「所得税」カテゴリーアーカイブ

業務を廃止した後に生じた借入金利子について

Q.アパートの建築のために借入れていたお金の利子についてです。アパートを建てた後、賃貸しましたが、ある事情で売却することになりました。入居者との立退交渉を経て、3月には立退きが完了しましたが、予定外の事情で売却が9月までずれ込みました。立退き完了から売却までの6か月間の借入金利子は、不動産所得の計算上、必要経費として計上できるのでしょうか。

A.業務を廃止した後にかかわる建物の維持管理費は、居住用の建物の場合と同じく、不動産所得の計算上必要経費として加えることはできません。お問い合わせの場合、個人的な事情で売却が遅れたものであり、立退き完了時(3月)に業務を廃止したと見なされます。そのため、入居者の立退き後の借入金の利子は不動産所得の計算上、必要経費に含めることができないのです。さらに、譲渡所得の計算においても、譲渡所得の源泉となった資産の取得費及びその資産の譲渡にかかった費用のみが控除できるので、このケースでは借入金の利子を控除することは不可能です。

損害保険料を借入金で支払った場合の支払利子

Q.所有するアパートを対象として結んだ5年満期の損害保険契約の保険料を借入金で支払いました。この借入金の利息は、不動産所得の必要経費になりますか?

A.長期損害保険は期間が5年、10年、20年など長期間で、満期時に返戻金が支払われるタイプの保険です。このような保険料を支払った場合、保険料のうち積立部分とされる金額は、保険期間終了や保険契約が解約・失効するまで資産として扱われ、定期的に支出される、いわゆる掛捨て部分のみがその業務における必要経費として計算されます。さらに、保険事故が発生し保険金が支給された結果その保険契約が終了したとしても積立部分は必要経費には含まれません。積立保険料に相当する金額は、満期返戻金や解約返戻金、または保険事故による非課税所得としての保険金に関連する支出とみなされ、業務上の支出や費用とは異なります。そのため、借入金の元本のうち積立保険料に相当する金額に対応する利息は、不動産所得における必要経費とは認められません。

相続により引き継いだ借入金の利子

Q.私の父が借入金全額で購入し賃貸していたマンションを、父の死亡後、私と母が相続しました。賃貸収入はそれぞれ半分ずつ受け取ることになりましたが、借入金の残額は私が引き継ぐことになりました。この借入金の利子は、私と母の不動産所得の必要経費にできますか?

A.相続により被相続人が借入金で取得した固定資産を相続人が引き継いだ場合、特定の条件の下で相続人が相続開始の日にその固定資産を取得するために借り入れたとみなされ、その借入金に相当する利子を必要経費として扱うことができます。具体的には、引き継いだ借入金の額と、相続開始日の固定資産に残っていた借入金の残額のうち、相続人が取得した固定資産の価値に相当する部分のどちらか低い金額が、新たに借り入れたとみなされます。あなたが相続した資産が半分であるため、借入金の残額の半分があなたが相続開始日にその固定資産の取得のために借り入れたものとして扱われ、この部分に対応する借入金の利子を不動産所得の必要経費とすることができます。しかし、あなたの母は借入金の残債を引き継いでいないため、借入金の利子を必要経費とすることはできません。

店舗併用住宅の取得に要した支払利息

Q.店舗併用住宅の建設に必要な借入金の利息で、建物の使用開始日までの期間に対応する分はどのように扱うべきですか?

A.店舗併用住宅の場合、現在営んでいる業務(例えば書籍販売)、今後営む予定の業務(例えば新たに貸す店舗)、そして住宅として使う部分にわけて考えます。既に行っている業務として使う部分のために支払った利息は、経費として計上できます。使用開始日までに支払う利息に関しては、経費として計上するか、建物の取得価格に含めるかを選ぶことができます。新たに貸す店舗部分に関しては、その業務を始める日までの利息は建物の取得価格または取得費に含めることになります。これらの利息の計算は、借入金利息を含む前のそれぞれの部分でかかった費用を基にして、合理的に分割して計算します。

買換資産の取得に充てた借入金利子

Q.物品販売業および月極貸駐車場を営む者が、駐車場の一部を譲渡し、その土地に賃貸マンションを建設する場合、譲渡所得の申告において特定の事業用資産の買換えの特例を適用した際、マンション建設資金に充てた借入金の利子を不動産所得に係る必要経費に算入できますか?

A.特定の事業用資産の買換えの特例には、譲渡資産の譲渡代金を買換資産の取得に充てることは適用条件に含まれていません。したがって、質問のケースでは、マンション建設資金を借入金で賄い、そのマンションを賃貸用として供する場合、その借入金の利子は不動産所得算定の際の必要経費として考慮できるとされています。

損害賠償金の必要経費算入時期

Q.事業を営む個人が、事業運営中に交通事故を起こし、被害者に損害賠償金を支払うことになりましたが、総額が年末までに確定せず、翌年に持ち越されました。しかし、被害者には既に内払いとして100万円を支払い、損害賠償金がこの金額を下回ることはないとされています。この場合、内払い金については支払った年度の必要経費に算入できないのでしょうか?

A.損害賠償金を必要経費に算入する条件について、基本的には債務の総額がその年度内に確定している必要があります。具体的には、その年の終わりまでに債務が成立しており、債務に基づく具体的な給付の原因が発生していて、その金額を合理的に算定できる必要があります。しかし、もし確定していなくても、最低限確実に発生する費用については、その部分は算入できると考えられます。この理論に沿って、損害賠償金の場合、支払の根拠となる事実がその年内に発生しており、総額が確定していなくても、その年の終わりまでに申し出た金額(保険等で補填される部分を除く)に関しては、必要経費に算入できます。従って、質問のケースでは、相手方との間で争いがなく、支払った100万円が最低限確実に発生することが確認できていれば、その金額を支払った年度の必要経費に算入することが認められます。

将来の病院用予定地の取得のための借入金利子

Q.現在A市で医院を経営している者ですが、将来B市に病院を開設する予定で昨年4月同市内の土地を購入しました。この土地代金の一部を銀行の借入金で支払い、この借入金利子を毎月支払っています。これは事業所得の金額の計算上必要経費として認められますか?なお、開設予定の病院の規模、設備等については未定で、土地はそのまま空地としています。

A.医院を経営している方が、その事業用として使うために資産を購入する際に発生する借入金の利息は、その資産を事業用に使うことが明確な場合、通常は事業所得計算上の必要経費に含めることができます。しかしながら、土地のような多目的資産の場合、それが事業用に使用されるかどうかは当初から明らかではありません。土地は後に何らかの目的で使用される場合にのみ、事業用資産と見なされるかが決まるため、その用途は変わる可能性があります。そのため、ご質問の土地に関する借入金利子は、その土地に病院が建てられるまでは、事業用に使用されることが明確ではないため、土地の取得価額に算入する必要があります。

業務の用に供するまでに支払った借入金利息

Q.私は喫茶店を営んでおり、新しく賃貸マンションを建てました。このマンションの土地と建設資金のほとんどを銀行からの借入でまかないました。この借入金にかかる利息は、マンションが賃貸に使われるまでの期間も含めて、不動産所得の計算で必要経費として計上できるのでしょうか。

A.事業を運営する人が、その事業用に資産を取得する目的で借り入れたお金の利息は、その事業に関連する所得額を計算する際の必要経費として計上できます。ただし、利用開始日までの期間に該当する利息は、その資産の取得価格に含めることが許されています。また、固定資産を取得するために借入れた金の利息に関しては、その借入れから利用開始日にかかる期間の利息を資産の取得費または取得価格に計上できます。あなたのケースでは、新しく賃貸マンションを取得し不動産所得を得るための事業を行っているため、マンションの利用開始日までの借入金利息は土地や建物の取得価格に計上することができます。

医師が支払った損害賠償金

Q.私は病院を経営する医師ですが、誤診により手術が手遅れになったため、患者を死亡させてしまいました。そのため、紛争が生じ、私は職業柄、外聞を恐れ遺族との間で交渉した結果、示談が成立し、2,000万円を支払いました。この場合の示談金は事業所得の金額の計算上、必要経費に算入されますか?なお、示談書・領収書は所持しており、刑事責任は追及されていません。

A.誤診が原因で患者さんが亡くなり、その結果紛争が起こり示談金2,000万円を支払ったケースについて、刑事責任が問われていないため、誤診が故意や重大な過失によるものではないとみなされます。このため、支払った示談金は事業所得の計算において必要経費として考慮することができます。しかし、誤診が故意や重大な過失による場合は、必要経費として扱うことはできません。

中小企業倒産防止共済契約に係る掛金

Q.商工会議所の勧めにより独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済契約を締結し、共済契約に係る掛金を支払っています。この場合の掛金は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができるでしょうか。

A.はい、中小企業倒産防止共済は、取引先の倒産によって中小企業者が影響を受けることを防ぐための制度です。加入者は毎月一定の金額を中小企業基盤整備機構に支払い、取引先が倒産して売掛金等の回収に困った場合、支払った金額の10倍までの融資を条件なしで受けられます。この共済契約に関する掛金は、事業所得を計算する際の必要経費として認められています。したがって、この共済契約に加入し掛金を支払っている場合、その金額を事業所得から引くことができます。ただし、確定申告をする際には、掛金の必要経費としての算入を明記した明細書を添付する必要があります。