の所得計算で考慮されるべきものではありません。ただし、理論上、自家賃やインピューテッド・インカム(自己所有の住居にかかる家賃相当額に税を課する概念)を考慮する考え方もありますが、日本の税制ではこのような考え方は採用されておらず、社会的にも受け入れがたいとされています。