「所得税」カテゴリーアーカイブ

借地権の放棄と雑損控除

Q.失火により借地上の建物が滅失しましたが、新築する資力もなく近隣との折り合いも悪化したので、借地権を放棄して立ち退いた場合、その借地権放棄による損失は、火災に起因して発生したものといえるでしょうか?雑損控除の対象となる災害損失に当たりますか?

A.借地権は、建物が火災で失われた後も、最初の契約期間が続いている限りはなくなることはありません。新しい建物を建てることや借地権者がお金がない場合でも、その借地権を他人に売ることでお金に変えることが可能です。ですから、お尋ねの借地権の放棄は、火災が間接的な原因とはなり得ますが、火災によって借地権そのものの価値が完全になくなったわけではありません。このように、災害による損失には該当しない借地権の放棄による損失は雑損控除の対象外です。さらに、火事の原因が借地権者にあったためにその土地に住めなくなり、他所へ移動することになった際の借地権の無償返還も、災害に関連するやむを得ない支出とは見なされません。したがって、ご質問のケースでは、どのような視点から見ても雑損控除の対象にはなりません。

災害に対する被害の発生防止費用

Q.台風などの被害に備え、台風シーズン直前に200万円をかけて老朽化した屋根や雨戸を修繕した場合、これらの費用は災害の発生を防止するための雑損控除の対象になりますか?

A.雑損控除の対象となる災害関連支出には、実際に被害が発生する可能性がある場合において、その住宅や財産の被害を拡大させない、または発生を防ぐために緊急に必要な対策にかかった費用が含まれます。しかし、この費用は被害が間近に迫っているときに行う応急措置に関わる費用で、その効果が被害の発生を具体的に防ぐことにのみ寄与するものである必要があります。例としては、大雪時の雪下ろし費用などが挙げられます。したがって、台風通過後も効果が持続するような修繕費用は、被害の発生を防ぐための緊急の措置としての費用とは認められず、雑損控除の対象にはなりません。

屋根の雪下ろし費用等に係る雑損控除

Q.私の住む地方では、年により豪雪に見舞われることがあり、その被害は必ずしも少なくありません。雪による被害は、どの程度まで雑損控除の対象になりますか。

A.雑損控除は災害によって家屋が倒壊したり損失を受けたりした場合に適用されます。もし豪雪で家屋に被害が出た場合、その損失額を雑損控除の対象とできます。さらに、災害で住宅や家財に被害が出る可能性があり、その被害の拡大や発生を防ぐため緊急で必要な対策にかかる費用も雑損控除に含めることができます。例えば、豪雪で家屋の倒壊を防ぐための屋根の雪下ろしや、家の周りの雪を取り除く費用、それに直接関連する雪捨ての費用が雑損控除の対象になります。ただし、生活に不要な家屋や事業用の家屋にかかる費用は除外されます。

隣家の火災発生に伴って生じた損失

Q.隣家が火災で全焼しましたが、我が家は消防署の消火活動による放水で家と家財が損害を受けました。この損害は雑損控除の対象になりますか?

A.雑損控除に含まれる災害には、「人為による異常な災害」も含まれます。火災時、消防隊が延焼を防ぐために行った消火活動による損失は、「人為による異常な災害」に該当すると考えられます。そのため、火災保険等で補填されない部分について、家屋や家財の損害は雑損控除の対象となります。

失火により支出した見舞金

Q.私の居宅の増築工事に従事していた大工が、たき火の不始末で隣家を全焼させてしまいました。その大工には資力がなかったため、私は火元である責任から300万円を隣家に支払いました。この支払った見舞金は、雑損控除の対象となりますか。

A.一般に、災害によって第三者に損害を与え、その損害賠償金を支払った場合、その行為に故意や重大な過失がない限り、雑損控除の対象になることがあります。あなたが支払った見舞金については、あなたが雇った大工が不注意で他人の資産に損害を与えたことにより支払われたものです。あなたに大工を雇う際に重大な過失がなかった場合は、この支払いは雑損控除の対象となる可能性があります。

通勤用自動車の災害による損失

Q.サラリーマンですが、通勤用に使用している自動車を駐車場に入れていたところ、火災のために焼失してしまいました。この損失額を給与所得から控除することができますか。

A.給与所得者が通勤用として使用している自動車が火災で焼失した場合、その損失は生活用動産とみなされ、所得税法に基づく雑損控除の対象となる可能性があります。つまり、納税者が災害などで損失を受けた場合、その損失額を所得から控除できる規定があります。雑損控除は、納税者本人またはその家族が所有する、生活に必要な資産に対し、災害や盗難、横領によって損失が生じた際、一定条件を満たす損失額を所得から控除できる制度です。ただし、趣味や娯楽目的の自動車(スポーツカーなど)の損失は雑損控除の対象外とされています。災害により損失が発生した場合の雑損控除の適用範囲や計算方法には、一定の条件が設けられています。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算と繰越控除

Q.自宅を譲渡し、赤字になった場合、その損失はどう取り扱われますか?また、次に購入する家屋に関して住宅借入金等特別控除の適用はありますか?

A.令和5年12月31日までに所有期間が5年以上の居住用の家屋や土地を売って、その売却から次の年の12月31日までに新しい家をローンで買ってそこに住んだ場合、その売却で損失が出たら、その年の他の所得と損益を合算することができます。もし損益通算してもまだ損失が残っている場合は、その損失を翌年から3年間で使えます。ただし、敷地が500平方メートルを超える部分に関しては、繰越控除の対象外です。住宅を取得する際には、特定の住宅借入金があると、繰越控除が適用される条件がありますし、合計所得金額が3,000万円以下であれば、譲渡損失を翌年に繰り越すことが原則として可能です。つまり、購入する家についても住宅借入金等特別控除を受けることができるかもしれません。

純損失の繰り戻し後の額の追加について

Q.令和4年分の課税所得が500万円だったため、令和5年分の純損失800万円のうち500万円を令和4年分に繰り戻して所得税の還付を受けました。しかし、その後令和4年分に事業所得が200万円過少申告されていたことが判明し、修正申告をしました。この場合、令和5年分の純損失の繰り戻し額を200万円追加できますか?

A.純損失を繰り戻して所得税の還付を受ける場合、還付請求書に記載された請求金額が上限となります。したがって、還付を受けた後に前年分の所得が増加したからといって、純損失の繰り戻し額を増やしてさらに還付を受けることはできません。ただし、前年分の課税所得が増加した場合、純損失の繰り戻しによる所得税の額は再計算され、その増加分については追加で還付されることになります。純損失の増加分については、繰り越し控除の対象とし、純損失の減少分については、既に還付された金額から対応する部分を納付することになります。また、前年分の課税所得の変動があった場合、増減に応じて計算された金額の差額がそれぞれ還付または納付されます。

廃業後における純損失の繰り戻し

Q.青色申告者である事業所得者が令和5年6月1日をもって法人成りしたため、令和5年6月以後は給与所得だけを有することになりました。令和5年以前3年間の所得の状況は、令和3年分100万円(課税所得金額)、令和4年分120万円(同)、令和5年分△200万円です。令和3年分及び令和4年分は青色申告書を提出しています。この場合、令和5年分の純損失200万円を令和3年分までさかのぼって繰り戻しの対象とすることはできますか?

A.純損失の繰り戻しについて、純損失が生じた年に青色申告書を期限内に提出し、その前年も青色申告書を提出していれば、純損失の生じた年の直前の年の課税所得金額を限度として繰り戻し控除ができます。ただし、前々年分までさかのぼっての繰り戻し控除は許されていません。従って、質問にある200万円の純損失は、令和4年分の課税所得金額120万円を限度として繰り戻し控除が適用され、令和3年分への繰り戻し控除は認められません。残る損失80万円については、令和6年分から令和8年分までの3年間にわたり、繰り越して控除できます。純損失の繰越控除は、損失の生じた年に青色申告書を提出していれば、その後の年分で青色申告者である必要はなく、給与所得のみの年分でも適用可能です。事業の全部を廃止した場合のみ、前年分の純損失を前々年分に繰り戻して還付請求できる特例がありますが、これは繰越控除予定の純損失を廃業時に繰り戻し控除に変更するためのもので、純損失の生じた年の前々年への繰り戻し控除を認める例外ではありません。

雑損失の繰越控除と限度額計算

Q.サラリーマンであり火災で居宅を失った場合の雑損失控除は、その年の所得で控除しきれなかった場合、翌年に繰り越して控除することは可能ですか?また、翌年に繰り越した場合でも、改めて限度額計算を行うのですか?

A.サラリーマンが火災で家を失ったという事例では、損失額がその年の所得金額を超過しているため、雑損失の繰越控除が可能です。具体的には、災害などで生じた損失量でその年の所得から完全に控除できなかった金額は、翌年以降3年間(令和5年4月1日以降に発生する特定非常災害の場合は5年間)まで総所得や分離課税所得などに対して控除が可能です。このようにして損失額を繰り越して控除することを雑損失の繰越控除といいます。

雑損失とは、災害や盗難などによる損失の合計金額が、その年の総所得等の10%を超過する部分、または災害関連支出から5万円を差し引いた金額のうち多い方の金額を意味します。実際に計算すると、雑損失の控除可能額は280万円と特定されます。

さらに、雑損失を繰り越して控除する際には、繰り越した雑損失が発生した年に関わらず、控除額を計算に再度用いる必要はありません。繰越控除が行われる際の順序は、まず最も古い年に発生した雑損失から順に控除していきます。また、雑損失の繰越控除は他の損益通算や損失の繰越控除の後に行います。

具体的なあなたのケースでは、火災で失われた額(300万円)からその年の所得(200万円)を差し引くことで、翌年に繰り越し可能な雑損失額80万円と計算されます。