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借家の明渡しによる立退料

Q.家主の都合で10年間使っていた借家を明け渡すことになり、家主から立退料を受け取りましたが、その立退料が何所得とするか迷っています。その判定方法を教えてください。

A.借家を明け渡す際に受け取った立退料は、その目的によって大きく3つに分けることができます。1つ目は立退きのための費用の補償、2つ目は借家権の消滅による対価、3つ目は事業者の場合の営業補償です。これらは通常、複数の性質が混在するため、立退料をどの区分に属するか正確に分けて処理する必要があります。区分が明確であれば、1つ目は一時所得、2つ目は譲渡所得、3つ目は事業所得としてそれぞれの所得金額を計算します。

ただし、立退料がどの区分に属するか明確にすることが難しい場合、実際に立ち退くためにかかった費用を除いた残額を借家権の対価とする方法も考慮されます。地域によっては借家権の取引慣行があり、その地域では立退料の一部が譲渡所得となることもありますが、取引慣行がない地域では一時所得となることもあります。

借家権の対価に関連する譲渡所得は土地建物の譲渡所得とは異なり、保有期間5年以下の場合は短期譲渡所得として扱われます。総合課税の長期譲渡所得は、総収入金額から取得費や譲渡費用を差し引いた後、特別控除を適用して計算します。そして、他の所得と合わせて計算する際にはその半分が総所得金額になりますが、短期譲渡所得にはこの半額の税制は適用されません。

借地権の更新料としての貸地の一部返還

Q.150坪の土地を貸しており、契約期限満了時に借主に更新料300万円を請求しましたが、資金繰りの都合で支払いができず、土地の一部(50坪、借地権価額200万円)の返還を受けました。この場合、返還を受けた部分について課税されますか?

A.借地権の更新料は、不動産を使用させる対価として、金銭以外の物や権利などの経済的利益を受け取る場合も課税対象になります。つまり、物や権利などを受け取った時の時価を収入金額として考えます。このケースでは、借地権設定の一部解除による利益相当額、すなわち返還を受ける借地権の時価相当額200万円が、収入金額として認識されることになります。また、更新料として受け取る金銭等の額が一定の基準を超える場合は、譲渡所得として課税される場合があります。借地権者が更新料として支払った金額については、その土地の使用目的に応じて計算された額が必要経費に算入されることになります。さらに、返還した借地権部分に関しては、更新料相当額を基に譲渡所得の課税が行われます。

土地改良区の調整地の譲渡

Q.土地改良のための事業費を調達するために、土地改良区の一部の組合員に調整地として増歩換地し、その譲渡の対価として金銭を収受しました。全額を事業費に充てていますが、この増歩換地分の譲渡所得は名義人の一部組合員だけではなく、土地改良区の組合員全体に帰属するものとして申告してもよいですか?

A.はい、調整地の譲渡代金が土地改良事業費に充てられた場合、その譲渡による所得は土地改良区の組合員全体に帰属することになります。そのため、名義人だけでなく組合員全体の所得として申告する必要があります。

譲渡所得

Q.喫茶店を経営している建物と借地権をレストラン経営者に売ることになったが、この借地権の売却でも譲渡所得になりますか?

A.はい、借地権の売却によって得た所得も譲渡所得として計算します。譲渡所得とは、ほとんど全ての資産の売却によって得られる所得のことで、土地や建物などの固定資産、無形の財産権などがこれに含まれます。また、譲渡所得には分離課税が適用され、売却する資産が長期(5年以上)所有されていた場合は長期譲渡所得として計算され、特別な計算式に従って税額が求められます。

参考:

– 譲渡所得の定義(所法33②、基通33-1)

– 分離課税の適用(措法31、32)

– 長期譲渡所得の計算方法

区有の土地の譲渡

Q.農業を営んでいる場合に区有の空地が売れ、その売却益を受け取った際にかかる税金はどのようなものですか?

A.区有の土地を譲渡した際の税金は、土地が区民全員による共有か、区が全体として所有しているかによって異なります。土地が区民の共有である場合は、共有持分に応じてその年の分離課税の譲渡所得として申告する必要があります。一方、土地が区の総有であり区民が共有持分を持たない場合は、譲渡代金の分配を受けた区民はその金額をその年の一時所得として申告する必要があります。したがって、受け取った200万円に関しては、売却された空地に共有持分があるかどうかにより、分離課税の譲渡所得または一時所得として申告する要件があります。区有の資産が共有か総有かの判断は、権利変動(地区外への転出入や分家など)や売却代金の分配方法(一律か持分比例か)によって行われます。

山林所得の概算経費控除

Q.20年前に植林した山林を、本年伐採して譲渡しました。保有期間中の育成費や管理費の記録がなく、山林所得の計算が困難ですが、簡便な計算方法を教えてください。

A.山林所得は、長期間山林を育成することで発生する所得で、長期間にわたる必要経費の計算が難しい場合もあります。そのため、個人が15年前の12月31日以前から所有していた山林を伐採または譲渡した場合、概算経費率を使用して必要経費を計算できます。伐採または譲渡から得た収入金額から伐採費、運搬費、仲介手数料などの実際の費用を差し引いた後、その金額に概算経費率を乗じた金額を控除することができます。概算経費率は財務省令により50%と定められており、確定申告書に記載することでこの計算方法の適用を受けられるようになっています。結果的に計算される山林所得の金額は、総収入金額から適用された概算経費率によって算出された必要経費と特別控除を差し引いた金額となります。

参考:

– 措法30①、措規12①

– 措法30④、措規12②

– 措法30③

– 措通30-2

分収造林による所得

Q.土地の所有者として知人Aに土地での造林を許し、山林の伐採や譲渡から得られる利益を分け合う契約を結びました。この契約に基づき、伐採や譲渡から得られる利益に対して特別な税の取り扱いはありますか?

A.あなたと知人A、場合によっては費用を負担する者が一定の割合で山林の利益を分配する契約は「分収造林契約」と呼ばれます。この契約は、共同で山林を経営することとほぼ同等であり、伐採や譲渡の際に得られる収益は、その契約で定められた割合に従い分配されます。この収益は山林所得として扱われ、不動産所得と比べて税制上有利な計算が行えることが特徴です。したがって、あなたの契約も分収造林契約に該当する可能性が高く、伐採や譲渡から得られる所得は山林所得として有利に扱われます。

参考:分収林特別措置法 2①、所令78の2①②、所令78の2③

水利権の議題

Q.私の村では最近、宅地造成のためにため池が埋められ、昔からその水を農業に使っていた18人の私たちに、農地面積に応じて農業用水利権の消滅に対する補償が支払われました。私は農地を3,000平方メートル持っていて、450万円受け取りましたが、この収入は「土地の上に存在する権利」の譲渡として、分離課税の譲渡所得で申告すべきかと思っていますが、これでいいでしょうか。

A.いいえ、この場合、収入は総合課税の譲渡所得となります。一般に、土地の上に存在する権利とは、土地そのものを利用する権利のことを指し、地上権、借地権、地役権、耕作権などが該当します。しかし、水利権は土地とは異なり、用水や流水などの独占的または排他的な利用権を指しますので、土地の上に存在する権利には含まれません。そのため、このケースでは分離課税ではなく総合課税の対象となる譲渡所得です。

山林所得と事業所得の区分

Q.山林所有者から立木を買い入れて素材業を営んでいる私が、自分で植林した山林の立木を伐採し販売した場合、その所得は事業所得として申告できるのでしょうか。

A.通常、山林の伐採や譲渡による所得は長期間を要するため山林所得として扱われ、特別な税制が適用されます。しかし、短期間で山林を取得し伐採する場合は、この特別扱いが適用されず、事業所得として申告します。あなたが営む素材業が短期間で立木を伐採し販売している場合は、事業所得の扱いが適切です。一方で、あなたが相続した山林を伐採して販売した場合、植林から伐採までの所得は山林所得とし、その後の造材から販売までの所得は事業所得とするのが適切です。山林所得は伐採した原木を製材業者に運搬した際の価額で計算し、事業所得はこの価額を原価として計算します。なお、相続によって得た山林は、相続人が継続的に保有しているとみなされるため、30年前からの保有は山林所得となる「5年超の保有期間」要件を満たしています。

参考:所得税法32(1)、89(1)、32(2)、60(1)

短期勤続年数に関する退職手当の計算方法

Q.令和5年1月末に会社を退職しました。勤務期間は4年で、役員等ではありませんでした。退職手当の受け取りがありましたが、その退職所得金額の計算方法を教えてください。

A.退職所得とは、退職時に受け取る退職手当やその他の給与など退職に伴う給与のことです。この退職所得の金額は通常、その年に受け取った退職手当等の収入金額から特定の控除額を除いた残額の半額がその金額になります。しかし、退職手当等が「短期退職手当等」に該当する場合、以下の2つの方法で計算されます:

1. 収入金額から控除額を引いた残額が300万円以下の場合、その残額の半分が退職所得の金額。

2. 収入金額から控除額を引いた残額が300万円を超える場合、150万円にその余分(300万円を超える部分)を加えた金額が退職所得の金額。

短期退職手当等とは、勤続年数5年以下の非役員に対して支払われる退職手当のことを指します。ご質問のケースでは、短期勤続年数に該当するため、上記のいずれかの方法で退職所得の計算を行います。

参考:

所法30①、所法30②、所法30④、所令69の2①、所法30⑤