「所得税」カテゴリーアーカイブ

青色申告者の備え付けるべき帳簿と保存期間

Q.青色申告をするには、どの程度の帳簿を備え付けてきちんと記帳しなければならないのでしょうか?また、帳簿書類の保存期間について教えてください。

A.青色申告者は基本的に、複式簿記に基づいて記帳する必要があります。ただし、簡易な簿記でも青色申告が可能で、以下の帳簿を用意することが必要です:現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳です。帳簿書類に関しては、帳簿は記帳閉鎖日から7年間、関係書類は作成・受領日から7年間保管しなければなりません。ただし、現金預金取引とは関係のない証拠書類は5年間の保管で済みます。もし事業所得と不動産所得の合計が300万円以下であれば、証拠書類はすべて5年間で良いこととされています。記帳書類を3年で廃棄することは認められていません。コンピュータで作成された帳簿書類は、磁気テープや光ディスク(CD-R)などに電子データとして保存できます。また、スキャナーを使って手書き書類を電子データにして保存する「スキャナー保存制度」もあります。

2種類以上の所得があるときの青色申告

Q.私は書籍小売業による事業所得と、アパート経営による不動産所得があります。本年から事業所得のみ青色申告の承認を受け、帳簿書類を備えて記帳していきたいと思っていますが、それは認められますか?

A.青色申告は、事業所得、不動産所得、または山林所得を得る業務に対して、申し出ることが可能です。しかし、一度青色申告の承認を受けると、事業所得、不動産所得、山林所得全てについて記帳する必要があります。そのため、事業所得に関してのみ青色申告を受け、不動産所得を白色申告のままにすることは許されません。記帳にあたっては、不動産所得と事業所得の正確な計算が可能となるよう、それぞれの所得に関わる資産、負債、資本に影響を与える全ての取引を正確に、整然と、明瞭に記録する必要があります。

非居住者の青色申告

Q.私の友人のAさんは、本年6月から米国の子会社に5年間の予定で出向します。Aさんは、3年前から国内にアパートを所有し、不動産所得を得ていました。給与所得と合算して青色申告をしていましたが、今回の海外出向に際して私を納税管理人として届け出、本年分以降の確定申告をすることにしました。本年6月からAさんは非居住者となりますが、不動産所得についての青色申告も含めて、本年分の確定申告はどのようにすればよいですか?

A.不動産所得、事業所得、または山林所得を得る活動をしている居住者は、税務署に青色申告の承認申請書を提出し、承認を受けることによって青色申告を行うことができます。非居住者の場合、国内で発生する所得については確定申告が必要ですが、不動産所得、事業所得、または山林所得を有する場合は、居住者の青色申告のルールが適用されます。そのため、Aさんは不動産所得を国内で生じさせる者と見なされ、青色申告者として本年分の不動産所得を申告することができます。

日本で受ける国外給与

Q.フランスの会社に出向している社員Aが、令和3年4月から日本の支社で技術指導員として働いています。Aは日本の支社と本国から給料を受け取っていますが、本国からの給与も含めて確定申告は必要ですか?また、Aは日本国籍を持っておらず、過去に日本に住んでいたこともありません。

A.社員Aが日本において居住しているため、所得税法に基づき「居住者」とみなされます。Aは日本国籍を持っていない上、日本に来てから3年未満で、過去10年間で日本に5年未満しか住んでいないため、「非永住者」として扱われます。この場合、日本国内での源泉所得と、海外から日本に支払われる給与について税金がかかります。Aが日本の支社での仕事の対価として本国から給与を受け取っている場合、これは国内源泉所得に該当します。そのため、本国から受け取った給与を含め、2箇所から給与を受け取っている場合でも確定申告が必要です。

出向先から帰国した者の確定申告

Q.3年間のアメリカ勤務を終えて4月に帰国し、本社営業部に勤め始めた私は、出向時に自宅を会社に借り上げさせ、賃貸料を受け取っていました。本年分の確定申告はどのようにすればいいですか?

A.あなたがその年に、「非永住者」以外である「居住者」と「非居住者」の区分に2つ以上該当した場合、それぞれの期間に応じた所得に基づいて所得税が課されます。帰国後は「居住者」としてのすべての所得と、帰国前の「非居住者」としての国内で得た不動産所得を含む所得を合わせて申告する必要があります。しかし、海外での所得については、非居住者期間中は確定申告の必要はありません。

商社員の海外出向

Q.私はA物産の海外事業部で働いていましたが、今年6月にイタリア支社へ3年間の転勤が決まりました。毎年A物産からの給与と貸家からの不動産所得を申告していたのですが、今年はどうすれば良いのでしょうか?税理士には納税管理人として依頼しています。

A.海外に転勤する場合、通常は出国後に非居住者となります。非居住者は出国時に確定申告を行い、その後は一定の国内源泉所得についてのみ税金を支払います。しかし、あなたは税理士を納税管理人として登録しているので、出国時の確定申告は不要です。来年の3月15日までの通常の申告期限に、出国前の全所得と出国後の国内源泉所得である不動産所得について確定申告をする必要があります。不動産所得が法人からの賃借の場合、支払われる賃料の20.42%が源泉徴収されますが、これは分離課税されず、他の所得と合算して申告し、年税額を精算します。

非居住者の厚生年金脱退一時金に対する課税

Q.米国人であるS氏が日本で勤務し、その期間に支払った厚生年金の脱退一時金を受給した場合、日本におけるその課税関係はどのようになりますか?

A.厚生年金や国民年金は、通常10年以上保険料を支払うことで年金の受給資格が得られます。しかし、日本に短期間滞在した外国人はこの条件を満たさないことが多いため、1995年(平成7年)4月から、条件を満たさない人も脱退一時金を受給できるようになっています。この一時金を受け取る条件としては、帰国後2年以内に必要な手続きを行うことです。この脱退一時金は退職手当等と見なされ、支払い時に20.42%の税率で源泉徴収されます。しかし、非居住者がこの一時金を受け取る場合、受給翌年の1月1日以降に適切な申告を行うことで、居住者として計算される税額に基づいて過払い税金を還付してもらうことが可能です。この申告では、国外の収入も含めた退職所得の総額や勤続年数を全期間で考慮する必要がありますが、所得控除は適用されません。一方、国民年金の脱退一時金に関しては、源泉徴収の対象外であり、最高495,600円までの支給で、他に退職手当等がなければ課税されないことが多いです。

居住者・非居住者の区分

Q.当初定められた期間より早く海外支店から帰国し、または予定よりも長く勤務した場合、居住者と非居住者の区分はどうなりますか?

A.税法では、日本国内に住所がある人、または1年以上継続して居住する人を居住者と定めています。一方で、これに該当しない人は非居住者とされます。しかし、事業や職業のために国内外で住んでいる場合、居住期間が最初から1年未満であることが明確な時を除き、国内に居住するとみなされます。

あなたのケースでは、海外勤務から帰国するまでは非居住者となります。具体的には、出国日はまだ居住者と見なされ、出国翌日から帰国日までは非居住者、帰国翌日から再び居住者となります。

あなたの友人の場合は、海外での勤務が1年以上継続することが確定した日までは居住者、その翌日から非居住者となります。

非居住者が受ける退職手当等の選択課税について

Q.非居住者でも、国内で勤務していた期間に対応する退職手当等を受けた場合、その退職所得控除額の計算において勤続年数はどう計算するのですか。

A.非居住者が国外の事業所から退職し、退職手当等を受け取る場合、この退職手当等のうち、国内で勤務していた期間に対応する部分(国内源泉所得)は、通常20.42%の税率で分離課税されます。しかし、居住者期間に基づき支払われる退職所得については、勤続年数に基づく退職所得控除額を用いて、所得税の負担を軽減することが可能です。非居住者の場合でも国内での勤務に基づいて受ける退職手当等があるならば、その退職手当等の総額を基に退職所得を計算し、超過累進税率を適用する方法を選択できます。この場合、勤続年数の計算は、非居住者として勤務した期間、すなわち国外支店での勤務期間も含めて行います。退職所得の選択課税を受けるためには、退職手当等の支払を受ける年の翌年1月1日以後(もしその退職手当等の総額が前年内に確定した場合は、確定日以後)に、所轄税務署長に対して、所定の事項を記載した申告書を提出する必要があります。

非居住者が国内の土地を譲渡した場合

Q.私は米国在住の友人(非居住者)の納税管理人となっています。今年8月に、その友人は国内に所有していた土地を事業用地として1億円で売却しました。この土地の譲渡についての課税はどのようになりますか。

A.非居住者が日本国内で土地を売却した場合、その取引は国内源泉所得と見なされ、日本での課税の対象となります。具体的には、土地を売却した際の対価が1億円以下でもそれが個人で自己や親族の住宅用に購入した場合を除き、事業用地などの譲渡は国内源泉所得として扱われます。課税の方法には、源泉徴収の上での総合課税、源泉徴収のみで完了する源泉分離課税がありますが、土地の譲渡により生じる所得は源泉徴収後に総合課税が適用されます。また、日米租税条約により、不動産の譲渡によって生じた所得は不動産の所在地国で課税されることが規定されています。この場合、譲渡対価の1021%の税率で源泉徴収され、土地を譲渡した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告が必要です。非居住者の譲渡所得の計算や税額の算出は居住者と同じように行われ、特定の租税特別措置法の適用を受けることができます。