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特定株主等によって支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額の損金不算入について

Q.「特定株主等によって支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額の損金不算入」の規定について、その概略を説明してください。

A.この規定は、特定の状況下で発生する特定資産の売却や値下がり、貸し倒れ、廃棄などの理由で生じる損失に関するものです。具体的には、欠損等法人が特定期間内にこれらの財産を売却や評価換えを行った結果得た利益がある場合、その利益を差し引いた損失額は、損金として計上できないと規定しています。この特定期間とは、欠損等法人の事業年度の始まりから3年間を指し、この期間内に適用されます。

さらに、この規定が適用される特定資産は、欠損等法人が事業年度開始日に保有していた資産、もしくは一定の条件を満たす分割等で受け取った資産であり、その価値と帳簿価額との差額が特定の基準未満のものは除外されます。

この制度は、含み損を抱える資産を売却して損金を計上することで、税金を逃れる行為を防ぐ目的があります。結果として、欠損等法人を買収して税金対策を行うことを困難にしています。

繰越欠損金の控除を受けるための決算操作は認められるか

Q.繰越欠損金の控除期間が終わる年度で、所得の金額が少なく繰越欠損金の大部分が打ち切りになる場合、減価償却費の計上や引当金の繰り入れをやめたり、貸倒損失や固定資産廃棄損の計上を翌事業年度以降に繰延べて所得の金額を増やし、打ち切りとなる金額を減らすことはできるのでしょうか。

A.繰越欠損金を利用して損金を算入できるのは、その事業年度開始日の前10年以内の期間に生じた欠損金に限られます。したがって、控除期間が過ぎても損金算入ができずに残る金額があり、これを減らすために、所得金額を増やす操作を考えるかもしれません。これには、減価償却費や引当金の計上を止めたり、後の年度に貸倒損失や固定資産廃棄損の計上を繰延べる方法があります。税法上、減価償却費や引当金の繰り入れなど、損金算入に影響する項目の操作は、利益操作目的でも基本的には許されますが、会計基準や会社法に反する可能性があります。一方で、貸倒損失や固定資産廃棄損の計上を繰延べる行為は、税務処理上、その事実があるにも関わらず経理処理を行わないことで課税を回避しようとするものであれば、その後の年度において損金算入されないことがあるので注意が必要です。つまり、繰越欠損金の控除期間が終了する事業年度以降にこれらの損金を計上しても、すでに損金として認められてしまっているため、二重に損金算入することはできません。

特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用について

Q.「特定株主等によつて支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用」の規定について、その概略を説明してください。

A.法人税法においては、欠損金を持つ法人の買収を利用して税金を避ける行為を防ぐため、二つの重要な規定が設けられています。第一に、「特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用」という規定があり、これは他の者による特定の支配関係の下で欠損金や評価損を持つ法人に対し、支配が始まった事業年度以前の欠損金に関し、翌年以降の利益からの控除が許されない場合が定められています。この規定が適用される場合は、法人が支配された日以後5年以内に特定の事由(事業を営んでいなかった法人が事業を開始する場合、支配前に営んでいた事業を廃止して大幅な資金調達をする場合など)に該当した時です。また、特定の役員が全員退任し、一定数以上の従業員が退職する場合などでも適用されます。この規定の目的は、税金の逃避を意図した企業買収から国を守るためです。

特定同族会社の特別税率の制度等と欠損金の繰越し繰戻しの関係等

Q.特定同族会社の特別税率に関連して、法人税法第57条に基づく繰越欠損金の損金算入規定の適用により当事業年度の所得に対する法人税が課税されない場合でも、特定同族会社の特別税率による法人税が課税されますか?また、法人税法第80条に基づく欠損金の繰戻しによる還付を受ける場合、特定同族会社の特別税率に係る法人税や使途秘匿金に関する追加法人税も還付の対象になりますか?

A.まず、法人税法第57条における繰越欠損金の損金算入は、事業年度ごとの所得金額を計算する際に適用される規定ですが、これは特定同族会社の特別税率を計算する際の留保金額計算には影響しません。留保金額は年度ごとに求められ、過去のマイナス留保金額を後の年度のプラス留保金額と合計することは不可です。つまり、過年度の利益で欠損金を補填した場合でも、税務上の繰越欠損金が残存している状態であっても、配当を行うことによって後年度の留保金額への課税を避けることが可能です。このため、繰越欠損金の損金算入の適用により所得金額がゼロとなっても、留保金額発生の可能性があり、これに対する特別税率の適用と重複課税の議論は存在します。

一方、法人税法第80条に基づく欠損金の繰戻しは、還付対象を所得事業年度の法人税額に限定しており、特定同族会社の特別税率に関連する法人税、土地の譲渡益に対する特別法人税、使途秘匿金に関する追加法人税も含まれますが、これら加算された税額は繰戻しの対象外となる規定が設けられています。しかし、特定同族会社の特別税率に関する法人税についてはこのような規定がないため、繰戻しの対象となり得ます。

解散をした場合の欠損金繰戻し還付の特例

Q.資本金12億円の会社が解散した場合、欠損金の繰戻し還付についての特例はあるのでしょうか。令和4年3月期には所得金額が15,000千円で法人税額3,480千円を納付しましたが、令和5年3月期には欠損金額が18,000千円で、欠損金繰戻し還付制度の適用停止期間中だったため還付の請求ができず、令和5年10月31日に解散しました。この場合、欠損金の繰戻し還付についての特例はありますか。

A.はい、解散等の特定の事実が起きた場合には、欠損金の繰戻し還付に関する特例があります。この特例では、解散等の事実が生じた日の前1年以内に終了した事業年度、またはその日に属する事業年度に発生した欠損金に関して、事実発生後1年以内に繰戻し還付の請求が可能とされています。ただし、繰戻し還付を受けるためには、還付所得事業年度から欠損事業年度までの各事業年度において、連続して青色申告書である確定申告書を提出していることが必要です。

貴社の場合は、令和5年3月期は欠損金繰戻し還付制度の適用停止中でしたが、解散したことによる特例の適用を受けられます。令和5年10月31日前1年以内に終了した事業年度である令和5年3月期を欠損事業年度、令和4年3月期を還付所得事業年度として、解散の日から1年以内に欠損金繰戻し還付の請求が可能です。この特例に基づき、令和5年3月期を欠損事業年度として還付請求することで、3,480千円の還付を受けることができます。

解散等の特定事実としては、解散、事業の全部の譲渡、更生手続きの開始、事業の全部または重要部分の譲渡や休止などが該当します。また、還付所得事業年度において後日所得金額の更正や修正申告を行い法人税額が増加した場合には、提出期限内であれば、還付額の増額請求が可能です。

完全支配関係がある他の内国法人の残余財産が確定した場合の未処理欠損金額の引継ぎ

Q. 法人税法第57条第2項に規定されている、完全支配関係にある他の法人の残余財産が確定した場合の未処理欠損金額の引継ぎについて、この規定が設けられている理由とその内容を説明してください。

A. 法人税法第57条第2項で規定される未処理欠損金の引継ぎは、100%グループ内で親会社が子会社の株式を保持している場合に、その子会社が解散して残余財産の分配が確定する状況を対象としています。この規定は、グループ内で株式の譲渡が発生した際、譲渡損益を計上しないという100%グループ法人税制の考え方に基づいて設けられています。たとえば、全額出資の子会社が解散し、その残余財産がない(ゼロ)と確定した場合、この子会社の株式にかかる費用は税務上損金として認められず、親会社の資本金等の算定に際して減算されることになります。このような場合に、残された未処理欠損金は、親会社に引き継がれることができますが、これはグループ内の法人を一体とみなす税制上の処理によるものです。

内容については、この規定の適用を受けるためには、内国法人間に完全支配関係があり、その内国法人が解散して残余財産が確定した場合に限られます。完全支配関係は、株主などによる直接的な完全支配や、第三者を通じた間接的な完全支配関係がある場合に適用されます。また、残余財産が確定した法人に複数の株主がいる場合には、特定の計算式に基づいて各株主が引き継げる未処理欠損金の額が決定されます。重要な点は、親会社が解散する場面でも、子会社が一時的に親会社の株式を保有している場合は、この引継ぎの適用を受けることはできないとされています。

欠損金繰戻し還付の規定の適用の有無

Q.中小法人等に該当する会社において、令和6年3月期に4,000千円の欠損金が生じ、前年度の所得金額が10,000千円で法人税額が1,664千円であった場合、欠損金の繰戻しによる還付を受けることはできますか?

A.青色申告法人が欠損を出した場合、法人税法には欠損金を後の年度に損金として算入する繰越欠損金の損金算入制度と、繰戻し還付制度があります。この繰戻し還付制度は、内国法人が事業年度に欠損金が出た際、その欠損金に関連する一定期間内に開始した事業年度の所得に基づく法人税額を還付してもらえる制度です。適用されるには、連続して確定申告を行っており、欠損金があった事業年度の確定申告が期限内にされていることが条件です。ただし、中小法人など特定の法人を除き、平成4年4月1日以後に終了する事業年度に生じた欠損金に対しては適用されません。従って、質問の場合、令和5年3月期の所得10,000千円に対する法人税額1,664千円に基づき、一定の計算により還付を受けることができます。還付請求をする際は、「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出する必要があり、法人税に加え地方法人税も還付の対象ですが、住民税や事業税、特別法人事業税に関しては適用されません。また、災害損失金も特定の書類に記載し、繰越控除の対象となります。住民税については、繰り戻し還付によって還付された法人税額を記載し、翌年度以降10年間で課税標準から控除することになります。

被合併法人等から合併法人等への引継ぎが制限される未処理欠損金額等

Q.適格合併等が行われた場合でも、被合併法人等から合併法人等への引継ぎが制限される未処理欠損金額等があるとのことですが、これについて説明してください。

A.適格合併の際、基本的には被合併法人から合併法人へ未処理の欠損金を引き継ぐことが許されています。しかし、税逃れを防ぐために特定の条件下ではこの引継ぎに制限を設けています。具体的には、以下の二つの大きな規制があります。

1. 被合併法人等の未処理欠損金の引き継ぎに関する制限: 適格合併が特定の共同事業を行うため、または被合併法人等と他の内国法人間に一定期間以上連続した支配関係がなかった場合に、過去10年間に生じた特定の未処理欠損金額の引き継ぎができなくなります。

2. 合併法人等の繰越欠損金額に対する制限: 内国法人が適格分割や適格合併等を行った場合においても、これが共同事業を行う目的でない場合、前述と同じく過去10年間に生じた特定の欠損金が使用できなくなります。

これらの制限は、欠損金を理由にした不当な税の回避を防ぐために設けられています。

被合併法人等から合併法人等への未処理欠損金額の引継ぎ

Q.税法上被合併法人等から合併法人等への未処理欠損金額の引継ぎは、どのような場合に認められるのか説明してください。

A.税法では、内国法人を含む適格合併時、特定の要件に沿って、合併された法人の未処理欠損金を合併法人が引き継ぐことが認められています。この引き継ぎでは、合併法人が過去の事業年度で生じた欠損金として扱うことができます。また、内国法人間で完全支配関係がある場合、互いに未処理欠損金の引き継ぎが可能ですが、これには一定の要件があります。まず、合併等の日から過去10年以内に始まった事業年度に欠損が発生し、それに関する確定申告がなされている必要があります。そのうえで、これらの欠損金額は合併等の事業年度前に生じたものとして扱われるため、適切な申告手続きが必要となります。新設された法人の場合、その最も古い事業年度が被合併法人等の合併等事業年度開始日の10年以内に開始された場合、その期間内に生じた未処理欠損金の引き継ぎも可能です。しかしながら、特定の条件下では欠損金の引き継ぎが制限される場合もあるため、詳細については注意が必要です。

繰越欠損金の損金算入の具体的方法

Q.3月31日決算の会社です。令和5年3月期は所得金額が1,000千円ありましたが、令和6年3月期は欠損金額が4,000千円生じました。この欠損金額について繰越欠損金の損金算入制度を利用したいのですが、その方法を具体的に教えてください。

A.繰越欠損金の損金算入制度とは、内国法人がこれまでの9年または10年以内に生じた、まだ繰越したり還付を受けたりしていない欠損金を、一定の期間内(中小法人なら100%、それ以外の法人は所得の50%まで)所得から差し引ける制度です。ご質問の会社が中小法人等に当てはまる場合、令和6年3月期の4,000千円の欠損金から1,000千円を令和5年3月期の所得に対して還付請求に使用し、残りの3,000千円は令和6年3月期以降の10年間の所得から差し引けます。例えば、令和7年3月期と令和8年3月期にそれぞれ2,000千円、2,500千円の所得があった場合、令和7年は2,000千円を全額差し引き、令和8年は残りの1,000千円を差し引いて1,500千円の所得とします。この制度を利用するには、欠損金が発生した事業年度に青色申告書の提出、帳簿書類の整理と保管、確定申告書への「欠損金の損金算入等に関する明細書」の添付が必要です。また、事業年度を変更すると、繰越欠損金を差し引ける期間が変わる可能性があるので注意が必要です。