「所得税」カテゴリーアーカイブ

ひとり親控除と寡婦控除の適用要件について

Q.令和2年分の所得税からひとり親に該当する場合は、ひとり親控除を受けられると聞きましたが、この控除を受けるための要件はどのようなものでしょうか。また、寡婦控除を受けるための要件についても教えてください。

A.令和2年度の税制改正により、ひとり親控除と寡婦控除は、子供の生まれた環境や家庭の経済事情に関わらず、全てのひとり親家庭に公平な税制を目指して設けられました。この改正は、「婚姻歴の有無による不公平」と「男性のひとり親と女性のひとり親との間の不公平」を解消することを意図しています。

ひとり親控除と寡婦控除の適用要件は以下の通りです。

ひとり親の場合:  

– 婚姻していない人、または配偶者の生死が不明な人(一定の条件を満たす場合に限る)  

– 生計を共にする子供がいること  

– 合計所得金額が500万円以下であること  

– 住民票の記載条件を満たすこと(世帯主として記載されている場合未届の配偶者等の記載がないこと、世帯主でない場合も同様)

控除額:35万円

寡婦の場合:  

– 夫と死別または離婚した人、または夫の生死が不明な人(一定の条件を満たす場合に限る)  

– 扶養親族がいること(夫と離婚した場合)  

– 同上  

– 同上  

控除額:27万円

これにより、ひとり親家庭や寡婦家庭が税制上からサポートされることを目指しています。

寝たきり老人と障害者の判定

Q. 扶養控除の対象としている75歳の父が脳いっ血で倒れ、3ヶ月間寝たきりで意識不明状態になっています。老衰の可能性もありますが、この場合税法上で障害者としての障害者控除の適用は可能でしょうか?

A. 所得税法に基づくと、常にベッドにいなければならない状態で複雑な介護を必要とする人は障害者とみなされます。12月31日の時点で6ヶ月以上、このような状態が継続している場合、障害者として認められます。この規定では、未来を含めて6ヶ月以上の期間が考慮されるため、あなたのお父さんが3ヶ月間寝たきり状態で、その後も3ヶ月以上回復の見込みがなければ、障害者としての特別障害者控除(40万円)を受けられます。さらに、あなたの父親がご自身、配偶者、または同居する他の親族と生活している場合、障害者控除は75万円になります。また、寝たきりになった原因が病気であろうと老衰であろうと障害者控除の対象となることが規定されており、同居していれば扶養控除として58万円も適用されます。

成年被後見人の特別障害者控除の適用について

Q. 私の母が認知症になったため、成年後見制度を使って法的なサポートを得ようと家庭裁判所に申し立てました。そして、「精神上の障害により物事を判断できない状態」と認められました。この場合、私の母は特別障害者としての障害者控除を受けられるのでしょうか。

A. 成年後見制度は、認知症や障害により判断能力が低下した人を法的に守るために、後見人を選任する制度です。税法では、「精神上の障害で物事の判断が困難な状態」にいる人は特別障害者と見なされ、本人やその扶養家族は40万円の税控除を受けることができます。家庭裁判所が医学的鑑定に基づきこのように認定している場合、税法上も「精神上の障害で物事の判断が困難な状態」にあると認められ、特別障害者控除を受ける資格があります。従って、あなたの母はこの控除を受けることができると考えられます。

知的障害のある者と障害者控除

Q.知的障害がある場合に障害者控除の適用を受けることができるのは、どのような人ですか。

A.所得税法において「障害者」とは主に二つの条件を満たす人を指します。一つ目は、精神上の障害が原因で物事の判断能力が常に欠けている人、もしくは身体障害者手帳などを受け取っている人です。知的障害に関して言えば、以下の二つのケースに分かれます。

一つ目のケースは、精神上の障害で物事の判断能力が欠けている状態が継続している人、あるいは児童相談所やその他専門機関から知的障害があると判断された人です。二つ目のケースは、精神障害者保健福祉手帳を受けている人です。これらの人々は障害者控除の対象となり得ます。

加えて、精神上の障害が原因で常に物事の判断能力が欠けていたり、重度の知的障害があるとされた人、また精神障害者保健福祉手帳に特定の障害等級が記載されている人は、さらに「特別障害者」とみなされます。

公害医療手帳と障害者控除の適用

Q.公害医療手帳に記載されている障害の程度に基づいて、障害者控除の適用は認められますか?

A.公害医療手帳は、公害健康被害の補償等に関する法律に基づいて、公害健康被害者として認定された方に交付されるものです。この手帳には、公害による障害の程度が定められた区分に基づいて表示されますが、これは地域によっては表記されていない場合もあります。しかし、所得税法上での障害者控除の対象となる障害者は、所得税法で定められた基準によるものであり、公害医療手帳に障害の程度が記載されているだけでは障害者控除の適用資格があるとは認められません。つまり、公害医療手帳を持っているだけでは障害者控除を受けることはできません。しかし、公害病認定患者が所得税法上の障害者に該当すると認められる場合には、身体障害者手帳の発行を申請するか、または一定の条件を満たす医師の診断書を基に障害者控除を適用できることがあります。

原子爆弾被爆者健康手帳と障害者控除

Q.所得税法上、原子爆弾被爆者に関する援護法第11条により認定された人は障害者として扱われますが、原子爆弾被爆者健康手帳を持つ人も同じく障害者に該当するのでしょうか。

A.原子爆弾被爆者健康手帳は、広島市や長崎市など、原子爆弾が投下された地域にいた人たちに交付されます。この健康手帳を持つ人の中で、原子爆弾の影響による傷害や病気を理由に厚生労働大臣から認定を受けた人たちだけが、所得税法でいう障害者として扱われます。さらに、この認定を受けた人は特別障害者としても認められます。

身体障害者手帳の交付前の年分の障害者控除

Q.私はサラリーマンですが、交通事故で令和元年から足が不自由になりました。本年(令和5年)、家族に勧められ身体障害者手帳の交付申請をし、交付を受けました。足が不自由になった令和元年から障害者控除を適用して還付申告したいのですが、可能でしょうか?

A.身体障害者としての認定は、その年の12月31日の状況に基づきます。つまり、令和元年や令和2年など、手帳が交付される前の年には障害者控除の適用は認められません。ただし、令和5年に身体障害者手帳の交付申請をしている、または医師の診断書を持っている場合、令和5年分の税務上の扱いは障害者として考慮されます。これは、令和5年12月31日時点で手帳に記載される程度の障害があると認められる場合に限ります。

療育手帳を持っている場合の障害者の判定

Q.私は福祉事務所から療育手帳を受け取りました。この手帳を持っていると、障害者控除を受けられると聞いたのですが、本当ですか? また、障害者控除の対象となる場合、全員が特別障害者の控除を受けられるのでしょうか?

A.療育手帳は、知的障害のある人への指導や支援を容易にするため、知的障害と診断された人に交付されます。この手帳は、知的障害者またはその保護者が福祉事務所を通じて申請する必要があり、交付は児童相談所や知的障害者更生相談所の判定結果に基づきます。しかし、知的障害者全員が持っているわけではありません。療育手帳には、障害の重度に応じて「A」や「B」などの度合いが記載されています。所得税法では、児童相談所などの判定による知的障害者を障害者とみなし、障害の程度が重い場合は特別障害者としています。そのため、療育手帳を受け取った人は障害者控除の対象となりますが、障害の程度が「A」の人は特別障害者として、障害の程度が「B」の人はその他の障害者として障害者控除を受けられます。

事業専従者が障害者の場合の障害者控除

Q.文房具卸売業を営んでおり、片足が不自由で身体障害者手帳を受けた長男も事業に従事しています。私の確定申告で長男に関する事業専従者控除と障害者控除を適用できますか?

A.障害者控除は、税負担を軽減するため設けられた制度で、納税者自身か、その配偶者や扶養親族が障害者である場合に適用されます。しかし、事業に専ら従事する事業専従者は扶養親族には該当せず、そのため、あなたの長男が事業専従者であれば、あなたの確定申告で障害者控除を受けることはできません。ただし、長男自身の所得に関しては障害者控除の対象となります。

寄附金控除の対象となる政治献金

Q.私は機械の下請加工を営む者ですが、今年某政党に100万円の政治献金をしました。この政治献金は事業所得の必要経費にはならないそうですが、所得税法上の優遇措置はありませんか?また、某政党からは領収証をもらっていますが、これ以外にどのような書類が必要ですか?

A.平成7年1月1日から令和6年12月31日までの期間に行った政治献金は、特定の条件を満たせば特定寄附金として寄附金控除が可能です。対象となるのは、一定の議員数を有する政党、総務大臣に届け出られた政治資金団体、衆議院議員や参議院議員が主宰する政治団体、また、公職推薦や支援を目的とする後援団体などです。これらの政治団体や公職候補者への寄附は、政治活動や選挙運動に関わるもので、量的制限を超えず、政治資金規正法や公職選挙法に基づき報告されていなければなりません。匿名や他人名義の寄附、特別な利益があるとされる寄附は対象外です。寄附金控除を受けるためには、確定申告時にその寄附金の詳細と受領団体が政治団体や特定の公職候補者であることを示す書類を添付する必要があります。具体的には、総務大臣の確認印のある「寄附金控除のための書類」を受け取り、確定申告に添付又は提示すれば良いです。この書類は、政治団体や公職の候補者から支出された寄附の領収書控として交付されます。もし確定申告時にこの書類を添付できなかった場合、後日税務署に提出することも可能です。また、指定期間内に政党や政治資金団体に対してした寄附については、税額控除を選択することもできます。