admin のすべての投稿

不況のため役員給与を減額した場合

Q.役員給与の減額について定期同額給与の規定の適用はどうなるか。

A.役員給与が減額される場合、以下の点に注意する必要があります。

1. 業界の不況などで経営状況が大きく悪化し、役員給与を減額する必要が生じた場合は、減額前後の期間で支払われる給与の額が同じであれば「定期同額給与」として扱われます。ただし、一時的な資金繰りの問題や単に業績目標に達しなかった等の理由では、減額が認められない点に注意が必要です。具体的には、業績や財務状況の悪化、信用維持の必要性による計画への給与額の減額の盛り込みが典型的な例です。役員給与の変更を利益操作に使わないようにこれらのルールがあります。

2. 役員に過失の責任を取らせるため、または病気で職務が一時的にできない場合の給与減額も、事実上の給与受け取りが続くとみなすことができるため、「定期同額給与」として扱われます。特に病気で職務ができなくなった場合は、その期間の給与減額も、入院前と同額の給与に戻す改定も、全て「定期同額給与」に該当します。

以上のガイドラインは、役員給与の適切な減額手続きを実施する際の参考になります。

役員給与の増額を既往に遡って行った場合

Q.3月31日を事業年度終了の日とする会社で、従業員の定期昇給は毎年4月ですが、昇給率が6月に決定します。そのため、4月と5月の給与の昇給差額を6月に支給しています。役員給与も同様に、6月の支給時に4月と5月の昇給差額を追加して支給した場合、その昇給差額部分は定期同額給与と認められますか?

A.役員給与の支給が1ヶ月ごとに行われ、それぞれの支給額が同額であれば定期同額給与とみなされます。しかし、従業員の昇給率が決まった後に、役員給与に4月と5月の昇給差額を6月に加えて支給する場合、その差額は定期同額給与には含まれず、損金には算入できません。例えば、昇給前の役員給与が月100万円、昇給後が月102万円だとすると、4月と5月は100万円、6月は昇給後の給与102万円に4万円の差額を加えた106万円が支給され、7月以降は102万円が支給されます。このうち、6月の106万円から定期同額給与である102万円を超える4万円は定期同額給与とは見なされません。役員給与の決定は従業員の昇給とは異なり、契約に基づくため、税法上、従業員の昇給期に合わせる必要はありません。支給時期が1ヶ月ごとの役員給与は、会計期間開始から一定期間内に定期同額給与として改定すれば、改定前後で支給額が同額なら定期同額給与となります。このため、従業員の昇給率の決定時期に関わらず、役員給与は4月から改定するか、6月から改定するかを選択すべきです。

役員に支給する諸手当と定期同額給与の関係

Q.役員に対して毎月支給する諸手当(家族手当、皆勤手当、能率給、歩合給、超過勤務手当など)は、定期同額給与に該当しますか。

A.役員と会社の関係は、役員が会社に対して特定の仕事を行う委任関係です。これは、通常の従業員が会社に雇用される雇用関係とは異なります。従業員に支払われる給与は労働基準法などに基づく労働法規の対象であり、過労勤務手当などは法律で定められた支給義務があります。家族手当や皆勤手当のような他の手当は、法律で必ず支払わなければならないわけではありませんが、一般的に労働条件の一部として設定されています。一方で、役員に支払われる報酬は、定款や株主総会の決議によって決められており、通常は給料と手当の区分を設けません。

役員への諸手当が支給された場合、それが税法上定期同額給与に該当するかどうかは税法の定めによります。税法では、1か月ごとなど定期的に同額支給される役員給与は定期同額給与とされています。そのため、毎月決まった額の家族手当は定期同額給与に該当しますが、皆勤手当や能率給など、毎月の額が変わる手当は該当しません。役員の給料が基本給と歩合給等に分かれている場合、基本給は定期同額給与として扱われます。また、使用人兼務の役員に対して支払われる能率給や歩合給は、役員ではなく従業員としての給与の一部として支払われる場合があり、その場合、その金額は会社の経費として認められます。

簡易課税制度の適用の特例

Q.新型コロナウイルス感染症等の影響を受けた事業者は、簡易課税制度の適用変更を行うことができますか。

A.はい、できます。消費税法では、「災害その他やむを得ない理由により被害を受けた場合」に簡易課税への変更や一般課税への変更などの特例が設けられており、新型コロナウイルスのような事態もこの特例の適用範囲内にあります。この特例を利用するためには、被害が終わった日から2ヶ月以内に特定の申請書を提出する必要があります。また、課税売上高が1,000万円以下の事業者は納税義務が免除されますが、特定の条件下ではこの免除が適用されないこともあります。

参考:法12の 4②、36①③、新型コロナ税特法10⑥⑦法37の2

高額特定資産等の納税義務免除の特例について

Q.高額特定資産等について棚卸資産の調整措置の適用を受けることとなった場合の納税義務免除の制限を解除する特例について教えてください。

A.高額特定資産等を持つ事業者が棚卸資産の調整措置を適用した場合、その課税期間の初日から3年間は納税義務の免除を受けることができません。ただし、特例として、特定の申請を行い所轄税務署長の承認を得ることで、この3年間の免除制限を解除することが可能です。この特例申請には、「新型コロナ税特法第10条第4項から第6項」に基づく書類が必要となります。また、申請期限は「特定課税期間の確定申告書の提出期限」か「棚卸資産の調整規定の適用を受けることとなった日の属する課税期間の末日」のいずれか遅い日です。

棚卸資産の調整措置とは、免税事業者から課税事業者になる際に、免税事業者時代の課税仕入れ等に関わる棚卸資産の消費税額を、課税事業者としての課税仕入れ等に係る消費税額として計算に含める制度です。

棚卸資産の調整措置を受けた日の前日までに完了していない調整対象自己建設高額資産については、その建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間を基準にします。

令和2年4月1日以後に棚卸資産の調整措置の適用を受ける場合が対象です。

参考:法12の 4②、36①③、新型コロナ税特法10⑥⑦

高額特定資産の仕入れ等を行った場合の納税義務免除の制限を解除する特例

Q. 高額特定資産の仕入れ等を行った場合、納税義務の免除の制限を解除する特例について教えてください。

A. 高額特定資産(1,000万円以上の棚卸資産や調整対象固定資産)を仕入れ、その資産の仕入れ日が属する課税期間で一般課税を選択した場合、その課税期間の初日から3年間は納税義務が免除されません。しかし、この3年間の免除されない期間の制限は、特定課税期間の初日から2年を経過する課税期間までに高額特定資産を仕入れた事業者が、所轄税務署長の承認を受けることにより解除することが可能です。この承認を受けるには、「新型コロナ税特法第10条第4項から第6項の規定に基づく納税義務の免除の特例不適用承認申請書」に必要書類を添え、申請期限までに提出します。申請期限は、「特定課税期間の確定申告書の提出期限」と「高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日」のどちらか遅い日となります。なお、納税義務が免除されるのは、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者で、合併や分割、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合などは免除されないことがあります。

参考:法12の4①、新型コロナ税特法10⑤⑦

新型コロナ税特法に係る消費税の特例

Q.新設法人等が基準期間のない各課税期間中に調整対象固定資産を取得した場合の納税義務の免除の制限を解除する特例について教えてください。

A.新設法人や特定新規設立法人が、基準期間のない課税期間中に調整対象固定資産を取得し、一般課税で申告を行った場合、その取得した課税期間の初日から3年間は納税義務が免除されません。しかし、これらの事業者は所轄の税務署長の承認を得ることにより、特定課税期間以後の課税期間についてこの3年間の納税義務が免除されない制限を解除することが可能です。承認を受けるには「新型コロナ税特法第10条第4項から第6項の規定に基づく納税義務の免除の特例不適用承認申請書」に確認書類を添付して提出する必要があります。申請期限は「特定課税期間の確定申告書の提出期限」と「基準期間のない事業年度の最後の事業年度終了日」のいずれか遅い日です。

参考:法12の 2②、12の 3③、新型コロナ税特法10④ 、⑦、新型コロナ税特法通 達 3 

収入の著しい減少があったことを確認できる書類

Q.特例承認申請書に添付する「事業としての収入の著しい減少があったことを確認できる書類」とは具体的にどのような書類を指すのですか。

A.特例承認申請書に添付する「新型コロナウイルスの影響等により事業としての収入の著しい減少があったことを確認できる書類」は、損益計算書、月次試算表、売上帳、現金出納帳、預金通帳のコピーなどを指します。これらは、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間において、任意の連続する1カ月以上の期間(調査期間)と、その調査期間の直前1年間における調査期間に対応する期間の事業としての収入の金額を確認できるものです。

参考:新型コロナ税特法10⑦、新型コロナ税特省令5②

消費税の課税選択の変更に係る特例の承認申請手続

Q.消費税の課税選択の変更に係る特例の適用を受ける場合、どのような手続が必要ですか。

A.消費税の課税選択の変更に係る特例の承認を受けたい場合は、「新型コロナ税特法第10条 第1項(第3項)の規定に基づく課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」に新型コロナウイルスの影響等で事業の収入が大幅に減少したことを示す書類(「確認書類」とします)を添付し、所定の申請期限内に所轄の税務署長へ提出してください。また、特例承認申請書と一緒に「消費税課税事業者選択届出書」または「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出も必要です。

申請期限は以下の通りです。

1. 課税事業者を選択する場合:

特定課税期間の末日の翌日から2か月後(個人事業主の場合、その年の12月31日の属する課税期間は3か月後)です。この期限は、国税通則法第11条の規定により延長が可能です。

2. 課税事業者の選択をやめる場合:

  (1) 特定課税期間から課税事業者の選択をやめる場合は、特定課税期間に関する確定申告書の提出期限です。

  (2) 特定課税期間の末日以降2年を経過し、その後の課税期間から課税事業者の選択をやめる場合も、確定申告書の提出期限です。

  (3) 上記(1)、(2)以外の場合は、「2年経過日の属する課税期間の末日」と「課税事業者の選択をやめようとする課税期間の末日」のいずれか早い日です。

特定の確定申告書の提出期限については、国税通則法第11条の規定により延長を受けている場合、その延長された期限となります。

参考:新型コロナ税特法第10条

消費税の課税選択の変更に係る特例

Q.「消費税の課税選択の変更に係る特例」について教えてください。

A.特定の事業者は、地方の税務署の承認を受けることによって、課税事業者として登録することや登録を解除することができます。これは課税期間が始まった後でも可能です。この特例を使うと、課税事業者として登録した課税期間の翌期間に登録を解除することもでき、通常の2年間の継続登録が必要な要件が適用されません。また、課税事業者となった日から2年以内に始まる課税期間に100万円以上の固定資産を取得した場合、その登録を解除するための届出書の提出制限も適用されません。通常、課税事業者として登録、または登録解除の届出をした場合、その効果は翌課税期間から始まります。届出書の提出期限は特に設けられていないため、期限延長の対象ではありません。

– 納税義務が免除される事業者は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者です。ただし、特定条件下では納税義務が免除されない場合があります。

– 課税期間開始後に課税事業者を選択する場合、全ての取引の記録保存が必要です。一般課税を選択し、仕入れの税額控除を行うためには、請求書等の保存も必要になります。

参考:新型コロナ税特法10①②③、法9⑥⑦