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現金主義による経理

Q.小規模の青色申告者が現金主義によって所得の計算ができると聞きましたが、この現金主義とはどのような方法でしょうか?また、この方法で計算できる場合の要件は何ですか?

A.所得税法には、所得を現金主義で計算することは基本的に認められていませんが、一部の小規模事業者に限り、特例として認められています。現金主義とは、実際に現金が入った時点での収入や実際に現金が出た時点での支出をもとにする計算方法です。この特例を受けるための要件としては、青色申告者であり、不動産所得または事業所得を得ており、対象年の2年前の所得の総額が300万円以下であることが挙げられます。また、この特例の適用を受けるためには、特定の期日までに税務署に必要な届出を行う必要があります。

参考:

– 所得税法67条、所得税法施行令196条

– 所得税法67条、所得税法施行令195条

– 所得税法施行令197条①、所得税法施行規則40の2条①

– 所得税法施行規則39の2条①

– 所得税法施行令197条②

– 所得税法67条②、所得税法施行令196の2条、令和2年改正所得税法等附則1四

総合償却資産の除却価額の計算例

Q.総合償却資産の除却価額の計算を、(1)総合耐用年数による未償却残額と(2)個別耐用年数に基づく未償却残額で行う場合について、それぞれの計算方法を具体的な事例で説明してください。

A.平成24年4月1日以降に取得した機械E(取得価額160万円、個別耐用年数5年)を取得後4年経過した時の除却価額の計算方法は次のようになります。

(1)総合耐用年数による未償却残額を計算する場合:

– 定率法を採用している時:定率法未償却残額表で、総合耐用年数7年、経過年数4年の未償却残額は0.260です。これを基に計算すると、1,600,000円×0.260=416,000円が除却時の未償却残額となります。

– 定額法を採用している時:総合耐用年数7年の償却率は年間約14.3%です。それを基に計算すると、1,600,000円ー(1,600,000円×0.143×4)=684,800円が除却時の未償却残額となります。

(2)個別耐用年数に基づく未償却残額を計算する場合:

– 定率法を採用している時:個別耐用年数5年、経過年数4年の時の未償却残額は0.108です。これを基に計算すると、1,600,000円×0.108=172,800円が除却時の未償却残額となります。

– 定額法を採用している時:個別耐用年数5年の償却率は年間20%です。それを基に計算すると、1,600,000円ー(1,600,000円×0.200×4)=320,000円が除却時の未償却残額となります。

定率法未償却残額表の詳細については別の項目を参照してください。

帳端分の処理について

Q.事業所得の計算上で、収入金額や必要経費の計上時期に関する特例がありますが、所得税では帳端分を翌年に繰り越すことは認められていますか?例えば、毎月20日を締切日としていて、12月21日から12月31日までの売上や仕入れを翌年に繰り越して計上することは、法人税では認められていますが、所得税ではどうでしょうか。

A.所得税では、税額の計算が年度ごとに行われ、累進課税を採用しているため、質問のような特例を認めることはできません。課税上のバランスを崩す可能性があり、課税上の不利益が多いため、現在のところ帳端分を翌年に繰り越すことは認められていません。一方、法人税では一定の条件下で、事業年度の終了前に損益を確定させるための決算締切日を設けることが定められていますが、無条件に認められるわけではなく、事業年度終了の日から大体10日以内に決算締切日を設けている場合に限り認められています。

参考:法基通2-6-1

損益の帰属時期の特例

Q.製造業を営む青色申告者が、特別な受注製品の売上の計上時期について、納入後の相手方の検収を経た日にすることは可能か。

A.製造業における事業所得の計算においては、原則として製品を相手方に引き渡した日を収入の計上時期とします。しかし、特別な受注製品のように価格が納入後の検収を経て初めて決定する場合は、条件として検収を受けた日に売上を計上することも認められています。この場合、継続して経理することが条件になります。

参考:基通36-8(1)、基通36-8の2

医師の診療報酬の帰属時期

Q.開業医として保険診療報酬を翌月の10日ごろに請求しています。12月分の報酬は翌年1月に請求しますが、これは本年の収入に含める必要がありますか?交通事故による診療報酬で、債権者代位調停が成立していない場合はどうでしょうか?

A.医師が行った診療行為により発生した診療報酬は、その診療を行った日が属する年の総収入として計上します。つまり、12月に診療を行った場合、翌年1月に請求しても、その報酬は前年の収入として計上する必要があります。交通事故の被害者の診療報酬で、債権者代位調停がまだ成立していない場合でも、診療を行った時期に基づいてその年の収入として計上することになります。

参考:所法36①、基通36-8(5)

各種所得(金融所得を除く)

Q.弁護士業務のうち訴訟事件の着手金や成功報酬は、所得金額を計算する上でどのタイミングで収入金額として確定しますか?

A.弁護士の報酬は、通常その仕事が完了した日に基づいて計算されます。しかし、訴訟事件などは完了までに長期間がかかるため、事業所得を計算する際には、実際に受け取った金額だけでなく、請求可能な状態にある金額も含めて全体の収入金額に加えることになっています。具体的には以下のようになります。

1. 毎月受ける顧問料など、予め支払日が決まっているものはその支払日に。

2. 着手金のように、開始時に支払われることが慣習となっているものはその時に。

3. 成功報酬のように、特定の条件の成立が収入の要件となるものは、その条件を満たした日に。

参考:基通36-8(5)

不動産仲介料の収入金計上時期

Q.不動産仲介業を営むAは年末に売買契約を成功させて仲介報酬40万円を受け取りましたが、Aは仲介報酬を前受金として処理し、物件の登記が完了した翌年に収入として計上しています。この処理は適切ですか。

A.不動産仲介業者は売買契約成立に伴いそのサービス提供が完了し、報酬を請求できるとされます。そのため、登記の完了を待たずに、報酬受領の年に収入として計上するべきです。登記完了後に計上する方法は認められません。ただし、特別な合意や慣習がある場合には、その規定に従って収入計上時期が異なる場合があります。

参考:商法550、宅地建物取引業法46、基通36-8(5)

私立幼稚園の入学金の収益計上時期

Q.私立幼稚園を経営しており、毎年12月中旬までに翌年の入園手続きを行い、入学金を同月に受け取っています。この入学金は受け取った年に計上しなければならないのでしょうか。また、保育料を分割して受け取る場合、その一部を前受金として処理できるか教えてください。

A.私立幼稚園が12月末までに入学金を受け取っている場合、入園が翌年になるため、収益と費用の対応が取れていない状況です。このため、入学金は前受け金または預かり金として処理し、入園があった翌年の総収入として計上することが可能です。さらに、PTAを通じて募集した寄付金などは、施設や設備の改善が完了するまで預かり金として処理し、完了した年の総収入として計上することが許可されています。保育料に関しては、分割で受け取る場合でも、定められた支払日に基づいて受け取った年の総収入として計上する必要があり、翌年分に繰り延べることは認められていません。

参考:昭和43年2月27日直所3-37

各種所得(金融所得を除く)

Q.私はT市で保育所を経営しており、T市から幼児の保育委託を受けています。その幼児についてT市から児童福祉法第51条に基づく措置費の支給を受けていますが、この措置費は所得税の課税対象になるのでしょうか?

A.児童福祉法第57条の5の規定による非課税は、乳児や幼児が直接受ける給付に適用されるものであり、地方公共団体から保育所へ支給される措置費には適用されません。これは、措置費が幼児ではなく保育所に支払われるもので、保育所の経営に関連する費用を補うためのものだからです。したがって、この措置費は非課税所得には該当しないと考えられます。措置費の収入金額の計上時期に関しては、地方公共団体からの通知日が基準となります。もし年の途中で収入があり、その年内に全額を使用しなかった場合、使用されなかった部分は翌年に繰り越して支出として計上することができます。

参考:児童福祉法第51条、児童福祉法第57条の5

固定資産税の前納報奨金

Q.固定資産税を前納すると、市町村から前納報奨金がもらえますが、この報奨金はどのように会計処理すべきですか?

A.前納報奨金は、地方税を前払いした際に得られる制度の一つです。事業に使用される固定資産の税金に関しては、その報奨金を事業所得の総収入の計算において付随収入として加える必要があります。つまり、事業から発生した収入の一部として計上する必要があります。一方、業務用以外の固定資産の報奨金は、一時所得として扱われます。

参考:基通27-5(6)、基通34-1(12)