「所得税」カテゴリーアーカイブ

特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用要件等

Q.家屋のバリアフリー改修や省エネ改修などをローンで資金調達して行った場合、特別控除を受けられるのですか?また、多世帯同居改修工事をした場合の特例はどのようなものですか?

A.お問い合わせのケースでは、条件を満たしていれば以下の2つの控除のいずれかを選ぶことができます。

1. 特定増改築等住宅借入金等特別控除:一定の条件下で、バリアフリー改修や省エネ改修などの一定の改築工事を行い、その改築工事後6か月以内にその家屋で生活を始めた場合に適用される制度です。具体的には、自分が所有する家屋に対して、5年以上のローンで改築工事を行ったときです(令和3年12月31日までに居住のために使う場合に限られます)。

2. 多世帯同居改修工事に関する特例:これは、平成28年度の税制改正で新設された制度で、5年以上のローンを利用して自分の家で多世帯同居改修工事を行い、その家屋を平成28年4月1日から令和3年12月31日までの間に居住の用に供していた場合に適用されます。

どの改修工事が特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象かは、「増改築等工事証明書」で確認できます。この証明書は建築士などが発行します。

特定耐久性向上改修工事(例えば、小屋裏、外壁、床下などの劣化対策工事)を省エネ改修と一緒に行う場合、その費用も控除額の計算に含めることができますが、これは平成29年4月1日以後に行った改修部分に限ります。

ただし、一度特定増改築等借入金特別控除を適用して確定申告を行った後に、住宅特定改修特別税額控除への変更はできない点に注意が必要です。また、令和4年1月1日以降に居住用に供する場合は、特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用がありません。

増改築等を行った場合の住宅借入金等特別控除等の適用関係

Q.特定増改築等工事をした場合、住宅借入金等特別控除及び特定増改築等住宅借入金等特別控除の適用関係はどのようになりますか。

A.特定増改築等工事を行った際、住宅のローンがあるかないかによって利用できる税制優遇が変わります。特定増改築等工事には、バリアフリー改修、省エネ改修、多世帯同居改修が含まれます。ローンがない場合、税制優遇は適用されません。一般的な増改築でローンがある場合には「住宅借入金等特別控除」が適用され、特定の増改築に関連するローンがある場合には「特定の増改築等に係る住宅借入金等特別控除」が使えます。また、ローンがなくても、多世帯同居改修を行った場合には「住宅特定改修特別税額控除」が利用できます。どの税制優遇を選択するかは、各制度の要件を満たしているかに基づいて決定します。バリアフリー改修工事や省エネ改修工事の具体的な内容は、別の質問で解説されています。

住宅取得資金の贈与の特例を受けた場合の住宅借入金等特別控除の対象範囲

Q.本年7月にマンションを2,300万円で購入し、この購入資金として父親からの住宅取得資金贈与500万円と銀行からの借入金2,000万円があります。この場合、住宅借入金等特別控除の対象金額はどうなりますか?なお、住宅取得資金について贈与税額計算の特例を受けています。

A.住宅借入金等特別控除の対象となる金額には制限があり、住宅の取得に必要な資金に限定されます。したがって、贈与された住宅取得資金と借入金の合計がマンションの購入価格を超える場合、どちらの資金がマンションの購入に使用されたかを判断する必要があります。贈与税額計算の特例の適用を受けているとき、まず贈与された住宅取得資金が使用されたと見なされます。この例では、2,300万円のマンション購入価格から500万円の贈与された住宅取得資金を差し引いた、残りの1,800万円が住宅借入金等特別控除の対象となります。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除と住宅借入金等特別控除の適用

Q.昨年11月に自宅を売却しましたが、不況のため損失が出ました。確定申告で居住用財産の譲渡損失の繰越控除を申請しました。そして、今年4月に新しい住まいを借入金で購入し、5月に入居しました。この場合、今年の確定申告で譲渡損失の繰越控除と住宅借入金特別控除の両方を受けることは可能ですか?

A.自宅などの居住用財産を売却して損失が出た場合、その損失を翌年以降に繰り越して控除する特例が適用されます。また、新しく借入金で住宅を購入した場合は、住宅借入金の特別控除を受けることができます。質問のケースでは、譲渡損失の繰越控除と住宅借入金特別控除の2つを受けることが可能です。

中古住宅を購入した場合の債務の承継

Q.本年1月に中古住宅を購入し、2月に入居しました。この家を買う際に、前の所有者が都市再生機構に対して持っていた債務を引き継ぎました。この債務は住宅借入金等特別控除の対象になりますか?

A.はい、独立行政法人都市再生機構やその他機関から中古住宅を買うために引き継いだ債務で、返済期間が10年以上の分割払いの場合、住宅借入金等特別控除の対象になります。ですので、あなたが前の所有者から引き継いだ都市再生機構に対する債務も、返済期間が10年以上であれば、特別控除の対象とすることができます。この控除を申請する際には、債務承継に関する契約書のコピーを確定申告書に添付する必要があります。

家屋を運帯債務と固有債務によって共有で取得した場合

Q.私は妻と共有で新築住宅を取得しましたが、その購入対価と資金出所はどのようになっていますか。また、私と妻の住宅借入金等特別控除の対象となる借入金はそれぞれいくらになりますか?

A.連帯債務とは、複数の人が一緒に負担する債務のことで、普通はその債務から得られる利益に応じて各自の負担額が決まります。内部の契約で別の割合で決めていない限り、利益の割合で負担するのが一般的です。質問のケースでは、あなたと奥様が新築住宅(とその敷地)を半分ずつ共有しています。この場合、2,500万円ずつ負担するのが妥当です。あなたは2,000万円の自己の借入と、連帯債務から500万円を負担し、合計2,500万円を支払うべきです。奥様は、連帯債務の3,000万円から、あなたが負担する500万円を引いた2,500万円の部分を負担することになります。したがって、あなたの住宅借入金等特別控除の基礎となる借入金残高は、A銀行に対する連帯債務の残高の6分の1とB銀行からの借入金残高の合計、奥様の場合はA銀行に対する連帯債務の残高の6分の5になります。

借入金の借換え等をした場合の住宅借入金等特別控除

Q.令和元年4月に床面積132㎡の住宅を新築して入居し、新築費用1,200万円のうち500万円をA銀行から借り入れました。その後、B銀行からより低い金利で融資を受けられることになりました。この場合、A銀行の借入金をB銀行の融資で返済する場合、住宅借入金等特別控除を受けることができるでしょうか?

A.住宅を購入したり、増築したりするために借りたお金(「当初の債務」と呼ばれます)があり、後により好条件で融資を受けることができる場合、新たな融資で当初の債務を返済し、それを消滅させることがあります。このような借り換えを行った場合でも、新たな借入金が、一定の条件(償還期間が10年以上など)を満たし、住宅の取得や改築などに使われる場合に限り、住宅借入金等特別控除の対象になります。よって、令和元年4月に新築した住宅の購入資金としてA銀行から借りた500万円をB銀行の低利融資で借り換えても、その借り換えた借入金が特別控除の対象になる債務と認識されるため、住宅借入金等特別控除を受けることが可能です。

繰上返済等をした場合の住宅借入金等特別控除

Q.一昨年に新築住宅をローンで取得し、住宅借入金等特別控除の適用を受けていましたが、本年11月に翌年以後に返済することとされている借入金を全額繰り上げて返済しました。この場合、住宅借入金等特別控除の適用は認められるでしょうか。

A.契約上、元々翌年以降に返済することになっていた借入金をその年に繰り上げて完済した場合でも、その年の12月31日時点でまだ借入金の残高がある場合は、住宅借入金等特別控除を受けることができます。ただし、繰り上げ返済によって返済期間が10年未満になってしまうと、その年においては住宅借入金等特別控除の対象外となります。これは、住宅借入金等特別控除を受けるための基本条件「返済期間が10年以上」を満たさなくなるからです。従って、あなたが全額繰り上げ返済した場合は、この条件を満たさなくなるため、その年の住宅借入金等特別控除の適用はありません。ただし、借り換えによる繰り上げ返済の場合は、場合によっては住宅借入金等特別控除が適用されることがあります。

共有者である夫が譲渡所得の課税の特例を受ける場合

Q.自己名義の居住用家屋を譲渡し、次に共有名義で居住用家屋を取得した場合、私が居住用財産の譲渡に係る特別控除の特例を適用した場合でも、妻は住宅借入金等特別控除の適用が受けられますか?

A.はい、特定の条件を満たした場合、妻は住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。ここで重要な点は、あなた自身は、これらの条件に該当する借入金や債務を持っていないため、住宅借入金等特別控除の適用は受けられません。もし借入金等を持っていたとしても、居住用財産の譲渡に関して3,000万円の特別控除を適用した場合、あなたは住宅借入金等特別控除を受けることができません。しかし、あなたの妻に関しては、あなたと共に居住用家屋を取得しているにもかかわらず、譲渡所得に関する特例を受けていないため、住宅借入金等特別控除の適用条件を満たしていれば、その適用を受けることができます。

財産分与請求権に基づき取得した居住用家屋

Q.離婚により前夫から財産分与請求権に基づいてローン付きの居住用家屋を取得した場合、住宅借入金等特別控除の適用を受けられますか?

A.住宅借入金等特別控除には、贈与による家屋の取得や生計を一にする親族からの中古住宅の取得が適用されないという規定があります。しかし、離婚による財産分与請求権で取得した居住用家屋の場合は、これらの条件には当てはまらないため、贈与による取得ではなく、また離婚しているため生計を一にする親族からの取得でもありません。そのため、他の条件が満たされていれば、住宅借入金等特別控除を受けることができます。